人間とは何か

あなたのその教説ってのは、あまりにもひどすぎますよ
人を鼓舞し、励まし、高めるものが、まったくない
人間から栄光を奪い、誇りを奪い、ヒロイズムを奪い、
一切の人間的信用、称賛ってものを否定してしまおうってんですからね
単に機械に貶めてしまうばかりか、その機械に対する制御力ってものまで認めないんですからね

それじゃ、まるで人間はコーヒー挽きですよ
おまけにコーヒーをいれたり、クランクをまわしたりすることすら許されん
許されるのは、ただその人間の出来次第によって、あるいは粗く、あるいは細かくって具合に、挽き加減の調整をするだけの話
あとはすべて外からの力がやってるんですから
(マーク・トウェイン「人間とは何か」)

( ´~`)ノハーイ
トムソーヤの冒険で有名なアメリカの作家
マーク・トウェイン(1835-1910)が
人生に幻滅したのか
晩年に極めて悲観的な作品を残しています
(o゜~゜)oホエ?
そのひとつが
「人間とは何か」(1906)です
(゜~゜)
これは悲観主義者の老人と
楽観主義者の青年が
人間とは何かという根本問題について
ひたすら対話をするという変わった内容です
(o゜~゜)o
老人は
「人間は自己中心の欲望で動く機械にすぎない」
などの悲観的なことを主張し
それに納得できない青年は反論するのですが
老人はさまざまな具体例を出して証明していきます
(ノ゜~゜)ノ
当初は猛反発していた青年も
次第に納得せざるを得なくなり
老人の完全勝利に終わります
(*^~^*)ノハーイ
つまり正義VS悪魔という
物語によくある構造にあって
この話は悪魔が勝ってしまうのです
(´~`)アハハ
それはこの老人が
悲観主義者となった
マーク・トウェインの分身であるからです
(゜~゜)
ところで人生や人間というものを
楽観的に肯定しようとする言説は
この世に溢れていますが
悲観的に否定するような言説は
ほとんど見かけません
(o゜~゜)oホエ?
それはこの世には
楽観的な人の方が多いからです
(゜~゜)
なんで全否定するような言説は
支持されないので
世に出づらいのです
(゜~゜)
マーク・トウェインは世界的な作家でありながら
この本も当初は
匿名で250部しか出版されなかったそうです
(´~`)アハハ
ひどい話です
(ノд-。)クスン
楽観主義者が
生の素晴らしさを説きたがるように
悲観主義者もまた
生きることの空虚さ
人間のくだらなさを
説いてみたくなるのです
(゜~゜)
それを実現したのがこの本であり
そこには悲観主義者のロマンがあります
(*^~^*)ノハーイ


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□ふみっこメモ
この本は全7章のうちに、5つのテーマが分散しています

1章.人間即機械・人間の価値
2章.人間唯一の衝動
3章.その例証
4章.訓練、教育
5章.再説人間機械論
6章.本能と思想
7章.結論

テーマ1:人間機械論
人間には自発性や主体性がなく、外部の影響に支配されて動く自動機械に過ぎない(=決定論)
→1章、4章前半、5章後半

テーマ2:自己中心の欲望で動く
人間には利他心や自己犠牲はなく、すべて自己の満足を求めて行動を起こす
→2章、3章、4章後半

テーマ3:心の独立性
心とは、自分の考えや命令とは無関係に勝手に動く
→5章前半

テーマ4:人間=動物論
人間と同じように動物も思考するので、人間に優位性はない
→6章前半

テーマ5:精神的価値>物質的価値
人間は精神の満足を求めて物やお金を欲しがるのであり、この世に物質的価値はない
→6章後半
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(1:人間機械論)

そうさ、人間即機械――人間もまた非人格的な機関にすぎん
人間が何かってことは、すべてそのつくりと、そしてまた、
遺伝性、生息地、交際関係等々、その上にもたらされる外的力の結果なんだな
つまり、外的諸力によって動かされ、導かれ、そして強制的に左右されるわけだよ、完全にね
みずから創り出すものなんて、なんにもない
考えること一つにしてからだな
(p.13)

(2:自己中心の欲望で動く)

ゆりかごから墓場まで、人間って奴の行動ってのは、
終始一貫、絶対にこの唯一最大の動機――
すなわち、まず自分自身の安心感、心の慰めを求めるという以外には、絶対にありえんのだな

人間は自己犠牲なんてことを口にする
だが、そんなものは存在もしなければ、かつて存在したこともない

たしかに、人間、他人のために毎日自己犠牲はやってる
だが、それもまず第一には自分のためなんだよ
なによりもまずその行為は、自分を満足させるものでなくちゃならん
その他の効果ってのは、すべてその次の話なんだな
(p.29、p.37)

(3:心の独立性)

心って奴はな、人間からは独立してるんだよ
心を支配するなんて、そんなことできるはずがない
心って奴は、自分の好き勝手で自由に動くものなんだな

君たちの意向などお構いなしに、なにを考えつくかわからんし、
また君たちの考えなどお構いなしに考えつづけることもする
そのかわりには、投げ出すのもまた勝手だな
君たちの意向などとは完全にお構いなしになんだ
つまり、完全に人間からは独立している
(p.106)

(5:精神的価値>物質的価値)

君たちの中の主人って奴はな、いかなる場合にだって、まずその精神の満足を求める
それだけなんだ
その他のものを求めたりなんかしない
だいたいその他のものなんて、一切興味がない

金ってのは、シンボルにすぎん
ただ精神的欲望を、金って目に見える具体物で代表してるにすぎんのだな
君たちの求めるいわゆる物質って奴は、要するにすべてシンボルにすぎん
なにもその物自体を求めてるわけじゃない

君の欲しかったのは、帽子そのものじゃない
ただそれが意味するもの――言葉をかえて言えば、
君の心を喜ばせ、満足させてくれるあるものってわけだったんだな
だから、その意味が消えれば、帽子の価値もすべてなくなっちまう
物質的価値なんてものはない
あるのは、ただ精神的価値だけなんだ
それを獲っちまえば、たちまち無価値に転落しちまう
(p.150-151)

(結論)

この人類って奴、とにかく幸福で、得意で、感謝好き
いわばどうしようもないほど天下太平なんだよ
人類ってのは、そんなにも楽天家なんかねえ?
これだけの不幸に耐えながら、しかもなお幸福だってことを考えるとだな、
いくらわしが彼らの前に、冷酷無残な事実を並べたところで、
果たして彼らのおめでたさ加減を奪えるものかどうか、怪しいもんだ
(p.174)

マーク・トウェイン晩年の悲観的な作品

「人間とは何か」 (原書 What is Man? 1906年刊)
「不思議な少年」 (原書 Mysterious Stranger 1916年刊)

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