復習用&見逃した人向けです。できるだけ詳しく書いています。
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9/17 OnAir "#SPECIAL" STORY.
特別編「17年目の卒業」
――谷田部のナレーション
――谷田部のセリフ
――大人サクのセリフ
回想シーン
谷田部(松下由樹)のナレーションで物語が始まる。
1987年、一人の少年と一人の少女がいました。
少年の名は、松本朔太郎。
少女の名は、廣瀬亜紀。
ごくありふれた二人の恋。
けれどそこに待ち受けていたのは、ある悲劇的な結末。
そして少年はいまだ彼女の死から、卒業していない――
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
2004年。
高校のグラウンドで、サクが走りながらアキの散骨を終える。
短距離走のゴール地点付近で、息を切らすサク(緒形直人)。
後ろから谷田部が声をかける。
変なおじさんが走ってるって言われたんだけど。
何してるの?
サクが天を指差す。
アキを送ってたんです。
そっかぁ…
はい。
廣瀬亜紀の骨と過ごした17年。
その死を痛み続けた17年。
ひとつの恋を卒業するのに、17年という月日は
長かったのだろうか、短かったのだろうか。
1987年、今日のように二人はここにいた。
これは、松本朔太郎と廣瀬亜紀という、私が送り出せなかった二人の生徒の物語――。
1話:教師の葬儀。
学年を代表して弔辞を読み始める亜紀。
学年を代表して弔辞を読み始める亜紀。
きっかけは、突然降り出した雨。
突然強い雨が降り始める。
それにも負けず弔辞を読む亜紀に、そっと傘を差しかけるサク。
それにも負けず弔辞を読む亜紀に、そっと傘を差しかけるサク。
廣瀬はちょっと意地っ張りな優等生。
松本は、忘れ物ばかりするのん気者。
正反対の二人が、お互いを意識し始めたのは
アジサイの花が咲く、初夏の頃でした。
「松本くん、サクって呼んでもいい?」
「好きよ、サクちゃん。大好きだよ」
「好きよ、サクちゃん。大好きだよ」
それは一見、どこにでもあるような普通の恋。
たぶん、初恋…。
2話:学級委員に強引にキスされる亜紀。
それを目撃したサクは怒り、学級委員に飛びかかる。
それを目撃したサクは怒り、学級委員に飛びかかる。
時おり、どうでもいいようなことが原因でケンカをしたり。
飾らない二人の姿は私にとって、微笑ましくもあり、ちょっと羨ましく思えるものでした。
松本のお祖父さんが亡くなったのは、そんな時でした。
3話:自転車から転げ落ちたサクを、抱きしめる亜紀。
「私太るよ。お祖父ちゃんと同じぐらいになって、後ろに乗るよ」
「私太るよ。お祖父ちゃんと同じぐらいになって、後ろに乗るよ」
その死を受け入れられない松本を支え、励ましたのは廣瀬。
一方松本も、不器用ながら必死に廣瀬を支えようとしていました。
4話:目前に迫った陸上の県予選。
練習に明け暮れる亜紀を応援するサク。
練習に明け暮れる亜紀を応援するサク。
けれど廣瀬の身体に異変が起き始めたのも、この頃。
そして廣瀬にとって、高校生活最後のレース。
レース開始に間に合わなかった亜紀。
「なんでダメなんですか? お願いします。これが最後になるかもしれないんです。お願いします…」
「なんでダメなんですか? お願いします。これが最後になるかもしれないんです。お願いします…」
二人だけの競技会。二人だけの公式記録。
走り続ける廣瀬と、それを見守る松本。
二人だけの最後のレース。亜紀の自己ベスト、12秒91を記録。
二人はずっとこんな風に、手を取り合い、歩いていくものだと思っていました。
でも――
二人で迎える初めての夏休み。
無人島へ、二人きりの旅行へ行ったようでした。
ところが皮肉なことに、この旅行が若すぎる二人の悲劇の始まりとなったのです。
