「優しい時間」シナリオ本 (SCENARIO 2005)
倉本聰 著
[
2005年3月6日発売 理論社 ¥1575]
ISBN:4652077580
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倉本氏の脚本をそのまま(?)収録した「優しい時間」シナリオ本。
基本的にオンエアはこのシナリオ本に忠実ではあるものの、
オンエアではカットされていたシーンなどもシナリオ本には収録されています。それをまとめてみました。
茶色の部分がオンエアにはないシーンやセリフです。
厳密に調べるともっとありますが、わかりやすいところを集めました。
個人的に重要だと思えたり面白かったシーンには
★マークをつけています。
■1話「雪虫」
p.22-23
★ [中盤] 勇吉が水谷の妻の病状を聞くため病院に行っている間、「森の時計」のテラスで雪虫をつぶしてしまった少女が泣いてしまう。その少女をミミがなぐさめる。
■2話「拓郎」
p.35
[序盤] 拓郎からもらってきたお皿を、梓が自宅で姉のリリに自慢げに見せる。
そのシーンでリリは勇吉の晩ごはんの重箱を作っていた。
p.37
[序盤] 梓が持参したお皿がカレーに合うかどうかの議論が終わった後、
ミミは夜食にと重箱を勇吉に差し出す。自分も準備していたリリは先を越される。
p.57
[終盤] 新婚カップルが仲直りして帰った後、
リリは勇吉に今朝作った夜食の重箱を差し出す。
シナリオ本の2話はミミとリリが競い合うように勇吉に夜食を作って持ってきます。
リリはまだ分かるとしても、ミミはあまり家庭的なイメージがないのでその動機がちょっと分かりづらい気もしました。
単なる感謝の表れと考えていいんでしょうか…?
■3話「初雪」
p.63
[序盤] 森の時計を訪れた梓の初恋の教師・松田。買い物に行く梓に
「逃げなくたっていいじゃないか」「ずい分背が伸びたね」と話しかける。
少し馴れ馴れしくて、梓の気持ちを考えてない松田の性格が協調されていると思います。これが終盤の勇吉に諭される展開へと繋がっていくのでしょう。
p.70
[中盤] 数年前の回想シーン。勇吉に会いに北時計を訪れた拓郎。
「息子さんなの?」「拓郎くんなのね」と朋子が声をかける。
このセリフから、朋子と拓郎はこの時が初対面だったことが分かりますね。拓郎が皆空窯で修行を始めたのはこの後のことです。
p.72
[中盤]
朝。梓が拓郎の家に持って行く料理を作り、タッパーに詰める。
p.78
[中盤] 梓は拓郎に遊びに行きたいと電話をするが、今日は師匠の息子が帰ってくるからダメだと言われる。
梓は今朝作った料理をゴミ箱に捨てる。
せっかく料理を作ったのに…という梓の失望感が伝わってきます。
■4話「根雪」
4話はオンエアとほぼ同じ?でした。
■5話「記憶」
p.113-114
[冒頭]
リリのアパートで、なかなか帰ってこない梓を待つリリとミミ。ミミは「男だね」などと会話。
p.114
[冒頭] 梓が帰ってこないという連絡をリリから受けて、
心配した勇吉は朋子に電話する。
p.116-117
[冒頭] 深夜になって家に帰ってきた梓。
ミミが梓を軽くしかる。
オンエアではリリ一人でしたが、シナリオ本では心配した(?)ミミがリリ宅にきて一緒に梓の帰りを待っています。
p.121
[序盤] 森の時計の訪問客が熊に会ったという話をした後に、
常連客の高松が北海道のカモの話をするが、まったくウケない。
p.132
★ [中盤] 音成の通夜の後、森の時計に集まった常連客たち。美可子との見合い話を勇吉が断ると、
「マスター(音成に)何もしてやれなかったじゃない。借金もはっきり断ったんでしょう」と常連客の長沢がきつい一言…。
■6話「聖夜」
p.140
[序盤] 梓に頼まれてシルバーアクセサリーを森の時計に持参した美可子。梓は雪の結晶のものをペアで購入。
購入金額は1つ6000円だった。
p.154-155
★ [中盤] 夫の件でリリを脅迫した男を外に連れ出した刑事の風間。
風間は男を山奥に放置してきたと勇吉に報告する。
オンエアでは描かれなかたシーンですが、山奥に放置とは…厳しいですね(笑)。
「ああいうワルには厳しい自然が一番効く」と風間。
■7話「息子」
p.163
[序盤] 老紳士(北島三郎)が森の時計を訪れた直後、
仕事中に携帯でメールを確認する梓をミミとリリが叱る。
p.170
★ [中盤] 森の時計を訪れた美可子。初詣(富良野神社)の話の前に、
「街にいた時の1年とここで過ごしての1年とどちらが速いか」と美可子が聞く。勇吉は森で過ごす1年の方が速いと答える。
森の時計の方が速く進む理由を「もったいなく感じるから」と勇吉は答えています。それだけ贅沢な時間ということでしょうか…?
