朝9:00
未亡人の美可子(清水美砂)が、東京からスキーをしにやって来た山岳会のメンバーらを連れて、森の時計を訪れる。これからスキーをしに山に行くところだという。
だが富良野は低気圧の影響で、大荒れの天気になるという注意報が流れていた。
常連客の高松は、今日は山に行かない方がいいと美可子らに警告する。
そうしていると森の時計に連絡が入り、スキー場のリフトが止まったという。
美可子らは今日のスキーを仕方なく諦めることに。
吹雪は徐々に強まり、旭川空港も閉鎖になっていた。
10:15
美可子と山岳会のメンバーは、吹雪が強くならないうちにと、森の時計を後にして宿泊先のペンション滝川へと帰る。
近道のゴルフ場を通って帰ることにした。
一方、梓(長澤まさみ)は拓郎(二宮和也)から連絡することを拒否され、ひとり塞ぎこんでいた。
仕事中もうわの空で、また皿を割ってしまう。
今日は吹雪なので、もう帰っていいと勇吉(寺尾聰)は梓に告げる。
吹雪はますます強まっていた。
森の時計の前で除雪をしていた作業員も、いくらやっても無駄だと引き上げいく。
もう訪れる客もいないだろうと、勇吉はリリとミミも家に帰す。
12:30
勇吉が一人になった森の時計に、青年の登山客(徳重聡)が訪れる。
登山中に、吹雪が強まったため引き上げてきたという。
続けて梓の初恋の高校教師・松田(佐々木蔵之介)が森の時計にやってくる。
街で偶然、梓に会った際、うつろな様子が気になったという。
さらに横断歩道を渡ろうとした際、車に引かれかけたが、間一髪で助かったらしい。
(松田) あの子昔から、思い詰めたら、そこにはまりこんで出られなくなる子です。
なんか、そういう危険な感じを受けたんで…
お知らせだけした方がいいんじゃないかって…
松田はそう勇吉に報告すると、森の時計を後にする。
その頃、梓は車で美瑛へと向かっていた…。
13:05
勇吉は常連客の滝川が経営するペンション滝川に電話をし、登山客の男が泊まれる空き部屋があるかを聞く。
空き部屋はあったが、まだ美可子と山岳会のメンバーはペンションに到着していないという。
森の時計を後にしてから、すでに3時間近くが経過していた。
その時、山岳会のメンバー数人が、雪まみれになって森の時計を再び訪れる。
ペンションに帰ろうとしていたところ、地吹雪に巻き込まれて身動きができなくなり、引き返してきたのだった。
その途中で美可子ら他のメンバーとはぐれたという。
勇吉はとりあえず、引き返してきたメンバーを車でペンション滝川まで送っていく。
14:20
勇吉が森の時計に帰ってくると、留守番をしていた登山客の男が「もしかして涌井さんですか?」と尋ねる。
めぐみの葬式の時に、勇吉を見かけたという。
男は堂本と名乗り、かつて拓郎の家庭教師をしていたと告げる…。
海外出張が長かった勇吉とは面識はなかったが、堂本は拓郎が高校に入学した年から、めぐみの事故の直前まで家庭教師をしていたらしい。
(勇吉) 拓郎のことはどれくらいご存知ですか。
(堂本) 多少は知っているかもしれません。
あいつが暴走族だったことはご存知ですか。
はい。
どうしてあいつは暴走族なんかと関係を持つようになったんでしょう。
たぶん…学校でのイジメの問題がベースにあったと思います。
イジメに遭ってたんですか?
みたいです。
でも拓郎くんはそのことを、お母さんには絶対に言うまいとしてたみたいです。
数軒隣りに、彼をかわいがってくれていた岸神くんという青年がいました。
この青年には、僕も一、二度会ったことがあります。
実にスカっとした好青年でした。
ただし、後で知ったんですが、吉祥寺界隈の暴走族の頭だったようです。
この青年が、彼をイジメていた同級生たちを、ボコボコにしてしまったらしいんです。
おかげでイジメは止みましたが、拓郎くんは学校の中で、暴走族だという噂が立ちました。
本当は入ってなかったんですか?
