Name:たー坊
| | 皆様こんにちは。たー坊です。 「アナザーストーリー」で、作品を書かせていただいてましたが、今回いっぱいになりましたので、新しく立ち上げさせて頂きました。 なにぶん、素人が「もし、朔と亜紀にこんな未来があったらいいな」という希望(妄想)を形にしただけなので、お見苦しい点は多々あるとは思いますが、お読み頂ければ嬉しいです。
よろしくお願いします。
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...2005/02/07(Mon) 16:15 ID:Qpt4Cv7A
Re: アナザーストーリー 2 Name:グーテンベルク
| | たー坊様へ こんばんは。グーテンベルクです。たー坊様の体調の回復をとても嬉しく思います。そして、ついにレス数300突破ですね。おめでとうございます。これからも楽しみにしておりますのでマイペースで頑張ってください。これからもよろしくお願いします。
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...2005/02/07(Mon) 18:04 ID:1EXDaGSk
Re: アナザーストーリー 2 Name:SATO
| | パート2突入おめでとうございます。 老婆心ながら、親スレに第一話再掲載とパート1のリンクを張ることをお勧めします。
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...2005/02/07(Mon) 18:17 ID:JTycUfhI
Re: アナザーストーリー 2 Name:北のおじさん
| | たー坊様。
お帰りなさい。ってところでしょうか。 決して不快な思いなどしていませんよ。 ただ、たー坊さんの書き込みが無いと体調の事などが心配で心配で。 復調したとの事で安心しました。 これからも心温まるストーリーをお願いします。 東京初デート、何処へ行ったのでしょうか? 続きが楽しみです。 ガンバレ!!たー坊さん。
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...2005/02/07(Mon) 22:43 ID:AUU4mXZw
Re: アナザーストーリー 2 Name:朔五郎
| | パート2突入おめでとうございます。 これからも楽しみにしております。
|
...2005/02/07(Mon) 22:45 ID:q8qqeiT2
Re: アナザーストーリー 2 Name:けん
| | 体調の回復しての復帰とスレ300突破おめでとうございます。これからも無理なさらずに、マイペースで執筆活動続けて下さい。今回の物語亜紀と朔の東京初デートでしたね。朔は、亜紀を何処に連れってったのでしょうか?楽しみです。
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...2005/02/07(Mon) 22:59 ID:ZrelRHK6
Re: アナザーストーリー 2 Name:ゴン41
| | たー坊様
「アナザーストリー2」立ち上げ、おめでとうございます。今後も体調優先でおねがいしますね。
二人の初デート、朔は何処に連れて行ったのでしょう?亜紀の喜ぶ空間。「空」?「絵本」関係? 楽しみです。
|
...2005/02/08(Tue) 01:48 ID:bkU4aywU
Re: アナザーストーリー 2 Name:Marc
| | たー坊様 完走&Part2開始ですね、それと体調良くなられて良かったです。 無理をしないで、楽しんでくださいね。 私も楽しみにしています〜
|
...2005/02/08(Tue) 08:19 ID:pTUWy4A2
Re: アナザーストーリー 2 Name:にわかマニア
| | たー坊様 Part2突入おめでとうございます。 これからも,ご無理をなさらず,体調第一でお願いいたします。
皆さん 次回作掲載まで,アナザー・ストーリー談議でつないでいきましょう。 ということで,アナザー・ストーリーの謎解きに挑戦です。2人の初デートの行き先はどこだったのでしょうか。 まず,サクの下宿はどこか。東京駅に迎えにいく回のストーリーでは,東京駅から1時間圏という設定になっていました。しかも,一旦,山手線に乗り換えていますから,中央線の沿線ではありません。 すると,山手線をターミナルとする私鉄で,郊外に延びている線の沿線ということになりますが,池袋(東武,西武),高田馬場(西武),新宿(京王,小田急),渋谷(東急)がこれに該当してきます。 さらに,初デート編で,ターミナル付近は地下区間あるいは地下鉄との相互乗り入れ区間となると,ある程度特定されてきます。そこで,これが隕石を誕生日にプレゼントしたグーテンベルク版だと,地下鉄区間でビルの中で,亜紀の喜びそうな場所があるのですが,依然として文系の本編では,どこなのか絞りきれません。絵本専門図書館が国会図書館の中にあるにはあるのですが,21世紀に入ってからの開設ですから,1990年代にはまだ存在していないので・・・ まあ,あれこれ想像をたくましくしながら,気長に待ちましょう。
|
...2005/02/08(Tue) 08:44 ID:s0/5BuLI
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | グーテンベルク様、お疲れ様です。 私の方こそ、「アナザー・ワールド」の続きを楽しみにしております。お互いにマイペースで体調優先で頑張りましょう。
SATO様、良きアドバイスして頂きまして、ありがとうございます。 次回、作品をUPするときにリンクを貼らせて頂こうかと思います。 これからもよろしくお願いします。
北のおじさん様、ご心配頂きましてありがとうございます。 実を申しますと、体調は未だ完璧というわけではございません。70%くらいでしょうか。 忙しいこともあり、当分の間はスローペースでのUPが続くかと思いますが、よろしくお願いします。
朔五郎様、お祝いのお言葉を頂きましてありがとうございます。 「世界の中心で、愛をさけぶ2」の続編を私も楽しみにしております。お互いにマイペースで頑張りましょう。
けん様、お忙しいにもかかわらず、目を通していただいてありがとうございます。 まだ、体長も完璧という訳ではないので、言われたとおりにマイペースで頑張ります。 よろしくお願いします。
ゴン41様、毎回のご感想ありがとうございます。 お言葉に甘えて、体長優先で頑張りますので、スローペースでのUPになると思いますが、ご理解を頂ければと思います。
Marc様、お久しぶりです。毎回楽しみにして頂けてるみたいで、私としても嬉しいです。 私自身、無理せずに、楽しむことを忘れずに頑張っていきますので、よろしくお願いします。
にわかマニア様、私の体調を気遣って頂きありがとうございます。 さて、盛り上げていただくのは大変ありがたいことなのですが、いきなり「謎解きをしよう」と仰られても困ります。なぜなら、私自身、謎とかをこれっぽっちも考えていないからです(苦笑)私は、一個人としての希望をこういった場をお借りして、書かせていただいてるだけなのですから。
|
...2005/02/08(Tue) 16:49 ID:VJnkOttQ
Re: アナザーストーリー 2 Name:にわかマニア
| | 失礼しました。 「行き先どこだろうね」という書き込みが寄せられていたので,どこか気になるねということをちょっとひねって表現しただけで,他意はなかったのですが,申し訳ありませんでした。
|
...2005/02/08(Tue) 17:19 ID:s0/5BuLI
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 早速のご返事ありがとうございます。 誤って頂くほどの事でもないのですが、具体的な書き込みでしたので、個人差はありますが、気になってしまったもので。 こちらこそ、申し訳ありません。
|
...2005/02/08(Tue) 18:16 ID:VJnkOttQ
Re: アナザーストーリー 2 Name:サイトのファン
| | たー坊さんへ 新スレ、おめでとうございます!! 何よりも、体調が戻られて本当にヨカッタです!! 無理せず、じっくり私達にサクと亜紀の物語を 届けて下さい。 皆様と同じでたー坊さんのストーリーの大ファン なので応援させて頂きます。 今後もヨロシクです!!
|
...2005/02/08(Tue) 22:40 ID:/5z1wWVg
Re: アナザーストーリー 2 Name:すばる
| | たー坊さん、レスの300突破と2の立ち上げ、おめでとうございます。これからもますますのご活躍を期待しております。
それにしてもこんなにたくさんのレスがあるとは。このアナザーストーリーを愛している方々がたくさんいらっしゃることを改めて感じました。
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...2005/02/08(Tue) 23:21 ID:w9.YEE/Q
Re: アナザーストーリー 2 Name:管理人
...2005/02/09(Wed) 00:35 ID:w5H1v.t2
Re: アナザーストーリー 2 Name:ボウズバン
| | たー坊様へ
いつも楽しく拝見させていただいております。2スレ目突入、おめでとうございます。
このアナザーストーリーでは、アキは骨髄移植をしたという設定でした。それで、たー坊様にひとつ確認していただきたいことがあります。 Part1で、だれかが朔とアキの子供について話しておりましたが、骨髄移植をした場合、子供はできません。いまストーリーh
|
...2005/02/10(Thu) 00:53 ID:3wqRNW2w
Re: アナザーストーリー 2 Name:ボウズバン
| | すみません、操作ミスで誤って送ってしまいました。なのでつづきを。 いまストーリーは東京編で、アキ、朔はまだ結婚すらしていないし、どこまで描かれるおつもりかわかりませんが、もしそこまでお書きになるのであれば、この事を忘れずにいていただけたら幸いです。
|
...2005/02/10(Thu) 01:01 ID:3wqRNW2w
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | サイトのファン様、ありがとうございます。 実を申しますと、体調は、まだ完璧ではございません。なので、お言葉に甘えさせていただき、当分は週に一話くらいのスローペースで書かせていただきたいと思います。 これからもよろしくお願いします。
すばる様、毎回お読みいただきましてありがとうございます。 おっしゃられるとおり、私ごときの拙いストーリーにお付き合いいただける方がいらっしゃる事は、大変うれしい事です。 これからもお読みいただければ幸いです。
管理人様、初めまして。たー坊と申します。 私ごときにストーリーを書かせていただける場所を提供して下さって感謝しております。また、ご迷惑もお掛けしているであろうとも思っております。 できる事なら、これからも書かせて頂きたく思います。何卒よろしくお願いします。 Part1のリンクを付けて下さいましてありがとうございました。
ボウズバン様、初めまして。たー坊です。 いつもお読み頂いてありがとうございます。 さて、ご指摘の事ですが、私自身も存じております。 私自身ストーリーをどこまで書くかは、まだ決めかねています。ただ、子供のところまで書くとなれば、ご指摘のことがネックになります。決めかねている理由はその点です。 将来、医療技術が進歩し、骨髄移植の経験がある方でも子供ができるようになって欲しいという、個人的な希望を込め、ストーリー上だけでは、奇跡を起こす(考え方が浅はかで、甘いと思われるでしょう。また、実際に骨髄移植などで、子供が難しい状況に置かれている方には、大変不愉快な思いをさせてしまうかもしれません。) また、現実を重視し、子供のところまでは書かずに終わらせるかです。 この点については、「単なるストーリーだから」といって、なんでもかんでもハッピーエンド的なものにする事はできません。仰られた事を頭に入れておき、これからの構想に生かせればと思います。 これからもよろしくお願いします。
|
...2005/02/10(Thu) 02:17 ID:o6EIHO/g
Re: アナザーストーリー 2 Name:にわかマニア
| | ボウズバン様,たー坊様 骨髄移植と子どもの件について,第三の視点です。 まず,たー坊さんのストーリーは,サクが医学の道に進むという点では,元のドラマのストーリーを踏襲しています。したがって,骨髄移植も含めて,どのような治療法がどのような副作用をもたらすかは当然のこととして知っている訳で,それを承知の上で亜紀と結婚(物語の上ではまだ婚約段階ですが)するという流れになります。 とすると,最初から「実の子」は望まない結婚ということになるのですが,問題は,「実の子」だけが子どもではないということです。 医療の現場で「命」の重みを感じながら日々を過ごすサクと,子どもに夢をプレゼントする絵本づくりをライフワークに考えている亜紀のペアにとって,親を亡くした子どもか,何らかの事情で実の親が育てることのできない子ども,あるいは難民の子を「里子」として引き取って,実の親子に負けない家庭を築くという選択肢もあるかもしれません。
|
...2005/02/11(Fri) 22:44 ID:jljX0PpM
Re: アナザーストーリー 2 Name:朔五郎
| | ボウズバン様 医療の現場の末端に名を連ねるものとして一言申し上げます。 医療の進歩により、白血病治療目的の骨髄移植の後でも妊娠は可能となりました。もちろん、その可能性は極めて低く、催奇形性等の問題もありますが、現実に成功例も報告されています。 極めてデリケートな問題ゆえに、「子供ができません」と断言されるのはお止めになった方がよいと思います。
たー坊さま 以上のことは、たー坊さまのストーリー進行には何ら関わりのないことです。場を乱して申し訳ありませんでした。現実的には、すでに「奇跡」ではないのですが、問題も多々ある、という段階だと思います。
|
...2005/02/11(Fri) 23:06 ID:oI8I5ZJY
Re: アナザーストーリー 2 Name:ボウズバン
| | にわかマニアさまへ 確かにそうですね。なにも血がつながってることだけが、家族の証じゃないわけですから。とくに幼児虐待など昔では考えられない事がある現在において、「家族」の証とはどれだけ思いやれるか、だとおもいます。
朔五郎様へ ご指摘、ありがとうございました。あの投稿のもとになった資料は最新のものではなかったのですが、つい気になって使ってしまいました。考えが浅はかで自分が恥ずかしく思います。以後気をつけます。
|
...2005/02/12(Sat) 00:30 ID:fPDMSknQ
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | にわかマニア様 ご意見ありがとうございました。 ボウズバン様の指摘を受け、決定ではありませんが、どうやって子供をストーリー上に組み込んでいくかを少し考えましたが、にわかマニア様が挙げられたことに、私が考えたものと同じものがあり、少し安心しました。 これからもお見苦しい点は多いかと思いますが、お読み頂ければ幸いです。
朔五郎様 難しいことではありますが、骨髄移植を受けても妊娠が可能になったという事実を教えて頂きありがとうございました。 問題はあるものの、現実的には、すでに「奇跡」ではないとのことなので、これで、救われる方が多くなれば、本当に素晴らしいことです。 知らなかったとはいえ、情報収集の悪さからご不快になられたかもしれません。一連の私の投稿をご覧になられた方で嫌な思いをなさった方を含めてお詫び申し上げます。 これからもお読みくだされば幸いです。
ボウズバン様 ご指摘ありがとうございました。前回の投稿にありましたとおり、子供については、極めてデリケートな部分であるため書くかどうかも決めていません。 また、お読みくだされば幸いです。
|
...2005/02/12(Sat) 21:52 ID:LAlvaxyE
Re: アナザーストーリー 2 Name:グーテンベルク
| | たー坊様へ こんばんは。グーテンベルクです。子供に関しては確かに非常にデリケートな問題ですね。私の方も克服編の途中からずっと悩んでいるところです。この点に関してはお互いにゆっくりと考えたほうがよさそうですね。これからも楽しみにしております。そして、お互いに頑張っていきましょう。
|
...2005/02/12(Sat) 22:21 ID:ZvHhzaxo
Re: アナザーストーリー 2 Name:ゴン41
| | たー坊様へ
こんばんは。 白血病という病気が根底にあり、物語を創作されていくと、この様な問題が出て来るのですね。考えさせられます。 私は、今の二人の状況でも、充分に幸せを感じていますが、やはり子供ができれば、より一層の幸せを感じる事でしょう。「実の子」であれ、「そうではない」であれ。二人のまま、エンディングを迎えるのか、亜紀と朔の大好きな子供ができるのか。いずれにしても、楽しみにしています。
波風立ちません様に祈っております。 時代は「平成」。 波、穏やか。「平」らかに「成」る。
|
...2005/02/14(Mon) 02:37 ID:c2573k4U
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | グーテンベルク様 やはり悩みますよね。私の場合、最初から「個人的希望」を形にしたものと言わせて頂きましたが、だからといって、「ストーリーなのだから」とそう簡単に開き直れないですね。 本当に難しい問題です。お互い考えたほうが良いですね。頑張っていきましょう。
ゴン41様 励ましのお言葉ありがとうございます。繰り返しますが、子供については、簡単に書くことのできない面がありますので書けるかどうかも分かりませんが当分は執筆するつもりなので、お読み頂ければ幸いです。
|
...2005/02/15(Tue) 11:21 ID:pjd5La.g
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 入り口を抜けると天井に届くくらいの本棚に本がギッシリ。
亜紀「すごい数だね・・・。この建物の全部がこんななの?」
朔「うん。ジャンル分けされてるんだよ。」
亜紀「ふーん・・・。」
朔「あれ見て。」
そういって上から下がっているプレートを指さす。
亜紀「絵本・その他?」 そういうと、自然とそちらの方に歩を進めた。後からゆっくりと朔が後を追う。
亜紀「すごい・・・。」
朔「どう?好きな人には楽しめると思うんだけど・・・。」 そう言って不安げに亜紀の表情を伺う。 宮浦であっても東京あっても、いかにも「デートらしいデート」に2人で出かけるのはこれが初めて。 もちろん、朔も亜紀もどんな場所であろうが、2人でいることにとても幸せを感じるので、たとえ、部屋にいるだけでも構わないのだが、やはり、朔としては、なんとしても成功させたいのだ。 亜紀の喜ぶ顔がみれるのなら、朔にとっても嬉しく、自身の幸せにもなるからだ。 、 亜紀「朔ちゃんならではね。ありがとう。いつも私のことを考えてくれて。(笑)」
朔「どういたしまして。ほら、好きなのを手にとってみなよ。」
亜紀「うん。」 そういって、気に入った本を手に取る。 本を一冊ずつ開いていくごとに、亜紀の顔に満面の笑顔。それは、松本写真館で朔の小さい頃の写真があるアルバムを見たときに、自然とみせた あの笑顔・・・
亜紀「あっ、これ、かわいい〜(笑)ねえ、朔ちゃん?」
朔「うん。かわいいな。」 そう言葉を返したものの、朔の視界に入ってくる割合は、絵本より亜紀の横顔が圧倒的に多い。
かなり時間が過ぎた。気が付けば、2時をまわっている。 亜紀は、本に夢中。朔は、一度外に出て、以前から計画していた用事を済ませ、再び亜紀のもとへ。 後ろからそうっと近づき、肩をたたく。
亜紀「朔ちゃん?」 後ろに振り向くと、「ブニュ!」と朔の指が亜紀の頬に。これをやるのは久しぶりだった。
亜紀「もう(笑)」
朔「ははは。どう?気に入ったのあった?」
