管理人の個人的な感想です。
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私は映画を見る前に原作を読んでいたので、澪の謎やファンタジーの仕掛けを知っているとひょっとして楽しめないのでは…という心配もあったけど、そんなことはなかったので良かったです。映像で見ると原作とはまた違った感動がありますね。
ただこれから「いま、会いにゆきます」に触れる人は、原作を読まずに映画を見た方がやはり感動は大きい気がします。その後に原作を読むのがベストでしょうね。
ストーリーや登場人物は原作にあった魅力が上手く表現されていましたが、それに加えて森を中心とした映像美など、この映画の「世界観」が魅力的で、見ていて心地のいい映画でした。その世界にずっといたいような…。この点は映画ならではの魅力ですね。
わずか2ヶ月間の撮影期間でよくここまでの世界観を表現できたなぁと思います。
そして映画を見た後にまた原作を読み直してみると、原作では別れの哀しみや寂しさといったこともけっこう描かれていると感じました。映画の方がよりポジティブで幸福なストーリーになっていたと思います。
原作の巧は繊細で軟弱なイメージがあったので、中村獅童さんのイメージとは合わないかな…と思ったけど、映画を見て納得。ちょっと頼りないところや不器用さがその表情だけで伝わってきました。
澪役の竹内結子さんはハマり役ですね。妻としての澪、母としての澪、どちらも素敵でした。
あとは佑司役の武井証くんが本当にかわいいですね。子役って今まであざとさを感じたりして少し苦手でしたが、私が知る中では一番気に入った子役になりました(笑)。
見る前は登場人物は少ないし、映画としてはちょっと地味かな〜という印象もあったけど、この3人のいる空間がとても良かったし、変に登場人物を増やすよりもこの3人を中心に描いたのは成功だったなと思います。
-↓以下はネタバレあり-
[市川拓司]
僕は、死の哀しみを書きたかったわけではないんです。
僕はずっと死が怖かった。自分が死ぬことも、愛する人を喪うことも。
でもだからこそ希望を持ちたかった。
死が終わりではない世界を、物語という形ででも提示することができれば、どこか救われるんじゃないかと思っていました。
(ダ・ヴィンチ2004年10月号より)
「いま、会いにゆきます」は妻を亡くした夫とその息子の物語ですが、「死別の哀しみ」を描いているわけではないんですね。
「愛する人の死」が描かれているにも関わらず、確かに悲劇にはなってなくて、暖かさを感じる物語です。なぜなのでしょう?
私なりに考えてみました。
1. アーカイブ星
最愛の人・澪の死に際して、巧は死後の世界を想像します。それが「アーカイブ星」で、星の表面に建物が突き出しているこの星のイメージは、それだけでメルヘンチックな雰囲気を感じます。
そしてアーカイブ星とはよくある死後の世界ではなくて、生きている誰かに「想われている」人だけが暮らす星。
大切な人が死んでしまっても、自分が心の中で想っている限り、その人はどこかで生きているんだ、という希望を感じます。
その「相手を想う」という行為が、残された人にとって救いになるんですね。
2. ずっと幸せだった
澪は若くして死んでしまうにも関わらず、悲劇的な存在ではなくて、「ずっと幸せだった」とはっきり言っています。
「死」や「別れ」を悲観的に嘆くよりも、人生の中でどれだけの「幸せ」を見出せたかが大切なんですね。
澪は短い人生の中でも、巧と佑司と共に幸せな時間を過ごしたし、見ていてそれが伝わってきます。
残された巧も、二人で10年近く共に生きられたことの「幸せ」を感じながら、こらからの人生を生きていくのでしょう。
別れには当然、大きな哀しみがありますが、この映画ではそれよりも「幸せ」が上回っていたと思います。
たとえ別れや悲しみが待っていても、今あるささやかな幸せを大切にして、そして幸せを育んでいこう…そんなことに気づかせてくれる素敵な作品でした。