p.172
[中盤] 息子を訪ねて春日町にやってきた老婆。だが新聞紙が詰まっていて不在だった。
老婆は隣の住人に行き先を尋ねたりする。
p.173
[中盤] 拓郎のために新人陶芸展の案内を持ってきた六介。
「人のやらない努力をしなきゃあ人より上に出ることなんて出来ない」と拓郎を鼓舞する。
p.178-179
[終盤] 老紳士と老婆が森の時計を去った後、
「今晩、みんなで初詣でも行くか?」と勇吉が呼びかける。
p.179
[終盤] 閉店後、一人で森の時計にやってきた勇吉の元同僚。
勇吉はコーヒーを淹れようとするが、元同僚は「すぐ夕食に戻らなくちゃならない」と忙しそうに言う。(オンエアでは勇吉はコーヒーを淹れている)
p.183
[終盤] 深夜、初詣を済ませた勇吉は皆空窯へと車を走らせる。
車内のラジオでは紅白歌合戦が流れていた。
■8話「吹雪」
p.200
[中盤] 猛吹雪の日、梓が帰ってこないことを心配したリリは勇吉に電話し、皆空窯に行っているかもしれないと聞く。リリは104で番号を調べて皆空窯に電話する。そこで拓郎の携帯番号を聞いてかけてみるが、電源が切れていて繋がらない。
p.205
[終盤] 勇吉と元家庭教師・堂本との会話の終盤。勇吉は「拓郎に逢ってやっていただけませんか」と言い「一度話しにここへ来ないかと言ってやってください」などと堂本に願い出る。(オンエアではもっと遠慮がちでそこまでは切り出していない)
■9話「傷痕」
p.209
★ [冒頭] 梓が行方不明になった猛吹雪の夜、
ミミはリリの家に来て一緒に梓の帰りを待っていた。「男でまわりが見えなくなってる。そんな若い頃に私も帰りたい」などとミミが話す。
p.212
[序盤] 病院で目覚めた梓とナース(小泉今日子)の会話。
「あのままもう1時間発見が遅れたらあなたそのまま死んでたわ」とナース。手首からの出血よりも凍死の危険性があった。
p.214
[序盤] 梓が入院したという連絡を受けていた勇吉。翌朝、森の時計で
ミミから「あの子、自殺する気だったみたいです」と聞く。(オンエアでは
リリから同様の報告を受ける)
p.214-215
[中盤] 朝、森の時計で常連客たちが会話。
そこにペンションオーナーの滝川がやって来て発見時の美可子の服装について話す。さらに常連客が二人やってきて梓が凍死寸前だったなどの話をする。
p.217-218
★ [中盤] 梓を見舞いに病院を訪れた勇吉。偶然、そこに美可子も訪れる。
病室を後にした二人は車内で会話。勇吉はなぜリストカットしたことを知っているのか美可子に聞いたりする。「繊細で脆くて昔の自分を見てるみたい」と美可子。
このシーンの映像は前回の予告では流れていたものの、オンエアでは時間の都合(?)でカットされていました。
p.222
[中盤] 皆空窯を訪れた元家庭教師の堂本。
「逢いに来るように言って欲しいと言われた」などと勇吉が会いたがっていることを告げる。それを聞いた拓郎は喜びを隠せない。
8話ラスト(p.205)と9話のこのシーンは、シナリオとオンエアはちょっと違います。オンエアでは勇吉は「逢いに来て欲しい」とまでは言っていません。
ここはオンエアの方が繊細でいいですね。
p.231
★ [終盤] ファミレスで久しぶりに再会した拓郎と梓。拓郎が死神の刺青を見せた後、