亜紀「うん。やっぱりこれが、かわいいなって。」 そう言って朔に差し出したのは一番最初に「かわいい」と言っていた絵本。
朔「そっか。ところで亜紀、そろそろお腹空かない?」
亜紀「空いた。そういえばお昼まだだったね。どうしよう?」
朔「近くのお店に入ろう。たまには外食もいいだろう?デートなんだし。」
亜紀「賛成。じゃあ行こう。デートだし(笑)」 朔の提案に亜紀も賛同。持っていた本を置き、行こうとする。すると、
朔「亜紀、大切なものを忘れてるよ。」 と言って、朔が、今置いた本を持った。
外に出ると、「はい。大学合格おめでとう。」といって朔が本を渡す。
亜紀「ありがとう・・・。大切にするね。」
朔「うん。じゃあ、行こう。」
亜紀「はい(笑)」 朔が出した手を亜紀がしっかり捕まえる。そして腕を組んで2人は歩き出した。
朔は思っていた。亜紀の笑顔を見ていたいと。そのためにはできる限りのことをしよう。亜紀が隣で笑っていてくれているならば、それ以上のことは望まない。亜紀の笑顔が自分にとっての最高の幸せなのだから・・・と。
|
...2005/02/15(Tue) 13:39 ID:pjd5La.g
Re: アナザーストーリー 2 Name:グーテンベルク
| | たー坊様へ こんばんは。グーテンベルクです。執筆お疲れ様です。今回のストーリーも心温まる内容ですね。本屋は亜紀にとっても朔にとってもデートの場所に最適ですね。そしてこの後2人はどこに行くのか楽しみです。
”亜紀の喜ぶ顔がみれるのなら、朔にとっても嬉しく、自身の幸せにもなるからだ。”
”朔の視界に入ってくる割合は、絵本より亜紀の横顔が圧倒的に多い。”
”亜紀の笑顔を見ていたいと。そのためにはできる限りのことをしよう。亜紀が隣で笑っていてくれているならば、それ以上のことは望まない。亜紀の笑顔が自分にとっての最高の幸せなのだから・・・と。”
この時の朔の気持ちがよく分かります。余談ですが私も今から5年前に初めて人を好きになり、その人と付き合い始めたのですが、大学の学部学科(さらに研究室まで)が同じだったため、学校帰りによく本屋に行ったものです。嬉しそうに本を読む彼女の横顔が今でも大好きです。 たー坊様のストーリーを読んでいるといろいろなことを思い出すことができ、懐かしい気分になります。本当に感謝しております。これからも無理をせず、マイペースで頑張ってください。
|
...2005/02/15(Tue) 20:12 ID:lfLrShRg
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | グーテンベルク様 朔と同じような経験をお持ちなのですね。その思いを大切になさってください。 私の体調もかなり戻ってきました。UPできる時にしようと思ってます。これからもよろしくお願いします。
|
...2005/02/16(Wed) 15:20 ID:YcFOuR7A
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 朔「何食べたい?」
亜紀「朔ちゃんが食べたいものでいいよ。」
朔「亜紀が食べたいものでいいよ。」
亜紀「いいよ。」
朔「いいって。」
亜紀「ん〜・・・やっぱり・・・朔ちゃんが食べたい物!」
本屋を出て大通り沿いを腕を組みながら歩く。 さっき見つけたお気に入りの本を、朔にプレゼントしてもらった亜紀の顔には満開の笑顔が咲いている。ご機嫌だ。また、そんな朔も亜紀を見て嬉しくなる。
そろそろ2時半になろうとしている。少し遅めの昼食を食べようと店を探す。
亜紀「食べたいもの無いの?」
朔「亜紀こそ無いの?」
亜紀「私は朔ちゃんが食べたいものが食べたい。」
朔「俺は・・・亜紀が食べたいもので・・・。」 亜紀の何気ない一言にこっぱずかしくなる朔。声の大きさも少しだけながら小さくなる。
亜紀「・・・なに?恥ずかしいの?」
朔「いや、別にそういうわけじゃ。」
亜紀「恥ずかしいんだ。カワイイ(笑)」
朔「だから、違うって。」 といいつつも、ムキになる上に顔に書いてある。それを見た亜紀はニンマリ。
亜紀「顔に出てるよ。でも無理ないよね。私たち、順番が逆だもの。」
朔「ああいう状況だったとはいえ、さすがに早かったかな、プロポーズするの。」
亜紀「一般的に考えたら、ほとんど無いことだったよね。・・・でも、後悔してないよ。嬉しかったもん。うわべだけじゃなくて本心からだったから、今もこうして続いてるものね。私たち。」
朔「これから、まだまだ時間あるもんな。」
亜紀「うん。宮浦に帰ってきてくれるしね(笑)」
そう言って微笑み合う朔と亜紀。 ふと、通りを一歩入った路地に看板を見つける。
前まで来ると外観がよくわかる。全体的にレトロな雰囲気漂う喫茶店のようだ。
亜紀「入ってみようか?軽く食べられるみたい。」 店の外にあるメニューを指差して言う。
朔「レトロな雰囲気は悪くなさそうだけど、本当にいいの?もっとキレイなところでもいいよ。」
亜紀「大丈夫。また、朔ちゃんに連れて行ってもらうから(笑)」 と意味深な微笑を浮かべて店のドアを開けた。
朔「財布と相談だからな・・・・・・。」 聞こえない程度につぶやく。
亜紀「何か言った?」
朔「いや、別に。」
店に入ると、2人のほかに数人の客がいた。店の席の半分ほどが埋まっている。 こぢんまりとしてクラシックであろうBGMが、店のレトロさをいっそう引き立て、いいムードを醸し出している。
朔「いいね。写真館のじいちゃんの部屋に近い感じがある。」
亜紀「分かる。このテーブルなんかも味があるよね(微笑)」
向かい合って座りメニューを見ながら談笑する。 注文した後も2人の会話は続いた・・・。
続く
|
...2005/02/16(Wed) 16:11 ID:YcFOuR7A
Re: アナザーストーリー 2 Name:けん
| | たー坊様 こんばんわ。けんです。朔と亜紀の東京デート楽しく読ませてもらっています。朔が亜紀を連れて行ったところは、本屋さんでしたね。亜紀が絵本作家志望だと朔は知っていたから連れてきたのですね。本屋での会話・喫茶店での会話想像しただけで、とても心温まる感じがして良かったし、羨ましくもありました。 体調戻ったみたいで良かったですね。これからも無理なさらずにマイペースで、執筆活動して下さい。
|
...2005/02/16(Wed) 22:55 ID:jzLimg6s
Re: アナザーストーリー 2 Name:サイトのファン
| | たー坊さんへ 2話続けて読ませて頂きました。 サクから亜紀への「ブニュ!」は最高です!! スゴク微笑ましく、二人が幸せそうでいいですね! サクと亜紀は安心ですが、ボウズが気にかかります。 たー坊さん、ボウズのこともヨロシクです!! 続編、楽しみにお待ちしております!!
|
...2005/02/17(Thu) 00:06 ID:cR1AkoNE
Re: アナザーストーリー 2 Name:ボウズバン
| | たー坊さまへ 私が無神経にも言ってしまったことで余計な心配をかけさせてしまい、申し訳ありませんでした。自分の深慮深さのなさが恥ずかしいです。
二話分楽しく読ませて頂ました。 今もう一回DVDを見直している最中なのですが、あのサク、アキそのままですね。やっぱり、アキを一番理解し、包み込めるのはサクしかだめですね。 今見たのは三話から六話なのですが、そのときそのままのシーンがいくつもあって泣いてしまいました。ほんとうに、二人がこうなっていたらよかったのに…。 続きがたのしみです。お体にお気をつけて。
|
...2005/02/17(Thu) 01:14 ID:/pEinFQk
Re: アナザーストーリー 2 Name:ゴン41
| | たー坊様へ。
腕を組んで、二人で歩くだけでも、朔と亜紀はとても幸せなのでしょうね。亜紀にとっては東京の街でなくても、宮浦でもどこでも。こうして又、二人は愛を深めていくのでしょうね。
選んだお店が”レトロな喫茶店”というのも二人にピッタリです。でも、なにをオーダーしたんだろう?二人の食事って、”たこやき””カニクリーム””鍋”くらいしか浮かばない。あっ、バーベキューしたっけ。 続編楽しみにしております。
|
...2005/02/17(Thu) 06:09 ID:r/ftQDEw
Re: アナザーストーリー 2 Name:もも
| | はじめまして。昨日偶然このサイトを見つけ、管理人さんが載せてくれたリンクからパート1を読み始めました。 私自身、ドラマ版のセカチュ―が大好きだったので、こういうアナザーストーリーを拝見できてとても嬉しいです!! アキちゃんとサクの幸せなところもドラマではあまり見られなかったので…嬉しい! たー坊さん、とても素人とは思えない!素晴らしい☆☆☆本になってくれると…いや、ドラマになってくれるといいのにな〜…なんて(笑) これからも楽しみにしています♪たー坊さん、お体に気をつけて頑張ってください!!
|
...2005/02/18(Fri) 15:39 ID:xGu9TfsY
Re: アナザーストーリー 2 Name:朔五郎
| | たー坊さま このスレに来るとほんとうにあたたかい気持ちになれます。 これからも二人の幸せな姿を見せてください。
|
...2005/02/20(Sun) 18:34 ID:J6cezmXA
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | けん様 お忙しい中お読みいただきましてありがとうございます。 おかげさまで、体調はだいぶ戻りました。これからも頑張りますのでよろしくお願いします。
サイトのファン様 確かに、朔と亜紀については問題ありません。いまのところ・・・。 ボウズは、スケと智世と一緒に近々登場させる予定ですので、よろしくお願いします。
ボウズバン様 「無神経な・・・」とのことですが、とんでもございません。あのご指摘があったからこそ、あらためて、考えることができたのです。 これからもよろしくお願いします。
ゴン41様 2人の頼んだものは、カニクリームでも、鍋でも、たこ焼きでもありません。新メニューを登場させるつもりです。 楽しみにしていただければ幸いです。
もも様 はじめまして。ストーリーを書かせていただいているたー坊です。 大変な評価をしていただいてありがとうございます。 マイペースで書いていますので、UPするペースは遅いですが、楽しみにしていただくと幸いです。
朔五郎様 お疲れ様です。「世界の中心で、愛をさけぶ2」も順調みたいで何よりです。近いうちに顔を出しますので、よろしくお願いします。
|
...2005/02/21(Mon) 11:36 ID:IDVkIuxY
Re: アナザーストーリー 2 Name:北のおじさん
| | たー坊様。
体調回復されたとの事、安心しました。 コメントの中に少し気になった事が… 「朔と亜紀については問題ありません。いまのところ・・・。」とありますが、これから二人の間に波乱でもあるのでしょうか? 順調すぎるのも考え物ですが、また病気で…なんて事だけはご勘弁を。
続きを楽しみにしています。
|
...2005/02/21(Mon) 22:12 ID:nQHARsdo
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 北のおじさん様 お気遣い頂きましてありがとうございます。 体調の方はほぼ回復しました。 「これから二人の間に波乱でもあるのでしょうか?」とのことですが、現時点ではどうお答えしてよいか分かりません。 とりあえず、楽しみにお待ちください。
|
...2005/02/22(Tue) 14:38 ID:xIJgH9TI
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 料理を待つ間も朔と亜紀の顔から笑顔が消えることはなかった。 亜紀は、朔が誘ってくれたこと、さらに、自分が絵本に携われることのできる仕事に就きたいという夢を覚えていてくれて、本をプレゼントしてくれたことに、もう、嬉しくて嬉しくてしょうがないといった様子で朔の顔を見ている。
一方の朔は、亜紀が倒れた当初、入院場所が分からないまま、1ヶ月後、病室の前で再会した時のことを思い出していた。
『もしも亜紀が笑えるなら、僕は一生笑えなくていい。』
『もしも亜紀が泣きたいなら、僕は一生我慢する。』
『もしも亜紀の代わりに死ねと言われたら、喜んで死んでやろう。』
そんなことを本気で思っていた・・・。
しかし、時が過ぎても一緒にいることができている今、その考えは変わりつつある。 「お互いに、笑い合って、泣きたいときは泣いて、一緒にいれる限り一緒にいよう」と。 「亜紀の代わりに死のう」など、もう意味はないことなのかもしれないと、朔は思い始めていた。 なぜなら、それは、亜紀を何よりも悲しませることなのだから。と・・・。
朔自身が、一生懸命に今を生きる事こそ、亜紀の何よりの元気のもとであり、そこから亜紀が見せるひとつひとつが、自分のすべてになっているのではないかと朔は感じていた・・・。
亜紀「・・・どうしたの?」
朔「えっ?」
亜紀「せっかく頼んだのに、冷めちゃうよ。」
朔「あ・・・。」
亜紀の顔を見ているうちに、いつの間にかテーブルに注文したものが運ばれてきていた。 朔はミートソース。亜紀はカルボナーラと2人ともパスタを注文していた。
亜紀「本当にどうしたの?ボーっとしちゃって・・・。あ、もしかして、私に見惚れてたりしたりして(微笑)」 ちょっと悪戯っぽく朔を見る目に、思わず目を逸らし、「そ、そうじゃないよ」と言ってしまう。ほとんど図星なので、その反応は分かりやすい。
亜紀「そうじゃないんだ・・・。ふーん・・・。」 急に暗くなる亜紀。これには朔も慌てはじめる。
朔「あ、そうじゃなくてね。えーと・・・。」
亜紀「そうじゃないなら、どうなの?」 少し冷たく亜紀に切り返されて、ますますあわてる朔。だが・・・。
亜紀「ウソだよ。今回はこれ以上何も言わないよ。」
朔「ど、どうして?」
亜紀「だって、朔ちゃんが、私の方を見てボーっとしている時って、私のことを考えてくれているときだもん。」 いつもの笑みを浮かべながら亜紀が話す。
朔「・・・。」
亜紀「だから、何も言わないの。でも・・・」
朔「でも?」
亜紀「2人きりでいる時には、もっと、私に気持ちを表現して欲しいな・・・。朔ちゃんは、やろうと思えばできるんだから。」 少し恥ずかしそうに亜紀が続ける。
朔「え・・・?」
亜紀「朝、私より早く起きて、その時にしてくれたじゃない。とても嬉しかったんだからあの時は。いくら私が寝ているとはいえ、真っ直ぐな愛情表現をするのが苦手だったのに、頑張ってしてくれて・・・」
朔「もしかして・・・。」 亜紀は、朔が愛情表現してくれた時に寝たフリをしていたことをバラした。
朔「・・・・・・。」 何も言えなかった。顔は真っ赤になり、体の中から熱くなっているのが分かった。
亜紀「ほら、食べようよ。」 そういう亜紀も大胆なことを面と向かって言ったことに、少し恥ずかしさを覚えている。もちろん、朔と違って表面には出さない。
朔「こっちも少し食べてみる?」
亜紀「うん。ちょっとちょうだい。」
朔「結構美味いよな、ここ。」
亜紀「うん。おいしい。私のカルボナーラも食べてみて。」
朔「じゃあ、少し。」
お互いに注文した料理を少し交換し合って味見をする。 気が付けばさっきまでの雰囲気に戻っている。 そのまま食事を終え、店を出た2人は、次の目的地に向かった。
一方、宮浦では、漁港に停泊している船の上で龍之介と智世が昼食を取りながら話をしていた。
続く
|
...2005/02/22(Tue) 16:14 ID:xIJgH9TI
Re: アナザーストーリー 2 Name:SATO
| | 幸せそうな朔と亜紀の姿を想像しながら、ついついニヤケてしまいます(苦笑)
スケちゃんと智世はどうなるのでしょうか?隠れ智世ファンの私にとっては、こちらも興味が尽きません。
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...2005/02/22(Tue) 21:44 ID:.liclPII
Re: アナザーストーリー 2 Name:けん
| | こんばんわ。けんです。今回の物語楽しく読ませていただきました。相変らず亜紀は鋭い発言ですね。その発言に動揺する朔の姿とてもほのぼのして良かったです。次の話は智世と介ちゃんの話みたいですね。介ちゃんと智世の今後どうなるか楽しみにしていますので、執筆活動頑張って下さい
|
...2005/02/23(Wed) 00:15 ID:xxXz7uVg
Re: アナザーストーリー 2 Name:朔五郎
| | すごく良いです。 しかし亜紀さん、女優になって日本アカデミー賞を目指してはいかがですか?(笑)
|
...2005/02/23(Wed) 02:26 ID:U41Q0qzc
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | SATO様
スケちゃんと智世についてはご心配なく。 仮に、大喧嘩するようなことはあっても、離れていってしまうようなことは無いと思います。修羅場はあるかもしれませんが・・・。 しばらくは平穏な日々をお楽しみください。
けん様 お読み下さいましてありがとうございます。 マイペースで頑張っていきますので、よろしくお願いします。
朔五郎様 「女優になって日本アカデミー賞を目指してはいかがですか?」とのことですが、さすがに、真が許さないでしょうし、朔もパニックになる恐れがありますので、当分は亜紀に今の夢を追いかけてもらおうと思っています。
|
...2005/02/23(Wed) 22:10 ID:7v.A7ves
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 捕ってきた魚を調理して昼食を取る。腹が減っていたせいか食が進む。
龍之介「いやー、助かった。ありがとな、智世」
智世「まったく。漁協から電話してくるなり『白いご飯を持って来てくれ。』とか言うから、どうしたのかと思えば、家から弁当持って来るの忘れたなんて・・・。何やってんだか。」
龍之介「いやー、珍しく寝坊しちゃってよ。ドタバタしてたんだよ。これが。」
智世「しょうがないなぁ。でも、今日、私が休みじゃなかったら、どうするつもりだったのよ?」
龍之介「最悪、パパさんとこだな。ボウズとメシっていうのもなんだかなぁって気がしたから、ダメもとでお前の所に電話したってわけ。」
龍之介は、太陽の下、今日も相変わらず海に出ていた。そして港に帰ってきた時に、いつもは持ってきているはずの弁当を忘れたことに気付き、智世に連絡してきたのだった。
智世「ま、そのおかげで、久しぶりに龍之介が取ってきた新鮮な魚を食べられたんだから、よしとするよ。ごちそうさま。」
龍之介「こっちこそ、ごちそうさま。」
最近は冬も終わりを告げ始め、今日はポカポカ陽気。太陽の光が優しく、過ごしやすい一日だ。
龍之介「なぁ、ここんとこ、亜紀を見かけないけど何か知らないか?」
智世「あれ?知らなかった?今、東京に行ってるの。」
龍之介「東京?ああ、朔の所か。」
智世「そうそう。亜紀も無事に受験が終わったからね。『長い間、朔に支えてもらったから、今度は自分の番だ』みたいなこと言ってた。荷造りとかも手伝うんだって。」
龍之介「いいねぇ〜。でも、朔のことだから、どっか連れて行ってやってるんだろうけどな。」 そう言うと、体を伸ばし、ゆっくりと船に寝そべった。
龍之介「今の朔には悲壮感がないからなぁ。さぞデートを楽しんでるだろ。」
智世「2人で、今までの分を取り返してもらわないといけないよ・・・。でもいいな〜。今ごろ、東京で新婚生活みたいなことになっちゃってるんだろーな。それで、時々、街を歩いたりするんだよ。腕を組んじゃったり。」 言いながら、寝そべっている龍之介の顔を見る。
智世「いいな〜。私もそんな事やってみたいな〜。そんな風に愛されてみたいな〜。ねえスケちゃん?」
龍之介「何か、前に聞いたことのあるセリフだなぁ。」
智世「なによぉ。」 膨れる智世を見て、龍之介が切り出した。
龍之介「今度な。地元でそういうことをすると、噂が立つからよ。特にボウズがうるさいだろうし。」
智世「言えてる。人のこと気にする前に、自分の事を気にしなさいってことよね。」 そういうと、2人は笑い合った。
続く
|
...2005/02/24(Thu) 14:42 ID:/yIibOTw