6話:夢島で倒れた亜紀。意識を失い救急車で運ばれる。
連れ出したサクは真から殴られる。
連れ出したサクは真から殴られる。
私にその知らせが届いたのは、新学期が始まる1週間前のこと。
廣瀬の病名は、白血病でした。
新学期が始まり、「どこの病院ですか?」と谷田部に聞くサク。
「ご家族の希望でそれはお知らせできませんが、廣瀬本人が、すぐに戻ってくるから大丈夫ですって言ってました」と谷田部。
「ご家族の希望でそれはお知らせできませんが、廣瀬本人が、すぐに戻ってくるから大丈夫ですって言ってました」と谷田部。
とっさの嘘でした。
サクと亜紀の両親の会話。
「亜紀ちゃんに会わせてください。俺できること何でもしますから」
「できることなんて簡単に言わないで!」
「白血病なんだ…君に何ができるんだ?」
「亜紀ちゃんに会わせてください。俺できること何でもしますから」
「できることなんて簡単に言わないで!」
「白血病なんだ…君に何ができるんだ?」
このまま続くと思っていた幸せは、突然音を立てて崩れ、松本は自分を責め始めました。
気丈な廣瀬もまた、不安を隠せないようになっていました。
そんな二人に私が言えることは…
「学校ぐらい出なさいよ」
「ここでグチグチ泣くことぐらいかもね、あなたにできることは」
「廣瀬の前でもそうしてるつもり?」
「ここでグチグチ泣くことぐらいかもね、あなたにできることは」
「廣瀬の前でもそうしてるつもり?」
1987年当時、急性白血病は不治の病と考えられており、
本当のところ、私自身も何をすべきか明確な答えを持てないでいました。
けれどそんな私を置き去りにするように、仲間の力を借りて、松本は廣瀬を支えていったのです。
サクが企画した「どすこいロミオとジュリエット」を、亜紀の病室で演じる大木・ボウズ・智世。
亜紀の父の許可が出て、1ヶ月ぶりに再会した二人。
「サクちゃんって呼んで」「サクちゃん」
「もう一回…」「サク…サクちゃん…サクちゃん…」
亜紀の父の許可が出て、1ヶ月ぶりに再会した二人。
「サクちゃんって呼んで」「サクちゃん」
「もう一回…」「サク…サクちゃん…サクちゃん…」
二人は生きているという事実を、そして再会の喜びを、
お互いのぬくもりを感じ合うことで、確かめ合っていったようです。
でも――
7話:「私、白血病なんだって」
サクを騙して、自分の病名を知った亜紀。
サクを騙して、自分の病名を知った亜紀。
そしてそんな時――
1日だけ外泊許可が出て、久しぶりに登校する亜紀。
廣瀬が、学校に戻ってきたのです。
「午後からサボらない? 頼むから、俺の前で無理しないでよ」
たった1日の外泊許可。
午後の授業をサボった二人がどのように過ごしたのか、私は知りません。
でもその裏側で、廣瀬は迫り来る死の恐怖に、押し潰されそうになっていたのです。
同じ白血病の真島の死を知り、悲観的になった亜紀は夜の海へと入水。
「どうせ死ぬんだったら、なんで辛い治療を受けなきゃいけないの?」
「俺は廣瀬亜紀を信じる。だから絶対裏切るなよ!」
「どうせ死ぬんだったら、なんで辛い治療を受けなきゃいけないの?」
「俺は廣瀬亜紀を信じる。だから絶対裏切るなよ!」
白血病という名の、絶望。
それを救ったのは松本でした。
二人はまだ希望を捨てようとはしませんでした。
8話:抗がん剤の副作用で、亜紀の髪が抜け始める。
しかし病魔は確実に廣瀬の身体を蝕み、廣瀬はオーストラリアへの修学旅行を諦めました。
自分の無力さを痛感した松本は、自分に苛立ち、動揺を隠しきれず――
「今日死ぬかもしれないんだよ! 白血病なんだよ」
大木たちにやるせない怒りをぶつけるサク。
大木たちにやるせない怒りをぶつけるサク。
廣瀬の回復を、必死で信じようとしていた松本。
そして出会ったウルルの空。
1枚だけ撮った写真は、きっと廣瀬に見せるつもりだったのでしょう。
