(澪) 家族の絆は、一緒に過ごした楽しい思い出によって、つくられていくものだから
自分が積み上げてきた家族との思い出が、記憶のない私を苦しめます
でも、そんな私に二人が教えてくれました
新しい思い出を、これから3人で作っていけばいいんだということを…
澪(ミムラ)のいる幸せな1日が今日も始まる。
元気な澪の姿を見て「アーカイブ星に行くと病気が治るの?」と巧(成宮寛貴)と二人きりの時に聞く佑司(武井証)。澪の体調を心配する佑司だが、巧は「パパと佑司でママを守ってあげよう」と誓い合う。
佑司のクラスに岡崎博史という転校生がやって来る。
しかし佑司が話しかけても無視し、冷たい態度を見せる。
佑司は博史と金魚当番を分担することになった。
夜になり、佑司は寝付くまでの間、澪に本を読んでもらおうとする。
澪が何冊か本を持ってくると、そこには太宰治の「走れメロス」があった。
(佑司) なんの話だっけ?
(巧) メロスが、ひたすら一生懸命走る話
何それ?
(澪) あのね、あるところにメロスっていう人がいて、悪い王様に殺されそうになっちゃうの
でもメロスには大事な用事があって、3日間だけ待ってくださいってお願いするんだけど
逃げるつもりだろうって許してもらえないの
そしたらメロスの友達がね、僕が代わりになりますって言ってくれたの
もしメロスが戻ってこなかったら、僕が殺されます
うそう
それだけ、友達はメロスのことを信じてたのね
メロスは絶対戻ってくるって
メロスは間に合うの?
うん、間に合うよ
絶対に帰ってくるって、約束したからね
佑司はこの物語に信じることの大切さを感じる。
その夜、寝静まった澪と佑司の寝室に、巧が入ってくる。
巧はしばらく澪の寝顔を見つめると、「澪…」とささやきながら澪の髪にそっと触れる。
気づいた澪は突然起き上がり、少し脅えた様子を見せる。
(巧) ごめん
(澪) いえ、私こそなんだか
ごめん…おやすみ
私、思い出せなくて
あなたへの気持ち、結婚するぐらい大好きだったはずなのに
ごめんなさい
仕方ないよ、おやすみ…
翌朝。金魚当番の佑司は、転校生の博史に金魚の名前を教えていた。
「バケツ持ってくるからちょっと待ってて」と言い残して佑司が教室を後にすると、博史は突然水槽を床に落として割ってしまう。
あわてて佑司が戻り、床に落ちた金魚を拾っていると、登校してきた生徒たちが集まってくる。
すると博史は「僕知らない、佑司くんがやったんだ」と嘘をつく。
佑司は博史を呆然と見つめる…。
巧が通院する診療所。
「澪と一緒に暮らすことにしました」と担当医の尚美(余貴美子)に報告する巧。
(巧) 今でもまだ、信じられないんですけど
今日こそ起きたら、いなくなってるんじゃないかって思ったりもして
でも、澪は僕らの前にいるんです
何があっても、澪は澪で、僕ら三人は家族で
だから…
(尚美) 一緒にいたい
はい、先のことはわからないんですけど…
澪が帰ってきたことで、「もう一度ラブラブぶりを見せ付けられるわけだ」と尚美。
(巧) それは大丈夫です
僕を好きだった気持ちも、忘れてるんです
でも、それはいいんです
澪が佑司の母親でいてくれれば、それで…
(尚美) それならさ、もう一度好きになってもらえばいいじゃない?
こんな僕を、彼女が好きでいたなんて、もともと奇跡みたいなものですから
こんな僕って?
彼女に嫌われたくないんです
僕は、仕事もちゃんとできないし、しっかり泳いだりすることも、佑司を映画に連れて行くことも、できない
こんな人間、誰も好きにならない
私はあなたのこと好きだけどな
この梅雨の間、澪と佑司にはできるだけ幸せに過ごしてもらいたい
どうすればいいのかわからないんですけど、とにかく、頑張るしかないと思って…
その頃、澪は家で結婚指輪を見つける。
はめようとするが、巧への愛情の記憶が失われているからか、どうしても着けることができない。
そんな自分が嫌になったのか、巧にふさわしくないと思ったのか…澪は森へと歩いていく。
しかしトンネルの前まで来たところで、この数日間を一緒に過ごした巧と佑司の記憶が鮮明に蘇ってくる。
結局、考え直して家に帰ることにした澪。
その途中でケーキ屋の店主に声をかけられ、寄っていくことに。
澪を囲んで軽く言い合いになる菊地夫婦。
そんな二人を見て「仲いいですね」と澪。
(俊輔) おたくこそ、仲いいんでしょ? まだ若いんだし
(澪) あぁ、でもまだわからないことが多くて…
夫婦なんてね、一緒にいると、好きも嫌いもなくなっちゃいますよ
嫌でもわかりますよ
一方、巧は仕事でミスをしてしまう。
数日前に入っていた本の取り寄せを、巧のミスで処理していなかったのだ。
注文していた客は「重要な取引先に頼まれた本なんだ」と巧を責める。
転校生の博史に罪を着せられた佑司は落ち込んでいた。
学校の帰り、巧の働く図書館に寄るが、ミスをしたことによる残業で巧は相手にしてくれない。
父に話を聞いてもらいたかった佑司はさらに落ち込んでしまう。
巧が帰ってきたのは夜遅くで、帰りを待っていた佑司も眠ってしまっていた。
巧のつらそうな様子を心配する澪だが、「走れメロス」の文庫本を手にすると巧は笑顔を見せる。
(巧) それ、実は君の本なんだ
(澪) え?