Re: アナザーストーリー 2 Name:グーテンベルク
| | たー坊様へ こんにちは。グーテンベルクです。今回は龍之介と智世のお話でしたね。智世「そんなふうに愛されてみたいなー」のところではドラマのシーンを思い出してなつかしい気分になりました。この2人にも上手くいってもらいたいですね。今後を楽しみにしております。
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...2005/02/24(Thu) 16:58 ID:4yBzgBlY
Re: アナザーストーリー 2 Name:ゴン41
| | たー坊様へ。 こんにちは。今回のお話は、松崎の田舎町、漁港、真っ青な海と空の情景が、頭の中に浮かび、何か癒された気持ちになりました。よく考えてみると・・・ こちらの二人も、とてもお似合いですね。 次回作、楽しみにしてます。
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...2005/02/25(Fri) 14:31 ID:KCsNeSCE
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | グーテンベルク様 お疲れ様です。私も龍之介と智世もうまくいって欲しいと思います。智世はスケにいろんなふうに愛されてもらいましょう(笑)
ゴン41様 個人的に東京での朔と亜紀もいいと思っているのですが、宮浦の青い海と空の元の2人が一番いいなと思っております。もちろん、龍之介、智世、ボウズもいた方が、なお、良いですね。
|
...2005/02/25(Fri) 22:43 ID:ckTUR6IE
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 智世「それにしても、暖かくなってきたねぇ。」
龍之介のマネをして船の上に寝転びながら言った。 夏ほどではないが、太陽の光が少し眩しくさえ感じられる。
龍之介「卒業式はいつ?」
智世「え?」
龍之介「いつ?」
自分の隣に寝そべっている智世に訊ねた。もちろん、母校である宮浦高校の卒業式のことを言っている。
智世「分からない。亜紀の卒業式のことを言っているんだよね?」
龍之介「ああ。だいぶ遅くなったけど、これで、5人とも高校を卒業できるだろ?」
「式」や「会」などと付く行事には参加しない男という別名がついていた龍之介。しかし、自身の卒業式には参加していた。そしてその時に亜紀の姿はなかった。そして、もうひとり・・・。 智世には、友達想いの龍之介が考えていることがよく分かるつもりだ。
智世「でも・・・、亜紀は卒業式に出れないよ・・・。多分・・・。」
龍之介「えっ!?どうしてだよ?」 少し残念そうに答える恋人に、体を起こしながら訊ねた。 智世も体を起こし、龍之介を見ながら答える。
智世「亜紀は、復学したときに全日制から定時制に編入したよね。それで、定時制は4年間通わないといけないけど、亜紀は定時制の途中までしか通わずに大検受けて受検も合格したじゃない。だからこの場合、亜紀は高校を中退って形になっちゃう。つまり、高校卒業じゃないってこと・・・。」
龍之介「・・・」 智世の言葉を受け、考え込んでしまう龍之介。しかし、すぐに良いアイデアが浮かんだ。
龍之介「だったら、俺らだけでミニ卒業式やらないか?」
智世「いいね!賛成!でも、どこで?」
龍之介「やっぱり、どうせやるなら学校だろ。谷田部先生に頼んで協力してもらえないかと思ってんだけど。あのこともあるしよ。」
智世「あのことって何よ?」 ピンとこない智世に龍之介が言う。その答えに智世は納得した。
智世「あ〜、なるほど!そっか、だからミニ卒業式やろうなんて言い出したんだ。そうでなきゃ、式や会の付く行事に参加しないあんたが、こんなこと言い出さないもんね!」 少し憎たらしく毒づいてみる。
龍之介「余計なお世話だ。ほれ、そうと決まったら膳は急げだ。あいつらが東京から帰ってくる前に、計画を練っておこうぜ。」 そう言うなり立ち上がり船を降りる。
智世「あー、待ってよ龍之介。」
龍之介「しょうがねぇな。ほれ。」 そういって、智世に手を差し伸べた。
港を歩きながら、役割を決める。 龍之介「智世、先生に連絡してみてくれ、俺はボウズと、朔の親父さんに連絡してみるから。」
智世「いいけど、なんで朔のお父さんに?」
龍之介「やっぱり、卒業写真は必要だろ?」 その言葉に智世も頷いた。 家に帰るなり、2人は早速、協力を頼む電話を掛けた。 ここに、宮浦高校ミニ卒業式の計画がスタートした。
続く
|
...2005/02/26(Sat) 01:48 ID:7mCvsFBE
Re: アナザーストーリー 2 Name:にわかマニア
| | 執筆者は変われど,入院中の級友のための病室での「出張文化祭」にしても,仲間内の「ミニ卒業式」にしても,「友人思いの知恵袋」っていう龍之介のキャラがいいですね。
|
...2005/02/26(Sat) 10:00 ID:7Bs.ZH5I
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | にわかマニア様 どうも、お読み頂きましてありがとうございます。 龍之介は、時に暴走めいた行動を取ったりするようにも思えますが、いずれの行動も芯はしっかりしてるんですよね。今回も、ある人物の想いを手助けするためなんですが、詳しいことはこれから明らかにしていきますので、また、お読みくだされば嬉しいです。
|
...2005/02/26(Sat) 22:55 ID:7mCvsFBE
Re: アナザーストーリー 2 Name:サイトのファン
| | たー坊さんへ 執筆、お疲れ様です!! まとめて3話読ませて頂きました。 サクと亜紀は本当に幸せそうで読ませて頂いていて 心が温まります。 龍之介と智世も本当に良いカップルですね。 二人してサクと亜紀を見守っていてくれる ベストフレンドですね。 その二人が計画してる宮浦高校ミニ卒業式。 どういう展開になるか楽しみです。 ワクワクして続編をお待ちしております。
|
...2005/02/26(Sat) 23:07 ID:GZ/PIvdI
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 港を出た2人は、すぐにそれぞれの自宅に戻り電話を掛けた。龍之介はボウズと潤一郎に、智世は谷田部に連絡を取った。 龍之介がボウズに電話を掛け、理由を話すと、「いいぜ。自分でできる範囲だけど何かあったら言ってくれよな。協力する!」と言ってくれた。また、潤一郎の方も「亜紀ちゃんのためだし、スケの頼みとあっちゃ断れないなぁ。任しとけ。詳しいことが決まったら、また連絡くれ。」と良い返事をくれた。
一方、智世は谷田部に相談するため受話器を取った。この時間帯は学校にいるはずである。3年生の受験も終わっているだろうと思ったので、「相変わらずグランドに立ってでゲキを飛ばしたりしてんだろうなぁ」と一人ごちながら母校の番号に電話を掛けた。
事務員「はい、宮浦高校です。」
智世「私、卒業生の上田と申しますが、谷田部先生はいらっしゃいますでしょうか?」
事務員「谷田部先生ですね。しばらくお待ちください。」 それから1分くらい経つが、電話口に谷田部の声は聞こえてこない。今日はもしかして学校にいないのかと思ったその時、
谷田部「はい、お電話代わりました。谷田部です。」 谷田部が電話に出た。
智世「あっ先生、上田です。この前はお邪魔しました。」 智世は、亜紀が東京に行く前に、一緒に谷田部を訪ねていたのだった。その時は、ちょっとした世間話もほどほどに陸上部の指導に駆り出されたのだった。 しかし、今日は大事なお願いである。
谷田部「上田?元気?この前はありがとね。それで?今日は何?」
智世「実は、卒業式をやりたいんです。私達、内輪だけで。それで、できれば校舎のどこかを貸して頂くことはできないかなって。それで、電話したんです。」
谷田部「卒業式?誰の?」
智世「・・・亜紀のための卒業式です。」 この言葉を聞いた直後、谷田部はハッとした。
智世「私・・・。」 そう言いかけた時、谷田部が遮った。
谷田部「誰の発案?」
智世「え?・・・龍之介です。」
谷田部「大木か・・・。あいつらしいなぁ・・・。」 少し微笑を浮かべ、しみじみとした口調で言った。
智世「先生、私もやっぱり亜紀にはちゃんと卒業ってしたほうが、喜んでもらえると思うんです。だから、お願いします!」 必死に頼む智世の様子に谷田部も力を貸したいと思った。そして・・・
谷田部「分かった。何とかやってみよう!ただ、保障はできないよ。その時は別の場所を考えなさい。いいね?」
智世「はい!ありがとうございます!」 心強い味方ができた。谷田部の協力の「ある」「ない」では、全然違うのである。
谷田部「私も、やらないといけないことがあるからね・・・。」 「じゃあ、私はそろそろグランドに戻るわ。他になんか私にできるようなことがあれば、連絡ちょうだい。」
智世「はい、ありがとうございます。」
谷田部「じゃあね。」
そこで、電話は切れた。
2日後・・・ 龍之介、智世、ボウズはたこ焼きパパさんに集合していた。 龍之介が中心になって、詳細を決めている。
龍之介「えーと・・・、まず、智世。当日にさりげなく亜紀を学校に誘ってくれ。」
智世「『卒業式やるよ』って知らせておいちゃダメなの?」
ボウズ「いきなり驚かそうって事だろ?スケ?」
龍之介「ああ。そういうこと。」
智世「いいよ。じゃあそういうことで。それで、卒業証書授与は谷田部先生だよね。」
龍之介「まあ、そうなるのが妥当ってもんだろう。」
ボウズ「さすがに校長先生まで引っ張り出せるわけないしなぁ。」
龍之介「それだと、本物と変わらねぇよ。」
智世「じゃあ、卒業証書授与は谷田部先生で決まりね。あ、司会進行がいるね。例えば『来賓祝辞』とかって。」
龍之介「うーん・・・そのあたりは、俺らで分担しようぜ。」
智世「そうだ、芙美子にも協力してもらおうよ。きっと参加してくれるよ!」
ボウズ「その手があったな!」
龍之介「よーし。んで、在校生送辞、卒業生答辞とかっていうのはやめよう。堅くなるし。あくまでも内輪なんだから楽にやろうぜ。」
智世「そうだね。」
ボウズ「何とか形になってきたな。」
3人で計画を練っていく。オリジナリティ溢れるものになる予感に3人は、高校時代に、朔を中心にして行った『どすこいロミオとジュリエット』の時を思い出していた。 その横では、パパさんが3人分のたこ焼きを焼いていた。もちろんサービスで・・・。
続く
|
...2005/02/27(Sun) 01:34 ID:4gjWUerw
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | サイトのファン様 順番が違って申し訳ありません。 おっしゃるとおり、朔と亜紀、スケちゃんと智世はベストフレンドです。もちろんボウズも。なので、今回のミニ卒業式は3人が中心となっていきます。楽しみにしていただけたら幸いです。
|
...2005/02/27(Sun) 01:42 ID:4gjWUerw
Re: アナザーストーリー 2 Name:朔五郎
| | 友達って暖かくていいもんですね。 どんな卒業式になるか楽しみです。
|
...2005/02/27(Sun) 17:58 ID:ZaF3A5rU
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 朔五郎様 お疲れ様です。 個人的に、朔と亜紀が成り立っているのは、龍之介、智世、ボウズを初めとする周りがあってこそだと思っています。 ミニ卒業式は、長ったらしくしないでいいとこ取りにしようと思っています。 「世界の中心で、愛をさけぶ2」も進行していますね。楽しみです。
|
...2005/02/28(Mon) 19:51 ID:g.LuYwZo
Re: アナザーストーリー 2 Name:グーテンベルク
| | たー坊様へ こんばんは。グーテンベルクです。亜紀は幸せ者ですね。友情を感じますよ。今回も心温まる素晴らしいストーリーですね。続きを楽しみにしております。
|
...2005/02/28(Mon) 22:26 ID:J2L.70yc
Re: アナザーストーリー 2 Name:SATO
...2005/02/28(Mon) 23:47 ID:9pcuPkEk
Re: アナザーストーリー 2 Name:ゴン41
| | たー坊様。 お疲れ様です。介ちゃんは、いつもかっこいいですね。5人の中で一番みんなのことを考えてる様な気がします。智世の事もちゃんと考えているんでしょうね。 次回作楽しみにしてます。
|
...2005/03/01(Tue) 14:52 ID:RiRH0.ok
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | グーテンベルク様 お疲れ様です。朔以外に3人と亜紀の間にも強いつながりがあるがゆえの今回のイベントです。楽しみにしてくだされば幸いです。
SATO様 「仲間っていいなぁ」と亜紀に、実感してもらうつもりです。 それにしても、もし、朔が亜紀を泣かせるようなマネをすれば、暴動が起きるのでしょうね。
ゴン41様 「介ちゃんは、いつもかっこいいですね。」とのことですが、本当にその通りだと思います。智世が惚れるのも頷けますね。この2人の主導権は智世が握っているのでしょうね。でも、朔と違って龍之介は顔に出にくいので、智世は亜紀以上に苦労しそうです。
|
...2005/03/01(Tue) 19:21 ID:jjGfjmEE
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | たこ焼きパパさんで3人が集まって会議をすること約1時間後。ひとまずの計画が出来上がったようだ。
智世「とりあえず、こんな感じかな。どう?2人とも。」 そういって、男2人に聞いてみる。 今までメモしてきた紙を見て、順番に確認をしていく。 最後まで見終わると、
ボウズ「いいんじゃないか。スケ。」
龍之介「よし、これでやろう!」 2人とも好感触。それを見て智世も笑顔を見せる。「あーでもない。こーでもない。」と意見を出した甲斐があった。
パパさん「お疲れさん。ほれ、サービスだ。」 と言って、3人それぞれにたこ焼き1人前とコーラを出してくれた。
智世「パパさんサンキュ(笑)」
龍之介「いいの?しょっちゅうサービスしてもらってっけど、大損してんじゃないの?利益出さないとヤバイよ。」
ボウズ「嬉しいけど、ここがなくなるのはやめてくれよ。パパさん。」
智世「とかいいつつ食べてんじゃない。2人とも! 」 すかさず智世がツッコミを入れ、テーブルは笑いに包まれ、ほんわかな雰囲気。
龍之介「言いつつ、食べちゃってマース!」 とおどけてみせたので、さらに場は和やかになった。
パパさん「皆、ありがとな。潰さない程度に頑張るよ。」 と言って笑ってみせた。 パパさんは、「ああ、やってて良かったなぁ。」としみじみと思った。目の前の若者達が小さい頃から食べに来てくれて、美味しそうに食べてくれる。さらにこの店のことまで心配してくれるのだ。 パパさんの目にほんのわずかに光るものを、3人が気づくことはなかった・・・。
解散した後、智世は谷田部に連絡を入れた。 電話音が鳴り、受話器を取った。
谷田部「はい、谷田部です。」
智世「上田です。この前は急にすみませんでした。」
谷田部「いいの。気にしない!で?どうなった?」
智世「今日、龍之介とボウズと話して、大体の事は決まりました。多分、そのままになると思います。それで、場所の件なんですけど・・・。」
谷田部「安心しなさい。ちゃんと一ヶ所確保したよ。大変だったんだから。感謝しなさいよ。(笑い)」
智世「ありがとうございます!それで場所はどこですか?」
谷田部「ごめん。そこまではまだなのよ。でも、春休み中にどこかの教室を貸してもらえる約束はとりつけてあるから大丈夫よ。日時も、もうちょっと待って。」
智世「分かりました。またお電話しますので、その時に。あ、あと、先生にもお願いしたいことがあって・・・。」 そういうと、さっき決まったことの中で、谷田部にお願いすべき役割を伝えた。
谷田部「いいわよ。任せなさい。」
智世「ありがとうございます。では、失礼します。」 智世は、受話器を置いた。
続く
|
...2005/03/02(Wed) 20:43 ID:s6Yl6Brs
Re: アナザーストーリー 2 Name:サイトのファン
| | たー坊さんへ 執筆お疲れ様です!! たー坊さんの世界の中心で、愛をさけぶは やっぱ最高です。 たこ焼きパパさんはストーリにかかせぬ存在。 そのパパさんとサクやボウズ、龍之介と智世 との関係に触れてくれるので、パパさんの人柄が よく分かり、パパさんがスゴク温かに感じられます。 又、谷田部先生が用意してくれる教室は 一体何処なのか? どういうイベントになるか 続編を楽しみにお待ちしてます。
|
...2005/03/02(Wed) 23:59 ID:4OPWJKrM
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | サイトのファン様 今回もお読みくださいましてありがとうございます。 「最高」と言っていただけたこと大変嬉しく思います。とても励みになります。 次回もお読み頂けたら幸いです。
|
...2005/03/03(Thu) 14:02 ID:u6Or7TAU
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 宮浦でミニ卒業式の計画が着々と進んでいる一方、 龍之介がミニ卒業式の事を言い出したあの日、朔と亜紀は続きのデートも楽しんでいた。
昼食を終えた2人が再び電車に乗って移動し向ったのは、比較的近くにある遊園地。この周辺は他にも レジャー施設がある。 遊園地に入った2人、早速、園内のゲームセンターでゲームを楽しんでいる。
亜紀「朔ちゃん、これやろう。勝負!」 2人が見つけたのは、モグラたたきゲーム。
朔「いいよ。負けないよ。」
亜紀「あ、言ったな?」
朔「言ったよ。」 2人とも笑顔を浮かべながらたがいの目を見合っている。
亜紀「じゃあ、何か賭けようよ。」
朔「いいよ。何がいい?」
亜紀「ん〜・・・・。」 と頭の中で色々と考えをめぐらす。そしてほどなくして切り出した。
亜紀「じゃあ、私の言うことをなんでも聞くこと。」
朔「・・・いいよ。」
亜紀「決まり!それで朔ちゃんは?」
朔「俺は・・・後で言うよ。俺が勝ったら教えるよ。」
亜紀「ふーん・・・。」
朔「・・・なんだよ?」
亜紀「ううん。何でもない。準備はいい?」
朔「いつでもいいよ。」 コインを入れゲームが始まった。 そして・・・
亜紀「朔ちゃん、見て。人や車が小さく見えるよ。(笑)」 勝負は亜紀の圧勝・・・。 早速、勝利で得た特権を発動し、絶叫マシーンに2人で乗った後、観覧車へ。
朔「ああ・・・。本当だ・・・。」 ちなみに朔は絶叫マシーンに乗った後遺症で、ぐったり・・・。外の景色を見る余裕などほとんどない。 対照的に亜紀は、絶叫マシーンも楽しむことができて、すこぶる元気だ。
亜紀「もう・・・。だらしないなぁ。」
朔「そう言われても・・・人間なんだからさ。」
亜紀「どう?少しは落ち着いたでしょ。」
朔「うん。」
亜紀「じゃあ、写真撮ろうよ。」 と、部屋から持って来たカメラを出した。 これには朔も笑顔になる。2人だけのアルバムに、また写真が増えるのだから当然のことだ。
朔「亜紀、笑って笑って。」 向かい合って座ったまま、朔がカメラを向ける。亜紀もそれにあわせて、愛情たっぷりの笑顔を作ってみせた。 朔はがシャッターを切る。
朔「もう一枚。」 その言葉を聞いた亜紀は、朔の隣に移動する。
朔「どうしたの?」
亜紀「どうせなら、2人一緒に写っているのがいいなぁと思って(笑)」 2人並んで笑顔を作る。自然と2人でカメラを持っている。レンズは2人を向いている。外の景色をバックに亜紀の指がシャッターを切った。
亜紀「これ、ちゃんと撮れてるかなぁ?」
朔「どうかな・・・。これだと、のぞけないからなぁ・・・。もう一枚撮ろうか。」
亜紀「そうだね。」 もう一度レンズを自分達に向ける。今度は朔がシャッターを切った。
亜紀「これでよし(笑)」 朔も笑顔を見せている。お互いに最愛の人と撮った写真は、ちゃんと撮れているだろうか・・・?
