(澪) 森の中で目覚めた私は、すべての記憶を失っていました
愛したはずの家族のことさえ忘れていた私を
巧さんと佑司がやさしく包んでくれました
やがて私は、心から巧さんと佑司を愛しはじめました
私は何も知らなかったのです
私と佑司を守るために、巧さんが一人で闘っていたことを…
巧(成宮寛貴)、澪(ミムラ)、佑司(武井証)が散歩から帰ると、家のドアにケーキがかけられていた。澪の母・涼子(三田佳子)が訪れたが留守だったのだ。
後日。巧は主治医の尚美(余貴美子)に不安を打ち明ける。
(巧) こうやって、だんだん元の生活に戻っていくんです
澪がいなくなって狂っていった歯車を、また澪がひとつひとつ治してくれて
(尚美) いいことじゃない?
そうなんですけど
つい、忘れそうになっちゃうんです
澪がここにいるのは、雨の季節だけかもしれないのに
澪がずっと僕らと一緒にいてくれるような、錯覚に陥ってしまっていて
絵本に描いてある通り、澪がここからいなくなってしまう時が来たら、きっと佑司はひどいショックを受けます
だから僕は、僕だけはしっかり覚悟を持っておかないと…
巧は確実に迫っている澪との別れを感じていた。
澪の母・涼子(三田佳子)はケーキ店の夫婦の会話から、巧の家に若い女性が一緒に住んでいることを知った。
そのことを気に病んでいたが、夫(山本圭)からは「巧くんはいい加減な気持ちで女性を家に入れるような人じゃないよ」と諭される。
しかし巧への不信感は募るばかりで、「こんなことになるってわかってたら、どんなことしてでも結婚に反対するんだったわ」と。
翌日。巧は体調不良で仕事を早退する。
帰宅すると、澪と佑司がケーキ店に食事に行くところだった。
カレーの試食に呼ばれてケーキ店にやってきた澪と佑司。
すると店主の妻・あすか(中井美穂)が「赤ちゃんができたみたいなの」と笑顔で報告し、澪と佑司はあすかの妊娠を一緒に喜ぶ。
巧が一人で家にいると、突然澪の母・涼子(三田佳子)が訪れる。
そして涼子は心に抱えていた不信感を巧にぶつけてしまう。
(涼子) こんなこと聞くのもどうかと思うんだけど…
(巧) はい
巧くん、お付き合いしてる人いるんでしょう?
別に詮索するつもりはないんだけど、なんとなく耳にしてしまって…
あの…信じてもらえるかわからない分からないんですけど…
それはそれでいいのよ
別に文句言いに来たんじゃないんだから
ただ、佑司が傷つくことが心配なの
まだ母親を亡くして1年しか経ってないのよ
子どもは驚くほど、いろんなことに敏感だから
はい…
どうしてこの家に、他の女性を入れられるの?
この家に澪はまだこんなにいるのに
そんなに早く忘れられるなら、どうしてあの子と一緒になったの?
……
私、どうしても思ってしまうのよ
もし澪が違う道を選んでたら、あの子こんなに早く亡くならずにすんだのにって
……
…ごめんなさい
涼子の厳しい言葉に巧は傷つく…。
その夜。ニュースの天気予報では2週間後の梅雨明けを知らせていた。あと2週間で澪が去るかもしれないことは巧しか知らなかった。
佑司が「みんなで寝ようよ」と提案し、澪も拒まなかったことから3人で並んで寝ることに。
佑司が眠りについた後も、巧と澪はなかなか寝つくことができない。寝返りを打つと目が合った。
(巧) ごめん
(澪) 私こそごめんなさい
平気なんて言ったけど、やっぱり、ほんとはすごくドキドキしてて
佑司がいる時はお父さんとお母さんでいられるけど
二人になると、心臓が飛び跳ねて…
私ね、巧さんでよかった
澪が手を差し出すと、巧がやさしく手を包む。
おやすみなさい
おやすみ…
翌日。巧が仕事を終えて帰ろうとすると、万里子(岡本綾)が声をかける。万里子は澪の母・涼子から、巧に付き合っている女性がいることを話を聞き、気になっていた。
(万里子) 私ね、中学の時、秋穂くんが澪のことずっと見てたの知ってたの
(巧) え?
人は、ひとりの人をこんなにまっすぐに好きになれるんだって、秋穂くんを見てて感動した
澪がいなくなっても、秋穂くんの気持ちはずっと変わらないって思ってた、だから私…
いい迷惑、だったのかもしれませんね
僕なんかに好きになられて…
え?