中学の時、君はよくその本を読んでた
* * * * * 中3の回想シーン * * * * *
教室で「走れメロス」の文庫本を読んでいる中3の澪。
「またそれ読んでんの?」と同級生の万里子が近寄ってくる。
(万里子) どこがそんなに好きなの?
(澪) メロスの、まっすぐなとこかな
(巧のナレーション)
バカみたいだけど、メロスみたいになりたいなんて、思ったりもしたんだ
まっすぐに真実を貫こうとして、ひどい目にも遭ったけど…
水泳の授業で、女子の更衣室を覗き見していた男子生徒。
それを見つけた巧は「何やってんだよ」と言ってやめさせようとするが、男子生徒は巧を突き飛ばすと逃げて、巧が覗き見の罪を着せられてしまう。
巧は自分は無実であることを訴えたが、教師はそれを受け入れず、クラスでも冷たい目で見られるようになってしまう。
廊下ですれ違った澪も、巧を避けるように小走りで通り抜ける…。
* * * * * * * * * * * * * *
(巧) 僕はバカだと思ったよ
君には軽蔑されるし、謹慎処分にもなるし
(澪) でも巧さんって勇敢だったんですね
昔はね
さあ、風呂入って寝るね
翌朝、佑司が目覚めた時には巧はもう仕事に行っていた。
佑司は登校すると、嘘をついた転校生の博史をつかまえて「どうして本当のこと言ってくれないの?」と問い詰めるが、博史は何も答えようとしない。
イライラが募る佑司はつい博史を突き飛ばしてしまう。水たまりに落ちて、服が汚れてしまう博史。そこにクラスの生徒が集まってくる…。
この一件で学校から呼び出された巧が駆けつける。
博史の父は昨日、図書館の予約ミスで巧を責めた男だった。
博史は「自分が水槽を割ったことにしろと脅されて、断ったら突き飛ばされた」と、またも嘘の説明をしていた。
「すみませんでした」と平謝りの巧。
家に帰ると巧は「どうして話してくれなかったんだ」と佑司をしかる。昨日から今日にかけて、その時間がなかったことを巧は気づけなかった…。それでも佑司は黙って話を聞いていた。
翌日。博史の証言を信じたクラスメートたちは、佑司を仲間外しにする。
家に帰っても落ち込む佑司に、澪は元気づけようと話しかけるが…
(佑司) メロスの話はいい
(澪) どうして?
だって、そんなの嘘の話だもん
どこが嘘なの?
信じてるって、メロスは戻ってこない
本当の世界では、メロスなんて、助けにも来てくれないんだ
誰も信じてくれないんだ
佑司くん…
もしかして水槽のこと?
水槽を割ったのは佑司くんじゃないの? そうなの?
博史くんが、全部、僕が割ったって
たっくんも、僕がやったと思ってる
僕なのか?って、聞いてもくれなかった
いつの間にか帰宅していた巧は、後ろで佑司の話を聞いていた。
「佑司…」とつぶやくと、家を飛び出して自転車を走らせる。
向かうのは転校生の家だが、その途中で父親と遭遇する。
澪と佑司も巧を追いかけてやって来る。
(巧) 水槽を割ったのは、うちの子じゃありません
(博史の父) どういうことだ?
もう一度、息子さんに話を聞いていただけませんか?
うちの息子だって言うのか? いい加減にしろ
僕のせいなんです
僕がちゃんと話を聞いてやっていれば…
わけのわからないことを言うな!
君は一体、どれだけ私に迷惑をかければ気がすむんだ
すみません、でも…
中央の図書館にも知り合いはたくさんいる
その気になれば君一人ぐらい、なんとでもなるんだ
さっさと学校に電話して、これ以上無駄な時間を取らせないでくれ
…佑司じゃありません!
あの子は、嘘をつくような子じゃないんです
僕にはもったいないぐらいのいい子なんです
あの子がやってないと言うなら、世界中の誰が疑っても、僕は佑司を信じます
信じてるんです
…これ以上、話しても無駄だな
私なりに対処させてもらうよ
車に乗って走り去る博史の父。
佑司と澪が巧に歩み寄る。
(巧) ごめんな、気づいてやれなくて
(佑司) たっくんが信じてくれればいいよ
男と男の約束、守ってくれたから
僕、大丈夫だよ
巧は佑司を抱きしめる…
そんな二人の姿を見て微笑む澪。
翌朝。転校生の博史は「ごめんなさい、水槽を割ったのは僕です」と皆の前で告白する。昨夜、父親にもすべて話したという。
巧の図書館には博史の父が来ていた。
昨日の態度とは一変して「色々悪かったね」と謝る父。
巧のミスで探していた本も、館長の知り合いの大学教授経由で見つけることができた。
抱えていた問題が解決し、家でくつろぐ三人。
(澪) 巧さん
私、もっと巧さんのこと知りたいと思いました
記憶がない分、これからの巧さんを、もっとちゃんと知っていこうって
昔の私が巧さんを好きになった気持ち、ちょっとだけわかったような気がしました
三人は家族で隠しごとはしないと決める。
その時、飼い犬のおしっこがパンダのぬいぐるみをくわえてやって来る。
中には澪のへそくりが入っていた。さっそく隠しごとを発見され、苦笑する澪。
(澪の回想のナレーション)
そのとき私は、少しづつ近づいていく家族の心が、とても幸せでした
時間が経てばわかり合える
無邪気に信じる私を、あなたはどんな思いで見つめていたのでしょう
6週間後の私の運命を知りながら、あなたはいつも笑顔でいてくれた
いつでも、あなたはまっすぐでした
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