観覧車は頂上を過ぎ、だんだんと下に降りていく・・・。なぜか、話すこともしていなかった。 すると、
亜紀「・・・キスでもしませんか?」 少しだけはにかみながらも自分の意思を朔に伝えた。
朔「・・・ああ。」 朔もまた突然のことに驚きながらも、嬉しかったりした。「亜紀の望むことならなんでもしてあげたい 。」そう思った。
朔「じゃあ・・・」 亜紀のほうに体を向け、亜紀の細い肩を両手でしっかり捕まえた。 亜紀がクスッと笑ってゆっくりと目を閉じた・・・。 ゴンドラを沈黙が支配する。「パシャ」とだけ音がした・・・。 観覧車は一周した。降りて出口へ向かう。空はオレンジから黒に染まりつつあった。
朔「どこにも出せないよ。自分でしか現像できないよ。」
亜紀「いいじゃない。帰ってからゆっくり現像すれば(微笑)」 歩きながら、カメラ片手に話している。 どこにも出せない理由は、さっきのキスの時。 唇を重ねながらも亜紀がシャッターを切っていたのだった。
朔「本当に器用なことをするよね。」
亜紀「ヘヘッ。そういう一枚があってもいいかなって思ったの。ありがとう。」
朔「うん。ほら」 そう言って亜紀の手を掴む。亜紀も嬉しくなって握り返してきた。倒れた後1日だけ登校した日、午後の授業をサボった時と同じように前後に腕を振りながら、今日、最後の目的地に向かった。
続く
|
...2005/03/04(Fri) 16:09 ID:x6JmDYbA
Re: アナザーストーリー 2 Name:グーテンベルク
| | たー坊様へ こんばんは。グーテンベルクです。亜紀の「・・・キスでもしませんか?」のところで思わず嬉しくなりました。以前(ドラマ)のこのセリフが出たのは亜紀の病状が悪化し、立ちあがるのがやっとの状態の時だったので、元気な亜紀からこのセリフが聞けて安心しました。卒業式にデート、心があたたまります。今後も体に気を付けて頑張ってください。
|
...2005/03/04(Fri) 19:41 ID:MH8w2KYM
Re: アナザーストーリー 2 Name:北のおじさん
| | たー坊様。
二人だけの東京での生活も終盤といったところでしょうか? 宮浦では友人たちの素敵な計画も順調に進んでいるようですね。 亜紀と朔、二人がびっくりするような卒業式、楽しみにしています。 関東でも雪が積もったようです、体に気を付けて頑張って下さい。
|
...2005/03/04(Fri) 21:37 ID:v0J7l4nQ
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | グーテンベルク様 私もこのセリフは言ってもらいたいなと思っていました。特に観覧車でのことなので、2人にはいい思い出になったかなと思います。
北のおじさん様 東京での生活も終盤といったところでしょうか?とのことですが、もう少し続きます。 卒業式については、もう少しお待ちください。 またお読み頂ければ幸いです。
|
...2005/03/04(Fri) 22:13 ID:x6JmDYbA
Re: アナザーストーリー 2 Name:サイトのファン
| | たー坊さんへ 執筆、お疲れ様です!! 今回もいいですね!! 倒れた後、外泊許可が出てデートした時は スゴク重い雰囲気でしたが サクと亜紀の今のデートは幸せ一杯で 読ませて頂いていて微笑ましくなります。 東京での生活も楽しそうですし 宮浦でのミニ卒業式でも二人は盛り上がるでしょう 続編、お待ちしております!!
|
...2005/03/06(Sun) 02:43 ID:cX./EvI6
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | サイトのファン様 毎回お読みいただいてありがとうございます。 さて、ミニ卒業式まで日数も少なくなってきましたが、故郷の宮浦では着々と計画が進行しております。もうしばらくお待ちください。 東京の期間限定新婚生活はもう少し続きます。しばらくは、そちらをお楽しみいただければと思います。
|
...2005/03/06(Sun) 22:07 ID:TZqVaWY2
Re: アナザーストーリー 2 Name:けん
| | たー坊様 お久しぶりです。けんです。仕事でなかなか見られず今日4話一気に読ませていただきました。龍之介達によるミニ卒業式とても素敵な話ですね。改めてこの5人の関係はとても素敵で羨ましいです。それと谷田部先生・たこ焼パパさん等宮浦の人達の暖かさが伝わって良かったです。朔と亜紀の東京での期間限定の新婚生活は幸せ一杯な感じで、読んでいてこっちまで楽しくなりました。次回からも楽しみにしていますので、執筆活動頑張って下さい。
|
...2005/03/06(Sun) 22:33 ID:gC24x4eE
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | けん様 お仕事のお忙しい中、今回もお読みいただきましてありがとうございます。 ミニ卒業式についてはもうしばらくお待ちください。それまでは期間限定の新婚生活をお楽しみください。私としても、夢島で一気に奈落の底に叩き落された2人に一気に幸せを味わってもらいたいと思っています。 次回もお読みくだされば幸いです。
|
...2005/03/06(Sun) 23:11 ID:TZqVaWY2
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 2人は電車に乗り込んだ。本格的なラッシュの時間帯の前ということもあって、シートに並んで座ることができた。しかし、会話はなかった。 座ってほどなくして亜紀が朔にもたれかかってきた。朔が横顔をのぞくと目をつむっていた。少し疲れたのだろうか、朔の肩を枕代わりにして眠ってしまっている。 その様子を見て少し嬉しそうに優しい目をして朔が微笑みながら小さな幸せをかみ締めていた。
電車は朔の部屋がある街へ。空はすっかり暗くなっていた。 そろそろ亜紀を起こさなければならない。朔の小さな幸せの時間ももうすぐ終わってしまう。
朔「亜紀。」 と呼ぶが反応は無い。
朔「亜紀。亜紀。」 言いながら少しだけ体を揺する。
亜紀「・・・う、うん?あ、ゴメン。寝ちゃってたね。」
朔「疲れた?よく寝てたみたいだけど。」
亜紀「ううん。そんなことないよ。」
朔「本当に?無理するなよ。」
亜紀「ありがとう。本当に大丈夫だから。」 そう言って笑顔を見せた。どうやら本当に大丈夫のようだ。これには朔も安心できた。
朔「そろそろ着くよ。準備しないと。」
亜紀「あ、うん。」
列車がホームに滑り込む。「プシュー」と音がしてドアが開いた。朔が亜紀の手を引いて電車を降り、改札を抜けた。
亜紀が東京に来てから2人でよく買い物に来たスーパーと商店街は活気に満ちている。
亜紀「ねえ、今日のご飯は何にしようか?」
朔「それなんだけど俺が作ってもいい?」
亜紀「え?いいけど何を作るの?」
朔「・・・コロッケ。」
こう言ったのには訳があった。 亜紀が退院の日に朔は廣瀬家の夕食に呼ばれて、綾子特製のカニクリームコロッケをご馳走になったのだった。それがいい例なのように、廣瀬家ではコロッケといえばカニクリームと決まっているために「ジャガイモのやつはあまり食べたことが無いの。」と付き合い始めたときのテープ交換で知っていた朔は、せめて一回でいいから、自分で作ったコロッケを亜紀に食べさせたいと考えていた。
亜紀は、朔がどういった理由からコロッケを作るのかは分からなかったが「いいね。私も食べたい!」と言った。
店内に入り材料を選んでいたが、ふと気が付くと亜紀が見あたらない。朔があたりを見回すと、別にかごを持って品物を見ている。亜紀は亜紀で何か作りたいものがあるようだ。
買い物を済ませて部屋に戻る途中・・・
朔「何買ったの?」
亜紀「うん?さて、なんでしょう?」
朔「秘密なの?」
亜紀「うん。帰ってからのお楽しみ。」
朔「ふーん・・・。」 「なんだろう?」とぶつぶつ考えて歩いている。すると・・・。
朔「ウオッ!!!」 急に背中が重くなり、買ったばかりの材料を落としそうになった。「何だ!?」と思って後ろを見る。顔のすぐ後ろには亜紀の顔。朔の背中に飛びついていた。ニッコリ笑って朔を見ている。いつのまにか朔の首の前に手を回してとても嬉しそうである。
朔「・・・何のマネ?」
亜紀「移植が終わってから、こういうこと一回やってみたいってずっと思ってたの。」
朔「(嬉しいというか、何というか・・・)・・・このまま歩くの?」
亜紀「そうしてもらおうかな。いい?」
朔「いいよ。」 亜紀をおぶったまま歩き出す。 歩を進めると落ちそうになるが、しっかりとしがみついている。
朔「おい亜紀、ひっつきすぎだよ。」
亜紀「いいじゃない。たくさん人がいるわけじゃないし。あ、それとも・・・。」
朔「・・・何?」
亜紀「胸あたる?」 思いっきり図星だった・・・。「何でこうも俺の考えていることが分かるんだ?」と心の中でつぶやく。
亜紀「もう!何考えてんの!?朔ちゃんのバカッ!!」 朔の反応を見ながら言う。そして、首の前にやっていた腕で「ギュ〜」と絞めてみた。
朔「ぐえ。ゴホゴホッ!ちょ・・・苦しい。苦しいって!!」
亜紀「変なこと考えてるからだ!バカバカ、大バカ !!!」
朔「誰も、そんなこと考えてるなんて言ってないよ!」
亜紀「ウソ!顔に出てるよ。何年一緒にいると思ってるの?バレバレのウソじゃない!」
朔「・・・そ、そんな・・・こと・・・。」
亜紀「もう!!朔のバカ!エッチ!変態!」 ひどいことを言っているが笑顔である。口調もどこか優しい。まるで朔とのやりとりを楽しんでいるようである。朔も同じである。
朔「じゃあ、何で降りないの?」
亜紀「・・・温かいから。朔ちゃんの背中って優しいもん。」 なおさらしがみつく。顔を横にして、朔の首の後ろにくっついた。
朔「・・・亜紀。」
亜紀「なぁに?」
朔「・・・ちょっと重たいよ・・・。」
亜紀「ふーん・・・。」 と言いつつ、再び「ギュウ〜」と首を絞める。
朔「ゴホッ!!」
亜紀「失礼ね!!」
朔「ははは。でも本当に・・・良かった。亜紀が元気で。」
亜紀「え?朔ちゃん・・・。」
朔「頼むから・・・足が速いからって俺より先に行くなよ。」
亜紀「・・・行かないよ。そうしたら、この温もりも感じることができないもの・・・。」
さっきからのやり取りは2人にとって何よりの幸せである。「生きてきて最高に幸せだ。」と感じていた。
亜紀「・・・大好き。」
朔「何?急に?」
亜紀「何でもない。」 そう言ってクスッと笑う。
2人は少しだけ遠回りして部屋に戻ることにした。 その間も亜紀は決して朔の背中から降りようとはしなかった。もう一つの天国とも思える場所を見つけたような気がしていた。
亜紀「ところで朔ちゃん。」
朔「今度は何?」
亜紀「胸あたる?」
朔「・・・うん。」 今度は正直に白状した。
亜紀「正直でよろしい。でも、変なこと考えたらダメだからね。」
朔「(釘を刺された・・・。)うん。」
亜紀「・・・そういうことは、2人でちゃんとしてからだよ・・・。」
朔「・・・。」
亜紀「そうだ!コロッケ。期待しているぞよ。どんな味になるか楽しみだよ。」
朔「そなたの口に合うように頑張るぞよ。」
亜紀「うん」 そういって亜紀は笑ってくれた。 背中に暖かさと感じながら歩いていく。2人の鼓動が重なってるようにも感じられた。
部屋に戻ると早速2人でキッチンに並んで料理を始めた。そして、亜紀が朔のためにあるものを 作ろうとしていることに、朔はまだ気付いていなかった。
続く
|
...2005/03/07(Mon) 17:41 ID:Qpt4Cv7A
Re: アナザーストーリー 2 Name:SATO
| | 「胸あたる?」ここで来ましたか! 朔も亜紀も幸せそうで何よりです(ニコニコ・・・)
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...2005/03/07(Mon) 18:27 ID:JTycUfhI
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | SATO様 ご感想ありがとうございます。 17歳のままの2人なら、こういうセリフはありえなかったでしょうが、もう22歳ですからね。ちょっとだけ大人な?会話っぽくしてみました。それでも亜紀が朔を責めるあたりは、夢島のテイストも残してみました。 次回もお読みくだされば幸いです。
|
...2005/03/07(Mon) 18:56 ID:Qpt4Cv7A
Re: アナザーストーリー 2 Name:サイトのファン
| | たー坊さんへ 毎回、心暖まるストーリーを届けて頂き 有り難うです!! 今回もいいですね。 やっぱ、サクと亜紀にはコロッケは必需品ですね。 それに、サクのHな考えは亜紀にはスグに 分かってしまうところは月日が経っても 変わらないですね。 亜紀が何をサクに作ってくれるか? 楽しみです!! 続編、お待ちしております!!
|
...2005/03/07(Mon) 23:15 ID:5QReR1V.
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | サイトのファン様 毎回お読みいただいてありがとうございます。 おっしゃる通り、朔のよこしまな考えなど亜紀には、即バレます。そこは相変わらずなのです。もう少しそこんとこを何とかしろよと突っ込みたくなるほどの変化の無い部分ですね。 次も楽しみにしていただけたら幸いです。
|
...2005/03/07(Mon) 23:58 ID:Qpt4Cv7A
Re: アナザーストーリー 2 Name:hiro
| | たー坊さま 亜紀が朔の背中に飛び乗った時の >朔「ウオッ!!!」 では、第4話、朝練をしている亜紀を見てニヤける朔の自転車の後ろにスケちゃんが飛び乗った時の 「うおっ!」を重ねてしまいました(^^)
ドラマではこの後、スケちゃんの 「あたしゃ寂しいよおまえさぁん・・・」 と続き、最後に朔の 「重っ・・・! くうーっ!(3人乗りでペダルを踏む)」 となる訳ですが、どちらのセリフもここでは危険ですね(^_^;)
|
...2005/03/08(Tue) 00:19 ID:4HgJOn72
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | hiro様 おっしゃる通り今回の亜紀が朔の背中におぶさる場面は第4話をヒントにしてます。 「あたしゃ寂しいよおまえさぁん・・・」を適当に変えたセリフを亜紀に言わせてみても面白かったかもしれません。 またお読みくだされば幸いです。
|
...2005/03/08(Tue) 10:57 ID:VJnkOttQ
Re: アナザーストーリー 2 Name:ゴン41
| | たー坊様 キスの写真を撮ったのは亜紀でしたか。(前話)じゃあ前に亜紀の寝顔を内緒で撮った事は、許されそうです。 電車内で、なかなか起きない亜紀にどきっとしましたよ。(汗 「生きてきて最高に幸せだ」と感じられる事って、本当に素晴らしいことだと思います。
|
...2005/03/08(Tue) 18:14 ID:bkU4aywU
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | ゴン41様
確かに、亜紀の寝顔を撮ったことは許してもらわないといけませんね。まあ、現像してみないとわかりませんが・・・。その時の亜紀の反応が自分でも楽しみです。 また、お読みくだされば幸いです。
|
...2005/03/08(Tue) 22:55 ID:VJnkOttQ
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 朔「ジャガイモとってくれない?」
亜紀「はい。」 と言ってスーパーの袋の中からジャガイモを取り出して朔に手渡す。
朔「あと、衣の準備してくれない?そこの引き出しの中にパン粉とか入っているから。」
亜紀「うん。いいよ。」 肩を並べて料理をしている。 2人での生活が始まってからの食事は、だいたい亜紀が作っている。もちろん朔も「悪いから手伝うよ。」とは言っているのだが、亜紀は「ダメよ。」と言っていた。理由を聞くと、「私の1番の楽しみなんだから。」と笑って言うのだった。亜紀は、もちろん今日も作るつもりだったが、朔も亜紀のために作りたかったため、2人で一緒に台所を立つことを条件に納得したのだった。
亜紀「2人で作るのもいいものだね。楽しいね。」
朔「そう?」
亜紀「うん。すっごく楽しい。ウフフ・・・(笑)」
朔「はは。それならよかった。亜紀が楽しいなら、俺も楽しいよ(笑)」 隣で衣の用意をしながら笑って自分を見て笑いかけてくれる亜紀に「隣にいてくれてありがとう・・・。」と心の中で感謝している朔がいた。もちろん、照れくさくて自ら口に出すことはできない・・・。
コロッケの中身を作っていく。 ふと、朔があることに気付いた。
朔「あれ?何か多いよ。」 隣に用意されたパン粉などが多い量であるのを見て聞いた。 亜紀は、今度は自分で作るモノの準備に取り掛かっている。 作業の手を止めて朔を見ながら言った。
亜紀「あっ、いいの。いいの。私が使う分も一緒に用意したから。」
亜紀の姿を見て、朔は一瞬、嬉しさと懐かしさの交錯したような不思議な気持ちを感じた。亜紀の頭を見ると、後ろで髪をまとめていて、高校時代のようにポニーテールになっている。エプロン姿なので、外泊許可が出たときに朔の家に来て富子と料理を作った時を思い出す・・・。そして言った。
朔「なあ亜紀、宮浦に帰ったら、時間があるときでいいから、家に来て夕飯作ってくれないかな。」
亜紀「本当?私も、また朔ちゃんの家でおじさん、おばさんに芙美子ちゃん、皆でご飯を食べたいって思ってたの。」
朔「うん。正月に朝ごはん作ってくれただろう?それで、あの時みたく夕飯も食べたいんだけど・・・。いいかな?」
亜紀「喜んで。(笑)でも珍しいね。」 作業を続けながら言った。
朔「何が?」
亜紀「朔ちゃんが私に何か頼み事するなんて、今までない気がするよ?」
朔「そうかな?」
亜紀「その分、私が、いっぱい、いっぱいワガママ言ってきたんだよね。」
朔「そんなことないよ。」
亜紀「だって、よくよく考えてみたら、『コロッケパンが食べたい』とか、入院してるのに『パスポート用写真を撮って』とか、『ウルルに行きたい』やそのために『家に入って私の衣類を持ってきて』とか・・・。すごく無茶苦茶なこと言ってきたんだね。私。ごめんね。朔ちゃん。」
朔「もういいよ。そのかわり、俺もいつか、わがままを言わせてもらうから。」 コロッケを揚げながら言うのだった。
しばらくして、いいきつね色をしたコロッケが揚がった。朔の愛情が詰まった特製である。 それを見て
亜紀「おいしそうだね。う〜ん、いい色(笑)さすがだね、朔ちゃん。」 見ただけでおいしさが伝わってくるようなできばえに、味の方にも亜紀は期待しているのだった。
朔「亜紀も揚げ物だろ?交代しよう。」
亜紀「あっ、ありがとう。」 立ち位置を交代して、今度は亜紀が仕上げに入った。隣では朔の包丁がリズミカルに音を立て、添え物のキャベツを切っている。食器の準備も終え、「そろそろ揚がった?」と聞くが・・・。
亜紀「・・・。」
朔「どうしたの?運ぼうよ。」
亜紀「ごめん。失敗しちゃった・・・。」 言われて揚がった亜紀の料理を見ると、若干ではあるが形が崩れている。それでも十分美味しそうではあるが、作った本人は納得してないらしく、落ち込んでいる。
朔「どこが?美味そうじゃない。つまみ食い。」 揚がったばかりの料理を手で口に運ぶ。
亜紀「やめてよ。そんなの絶対美味しくないよ・・・。」 と言うがもう遅い。
朔「全然失敗じゃないよ。美味しいよこれ!」
亜紀「無理しなくていいよ。」
朔「本当だって。」 言われてはみるが、やはり納得できない。 朔は、ちょっとだけ俯いた亜紀を準備のできたテーブルへと連れて行った。
朔「食べよう?な。」
亜紀「うん。やってしまったものは仕方ないものね。」
2人「いただきます。」
テーブルに置かれた皿には、朔のジャガイモのコロッケと、亜紀のカニクリームコロッケが仲良く仲良く並んでいた・・・。
亜紀「やっぱり美味しいね。」
朔「ならよかった。作った甲斐があったよ。」 朔のコロッケを一口食べて、思わず笑顔になったのを見た朔もひと安心である。
朔「カニクリームの方が美味いよ。」
亜紀「ホント?」
朔「ホントだよ。」 言われて、亜紀は一口食べてみる。すると割りと美味しいと思えた。
朔「亜紀、どこが失敗なんだよ?最高だよ。また今度作ってくれよ!」
亜紀「うん!ちょっと自信が出てきた。ありがと。」 朔に絶賛されて、少し恥ずかしくはあるが嬉しかった。
朔「ところで、何で今日、カニクリームを作ろうと思ったの?