最初はまったく関係なかったらしいです。
ところが噂が一人歩きして、彼は学校に呼び出されるんです。
相当厳しく言われたらしく、その晩彼は泣いていました。
本格的に族に入ったのは、そのことがあって間もなくです。
ところが、ほどなく彼を可愛がっていた、その岸神という青年が、暴走族同士の抗争で、死ぬんです。
彼にはこれがものすごいショックだったらしく、間もなく族から足を洗いました。
岸神君は生前、暴走族の仲間から死神と呼ばれてました。
ご存知ですか、拓郎くんの左腕に、刺青が彫られているのは。
…えぇ、知ってます。
彼はその刺青を、岸神君への追悼の気持ちで彫ったと言っていました。
ある日奥さんに僕は呼び出されて、知っているかと聞かれました。
拓郎くんの刺青のことです。
いつも明るい奥さんが、その日は真っ青な顔をしていました…。
15:15
そう話していると、ペンション滝川から森の時計に電話がかかってくる。
他の山岳会のメンバーはペンションに到着したものの、まだ美可子とリーダーの二人が辿り着いていないという。
外はすでに猛吹雪で、明らかに遭難だった。
勇吉は刑事の風間と山岳救助隊に連絡を入れる。
15:30
刑事の風間と山岳救助隊、そしてゴルフ場の責任者らが森の時計に集まり、地図を広げて捜索場所を打ち合わせていた。
その時勇吉にリリから電話が入る。
午前中に森の時計を後にした梓だが、まだ家に帰って来ないという。
携帯も繋がらなかった。
「どこか行きそうなところはないのか」と勇吉は聞くが、その自分の言葉で美瑛の拓郎のことが頭に浮かぶ。
いったんは電話を切った勇吉だが、再びリリに電話をし、皆空窯という窯場に電話してみてくれと告げる。もしかしたら梓はそこに行っているかもしれない、そこには自分の息子がいると…。
実際、梓は皆空窯の入り口のところまで来ていた。
だが車内から陶芸部屋を見つめるだけで、拓郎に会うことはできなかった。
拓郎の携帯に電話をしてみても、数日前からずっと電源は切れたままだった。
梓は失意の中、再び車を走らせる。
17:35
遭難した美可子とリーダーの救出に向かった山岳救助隊が、森の時計に帰ってくる。
二人は見つからず、猛吹雪で捜索もままならないという。
心配した滝川が森の時計にやってきて、美可子を助けて欲しいと救助隊らに懇願するが、この猛吹雪ではどうしようもない状態だった。
18:45
森の時計で状況を見守る勇吉と堂本。
中断していた拓郎の話を続ける。
(勇吉) 家内は見たんですか、あいつの刺青を。
(堂本) いや、怖くて見れないから、僕に見てくれって言いました。
それで拓郎君に、ある晩僕は、見せてくれと直接ぶつけてみたんです。
僕がそのことを知っているのに驚いて、彼は嫌だと拒絶しました。
だけど強引に、僕は見ました。
けものみたいに彼は泣き出しました。
事故の後も、あいつに会ったんですか。
何度も会いました。
あいつはどういう話をしたんですか。
お父さんが、北海道に行ってしまったという話です。
ここが、奥さんの故郷だったんですか?
はい、そうです。
彼は、お父さんがどれほどお母さんのことを愛していたかということを、思い知らされたと、泣きました。
亡くなった奥さんのことを想って、会社も地位も捨ててしまったあなたのことを、素敵だと言って彼は泣きました。
今はまだ許してもらえないけど、あなたに着いていくと、彼は泣きました…。
彼は今、こっちにいるんですか。
美瑛に、皆空窯という陶芸の窯場があります。
あいつはそこで、もう1年以上、陶芸の修行をしているみたいです。
皆空窯ですか。
はい。
お会いになったんですか。
会っていません。
実は私は、あいつがそこにいることを、つい最近まで知りませんでした。あいつもそのことを伏せていました。
どうして会ってやらないんです。
なぜでしょうね…。
堂本さん、もしあいつに会ったら、言ってやってくれませんか。
一度、私に…。
そう話しかけたところで電話が鳴る。ペンション滝川からだった。
行方不明になっていた美可子とリーダーが見つかったという。
ペンションのすぐ近くのところで、雪洞を掘ってもぐりこんでいたらしかった。
20:00
美可子たちの件は解決したものの、梓が行方がまだ分からないままだった。
一人になった勇吉の前にめぐみが現れる。
(めぐみ) すごい吹雪ね
怖いみたい
アズちゃんの行方がわからないの?
(勇吉) あぁ
心配ね
メグ…
堂本青年に、偶然今日会ったよ
知らない話を聞かせてもらった
拓郎の話も
それに、君の話も
あの青年も、もちろん君も、それからアズちゃんも
みんな本当に、心の底から、拓郎のことを考えてくれてる
なのに俺だけが、あいつを拒否してる
父親のくせに、なんてことだ…
電話が鳴ると刑事の風間からだった。勇吉は梓が行方不明になっていることを告げる。
もしかしたら美瑛に行ったかもしれないと…。
警察が富良野から美瑛への山道を捜索していると、雪に埋もれかかった一台の車を見つける。
中には人がいた。
急いで雪をかいてドアを開けると、そこにはリストカットして腕から血を流した梓が、意識を失って倒れていた…。
第8話終わり。
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