パパラギ(文明人)の世界

---私の・あなたの---
私たちには「ラウ」という言葉がある
「私の」という意味であり、「あなたの」という意味でもある
ふたつはほとんどひとつである
だがパパラギの言葉では、「私の」と「あなたの」は大きく違うのだ

「私の」は、ただ私ひとり、私だけの物である
「あなたの」は、ただあなたひとり、あなただけの物である
だからパパラギは、自分の小屋のまわりにある物は、すべて私の物だと言う

それが果物だろうと、木だろうと、水だろうと、森だろうと、
たとえひと握りの土であろうと、いつも誰かがそばに立っていて言う
「これは私の物だ。わかったか。私の物に手を出すな」

百枚のむしろを持っていても、持たないものに一枚もやろうとしない
それどころか、持っていないことをその人のせいにしたりする

小屋の天井まで食べ物があって、彼と家族が一年かけても食べ切れないほどでも、
食べ物がなく、飢えて青ざめた人を探そうとはしない
たくさんのパパラギが飢えて青ざめてそこにいるのに

パパラギは葉も実も落としたくない椰子の木のようだ
「これは私の物だ。取っちゃいけない!食べちゃいけない!」

椰子は自然に実を落として新しい実を結ぶ
椰子はパパラギよりずっとかしこいね

そしてパパラギの心には恐怖を植えつけた
「私の物」をなくしはしないかという不安を
このためにパパラギはぐっすり眠れない

もっと重い罰は、「私の物」を持っている人と持っていない人の戦いだ
この戦いがたくさんの人を苦しめている


---物---
パパラギが髪をとかすための道具を作ると、
次にその道具を入れる皮の袋を作る
袋のための小さな箱を作る
小さな箱を入れる大きな箱を作る
パパラギは何でも袋や箱に入れる
箱、箱、箱、箱
ひとつでじゅうぶんなのに、たくさんの物を作る

パパラギの国には、自分の頭に火の筒を当てて、
自分を殺してしまう人たちがいる
ほんとうの話だよ
物がないなら死んだほうがましだ・・・この人たちはそう考える

食事の皿のほかはなにも持っていなくても、
私たちならだれでも、歌を歌って笑顔でいられるのに

物は毒を塗った矢だ
私たちは自然の大きな力が作った物のほかは、
物などほとんど必要ではないことを忘れてはいけない


---お金---
丸い金属と強い紙
彼らが「お金」と呼んでいるもの
これがパパラギの神さまだ

あの国ではお金なしには生きてゆけない
日の出から日の入りまで
お金がなければ、飢えも渇きもしずめることができない
夜になっても寝るためのむしろがない

からだを大地に埋めるにも、
思い出のためにその上に置く大きな石にも、
お金がかかるのだ

私はたったひとつだけ、
パパラギの国でもお金を取られないことを見つけた
空気を吸うこと

だが、それも彼らが忘れているだけだと思う
この話をパパラギにきかれたら、
息をするにもすぐに丸い金属と強い紙を取ると言いだすだろう
なぜなら、彼らは一日じゅう、お金を取る方法を探しているのだから

お金は悪魔だ
お金にさわった者はその魔力のとりこになり、
それをほしがる者は、生きているかぎり、
力も喜びもお金のために捧げなければならない

私たちの島のやりかたは、そうではない
もてなしをしたからといって何かを要求したり
何かをしてやったから贈り物をほしがるような人間を
私たちは軽蔑する
このりっぱなならわしを大切にしよう

ひとりの人間がたくさん持っていて
そのほかの人々は何もない
というようなことを私たちは許さない
そのならわしを大切にしよう

そうすれば私たちは、となりのきょうだいが悲しがっているのを見て、うれしそうにしていられる、パパラギのような心にならずにすむのだ


---時間---
こんなパパラギがいた
死にそうな魚のように目をむいて、口をぱくぱくさせ
頭が破裂したみたいに赤くなったり青くなったり
手足をばたばたさせたりしていた

そのパパラギの使用人が、約束の時間よりほんの少しおくれて来たからだった
ほんの少しなのに、このパパラギにはとり返しのつかない損害だったのだ
「おまえは私の時間をいっぱい盗んだ
時間を大切にしないやつは生きている資格がない」
こう言って使用人を追い出してしまった

私は彼らに教えてやりたい
日の出から日の入りまで、ひとりの人間には使いきれないほど
たくさんの時間があることを


私はよく何歳かときかれた
そのたびに笑って「知りません」と答えた
そんな私を彼らはかわいそうだと考える
「自分の歳くらい知っているべきだ」と彼らは言った
私は黙って、心では「知らないほうがずっといいのに」と思っていた

何歳かということは、何回、月を見たかということだ
この考えはよろしくない
なぜなら、たいていの人間は死ぬまでに何回月を見るか、決められている
だから、数をかぞえてみて、もしたくさんの月を見ていたら
「私はもう死ぬんだ」と思う
するとどんな喜びも消え、彼はまもなくほんとうに死んでしまうだろう

(絵本 パパラギ―はじめて文明を見た南の島の酋長ツイアビが話したこと)

( ´~`)ノハーイ
私たちが暮らす文明社会には
当たり前といえる日常生活があります
(o゜~゜)oホエ?
たとえば
お金や私有制という概念があることで
持つ人と持たざる人がいたり
生きていくのに必ずお金が必要であったり
24時間365日という時間があったり
(゜~゜)
そんなものがない世界の住人が
私たちの社会を見たら
それは羨ましいものではなく
滑稽であるというのを実感できるのが
「パパラギ」という本です
(o゜~゜)oホエ?
これは1915年頃に
南の島の酋長がヨーロッパを旅して感じたことを
まとめたもので
1920年に出版されたものですが
それから100年近く経った今も
文明国は何も変わってないことに驚きます
(゜ロ゜)ギョエ!!
特に必要ないような物の生産と消費を
延々と繰り返したり
分刻みであくせくと時間に追われたり
自分の物と他人の物を区別して
自分の物を増やすために一生懸命になったり
お金がなければ生きていけなかったり
といった文明世界の日常風景が
異邦人の視点からすると
変なこと、異常なことになるわけです
(´~`)アハハ
すると私たちが当たり前だと思っている
お金や物が欲しいという欲求や
常に時間に追われる生活とは
一体何なのだ?という疑問が沸きます
(゜~゜)
どうやらそれは
文明に毒されることで生じた
思い込みの常識や欲求に過ぎないみたいです
(´~`)アァー
それが滑稽でバカらしいと気づいても
浮浪者にでもならない限り
今さら文明人をやめることもできません
(´~`)アァー
しかしみんなが当たり前だと思っている
この社会の常識が
当たり前でもありがたいものでもないことは
理解できます
(´~`)ノハーイ
そして異邦人の視点を通すことで
つまらないことと
大切なことの違いが
見えてきます
(´~`)ノハーイ


パパラギの本
「パパラギ」 1981年刊
「絵本 パパラギ」 2002年刊
「文庫 パパラギ」 2009年刊

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