亜紀「何か、お祝いしようと思って。2人だけのお祝い。」
朔「???」
亜紀「だって東京での初デートだし。それに、朔ちゃんが宮浦に帰ってくるし、私は大学に合格したでしょ?なんか、嬉しくって(笑)」 ニッコリと笑顔を作った。
その後も温かい夕食の時間は続いた。今日はコロッケパーティーである。お互いの料理に舌鼓を打った。 そして・・・。
亜紀「またここに写真が増えるんだよ。」
朔「まだまだ。いっぱいになるまで何ページもあるよ。 風呂あがり。 髪を乾かしながら朔が言う。 亜紀は先に足だけベッドに入って2人の思い出アルバムも見ている。
亜紀「さっきはありがとう。カニクリームを美味しいって言ってくれて。」
朔「本当に美味かったんだよ。」
亜紀「次はもっと美味しく作るからね。」
朔「亜紀の作ったものは本当に美味しいよ。何でも。」
亜紀「何でも?本当?」
朔「うん。」
亜紀「ありがとう。優しいね。でも、無理しないでね・・・。」 今日も朔の愛情からくる優しさに救われたような気がすると思っている・・・。
亜紀「朔ちゃん。早くおいでよ。私が入ってたからあったかいよ。」
朔「今行くよ。」 ほどなくして、いつも通り朔が入ってくる。すると急に亜紀が表情を変えた。ゆっくりと真顔で話し始めた。
亜紀「朔ちゃん。無理しないでって言ったけど、お願いがあるの・・・。」
朔「えっ、何?」
亜紀「・・・話して欲しいの。離ればなれになっていた時に、朔ちゃんが辛かったなって思うことを全部・・・。」 思わぬ亜紀の言うことに戸惑った朔は「・・・何で?」とだけ聞いた。
亜紀「朔ちゃん、隠し事してるもの。私が言ったの覚えてる?お正月にアジサイの丘で『隠し事はナシにしたい』って・・・。よく考えたら、私しか愚痴を言ったり、泣きついたり、わがまま言ったりしてないよね。・・・そういうのって、絶対朔ちゃんにもあったはずだもの。朔ちゃんの口から聞きたいの・・・。」
朔「・・・。」
亜紀「絶対に何かあるって、前から感じてた・・・。朔ちゃんだから知りたいの。教えて欲しいの。」 真剣なまなざしで朔の目を見据える。 朔は一瞬迷った。「必要以上に亜紀に心配かけたくない。」という思いが心には常にあったからだ。しかし、亜紀の真剣さに口を開くことにした・・・。
朔「・・・亜紀は俺がいない間、何が一番辛かった?」
亜紀「・・・朔ちゃんがそばにいないこと。」
朔「他には?」
亜紀「テープに吹き込んでも、返事が来るのに時間がかかったこと。何より、夜寝たら2度と朔ちゃんに会えなくなってしまうんじゃないかって・・・。声が聞けなくなるんじゃないかって、手を握り合えなくなるんじゃないかって・・・。」 次第に亜紀の声が震えてきているのを感じていた。 朔は亜紀の手を握って肩を抱き寄せながら話し始めた・・・。
朔「俺も亜紀と同じだよ・・・。この部屋で暮らしはじめたとき、毎晩ベッドに入って目を閉じると元気なときの亜紀が浮かぶんだ・・・。防波堤に座ってたり、一緒にたこ焼き食べてたり、アジサイの丘に行ってたり・・・、結構、デートとかしてるんだ。でも、目を覚ますと現実に引き戻されるんだ。学校から戻って来た時、たまに、ポストの中にテープの入っている封筒を見つけるとがっかりするんだ。『すぐに会える所に亜紀はいない。俺は東京にいて、亜紀は病院のベッドの上でクリーンユニットの中。時々、人工呼吸器をつけているんだ』って・・・。」
亜紀は朔の目に光るものに気付いた・・・。 朔はうつむき、ゆっくり目を閉じて少しずつ思い出しながら、なおも続ける。
朔「時々、テープって、希望だけじゃなくて絶望も運んでくるんだ・・・。」
闘病生活中の2人を繋いだテープ。亜紀には希望だけだが、弱々しい声で吹き込まれた亜紀の声を聞くたびに、朔には絶望も一緒に運んで来たのだった。
朔「机の引き出しの中には、弱々しい声の亜紀が一生懸命に録音してくれたテープがしまってあるんだ。正直言って、もう一度聞くのはちょっと・・・。」
亜紀「朔ちゃん・・・。」
朔「最初の2年半くらいはずっとそんな感じだった。骨髄バンクができて、移植が決まったときから、だいぶ楽になったんだよ。これで亜紀が助かるって。また手を繋げる。また遊べる。またデートできる。また『朔ちゃん』って呼んでくれるって・・・。」
亜紀「うん。」 溢れ出した涙を拭わずに亜紀は話を聞いている。
朔「でも、移植が成功した後にある夢を見るようになったんだ・・・。」
亜紀「何・・・?」
朔「・・・亜紀が遠くに行っちゃう夢。退院したはずの亜紀が俺の目の前に立っているんだけど・・・なぜか俺の名前は呼んでくれないんだ。周りの皆とは話しているのに・・・それで・・・。」
言葉に詰まる朔がいた。ツーと涙が頬をつたっている・・・。
朔「亜紀が遠くの方に行ってしまうんだ・・・。突然現れた暗闇の方に・・・引き込まれてしまうような感じなんだ・・・。」
亜紀「・・・。」
朔「その夢を見るたびに・・・『どうして亜紀が病気にならないといけないんだ!!』『何で俺から亜紀を引き離すんだ!!』『亜紀をかえせ!!』・・・そんな事を何度か繰り返して目を覚ますんだ・・・。一週間ぐらいだけだったけど・・・それが・・・1番、きつかった・・・。」
初めてそのことを聞いた亜紀は声を殺すように泣いていた・・・。
朔「そんな事があったから・・・、それを必死に振りきろうとして・・・、亜紀は絶対助かるって・・・そう強く信じたんだ。だから・・・必死になって勉強・・・できた・・・。」
朔が泣いている。ふと気づくと亜紀が声を殺して泣いていることに気づいた。たまらず握っていた手を引き寄せて亜紀を抱きしめた。そして言った・・・。
朔「・・・一緒に泣いてくれてありがとう。笑ってくれてありがとう・・・喜んでくれてありがとう・・・悲しんでくれてありがとう。今、この瞬間を、生きていてくれて・・・ありがとう。」
亜紀「朔ちゃん・・・。朔・・・朔ちゃん・・・。」 耐え切れずに亜紀は声を出して泣いた。そして、泣きながら朔の名前を呼び続けた・・・。
朔「もう俺・・・全部話したよ・・・楽になったよ・・・。」
亜紀「ごめんね・・・本当にごめんね!長い間、本当に、本当に・・・無理・・・してたんだね・・・。」
朔「亜紀は・・・?まだ、無理してること・・・ない?」
亜紀「ううん・・・ないよ。」
朔「何でもいいから、言えよ・・・。ありのままの亜紀でいて。そのまんまの亜紀が・・・いいから・・・俺・・・。」
亜紀「・・・鼻の下に・・・ニキビとかできてもいい?」
朔「いいよ・・・。」
亜紀「タコは?」
朔「水虫も・・・いいよ。」
亜紀「・・・ない!」 抱き合いながら、泣きながら、懐かしいセリフをくりかえす・・・。
亜紀「朔ちゃん・・・話してくれて・・・ありがとう。これでもう隠し事はないよね?」
朔「・・・ないよ。」
亜紀「お願い・・・無理しないで・・・。私に『無理するな』って言うのに・・・朔ちゃんばっかりが無理するのずるいよ・・・。朔ちゃんが隣にいてくれるだけでいいの・・・。私は、ありのままの朔ちゃんが・・・大好き・・・なんだから。」
朔「・・・うん・・・ありがとう。」
亜紀「・・・朔ちゃん。」
朔「名前・・・呼んで・・・『朔ちゃん』って・・・。」
亜紀「朔ちゃん・・・。」
朔「もう・・・一回。」
亜紀「朔ちゃん・・・。」
朔「もう一度。」
亜紀「朔ちゃん。・・・『亜紀』って呼んで・・・。」
朔「亜紀・・・亜紀・・・亜紀・・・。」
亜紀「もう一回だけ・・・。」
朔「亜紀・・・。」
名前を呼ぶだけでも幸せだった・・・ 朔の腕の中で、温もりを噛みしめて泣きながら言う亜紀に、朔も無理をしないことを約束した・・・。 声を漏らすように泣く亜紀。声を押し殺すように泣く朔。 そして亜紀が言った・・・。
亜紀「朔ちゃん・・・キス・・・でもしませんか? ううん・・・キスして・・・。」
朔「・・・。」
亜紀「朔ち・・んっ・・・。」 長い沈黙。亜紀が名前を呼びかけた時に、朔は唇を重ねてきたのだった。 ・ ・ ・ 今までで一番長い、キス・・・。 そして、
亜紀「私のこと、嫌いにならないでね・・・。離さないでね・・・。これからも・・・側にいてね。」
朔「すっと一緒にいて・・・。亜紀が大好きだから・・・。」 普段は言葉にできない秘められた想いを口にした瞬間だった。亜紀の止まりかけていた涙が再び流れ出す・・・。
亜紀「ありがとう・・・」
この言葉を聞いた朔は、力一杯抱きしめた。亜紀も精一杯朔の背中に手を回した・・・。 2人でずっと歩いていきたい・・・。互いにそう願った・・・。 そして、2人はいつも以上に抱きしめあいながら眠りについたのだった。
翌朝・・・
亜紀「朔ちゃん!朝だよ!起きて。」 朔の目の前で亜紀が言う
朔「もうちょっとだけ・・・。」
亜紀「ダメよ!起きなさい!朔!!!」 昔からこう呼ぶと朔は必ず起きるのだった。 朔「あ、おはよう。亜紀」
亜紀「おはよう。朔ちゃん。朝ごはん食べよう。」
朔「うん。」
いつものようにニッコリ笑って朔に微笑みかけた。 でも、少し目がはれている。それは朔も同じだった。 そして、昨夜、何もなかったように朝食を食べる2人。でも、今までより絆が強くなってむかえた朝。、太陽の暖かい光が今までと違うと感じる朔と亜紀だった・・・。
続く
|
...2005/03/09(Wed) 01:22 ID:unzAnmYk
Re: アナザーストーリー 2 Name:けん
| | ター坊様 こんばんわ。けんです。今回2話連続読ませていただきました。今回の亜紀と朔の会話いつも以上に幸せを感じましたね。亜紀とが朔にオンブするシーンなんて読んでいて思わずニャついてしまいました。それとやっぱり朔と亜紀にとっての食事はコロッケですよね。そして、二人がキスするシーンはまさに2話のアジサイの丘でのキスの再現ですね。しかも今までで一番長いキス。それだけ、二人の絆が強くなったのですね。なんだか今回のお話はドラマの台詞が多く出ていて懐かしくもあり、感動もありとても良かったです。またこのようなお話を楽しみにしていますので、執筆活動頑張って下さい。
|
...2005/03/10(Thu) 00:27 ID:cCREla/2
Re: アナザーストーリー 2 Name:にわかマニア
| | >やっぱり朔と亜紀にとっての食事はコロッケですよね。
「イモのコロッケが食べたい」と交換テープにまで吹き込んだ亜紀ですが,いざ台所に立った時に作ったのはクリームコロッケの方でしたか。やっぱり,「母娘相伝の味」なんでしょうね。 それとも,「イモの皮が剥けないから」なんて突っ込みは禁句ですよね(^^ゞ
|
...2005/03/10(Thu) 04:51 ID:USWawJrQ
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | けん様 お仕事お疲れ様です。毎回のご感想ありがとうございます。 おっしゃるとおり、朔と亜紀にコロッケは不可欠ですね。せっかく2人きりなんですから、一度はこういう場面をいれたいなと思い、形にしました。 またお読みくだされば幸いです。
にわかマニア様 おっしゃるとおり、亜紀特製コロッケはカニクリーム限定ということでお願いします。 「イモの皮が剥けないから」とのことですが、厳密に言うと「苦手」だからということにしてあげて下さい。亜紀なりに朔のため練習してたんですから。 「母娘相伝の味」これは当然ですね。 でも朔は、亜紀の手料理がどんなに不味くても、「美味しい」って言ってあげると思います。
|
...2005/03/10(Thu) 21:44 ID:y62XeVeg
Re: アナザーストーリー 2 Name:北のおじさん
| | たー坊様。
二人のお互いを思う気持ち、読んでるこちらまで涙が出そうになりました。今まで以上に強くなった二人の絆、これから先の展開が楽しみです。
にわかマニア様。
やはりそれは禁句だと思います。 「(`´)/□ イエローカード」「ピッ!!」なんて(笑)
|
...2005/03/10(Thu) 21:45 ID:MWRmW0G.