梓が「取れないの?」と聞き、拓郎は「文房具屋行って刺青の消える消しゴムがあるか聞いてみてくれ」と答える。
p.232
[終盤] 森の時計での勇吉とめぐみの会話。赤ちゃんの肌のきれいさを語った後で、
「俺たちも昔はああだったのかな」と少し話が続く。
■10話「刺青」
p.236
[序盤] 滝川と美可子の愛人関係について話をする常連客たち。
美可子が遭難した猛吹雪(8話)の日の滝川の慌てぶりに納得がいく面々。
p.241-242
★ [序盤] 喫茶店での勇吉と六介の会話。
六介は「あんたに父親の資格はないな」とか「今やあいつは俺の息子だ」などと言って勇吉の父親としての態度を非難する。
このシーン、シナリオ本ではオンエアよりも厳しいことを六介さんは勇吉に言っています。ちょっと言い過ぎな気もするので個人的にはオンエアの方がいいです。
p.244
★ [中盤] 北時計に帰ってきた勇吉と朋子の会話。めぐみの事故でニューヨークから駆けつけた勇吉に、刺青を見せた拓郎。シナリオ本ではその時の様子を
「狂ったようにあいつは泣きわめき、それからヒクヒクしゃくりあげて笑い出し、いきなり袖をまくって見せました」と勇吉は説明。
なんか強烈ですね^^; その時の勇吉のショックが分かる気もします。
(オンエアでは拓郎が泣いたとか笑ったなどの説明はありません)
p.247
[中盤] 愛人騒動の美可子が森の時計を訪れる。滝川の話をした後、
銀細工の話になり、「銀細工をこの店で売ってくださらない?」と美可子。
■最終話「雪解け」
p.259
[冒頭] 拓郎から刺青を焼いたという話を病院で聞き家に帰ってきた後、
六介が妻・洋子に火傷の状態や拓郎の動機を説明する。
p.262
[序盤] 森の時計に呼び出した娘・マヤがすぐに出て行った後、
ミミは「淋しい?」「泣いてもいいよ」と立石に話しかける。
p.263
[序盤] 立石とマヤの騒動の後、
ホテルから回された20人ほどの団体客が「森の時計」に昼食のカレーを食べに来る。
p.266
[中盤] 六介は朋子に拓郎のことを相談に行った際、
「引出し黒」という陶芸の手法を説明。
p.271
★ [中盤] 立石が結婚式で花婿を殴った後、
相手が「ありがとうお父さん」と好意的に受け止めてきたことを勇吉に話す。
オンエアでは「殴ってやった」というところで話が終わりましたが、こういうオチがあったんですね。
どこまでも自分の真意が伝わらなかったということでしょうか。
p.280
★ [終盤] 出展作を完成させて「森の時計」を訪れた拓郎。入り口で挨拶したリリは、拓郎が店内に入って行った後、
拓郎が来たことを携帯で梓に連絡する。
この説明から、梓は偶然ではなくてリリから連絡を受けて森の時計にやって来たことが分かります。
二人の関係がまたすぐ壊れてしまわないか心配してやってきたんでしょうか…?
p.283
★ [終盤] 森の時計での拓郎と勇吉の会話。「一人で淋しくないですか?」と拓郎に問われて
「父さんの人生は、全部利害で生きて来た気がするんだ」などの台詞。
クライマックスの会話シーンはほぼオンエアと同じですが、上記のような部分的に使われてない台詞もありました。
常連客との利害のない関係に救われて、今の自分があるということが分かりますね。