「優しい時間」1話放送直前の1月9日に、
「親子の絆を見つめて〜作家・倉本聰の挑戦〜」という番組が放送されました。以下はそのまとめです。
フジ系列 1/9(日) PM14:00〜14:55放送
■ 「優しい時間」紹介
まずは「優しい時間」のダイジェスト映像と簡単な紹介。
「人と人の絆、親と子の絆」がテーマ。
■ 「森の時計」建築
2004年6月、富良野の森の中で喫茶店「森の時計」の建築が始まる。
倉本氏のスケッチを元に造られ、ドラマのイメージに合わせて細部にまでこだわった。
特に大切にしたのは自然との調和。
大きな窓からは森の変化が楽しめる。
手作り感溢れる店内のインテリアもすべて倉本氏のセレクション。
■ 「北の国から」のルーツ
富良野を舞台にした倉本氏の代表作「北の国から」の着想の元になったのは、一軒の廃屋。
厳しい自然に屈したからか、家を遺して富良野を離れた家族。その家にはひとつの生活の痕跡があった。
この廃屋をヒントに、自分が富良野に移り住んで得た体験を盛り込んで「北の国から」が誕生した。
(五郎が廃屋に帰ってきて建て直し、自然の中でたくましく生きていくというストーリー)
■ 麓郷(ろくごう)の森
「北の国から」で五郎が建てたいくつかの家や、石の家、純と結の家などが、観光スポットとして残されている。
それが観光客を呼び込み、地元の人々の働く場所にもなっている。
その影響で富良野は5年前に過疎指定地域から外された。
今後さらに廃材を元に家を増やし、「純と結の家」のある一帯に「拾ってきた町」を誕生させる予定。
■ 富良野塾
脚本家と役者を養成するため、1984年に設立された倉本氏の私塾。
毎年約20人が入塾し倉本氏の講義を受ける。
授業料は一切なし。塾生は農業の手伝いなどをしながら生活費をまかなう。
農作業をやったことのない都会っ子も数ヶ月すると様になってくるという。
■ 富良野塾生との付き合い
倉本『意図したわけではないが、富良野塾を作らなかったら老け果てていると思う。
後進を育てるのはしんどいことだが、僕の中に生き甲斐ができた』。
■ 富良野塾OBが「優しい時間」に出演
2004年9月18日。富良野塾OB役者の本読み。
何人かの塾生OBが「森の時計」常連客役などでレギュラー出演するが、台本を読み込んでない塾生に倉本先生の叱咤が飛ぶ。
『やるまえにねぇ、いい加減な態度で本読むなよ。
キチンと作ってこいよ。なめるんじゃないよ! 俺たち一生懸命全部やってんだよ。それに出ようってのにねぇ、そんな態度で出られると思うかっ!』
倉本氏が育ててきた舞台役者だが、これほど大きい役でレギュラー出演するのは始めて。
『演技がまだ未完成なのに、みんな出たがるんですよ。未完成の時に出ちゃったら、恥かいてそこで終わりになるって僕は言ってるんです。そこが心配』
■ 「優しい時間」顔合わせ・本読み
2004年9月23日。渋谷。
メインキャストとスタッフが集まり、顔合わせを兼ねた本読みが行われる。
本読みはドラマの設計図であるシナリオが立体的に立ち上がるかどうかを確認する作業。
「拓郎くん(二宮和也)はとってもいい」と倉本氏。
■ 「優しい時間」クランクイン
2004年10月クランクイン。9割が富良野で撮影されることになる。
拓郎を演じるのは嵐のメンバーの中でも演技派で知られる二宮和也。
二宮和也『倉本先生の印象は怖いんですよ。でも先生を見た時に”おぉ本物だぁ”って思って。
けっこうお話しなさる方なんだなって。聰ちゃん、ニノちゃんの仲でこれからやっていきますよ』
拓郎の恋人・梓(あずさ)を演じるのは、映画「世界の中心で、愛をさけぶ」でヒロインを演じた長澤まさみ。
長澤まさみ『初めからすごく優しい方でした。優しい先生ですね』
亡き妻・めぐみ役は大竹しのぶ。勇吉の思い出の中に生き続け、幻として登場する。
大竹しのぶ『余計なものはあまり考えなくて、そのセリフを言ってれば、自然に優しい顔になれるし、哀しくもなるっていう脚本なので、難しくないですね』
■ 倉本氏のキャラクター作り
倉本氏はひとつのドラマを書くにあたって「根」「幹」「葉」の3冊のノートを準備する。
ストーリーには登場しないが、人物作りで最も重要になるのが「根」。この根っこ作りに労力の半分を割き、詳細な履歴書を作ったりする。
なぜ「根」を重視するのか。それは毎日森を見ていて思うのは、木が倒れないのは根がしっかりしているからだと言う。
そして登場人物の人生を一本の木で表す。
「勇吉の木」は妻・めぐみの死によって折れるが、富良野に移り住んだ後、折れた木の上に新しい人生が芽吹き始める…。
■ 倉本脚本の特徴
倉本脚本は、セリフとセリフの間に「間」が多いのが特徴。
倉本『役者が次の言葉を探す時間。今言った言葉を反省する時間。その時間で「間」ができる』。
■ 倉本氏と父の絆
倉本氏の父は出版社を経営する俳人でもあったが、終戦後に事業は傾いて、裕福だった暮らしは一変。
借金を抱えた父は倉本氏が17歳の時に死去。父との時間はその時のまま止まっている――。
「北の国から」は当初、純の目線でドラマを書いたそうだが、
「優しい時間」では父・勇吉を見守る拓郎の目線が親子の絆を取り戻す鍵になる。
親子は生まれながらに絆を持つわけではない。
互いにぶつかり合いながら、通い合う何かを見つけていく――。