Re: アナザーストーリー 2 Name:グーテンベルク
| | たー坊様へ こんばんは。グーテンベルクです。お互いを思いやる2人がありありと表現されていますね。本当に理想的な恋人関係だと思います。相手を大切に思えば思うほど大きくなる失う不安や恐怖。でも、それに打ち勝つ強さと優しさが伝わってきます。本当に素晴らしい物語ですね。これからも頑張ってください。
|
...2005/03/10(Thu) 22:16 ID:DvMvJWL2
Re: アナザーストーリー 2 Name:にわかマニア
| | 奇跡の生還を果たした2つの「アナザー」もののいずれも,「それでも喪う」ことへの不安が語られています。大病を患ったからこそ持てた「思いやり」の気持ちが巧く表現されているなと思いました。 亜紀の料理の腕前ですが,原作だと,連休の動物園行き(67頁以下)で弁当を作って持っていくことを提案し,実践しているし,夢島でも食事の支度(105頁以下)は分担していましたね。第5話の「あのシーン」の強烈な印象に比べれば,そこそこの腕前はあったようですね。
|
...2005/03/11(Fri) 00:54 ID:zLiXDAHw
Re: アナザーストーリー 2 Name:ゴン41
| | たー坊さま。 深夜にお邪魔します。はーあせった。以前にも一度ありましたが、またまたついに結ばれるのかと思ってしまいました。 朔も亜紀も、想いの丈を吐出しましたね。亜紀のお願いで。そしてお互いを思いやる気持ち、とても感動的でした。引き続き楽しみにしております。
|
...2005/03/11(Fri) 03:00 ID:UD7kYtfE
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 北のおじさん様 お読み頂きましてありがとうございます。 2人の絆は、長い時間を経てますます強くなっていっています。そして、そろそろ宮浦に帰る日が近づいてきています。 またお読み頂ければ幸いです。
グーテンベルク様 おっしゃる通り理想の関係です。この時点で、もうお互いの存在は2人になくてはならないものになりましたが、まだまだ問題は降りかかることが予想されます。しかし、乗り越える強さも持ち合わせるようになりました。 グーテンベルク様も多忙みたいで、なかなか大変そうですが、私も一読者として楽しみにしております。お互いに頑張っていきましょう。
にわかマニア様 亜紀の料理の腕前については、TVをベースに構想している私の物語の中では、5話の夢島で見せたイモの皮むきのとおり、マイナスからのスタートでしたが、「朔のために」という気持ちから、原作より若干落ちるレベルくらいには上がってきていると思います。
ゴン41様 お疲れ様です。深夜にもかかわらずお読み頂きましてありがとうございます。 ご心配には及びません。2人が結ばれるのはまだまだ先の話です。 また、お読み頂ければ幸いです。
|
...2005/03/11(Fri) 13:06 ID:qv8/L68E
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 3月下旬。
明日はとうとう宮浦に帰る日である。朔の部屋にはいくつかのダンボールが積まれている。 時間はもう10時をまわっていた。 ひとつだけ点っている灯りの下、朔と亜紀はベッドに入り首まで布団をかけている。
朔「とうとう最後だね。2人で生活してどうだった?」
亜紀「とにかく毎日楽しかったの。デートした時はもちろん、ご飯を作るときも、洗濯にお掃除。夜、こうして朔ちゃんとベッドに入って眠るまで。何をするにも楽しくて楽しくて。」 亜紀は心底そう思っていた。理由は朔を思う気持ちがあるのは当然だが、朔と1日中一緒にいれたことが大きいようである。
朔「じゃあ良かった。俺も亜紀が笑っていてくれたから・・・。」
亜紀「笑顔は大切だよ。」
朔「そうだね。」
亜紀「でも、宮浦に帰ったらお互い忙しくなっちゃうよね。なかなか会えなくなっちゃうのかな・・・。」
朔「会おうと思えばいつでも会えるよ。電話くれよ。」
亜紀「ありがとう。じゃあ、無理しないからね。」
朔「うん。それでいいんだよ。」 2人はにっこり笑いあった。
朔「でも、あれだね。結婚したら毎日こんな感じだなのかな・・・。」 デレ〜として顔が緩みっぱなしの朔。いつかは叶えたい夢のひとつである。 そんな朔を見て亜紀は
亜紀「たぶんね!」 と言って笑ってあげた。夢島での懐かしいセリフに思わず嬉しくなった。
朔「え?」
亜紀「将来、もし私と朔ちゃんが結婚できたら、毎日楽しくて、この部屋にいる間のように、ゆっくり、のんびりと生きていけると思うよ!」 ちょっと恥かしがりながらも、本音を伝えた。 朔の顔には満面の笑顔が。
亜紀「だって、何か新鮮だったもの。何かこう・・・新婚生活ってこういう感じなのかもなって思ったの・・・。」 顔を赤くしながら言った亜紀を見た朔は自分と同じように思ってくれたことに感動していた。 すると・・・
亜紀「やろっか?」
朔「え?何を?」
亜紀「誰にも邪魔されない部屋で2人で暮らしていて、夜に一緒にベッドの中。しかも、新婚生活みたいなんだよ。こんな時にやることってひとつしかないじゃない。」
朔「・・・いいの?」
亜紀「・・・うん。」 朔は亜紀の言ったことが信じられないといった様子だったが、1秒ごと状況を把握する事ができた。
朔「・・・。」 突然のことに朔は体が熱くなってるように感じた。亜紀の両肩のすぐ横に自分の両手を置いた。亜紀はゆっくりと目を閉じた。
朔「(とうとうこの時が来たんだ・・・。)」 と下心の一方で、
朔「(でも、ムードは大事にしなくちゃ。亜紀、ありがとう・・・。)」 と半ば混乱しているような状態。でも、生唾が「ゴクッ」と音を立てて喉を流れていくのを感じた。心臓は「ドクンドクン」となり、心拍数は一気に上昇していく・・・。
朔「亜紀・・・。」 とつぶやいた。亜紀は唇を朔の方へむけた。朔も顔を近づけながら目を閉じた。
すると・・・。
朔「痛っ!!」 驚いて目を開けると、亜紀が朔の鼻を亜紀がつねっていた。
朔「???」
亜紀「ウフフフフ!よかった。引っかかってくれて 。変わらないね。朔ちゃん!」
朔「あ・・・なんだよ〜それ!」 すべてを理解した朔はさっきまで横になってたところに戻った。
亜紀「この前のデートのときに言ったでしょ!『そういうことは2人でちゃんとしてから』って。」 言いながら笑っている。
朔「・・・。」
亜紀「ほら、明日は早いよ。もう寝よう。ね?」
亜紀に背を向けて 朔「おやすみ。」 と言った。
亜紀「・・・怒ってる?」 不安げに聞いた。
朔「怒ってないよ!」
亜紀「・・・やっぱり怒ってる・・・。ほら、朔ちゃん。」
しかし、朔は「はぁー」とため息をつくだけで、ふてくされている。
亜紀「・・・ゴメンね。」 と言って朔の肩をつかんだ。
朔「・・・分かったよ。」 と言って亜紀のほうに向いた。そして顔を近づけた。亜紀も受け入れて仲直り。
亜紀「おやすみ。」 そういって幸せそうな笑みを浮かべ目を閉じたのを見て「おやすみ」と言い、朔も眠りについた。
翌日。 故郷へと向かう車内。ウルルに向かうあの時と同じように亜紀は朔にもたれかかって話している。
亜紀「帰ったらどうしようか?」
朔「時間があるときは会いたいんだけどいいかな?」
亜紀「うん!じゃあ、早速明日ね!」
相模湾が見えてきた頃、売店で買ったお弁当をほうばった。すこしづつ交換しながら、「おいしいね。」と言いながら食べる。
亜紀「はい。あーん。」 と言って、朔の口に箸を運ぶが・・・。
朔「いや、亜紀、それはちょっと・・・。」 先頭車両に乗り込んだため他に人は見当たらない。
亜紀「冗談よ。さすがに、これは恥かしいよ・・・。」 朔もホッと胸をなでおろすのだった。
あっという間に時間は過ぎ、宮浦についた。 駅で降りたのは朔と亜紀の2人だけ。 オレンジ色に染まった空と故郷の風景と匂いが迎えてくれた。 ふと、亜紀があるものを指さした。朔の手を引いて行く。そして腰を下ろした。 そう。あるものとは、あの日2人で座ったあのベンチ・・・。
朔「帰ってきたなぁ。」
亜紀「4年間お疲れ様でした。私のためにありがとう。」
朔「亜紀・・・。」
亜紀「おかえり。おかえりなさい朔ちゃん!」
朔「ただいま。亜紀!」 そういって2人は笑い合った。
朔「よし。帰ろうか!」 と言って立ち上がるなり階段に向かって走り出した。
亜紀「あ、待って朔ちゃん!私を置いていくつもり!?」 と叫んで朔の後を追った。 朔は階段の上で笑って待っていてくれた。上がってきた亜紀の体を受け止めると、手を繋ぎ、前後に大きく揺らして出口に向かった。 駅前には人はいなかった。静かな故郷の夕方。
亜紀「えいっ!!」 朔の背中に再び亜紀が飛び乗った。
朔「亜紀、どうする?」 笑いながら聞いた。
亜紀「このまま、私の家まで送って。」
朔「いいよ!ほら。捕まって。」
亜紀「うん!」 そして嬉しそうに朔の前に手を回した。
亜紀「おかえりなさい。朔ちゃん・・・。」 温もりを感じながら聞こえないようにそっと言った。
一方、そんな後姿を見守る人影が・・・。 真と綾子だった。実は、少し前から2人を車で迎えに来ていたのだった。
綾子「無駄足になっちゃたわね。」
真「まあ、しょうがないさ。」
綾子「でも、亜紀ったら。」 とても嬉しそうに笑う娘をみて微笑んでいる。
真「まったく、不愉快だな。」 といいつつも穏やかな顔である。
綾子「こうして手を繋ぐ相手を探してきたんですね。亜紀は。」
真「ああ。わが娘ながら、いい相手を探してきたもんだ。」 いいつつも少し寂しげである。
綾子「朔君のこと、認めているのよね?」
真「・・・ああ。」
綾子「そう・・・寂しいわね。」
真「でも、そうやって親離れしていくんだろうなぁ。」 ちょっと笑って言った。
綾子「久しぶりにどこか行きましょうか?」
真「2人きりでか?」
綾子「若い人たちだけがデートしていい決まりはないでしょう?」 微笑んでいる。
真「そうだな・・・。なんか嬉しそうだね。」
綾子「娘だけじゃなく息子も帰ってきたような気がして・・・。そう思わない?」
真「近い将来、そうなるかもしれないね。じゃあ、亜紀は朔に任せて行こうか。」 車に乗り込み綾子を助手席に乗せ、真が車を出した。
一方・・・。
朔「亜紀。」
亜紀「ん?なに?」
朔「重いような・・・。」
亜紀「ふーん。へぇー・・・。」 この前より強めに首を絞めた。
朔「ガハッ!!ゲホゲホ!!し・・・絞めすぎ・・・。」
亜紀「もう!でも許してあげる。」 にっこり笑った。 朔には亜紀の吐息が感じられた。
ふと、一台タクシーを見つけた。 朔「荷物もあるし、タクシーで帰ろうか?」
亜紀「ううん。歩こう。・・・デートの時間は長いほうがいいなぁ・・・。」 横を向いて背中に頬を寄せた。
朔「じゃ、行こうか。」
亜紀「明日は晴れるかなぁ。」
朔「晴れるよ。きっと。」
故郷の街角に若い2人の楽しげな声が聞こえる。 オレンジ色に染まる景色の中、再び故郷での、朔と亜紀の時計が動き始めた・・・。
続く
|
...2005/03/11(Fri) 21:32 ID:qv8/L68E
Re: アナザーストーリー 2 Name:SATO
| | 朔、お帰り このひと言に尽きる感動的なストーリーでした。 亜紀父・真の「不愉快だ」味があってよかったです。
|
...2005/03/11(Fri) 22:23 ID:/JHeNua.
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | SATO様 お読み頂きましてありがとうございます。 これで、ようやく朔は本当の意味で宮浦に帰ってくることが出来たと、私自身考えております。 やはり、朔と亜紀は故郷の自然の景色が、よく似合うのではないかと思います。 またお読み頂ければ幸いです。
|
...2005/03/12(Sat) 17:44 ID:aMsyYUfk
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 宮浦に帰ってきてから3日が経った。 今の時間は朝8時を少し回っている。一昨日に到着した荷物の整理が昨日の夜までに終わった部屋で、朔がベッドの中で目を覚ました。
朔「・・・・・・・・・。」 頭を掻きながら部屋を出て、洗面所で顔を洗ってから台所へ行き、冷蔵庫から牛乳を取り出して飲む。
潤一郎「何だ。やけに早いな。」 朝食を取っていた潤一郎が声を掛けた。
朔「うん・・・。ここのところ、今くらいに亜紀に起こされてたから・・・。」
???「ったく。東京で良い思いをしてきたみたいだな?おまいさん。」
???「本当よね。どうせ新婚生活みたいに思ってたんでしょ?」
まだ眠い目こすりながら状況を把握する。そして、 「2人とも朝から人の家で何やってんだよ?」と言った。
龍之介「うほっ!おじさん、この漬物ウマいっすね!!」
智世「あ、本当だ!」
潤一郎「女房がな、この前買ってきたらしいんだよ」
智世「へぇ〜。」
すると台所から 富子「2人とも遠慮なんかするんじゃないよ!ウチで朝ご飯食べるなんて久しぶりなんだから!!」
龍之介「遠慮なんてしましぇーん!!」 と、おどけていると朔が、
朔「あ、スケちゃん。それ俺の茶碗。・・・ところで、何で俺の家で朝ご飯食べてんの?」
智世「細かいこと気にしない!」
龍之介「そうだ!頭が硬いこというなよ。朔。なぁ、芙美子?」
芙美子「そうそう。」
朔「・・・・・・・・・。」 早朝から龍之介と智世の高いテンションに、朔だけがついていくことができなかった・・・。
朔の部屋にて。 テーブルを囲みながら3人で話している。
龍之介「まずは、おかえんなさい。おまいさん。」
智世「ホント。お疲れさま。」 龍之介と智世が穏やかにねぎらいの言葉をかけた。
朔「俺の方こそ、東京に言ってる間は、皆に亜紀のこと支えてもらって。何ていうか・・・こちらこそありがとう。おまけに、家具を運ぶの手伝ってもらったりして・・・。」 実は朔が東京から持ち込んだ荷物の整理は、龍之介と智世が手伝ってくれたのだった。さらに、ついでと言わんばかりに、古くなったふすまの壁紙の交換、高校時代まで部屋にあったアイドルレコードやプラモデルなどは、全て物置に封印。部屋の大掃除まで手伝ってくれたのだ。
龍之介「いいってことよ。じゃあ、今度パパさんで俺と智世におごれよ。」
朔「いいよ。コーラもつけるよ。」
龍之介「コーラ?チッチッチッ!なぁ、おまいさん。もう22歳。俺たち高校生じゃないんだぜ。コーラじゃなくてビールの間違いだろ?」 人差し指を立てて左右に動かしながら、ちょっと悪そうな顔をして要求した。
智世「私はコーラでいいから。」
朔「まったく。カップルでちゃっかりしてるな。」 苦笑するものの、あらためて帰ってきたことを実感することのできる幼馴染み2人のしぐさにどこか嬉しさを感じていた。 談笑が一段落したところで、智世が切り出した。
智世「それでね、朔。本題なんだけど。」 といってテーブルの上に一枚の紙を出した。
朔「何これ?」
智世「いいから、見て。」
朔「???」 手に取った紙の一番上には「第一回 宮浦高等学校 特別ミニ卒業式 計画書」と書かれていた。当日の個々の役割と段取りなどが、かなり細かく記されている。かなり深く検討したことが何ヶ所もある字を消した跡から窺えた。
隅々まで注意深く見る朔に 龍之介「どうよ?参加してくれるよな?」
智世「龍之介の発案なんだよ。ちゃんとした卒業式ができない亜紀に為なんだけど、どうかな?」
朔「・・・。ありがとう。ぜひ参加させてもらうよ。」 朔は思い出していた。亜紀が自ら命を絶とうとした時に言った言葉を・・・。『みんな卒業して、社会に出て、結婚して、羨ましがって、僻んで・・・』 朔はあの時の亜紀の顔が忘れられないでいた。 今回で、1つだけではあるが解消できるからこそ、朔は今回の計画に参加することにした。
龍之介「ようし!そうこないとな!」
智世「じゃあ、これ。」 そういうと、朔に「役割(朔用)」と書かれた紙を渡した。
智世「当日は、この通りに動いてくれたらいいから。」
朔「・・・分かった。」 紙に目を通しながら言った。
龍之介「じゃあ、俺たちは谷田部先生と細かい打ち合わせがあるから行くよ。ほら智世。」
朔「えっ!?先生も協力してくれてるの?」
智世「・・・朔、忘れた?先生もこの計画に参加しないといけない理由があるのよ。」 そういうと、朔に耳打ちした。
朔「そっか・・・。あ!スケちゃん、ちょっと待って!」 今度は、部屋から出ようとした龍之介を朔が呼び止めた。
最初に渡された紙を指差しながら、「最後に写真館で記念撮影するんだよね?」と聞いた。
龍之介「ああ。そうだよ。」
朔「じゃあ、その時はスーツかなんかで正装するの?」
龍之介「ああ。撮影の時くらいはそうする予定だけど?」
朔「できれば、最後にもう一枚撮りたいんだけど。亜紀と智世は別の衣装で。」
智世「え?何の衣装?」
朔「亜紀は・・・卒業式以外にも一生に一度だけの経験を他にもしてないんだ。それが・・・。」 そう言って、2人に耳打ちした。
龍之介「なるほどな。いいぜ!」
智世「私も是非やりたいけど、衣装はどうするの?」
朔「俺が責任持って調達するから頼むよ。」
智世「よし。わかった。それも計画に追加しよう!いいよね?龍之介?」
龍之介「ああ。それじゃあ、朔、当日な。後は俺たちでなんとかするからよ。」
智世「ボウズと亜紀のお父さんとお母さんに話がついたら電話するよ。」
朔「ありがとう。よろしく頼むよ。」 そう言い残して2人は部屋から出て行った。
その夜、智世から電話が掛かってきた。「うまく段どりができたから。」という報告だった。 そして実行日は3月28日に決まった。そして会場は、かつて、朔と亜紀と智世にボウズがクラスメートとして学んだ教室を谷田部先生が用意してくれたのだった。 いよいよ、亜紀にとって最高の1日になるであろう日が近づいていた。
続く
|
...2005/03/12(Sat) 20:43 ID:aMsyYUfk
Re: アナザーストーリー 2 Name:にわかマニア
| | 起き抜けに牛乳を飲むサク,「この○○ウマいっすね!!」と叫ぶスケ,いずれも第1話の前半のシーンが浮かんできますね。自らは「式」と名のつくものには出たことのないスケちゃんが亜紀の卒業式のために奔走する姿って微笑ましいですね。共に亜紀の闘病生活を支え合った仲間たちだからこそ,こんなふうになれるのでしょうね。 ところで,智世の「へぇ〜。」に思わず別の局の別の番組を思い浮かべてしまったのは,私だけでしょうか。
|
...2005/03/12(Sat) 21:40 ID:pZkbYklU
Re: アナザーストーリー 2 Name:ボウズバン
| | たー坊様
しばらくぶりに書き込みします。テストでここのところこのサイトから離れていましたが、やっぱりすてきな話です。 アキの「胸当たる?」発言、思わず映画のあのシーンを思い出してしまいました。おそらくそれをいしきされててのことだと思いますが、ドラマのほうでもぜんぜんアリだとおもいます。いや、いたずらなアキにぴったりのせりふですね。二人のほのぼのとした様子が目にうかびます。 スケちゃんと智世と再開して、いよいよ卒業式ですね。どんなものになるかたのしみです。
|
...2005/03/13(Sun) 02:04 ID:XqT4j/yw
Re: アナザーストーリー 2 Name:ゴン41
| | たー坊さま。 こんにちは。最近、UPのペースが速いですね。 体調も万全の様で安心してますよ。 今回のストーリー感動しました。生まれ故郷にずっといる幼馴染み、親友。羨ましいです。智世の言う「谷田部先生も参加しないといけない理由」ありますね。とても大事なこと。先生として。 用意した衣装で松本写真館での撮影も、楽しみです。亜紀は感激するでしょう。楽しみです。
|
...2005/03/13(Sun) 11:16 ID:XcTwaBJQ
Re: アナザーストーリー 2 Name:グーテンベルク
| | たー坊様へ こんばんは。グーテンベルクです。ハイペースでの執筆お疲れ様です。亜紀の卒業式、とても楽しみです。朔という恋人。龍之介、智世、ボウズという友達。そして谷田部先生。亜紀はとても幸せ者ですね。きっと最高の卒業式になりそうな気がします。これからも体に気を付けて頑張ってください。
|
...2005/03/13(Sun) 21:19 ID:sETVk9ng
Re: アナザーストーリー 2 Name:朔五郎
| | 卒業式以外の「一生に一度の」できごと、とても楽しみにしております。 これからも、優しく暖かい物語を楽しみにしております。
|
...2005/03/13(Sun) 22:21 ID:9shNNId2
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | にわかマニア様 「式」「会」という名の付く行事に参加しない主義のスケちゃんだからこそというのはありますね。今さらになって「出ておけばよかったな」などという後悔の念もあるかも?しれませんね。 また、お読み頂ければ幸いです。
ボウズバン様 テストお疲れ様でした。 「胸あたる?」はドラマにはありませんでしたが、おっしゃる通り、亜紀は言うかもしれないと思い、入れてみました。書いた私としても、「アリだな」と思っています。 また、お読み頂ければ幸いです。
ゴン41様 最近時間があるため、おかげさまでUPのペースもよく、遅れを取り戻そうと頑張っています。次回からはミニ卒業式です。 楽しみにしていただければ幸いです。