けれど――
廣瀬もまた、松本を想うがゆえに別れを決意しました。
「もう来ないでください。さようなら、サクちゃん」
別れを告げる亜紀のテープ。
別れを告げる亜紀のテープ。
「先生、俺、亜紀に何かできることって…」
「わからないな。廣瀬が松本に求めてるものなんて、あなたたちにしか」
「わからないな。廣瀬が松本に求めてるものなんて、あなたたちにしか」
本心でした。
「じゃあ、結婚して。ここに名前書いて。俺を幸せにして…」
サクは亜紀にプロポーズ。そしてビニール越しにキスを…。
サクは亜紀にプロポーズ。そしてビニール越しにキスを…。
形だけの結婚。
それでも廣瀬に、不器用な愛情を表現した松本。
廣瀬はその優しさに応えようと、そして松本と生きた証を残そうとしたのです。
9話:写真館で結婚写真を撮影。ウェディング姿の亜紀。幸せそうな二人…。
本当にきれいな二人でした。
病室から見えなかった空に、微笑んだ廣瀬。
久しぶりに見せた笑顔。
この日をきっかけに、松本は空の写真を撮り続けたのでした。
でも、燃えるような夕焼けの日、廣瀬亜紀の容態が急変しました。
「お母さん、手握って。このまま目、覚めなくなる気がする」
私が二人のためにできることは、テープを渡すくらいしか、ありませんでした。
「やっとアボリジニの本、読み終えました」
「アボリジニの世界では、この世にあるすべてのものに、理由が存在するの」
「私の病気にも、理由があるはずよ」
「アボリジニの世界では、この世にあるすべてのものに、理由が存在するの」
「私の病気にも、理由があるはずよ」
廣瀬はもう、自分が死ぬことから目を背けられなくなっていたようです。
「サクちゃん、生きてるってどういうことかな。死ぬってどういうことかな…。
たまに、生きてるのか死んでるのか、わからなくなる」
髪が抜け落ち、スキンヘッドになった亜紀。
「キスでもしませんか?」 ビニール越しのキス…
「世界で一番青い空が見たい」 亜紀の最後の願い。
たまに、生きてるのか死んでるのか、わからなくなる」
髪が抜け落ち、スキンヘッドになった亜紀。
「キスでもしませんか?」 ビニール越しのキス…
「世界で一番青い空が見たい」 亜紀の最後の願い。
10話:「私、何のために死ぬんでしょうか?」 谷田部に聞く亜紀。
「それは残された人、一人一人が決めることなんじゃないかな。その生き様を見て」
「廣瀬亜紀は、どんな風に生きてきた?」
「それは残された人、一人一人が決めることなんじゃないかな。その生き様を見て」
「廣瀬亜紀は、どんな風に生きてきた?」
亜紀を連れ出すべきか迷うサクは、谷田部に相談。
「亜紀を大切に思ってる人は、いっぱいいるわけで」
「迷うくらいなら、やめといた方がいいと思うよ」とサクに諭す谷田部。
「亜紀を大切に思ってる人は、いっぱいいるわけで」
「迷うくらいなら、やめといた方がいいと思うよ」とサクに諭す谷田部。
本音を言えば、私は二人でウルルに行けばいいと思っていました。
だけど、もう一度松本に考えて欲しかった。
もしかしたらこの事が、松本に大きな傷跡を残すかもしれなかったから。
空港への電車内。
「待ってたの。私はずっとサクのいない世界で、サクが生まれるのを待ってたのよ」
「待ってたの。私はずっとサクのいない世界で、サクが生まれるのを待ってたのよ」
空港で亜紀が倒れ、どうすることもできず抱きかかえるサク。
「サクちゃん、やっぱりあの世なんてない。天国なんてない。ここ、天国だもん…」
「助けてください…助けてください…」
「サクちゃん、やっぱりあの世なんてない。天国なんてない。ここ、天国だもん…」
「助けてください…助けてください…」
最終話:「ウルルに撒いて…サクちゃん…」
アキ夭折。
アキ夭折。
廣瀬の最後は、笑顔でした。
残されたテープを大木らに手渡す母・綾子。
谷田部にもテープが残されていた。