僕は澪を幸せにしてやれなかった
僕に彼女を好きになる資格なんか、なかったんです
巧は涼子に責められたことで、自分は澪にはふさわしくなかったと感じていた。
一方、澪はケーキ店を訪れ、佑司が描いた絵を店主の俊輔に手渡していた。二人に赤ちゃんが誕生することを祝う絵だった。
しかし俊輔は複雑な表情を浮かべ、「できてないんですよ、子ども」と。あすかの想像妊娠だったのだ。
俊輔はそのことをまだあすかに伝えることができないでいた。
そこに仕事帰りの巧が通りがかり、二人で話を聞くことに。
あすかは以前から不妊治療を続けていたが上手くいかず、環境を変えるためにこの地に引っ越してきたのだった。
「私は女房ひとり幸せにしてやれない、駄目な男ですわ」という俊輔の言葉が、巧の身にも重くのしかかる。
その帰り道。
(澪) 幸せってなんだろうね
幸せだって自分で決めれば、幸せになるし
そうじゃないって決めたら、幸せにはならない
そんな簡単なことだっていう気もするし、そうじゃないような気もする、難しいね…
(巧) うん、俊輔さん、辛いだろうね
うん、でも幸せって、一方的にしてもらうものじゃない気がする
家族で一緒にがんばって、一緒に幸せになるんじゃないかな
幸せにしたいと思ってくれてる気持ちが伝われば、それで十分
私ならそうだな…
その夜。ケーキ店内で俊輔があすかに手紙を書いていると、あすかが覗きに来る。
(あすか) ごめんね、俊ちゃん
聞いちゃったんだ、昼間の話
なんか私また迷惑かけちゃったんだよね
…ごめんなさい
ほんとに、こんな奥さんで、ごめんなさい…
(俊輔) バカなこと言うな
どんな人生でもな、おまえと一緒じゃなきゃ意味がないんだよ
大丈夫、大丈夫
泣いてしまうあすかを抱きしめる俊輔。
秋穂家。巧が庭でくつろいでいると、澪がやって来て「なんだか巧さんに書きたくなって」と手紙を差し出す。巧が封を開けようとすると「一人の時に読んで」と澪。
巧は封筒を見ながら、高校時代に文通をしたことを思い出す。
(巧) 僕らは二人とも、電話が苦手で
付き合いだしてからずっと、手紙でやり取りしてたんだ
(澪) 付き合いだしたのは、手をにぎった最初のデートから?
そうだよ
駅のホームで手をつないで、なかなか帰れなかった
僕らはゆっくり、二人で歩き始めたんだ
* * * * * 高校時代の回想シーン * * * * *
駅のホームで手をつなぎながら、何本もの電車を見送っていた巧と澪。それでも巧が帰らなければならない時間になった。
(高1の巧) もう行かなきゃ
(高1の澪) …うん
それじゃ
電車に乗り込む巧。ドアが閉まる直前に、澪は「手紙書きます」と声をかける…。
君からの手紙は一週間後に来た
(澪の手紙)
秋穂くん、お元気ですか?
毎日、走っていますか?
この間は、会えて楽しかった
図書館の話や、ペンギンの子育ての話、とても面白かった
また聞かせてください
中学の時は席が隣同士だったのにあまり話せなかったから、秋穂くんとああして話せたのは、とても新鮮な気がします
* * * * * * * * * * * * * *
(巧) 2週間で一往復、普通の人から見たらおかしいかもしれないけど、僕は全然長いなんて感じなかった
君の手紙が届く度に、少しづつ距離が近くなってく気がして、嬉しかったんだ
すてきな話
そう?
うん
それから? どうなったの
それから僕は病気になって…
まぁ、まだ大変なことは色々あったけど、僕らはこうして一緒になれた
それでよかった?
もちろん
よかった…
澪が眠りについた頃、巧は澪の手紙を開いて読み始める。
(澪の手紙)
巧さん
今の私の気持ちを伝えたくて、佑司のまねして手紙を書いています
あなたと新しく出会って、いつのまにかあなたに恋をして、私は今、とても幸せです
きっとこれから先、私たちはケンカをしたり、大変なこともたくさんあるかもしれない
でもその何倍も素敵なことが待ってると、私は信じています
3人で静かな夜をゆっくり過ごしたり、そのうち佑司に彼女を紹介されたり
巧さん、私はたぶん今までも幸せで、これからもずっと幸せです
どうか巧さんも、そうでありますように…
読み終えた巧は目に涙を浮かべる。
澪、君をもっと、もっと…
幸せにしてやりたかった…
ごめん…澪……
そして天に祈るのだった。
澪の代わりに、僕がアーカイブ星に戻ること、できないでしょうか……
翌朝。澪が目を覚ますと、巧がテーブルに突っ伏して高熱にうなされていた。
澪は巧を布団に寝かせ、救急車を呼ぼうとするが、巧は「いつものやつだから」と佑司に薬を持ってこさせる。
佑司が巧のバッグから薬の袋を出すと、バッグの中に澪が遺した絵本を見つけて手に取る。
時間になっても出勤して来ない巧を心配し、万里子(岡本綾)が秋穂家に電話をかける。しかし看病していた澪は電話に出ることができない。
万里子は仕事を抜け出して秋穂家にやって来る。
ブザーを鳴らすとドアが開き、目の前には死んだはずの澪がいた…。
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