グーテンベルク様 お疲れ様です。おっしゃる通り、亜紀は幸せ者です。また、朔も亜紀のために奔走してくれている、周囲の人たちの存在に感謝し、幸せを感じていることでしょう。 グーテンベルク様もお忙しいようですが、「アナザー・ワールド」を、私も、一読者として楽しみにしております。お互いに頑張りましょう。
朔五郎様 今回もお読み頂きましてありがとうございます。 次回以降からのお話で、「空白の五年間」が少し埋まるのではないかと思います。 次回もお読み頂ければ幸いです。 「世界の中心で、愛をさけぶ2」も楽しみにしております。執筆者として、お互い頑張りましょう。
|
...2005/03/14(Mon) 21:02 ID:i1ynh/gY
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 28日午後・・・。 式当日の天気は快晴。朝から青空が広がっていた。季節はほとんど春になり、厚着もすることはなくなっていた。
智世「龍之介。私、そろそろ亜紀を迎えに行って良いかな?」
龍之介「もうそんな時間か?よし。後は仕上げだけだな。ここは俺とボウズで何とかなるから行ってくれ。」
ボウズ「ここに連れて来るまでバレないように頼むぞ。」
智世「分かってるよ!それじゃあ行ってくる。」 教室の後ろの出口から智世が出て行った。 3人は、今朝早くから会場である教室で、簡単ではあるが飾り付けをしていた。朔は衣装を借りるために単独で動いている。
谷田部「おっ!やってるな〜。いよいよだねぇ。」
ボウズ「先生、予定通りお願いしますよ!」
谷田部「任せなさい!きっちり校長先生の代わりを務めて見せるわよ!!」 教室に入ってきた谷田部が男2人に言った。
谷田部「上田は?」
龍之介「本日の主役を迎えに行きました。」
谷田部「そう。松本は?」
ボウズ「記念撮影用の衣装を取りに行きました。そろそろ来ると・・・。」 言いかけたその時に朔がやって来た。
朔「遅くなってゴメン!!あっ、先生、ご無沙汰してます。」
谷田部「おっ!帰ってきたな!」
朔「はい!松本朔太郎、東京から戻りました!」
龍之介「衣装は?」
朔「大丈夫。無事に借りてきたよ。写真館に置いてきた。」
ボウズ「よし、こっちも終わったぞ!」
龍之介「準備完了だな。後は主役が来るのを待つだけだ。」 4人は教室の窓から、青い春の空と白い雲を眺めていた。
場所は変わって、2階の亜紀の部屋からは見えない廣瀬家の庭・・・。 智世が訪ねると綾子が迎えてくれていた。もちろん、亜紀に気付かれないようにするためである。段取りをする時に真と綾子にも事情を説明していたのだった。 2人とも小声で話している。
智世「こんにちは・・・。」
綾子「智世ちゃん、ありがとね。亜紀のために・・・。」
智世「いいえ。それで亜紀は?」
綾子「大丈夫です。ちゃんと家にいるわよ。」
智世「良かった・・・。あのー、それでお父さんとお母さんは、今日来ていただけますか?」
綾子「ええ。出席させていただきます。あなた達が学校に言ったのを見計らって、主人に連絡を取る予定よ。車で行くから、結果的に先回りできると思います。」
智世「分かりました・・・。」 女2人ニッコリ笑顔を作った。ただし、悪戯っぽい笑顔だが・・・。 無事に2人を見送り、連絡を取る綾子。ほどなくして真が戻ってきた。いそいで着替え、再び車で学校へ向かった。
一方の亜紀と智世は、智世が亜紀が東京に行ってる間のことについて質問攻めにしている。もちろん、亜紀に悟られないためなのだ。同時に、わざと遠回りして時間稼ぎもしている。
智世「どうだったの?朔との生活は?」
亜紀「すごく楽しかったよ。」
智世「楽しかったって・・・それだけ?もっと他に何かこう・・・デートとかは?」
亜紀「もちろん、デートにも連れて行ってくれたよ。でもね、ご飯作るときも、お掃除してるときも、洗濯しているときも、日常にしていること全部が楽しく思えたの。デートは最高なのは間違いないけどね。」
智世「そっかぁ。好きな人と一緒にいられることがそんなに嬉しかったか!亜紀、よかったねぇ〜。」
亜紀「うん!東京に行った次の日なんだけど、朝起きた時なんて、『デートに行かなくてもいい。一緒にいられれば幸せ!』って思えたんだよ。」
智世「いいねぇ〜。この!この!幸せぶりを聞かせてくれちゃって!!・・・それで?どうだったの?」 智世が本題に入った。智世にとっては他のことは、もはやどうでもいいのだ。なんとしても聞きたい肝心なところは一点だけである。
亜紀「えっ?どうって?」 今まで夢のような生活を思いだしながら、幸せいっぱいの笑顔をみせていた亜紀の表情が変わった。
智世「つまり、あれ・・・よ。朔と・・・。」
亜紀「え??・・・・・・!!!」
智世「ね!?どうだったの!?さあ!正直に白状しなさい!!」
亜紀「何言ってんの!!・・・。」 顔を真っ赤にしている亜紀を智世がさらに追及する。
智世「全身全霊を賭けて愛し合う若い2人が、夜に同じ部屋の中なのよね!どうだったの!?」
亜紀「・・・残念ながら、智世が期待しているようなことは何もありませんでした!!」
智世「もう!とぼけちゃって!!亜紀もまだまだ可愛いとこあるのね!」 そう言って亜紀の顔を見る。 しかし・・・
智世「・・・え?本当に何もなかったの?」
亜紀「うん。何もなかったの。」 あっさりした口調で答えた。
智世「本当に?」
亜紀「うん。」
智世「・・・。」 信じられないといった表情で絶句している智世に亜紀が続ける。
亜紀「初日に『ヤラシイことはダメ』って言っておいたの。あと、『そういうことは、2人でちゃんとしてからだよ。』とも言ってあげたわ(笑)」 亜紀は思い出しながらクスクス笑っている。
智世「あ、そう・・・。それで、朔は納得したんだ・・・。」
亜紀「それは分からないけど、多分、してないと思うよ。」
智世「まあ、あんた達らしいと言えばあんた達らしいわね・・・。」 智世は、妙に納得している。
亜紀「・・・でもね、夜は同じベッドに寝てたんだよ。ずっと・・・。」 少しだけ顔を赤らめて亜紀が続ける。
亜紀「ベッドが狭いこともあったけど、私からお願いしたら朔ちゃん受け入れてくれたの。体をくっつけたら、優しく抱きしめてくれたの。すっっごく温くて心が落ち着いたの。」
智世「・・・何かドラマみたいな話だね。でも、朔もそういうことをするようになったか・・・。」 感慨深げにつぶやく。
亜紀「朝、私が起きるまで、寝ている間はずーーっとしっかり抱きしめていてくれたの。・・・ああ・・・幸せだったな・・・。これ、皆には内緒ね!」 うっとりしながらも肝心なところは忘れない。
智世「分かった・・・。何かすごいね。」 少し呆れながら話を終わらせた・・・。
おしゃべりしている間、亜紀は何も疑うことはなかった。学校に着いたときは、さすがに「何で?」とは言ったが、智世が「いいから!行くよ!」というと仕方なく後をついて行くのだった。
智世「ここだよ。」
亜紀「ここ?しかも私が倒れるまでいた教室じゃない。」
智世「そ。2年D組。」 にっこり笑った。そしてドアの取っ手に手を掛けた。
亜紀「智世?」 中には、朔、龍之介、ボウズ、さらに谷田部。今日は智世と一緒に司会進行を担当する芙美子。もちろん綾子も。仕事を中断してきた真もいる。 亜紀と智世が廊下で話しているのを声と気配で感じ、配置についた。
智世「どうぞ。亜紀!」 教室のドアが開けられた。いよいよ「、第一回 宮浦高等学校 特別ミニ卒業式」が行われようとしていた。
続く
|
...2005/03/14(Mon) 23:06 ID:i1ynh/gY
Re: アナザーストーリー 2 Name:SATO
| | いよいよ「サプライズ」卒業式が始まりますね。 感動して泣いてしまいそうですが、よろしいでしょうか?
|
...2005/03/14(Mon) 23:16 ID:UAnag9i6
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | SATO様 早速お読みいただいてありがとうございました。 SATO様を感動させて、なおかつ泣かせることができるほどの物語を書くことのできる自信は、ハッキリ申し上げてございません。私ができることは、普段どおり、2人の幸せな様子を思い浮かべながらかたちにするだけです。 またお読み頂ければ幸いです。
|
...2005/03/15(Tue) 13:45 ID:Ch1b.MMQ
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 芙美子「卒業生、入場!」 亜紀が教室の後ろから入ってくるのと同時に、司会進行をする芙美子の「特別ミニ卒業式」開始をを知らせる声が、かつて朔と亜紀が出会った教室に響いた。
亜紀「・・・卒業・・・生?」 後ろにいた智世に「どういうこと?」と表情で確認すると、「いいからいいから。」と目で合図してきた。 教室の後ろの席には、真と綾子が座っている。綾子も微笑みながら亜紀に合図を送っている。
芙美子「卒業生、着席。」 今度は司会の芙美子を見る。が、芙美子も笑っているだけだ。智世も司会者の位置に着いた。
ぽかんとしている亜紀を、窓側の席に座る男3人が誘導する。
龍之介「亜紀、前。前。」 そういって指さすと、教卓の前に2つの席が用意されていたのだった。
朔「ほら、亜紀。」
亜紀「・・・うん。」 言われるままに左側の席に座った。 そして・・・。
智世「ただいまより、第一回、宮浦高等学校、特別ミニ卒業式を行います!」
亜紀「卒業式?私の?」 教室の最前列左側、朔たちと少し離れたところに用意された席に座る谷田部に目配せする。谷田部は、頷いている。すると芙美子からも「今日は特別だよ。」との声が聞こえる。隣では、智世が手作りの台本を見ながら、詳細を確認している。
智世「友人代表挨拶。ボウズ。」
ボウズ「こういう時ぐらい本名で呼べっての!」 智世に「ボウズ」と言われ、やや肩透かし気味に言いながらその場に立ち上がった。
ボウズ「えーっと、ま、もうこれから何をやるかはわかってると思うんだけど、そういうことだ。・・・お前たちが東京にいる間に計画してた。今日は、手作りの卒業式なんで、笑顔で楽しくやりましょう!・・・・・・4年遅れの卒業おめでとう!ずーっと、ありがたーいお経をあげていた甲斐があった。・・・以上!」 と言って座った。
龍之介「おいおい!もう終わりかよ!」
ボウズ「仕方ねぇだろ〜!苦手なんだからこういうの!」 龍之介にツッコまれるボウズ。その様子を谷田部、真、綾子が微笑ましげに見ていた。
智世「・・・え〜、どうしようもない挨拶でしたが・・・。」
ボウズ「うるせ!」
智世「オホン!!・・・続いて、卒業証書授与!卒業生起立!」 校長代理の谷田部がゆっくりと席を立ち教卓の前に立った。芙美子が隣に立ち、証書を手渡す。
谷田部「卒業証書!」 「廣瀬亜紀殿。右の者は、本校の全日制及び定時制において、その業をおえたのでここに証する!平成五年三月二十八日・・・静岡県 宮浦高等学校 校長代理 谷田部敏美 第一号。」 一連の動作をして「おめでとう・・・廣瀬。」と言いながら卒業証書を渡した。
芙美子「卒業生着席。」 渡されたばかりの証書を大事そうに握りながら、亜紀が席に座る。ふと、隣にぽつんと置いてある席が気になる・・・。「私だけの特別卒業式なのよね?・・・なんで?ただ置いただけなのかしら?」と疑問に思っていたが、その謎はすぐに解けるのだった。
智世「続いて・・・。」 と言いかけたときだった。
谷田部「すみません!!」 一斉に、声を上げた谷田部を見る一同。ただ、朔と龍之介と智世、ボウズだけは、谷田部が声をあげた理由を分かっていた・・・。
谷田部「・・・もう一人、名前を呼ばせて下さい。」 真と綾子は何事かと、場を見守っている。
谷田部「松本朔太郎!」
朔「はい!」 名前を呼ばれて席を立ち谷田部の前に立つ。
谷田部「卒業証書!」 「松本朔太郎殿。右の者は、本校の全日制普通課程において、その業をおえたのでここに証する!・・・平成元年三月一日・・・静岡県 宮浦高等学校。」
亜紀「嘘・・・。」 朔に渡された日付が4年前の卒業証書・・・。
谷田部「上田、進めて・・・。」 少し涙目になっている智世に谷田部が優しく言った。
智世「卒業生着席。・・・続いて、主催者挨拶。龍之介。」 朔が亜紀の隣に座ると同時に龍之介がその場に立った。
龍之介「亜紀、びっくりしたろ?」 涙をこらえ、笑いながら亜紀に言う。
亜紀「どうして・・・?」
龍之介「智世から聞いたんだ。決まりで、亜紀が、ちゃんとした卒業式に出ることができないって聞いて。それでだよ。その時に思ったんだ。それなら、俺たちだけで特別に卒業式をやろうってよ・・・。おめでとう!よく頑張ったな!」 不器用ながら精一杯の挨拶だった。
智世「最後に、谷田部先生、祝辞。」
谷田部「廣瀬、おめでとう。長い間、よく頑張ったね。・・・初めて会った時に、負けず嫌いそうな生徒だと思ったんだけど、本当にそうだったよ。また、よく頑張るんだよね。だから、成績優秀で部活も一生懸命やって。本当に優等生の典型だったな。・・・その生徒が、私が担任のクラスの一員になったんだよね。そしたらこれが、ある生徒と恋に落ちたかと思ったら、今度は白血病になって・・・一躍、私の教師生活において、これからも、一番印象に残るであろう生徒になりました。」
「そして、松本・・・いつのまにか、その廣瀬の最愛の人になってたね。あんたの高校生活は廣瀬抜きには語れないものになったと思います。あんた、廣瀬と出会ってから変わったよ。いっつも守り続けてたね・・・。時にはしつこいぐらいにね。2人とも覚えてる?廣瀬が倒れる前に毎日のように松本が廣瀬の練習を見てたこと・・・。走り続ける廣瀬を、遠くから座ってね。でも、そんな平凡な日々は長くは続かなかった・・・。それからは毎日のように松本は病院に通い続けて・・・あの坂は本当に大変だったと思う。そして最後には、廣瀬のために病院から連れ出して・・・。あの時は、『迷うくらいなら止めた方がいい』と言ったけど、結局、松本は廣瀬の願いを聞いたんだよね・・・。」
真と綾子はあの日のことを思い出していた・・・。
谷田部「結局失敗して、面会謝絶の間、松本は自分の気持ちに気付いて、『自分のせいだ』と松本自身を責め続けた・・・私は、何もしてあげられなかった・・・ごめんなさい。」
朔「いえ。」
谷田部「・・・結局、松本は卒業式の当日にこの町を出て行ったよね。卒業証書も受けとらずに。仲間達に廣瀬のことを任せて・・・。その間、2人のことを支えてくれた人たちがいる。私は、そのことを絶対に忘れないで欲しい。忘れてはいけないと思う。そして、お礼も言わなければいけない。私たちは、松本と廣瀬に、人間にとって何が大切なのかを教えてもらったような気がする・・・。」
亜紀「先生・・・。」
谷田部「・・・廣瀬、松本はね、この日が来るのをずーっと信じてたの。あんたがいない卒業式の朝、こう言った。『先生、俺は式には出ますけど、名前は呼ばないで下さい。亜紀は、いつか必ず病気に勝って戻ってきます。だから、その時まで待っててください。一緒に卒業式に出たいから。』って・・・。とうとう迎えられたね!2人とも、本当におめでとうございます!!・・・・・・はぁ〜、すっきりした。私が今まで関わった生徒で卒業証書を渡してなかったのはあんた達だけだったからね!これで、ようやく肩の荷が下りた!これで、わたしの挨拶は終わり!!」 いつもの調子に戻った谷田部が教卓から席に戻った。 隣でボロボロ泣いている亜紀に、朔はハンカチを渡した・・・。 泣いているのは亜紀だけではない。廣瀬夫妻もまた、目に涙が浮かぶ。もちろん、谷田部も。後は皆涙をこらえて笑っている。事前に、『涙はやめよう』と決めていたのだった・・・。
智世「これで、第一回、宮浦高等学校、特別ミニ卒業式を終了します。」
芙美子「卒業生、退場!」 朔が亜紀を連れて教室を後にする時・・・。どこからともなく拍手が・・・真だった。他のみんなもつられて、拍手をするのだった。鳴り止まない拍手の中、2人は教室を後にしたのだった。 ・ ・ ・ 松本写真館にて・・・。
潤一郎「はい、皆、笑って笑って!」 ファインダーを覗き込みながら、朔、亜紀、龍之介、智世、ボウズに言う。
潤一郎「はい、チーズ!!」 シャッターが切られた。ここに4年遅れの卒業写真が出来上がった。
富子「じゃあ、亜紀ちゃん、智世ちゃん、着替えて!」
亜紀「えっ?」
智世「朔がね、ぜひ亜紀に着て欲しいものがあるんだって!ほらほら!」 智世が亜紀の手を引っ張り奥へと消えていく。富子、綾子が着付けを手伝うために一緒に奥の部屋へ向かった。
そして・・・
亜紀・智世「じゃーん!!」 晴れ着姿で登場した女2人。急に場所が華やかになった。それぞれの恋人の前に向かう。
智世「どう?2回目だけど似合う?」
龍之介「似合うよ。2年前より似合ってんじゃねぇの?」
智世「ホント!?・・・珍しく、褒めてるね。」
龍之介「おまえが普段から、もっと女らしかったら、もっと褒めてるよ!!」 そういっておでこをつついた。 一方、
亜紀「どう?」
朔「・・・・・・・・・。」 亜紀の晴れ着姿を見てぽーっと見惚れている。
亜紀「朔ちゃん?」
朔「・・・うん。似合うよ。亜紀、綺麗だ・・・。」
亜紀「本当?よかった・・・。」 華やかな姿の亜紀を見た朔は思い出していた。東京で2人暮らしをしている時に見たある夢を・・・。 亜紀が悪戯っぽいキスの愛情表現をしてくれた朝、自分が寝ているときに見た、あの夢だ・・・。
亜紀「でも、どうして晴れ着?どうして・・・?」
朔「亜紀は卒業式以外にも、本来経験するべきことを経験してないんだ。」
亜紀「え?」
朔「成人式だよ・・・。」 亜紀もまた思い出した。東京の朔の部屋で見つけた2人だけのアルバム。その中にあった1枚に病院のベッドの上で上半身だけを起こした隣で、朔だけがスーツ姿で並んで写った、あの写真を・・・。
亜紀「ありがとう・・・。」
朔「さあ、撮ろうか!」
亜紀「うん。」
カメラをタイマーにし、潤一郎も皆の中に入った。「パシャ」と音がした。
朔「親父、あと2枚いいかな?俺と亜紀と、亜紀だけの。」
潤一郎「しょうがねぇな。ほら。」
富子「朔、代金はしっかりもらうからね!」 再びファインダーを覗く潤一郎は、壁にかかる結婚写真から、しっかり時の流れを確認することができた。 こうして、4年遅れの卒業式と、2年遅れの成人式を無事に終わらせることができたのである。
そして後日・・・。 夕方の廣瀬家・・・。
綾子「さすがね。」
真「全くだ。相変わらず、素晴らしい写真を撮っていらっしゃるな。朔、帰ったらよろしく伝えてくれ。」
綾子「ありがとうね。朔君。」
朔「いえ。俺の方こそ急に無理を言ってすみませんでした。」 出来上がった写真を持って、朔は廣瀬家を訪ねていた。
亜紀「いろいろありがとう。」 結婚写真を見ているときのように、今回の卒業写真と成人式の写真を見ている。
朔「入学式も撮ろうか?」
亜紀「いいかもね。フフッ。」
真「そうだな・・・。」 なんとなく複雑な心境の真。卒業式といい、成人式といい、今の朔の提案と、おいしいところを朔に持って行かれ続けているからだ。
綾子「ねえ、朔君。また焼き増ししてもらってもいいかしら?」
亜紀「また、おじいちゃんとおばあちゃんに見せるの?」
綾子「もちろんよ。2人とも亜紀ちゃんのことが可愛くて可愛くてが仕方無いんだから。」
朔「そういうと思って・・・。」 脇に置いた紙袋をごそごそさせる朔。
朔「はい。1枚ずつ焼き増ししておきました。」 そういって、綾子に渡した。
綾子「あらあら。気が利くわね、ありがとう。」
朔「いえ。」 そんな朔を優しく、頼もしく見つめる亜紀。そんな娘と、複雑な表情を浮かべる真の両方に綾子は気づいていた。
この後、朔を交えての楽しい夕食になった。 そして松本写真館・・・。
この日の仕事を終え、潤一郎が帰宅し誰もいなくなった写真館の壁、5年前に撮った結婚写真の隣に成人式の写真・・・。 少し大人になった朔と、朔に無理しなくなり、5年前より距離を近づけ、寄り添うように立つ亜紀が、スーツ姿と晴れ着姿で笑っていた・・・。
続く
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...2005/03/15(Tue) 22:41 ID:Ch1b.MMQ
Re: アナザーストーリー 2 Name:SATO
| | たー坊さん やってくれるじゃないですか 読んでて泣いてしまいましたよ
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...2005/03/16(Wed) 00:32 ID:7yenX.TU
Re: アナザーストーリー 2 Name:サイトのファン
| | たー坊さんへ 執筆、お疲れ様です!! まとめて、作品を読ませて頂きました。 思わず、涙ぐんでしまいましたが 心が温まる涙です。 サクと亜紀は辛い思いをしましたが 良き恩師に理解ある両親、最高の友人に囲まれ 幸せですね!! 今までのマイナス分を取り戻していますね。 たー坊さんの世界の中心で、愛をさけぶを 読ませて頂くと優しい気持ちになれます。 最高ですよ!! 是非、マイナスにならないような未来を願いつつ 続編、お待ちしております。
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...2005/03/16(Wed) 01:22 ID:wIv78Dt2
Re: アナザーストーリー 2 Name:Marc
| | こんにちは、たー坊様 うん、素敵です!