「いつでも誰に対しても変わらない先生の強さと優しさが、こうでありたいと願う私の理想でした」
谷田部にもテープが残されていた。
「いつでも誰に対しても変わらない先生の強さと優しさが、こうでありたいと願う私の理想でした」
私は強くも優しくもなかった。
本当に強かったのは、廣瀬亜紀でした。
廣瀬亜紀に出会えて私は幸せでした。
そして、残された松本は…。
亜紀の両親とウルルに行くが、遺骨を撒くことができず、サク絶叫。
「温度のない、重さもない、吹けば飛ぶような白い粉。それが亜紀だった」
「僕の好きな人だった――」
「温度のない、重さもない、吹けば飛ぶような白い粉。それが亜紀だった」
「僕の好きな人だった――」
谷田部との会話。
「ちゃんと送ってあげられた? 廣瀬…」
「これが亜紀なんだって思うとやっぱりできなくて。でも、ずっと持ってようかなって」
「俺、医者になろうかなって」
「ちゃんと送ってあげられた? 廣瀬…」
「これが亜紀なんだって思うとやっぱりできなくて。でも、ずっと持ってようかなって」
「俺、医者になろうかなって」
それからの松本は、二度と廣瀬のことを口にしませんでした。
私に本心を語ることもなくなりました。
亜紀のいない世界。
医師を目指し、ひたすら勉強に打ち込むサク…。
医師を目指し、ひたすら勉強に打ち込むサク…。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
1989年3月。
あれから1年以上が経ち、高校三年生になったサクや大木らの卒業式が行われていた。
谷田部が名前を呼び、卒業証書が配られていく。
大木龍之介、中川顕良…
そして「松本…」と言いかけたところで、サクが欠席していることに気づく。
サクを飛ばして、次の生徒の名前を呼ぶ谷田部。
そこに、松本の姿はありませんでした。
一人の教師として、私は彼をここに連れてくることができませんでした。
その頃サクは、亜紀のいない卒業式に耐えられないのか出席せず、駅から旅立とうとしていた。
谷田部のクラスの卒業証書がすべて配られ終わった。
次のクラスの配布に移る前に、谷田部が願いを申し出る。
すいません、最後にもう一人、名前を呼ばせてください。
「廣瀬亜紀」
亜紀の遺影を持った智世が、遺影を抱えたまま代理として壇上へ――
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
2004年。
グラウンドで亜紀の骨を撒き終えた後だろうか。
サクと谷田部が夜の学校を散策している。
取り壊される予定の校舎を前にして、サクが話し出す。
ここも変わるんですね。
校舎は校舎だよ。みんなが出て行くとこ。
何百人も見送ってるとね、時々、廣瀬ってほんとに死んだのかなって思うんだ。
ただ、卒業しただけじゃないかって…。
そう話しながら校門から出たところで、谷田部が突然大きな声を出す。
松本朔太郎!
卒業証書。
と言って、筒に入った卒業証書を手渡す谷田部。
これ、ずっと…。
はぁー、スッキリした。
と言い、満足そうな谷田部。
17年間待っていてくれた谷田部に、サクは感謝し頭を下げる。
帰り道。
「じゃあここで」と言い残し立ち去る谷田部に、サクが後ろから肩を叩く。
振り返った谷田部の頬に、サクの指が当たる。
なぁに?
家まで送りますよ。
いいよ、さっさと帰りなさい。
…はい。
それじゃ、先生。
じゃあね。
自転車に乗って走り去るサクを、暖かく見守る谷田部。
きっとこれからも、廣瀬は松本の中で生き続けるでしょう。
今度は、暖かな思い出として。
その人生が、終わる時まで――
谷田部が夜空を見上げると、星が光っていた。
それは亜紀のようでもあった。
エンディング〜スタッフロールが流れて特別編終わり。
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