亜紀パパの複雑な思いは、亜紀にとって自分の代わり となって行く朔太郎への男性としての信頼と、娘を愛 する思いの狭間でゆれてるんでしょうか、男親って損 ですね。(婿殿の良いとこ取りですもんね...)
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...2005/03/16(Wed) 08:30 ID:BTThM6tQ
Re: アナザーストーリー 2 Name:clice
| | たー坊様へ 読んでいるのが心地よい、とても素敵なお話を書かれましたね、素晴らしいと思います。 感想を返すのは差控えさせていただいてますが、いつも拝読させて頂いています。 偶然にも同じ日に私も廣瀬夫妻と亜紀の話を書いたところでした。たー坊様のお話とはまったく逆の娘を失った今の二人ですが、それだけにあったかもしれないもう一つの世界として胸に響くものがありました。これからもどうか素敵な物語をお書きになって下さい。 応援させて頂いています。
|
...2005/03/16(Wed) 08:59 ID:Eo3TdiGE
Re: アナザーストーリー 2 Name:グーテンベルク
| | たー坊様へ こんばんは、グーテンベルクです。ついに亜紀の卒業式が行われましたね。それに成人式・・・。本当に感動いたしました。亜紀を含めてミニ卒業式に関わったみんなにとって一生の思い出になるにちがいありませんね。今回も本当に素晴らしい物語でした。(宿直明けの疲れも吹き飛ぶくらいです。)これからも楽しみにしております。
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...2005/03/16(Wed) 18:45 ID:wzXzsl4s
Re: アナザーストーリー 2 Name:北のおじさん
| | たー坊様。
読んでいて出てくる人たちの表情が目の前に浮かんできました。涙ぐむ亜紀の顔、優しく微笑む朔の顔、嬉しそうな皆の顔、こちらまでニヤニヤしたり涙ぐんだりしたり、とても幸せな気持ちになりました。 これからも楽しみにしています、頑張って下さい。
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...2005/03/16(Wed) 22:35 ID:fxW8/LBw
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | SATO様 気に入っていただけましたでしょうか?泣いていただけたようで私としても書いた甲斐がありました。 次回も楽しみにしていただけたら幸いです。
サイトのファン様 今回、無事に二大行事をとりあえず、終えることができました。おっしゃる通り朔と亜紀の周りの人たちあってのことですね。しばらくはプラスの時期が続きます。今までの分を取り戻してもらえるように2人には頑張ってもらおうと思います。 次回もお読み頂ければ幸いです。
Marc様 お読み頂いてありがとうございます。真の複雑な心境の中にも朔を認める部分もあるので、だんだんと亜紀の中のウエイトは、さらに朔へと傾くことが予想されますが、父は父、恋人は恋人なので、代わりになるということはないのではないかと思います。 あるいは、朔が廣瀬家に溶け込めば溶け込むほど(亜紀の病気もありますが)当初、険悪だった亜紀と真の仲も改善されているので、時には朔よりも真を大事にする亜紀の様子が見られるかもしれません。 また、お読み頂ければ幸いです。
clice様 お久しぶりです。私が書き始めた頃には、アドバイスを頂きましてありがとうございました。おかげ様で、私のストーリーを読んでくださる方も増えたと思っております。 これからも、時々アドバイスを頂ければと思います。 ご多忙とは思いますが、clice様の物語を楽しみにしている方は大勢いらっしゃいます。私も一読者として楽しみにしております。 これからも、お互い頑張っていきましょう。
グーテンベルク様 宿直明けにもかかわらず、お読み頂いてありがとうございます。 無事に成人式までを行うことができ、少しづつではありますが、空白の5年間を埋めてきています。2人にはこれからも時間を重ねていってもらうつもりです。 「アナザー・ワールド」の方も楽しみにしております。これからも頑張っていきましょう。
北のおじさん様 毎回のご感想ありがとうございます。 今回の卒業式は、高校のみならず、白血病からも卒業したよと言わんばかりのものも含めていました。朔も亜紀も4年の時間をさかのぼり、少しづつ時を取り戻していっています。 これからもお読み頂ければ幸いです。
|
...2005/03/17(Thu) 13:26 ID:6jZZqJWk
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 4月上旬。 卒業シーズンから入学シーズンへの変化とともに、桜前線が北上し、開きかけていたつぼみも一斉に開花していく。宮浦の桜も間もなく満開になろうとしている。 亜紀と芙美子の入学式も終わり、朔の長期実習もはじまった。それぞれが新たなスタートを切って1週間が経った。そんなある日の金曜日の夜。
朔の部屋・・・。
朔「花見?」
亜紀「うん。それも夜桜見物。智世が言うには、スケちゃんが言い出したらしいんだけど。」 持って来たたこ焼きをパクつきながら言う。 亜紀は学校帰りに松本家に寄っていた。 学校に行きだしてからの亜紀は、目いっぱいに授業を組まず、サークルに入ることもなく、なるべく早く帰ってきている。体調のこともあるが、できるだけ朔との時間を過ごしたいようだ。 時には、部屋で朔の帰りを待っていることもあるのだ。
ところで、朔がもっとも心配しているのは、亜紀の大学での様子だが、芙美子いわく全く心配ないとのことらしい。 亜紀と芙美子は同じ大学に通っているため、昼食時には入り口で待ち合わせて、2人とそれぞれの友人たちと女同士仲良く食堂でご飯を食べるそうだ。 また、ほとんどの男子学生は亜紀には近づかないらしい。薬指にはめられた指輪には、虫除けの効果もあったらしく、芙美子が言うには『変な虫が付かないように気を付けたりするけど、余計な心配だったみたい。お姉ちゃんより、私の方がモテるんだよ。』とのこと。これには朔も一安心である。
朔「それ、単にスケちゃんとボウズが、皆で酒を飲むための口実じゃないの?」
亜紀「いいじゃない。みんなで集まれるんだから。」
朔「まあね・・・。それで、いつ行くの?」
亜紀「明日。朔ちゃんが帰ってきてからだって。私は行くけど、どうする?」
朔「まあ、日曜は休みだし。・・・それに亜紀が行くなら俺も行かないと・・・。」
亜紀「優しいなぁ。」 ニッコリと笑顔。しかし・・・朔は真顔で話し始めた。
朔「・・・心配なんだよ。普通の花見ならいいけど、ボウズがさ・・・。スケちゃんはまだしも、ボウズは、普段の憂さ晴らしに大量に酒飲んで、酔っぱらいになる可能性があるからさ・・・。酔った勢いで亜紀に酒を飲まさないように見張らないと・・・。」
亜紀「大丈夫だよ・・・。大丈夫・・・だよね?」
朔「多分ね。まあ、いざとなったら、なんとかするから。」 そう言うと白い歯を見せたのだが・・・。
亜紀「ププッ!やだ、朔ちゃん。歯に青のりが付いてるよ。」
朔「えっ!?・・・あ・・・落としてくる!」 急いで部屋を飛び出して、洗面所へと向かう。そんな朔を
亜紀「いってらっしゃ〜い・・・。フフッ。」 とクスクス笑いながら見送る亜紀だった。 ふと、医学書が並ぶ本棚の中にあるいつものアルバムが目にとまる。開くと入学式までの写真が新しく追加されていた。一枚一枚めくっていくとある写真に気付いた。
亜紀「何これ!?・・・・・・・・・いつの間に・・・。」
そこへ朔が戻ってきた。亜紀の異変に気付かない。
朔「ちゃんと落として来・・・・・・。あ・・・。」
亜紀がゆっっっくりと朔の方を向いた。亜紀の寝顔を写した写真を指さしながら。
亜紀「・・・サー・・・クー・・・。」
朔「いや、なんていうか・・・・・・その、あのね・・・。」 「怒ってる?」と聞く必要がない。朔の目にも怒りの表情をしているのは明らかだった。
亜紀「・・・何・・・これ?何で撮ったの?」
朔「・・・亜紀の写真が一枚でも多く欲しかったから。」
亜紀「他には?」
朔「・・・亜紀の寝顔が・・・可愛かったから。それで・・・。」 「ヤバイなぁ」と思いつつ、恐る恐る顔を見ると、
亜紀「・・・うん。いいわけとしては合格点ね。まあ、私も観覧車でキスの写真を撮ったから、これでおあいこにしてあげる。」 朔は「ふう。」と胸を撫で下ろす。亜紀を本気で怒らせた時の恐ろしさは、朔自身が一番よく分かっているつもりだ。
亜紀「もう一度言うけど、隠し事は無しだからね!」
朔「うん。」
亜紀「よし。あ、もう8時半だ。そろそろ帰るね。」
朔「送っていくよ。」
亜紀「ありがとう。」
朔「さてと・・・。うっ!」 アルバムをしまい、亜紀の方を向いたときだった。
亜紀「もーらいっ!!へヘヘッ。仲直りのしるしだよ。」
朔「・・・びっくりした。」 2人とも顔を真っ赤にしている。朔の振り向きざまに亜紀がキスしてきたのだった。
亜紀「今度するときは、朔ちゃんの方からだよ!」 そういい残して部屋を出て行く。朔も後を追うのだった。
そして翌日の夜。 帰ってくる時間が少し遅れた朔は、急ぎ会場に向かった。 会場にはたくさんの人がいる。
亜紀「朔ちゃーん!!こっちこっち!!」 両手で手招きしながら亜紀が朔を呼ぶ。すでに桜を見ている者はいない。結構盛り上がっているようだ。 すると・・・。
谷田部「松本、遅い!!」 なんと、谷田部が登場。
朔「・・・呼んだの?」 と亜紀に尋ねる。
谷田部「な〜に〜?私が来ちゃ悪いか?」
亜紀「そうよ、朔ちゃん。先生がいた方が良いじゃない!」
朔「おい、亜紀ぃ・・・。」
ボウズ「まあ、いいから座れ。」
智世「はい。どうせ夕飯食べてないんでしょ!」 皿に盛り付けた料理を智世が手渡した。
龍之介「それにしても遅かったなぁ。おまいさん。やっぱ忙しいのか?」
朔「まあな。なかなか。」
龍之介「今日は覚悟しとけよ。」
朔「えっ?」
龍之介「偶然、先生と出くわしちゃってよ。またこれが、少し酒入っちゃってるみたいで・・・。もう、ボウズも亜紀も少し飲んでるから・・・。」
朔「亜紀も!?」
龍之介「断りきれずにボウズと先生に飲まされたんだよ。」
智世「異常ないのは私と龍之介だけ。」 2人の言葉に「ハァ」とため息をついた。
続く
|
...2005/03/17(Thu) 18:10 ID:6jZZqJWk
Re: アナザーストーリー 2 Name:ぽっと
| | たー坊様
執筆ご苦労様です。いつも楽しみに拝見させて頂いています。ついに亜紀の大学入学で新章突入ですね。智世もどうやら大学院に進学?したようですし、楽しそうです。これからも頑張ってください。
|
...2005/03/17(Thu) 19:21 ID:.fDDgIGc
Re:一番の酒乱が・・・ Name:にわかマニア
| | たー坊様 全く意表を衝かれたと言うか,一本取られましたね。一番の酒乱が,本編第1話で見られるように高2の頃からの飲酒・喫煙の常習犯だったスケちゃんではなく,先生だったとは・・・ でも,この方が物語の展開としては面白そうですね。酔った勢いで「松本・中川・大木・上田!」と叫んで,全員を起立させるのでしょうか。
|
...2005/03/17(Thu) 20:23 ID:kolKlces
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | ぽっと様 いつもお読み頂いているということでありがとうございます。 新章突入というか確かにひと区切りに到達できたかなと、私も感じております。 これからもお読み頂ければ幸いです。
にわかマニア様 先生については、酒乱との域までは飲ませておりませんが、若干アルコールが入ったせいか、学校でのいつもの調子ににプラスアルファで、ノリが良くなっております。 次回もお読みいただけたら幸いです。
|
...2005/03/18(Fri) 12:07 ID:PLl.Z5WQ
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 龍之介「おい!飲みすぎなんだよ。お前!!」
ボウズ「え!?そうか〜?んなことねぇと思うけどな。」 自分の横にある空になった何本もの空き缶を見ながら言う。
智世「これ以上飲んで酔っ払ったら帰れなくなるわよ!」
龍之介「その通り。先生だって少し酔ってるけど、しっかりしゃべれる程度に抑えてるだろ。」
ボウズ「そうだな。じゃあ、後一本だけ。亜紀、一本とって。」 亜紀の隣の袋を指さして言う。
亜紀「ダメ。その一本が帰れなくなる原因になるかもしれないでしょ。」
ボウズ「なんだよ〜。亜紀までよ〜。」
亜紀「そういう訳で、これは私が飲んじゃおっと。」 少し赤くなっている顔でクスクス笑いながら飲もうとするが、缶を持った手を朔が掴む。
朔「飲みすぎ。酒、飲むの初めてだろう?ほどほどにしておきなよ。」 実は亜紀もすでに、サイズは小さいが缶2本を空けてしまっていた。なので、さすがに朔もストップをかけた。
亜紀「大丈夫よ。この通りしっかりしゃべれてるでしょ?それに、いざとなったら朔におぶってもらうから。」
谷田部「・・・廣瀬も甘えるようになったねぇ〜。あんたたちが付き合い始めたときは、完全に松本が廣瀬に主導権握られてたみたいだけど・・・。あれから、あと3ヶ月で6年か・・・。時間が経つのは早い。」 しみじみと言う谷田部・・・。表情はどこか寂しげだ。
谷田部「みんな成人になって、大木と上田と中川は社会人になって立派にやってるし。松本、廣瀬は目標を持って勉強してる・・・。私はね、嬉しいよ。」
智世「先生、らしくないですよ。なんかしんみり・・・。」 いいかけた智世に龍之介が耳打ちして、
龍之介「だってさ、確か先生って四十路だろ・・・。結婚できないし・・・、そりゃ寂しいだろ・・・。」 と言った。
智世「そっか・・・。」 と納得したそのとき、
谷田部「大木!上田!」 桜の木の下に懐かしい声が響く。2人は、高校時代の条件反射で、思わずその場に立ち上がってしまう。
谷田部「大きなお世話だ!!・・・よし、罰として、2人の近況をこの場で発表しなさ〜い!!」
この言葉に慌てる龍之介と智世。「やった!!」と喜ぶ、朔、亜紀、ボウズ。
智世「ちょっと、先生!」
谷田部「つべこべ言わない!!さ、白状しろ〜!」
大木「・・・おかげ様で順調です。普段はそんなに会えないから、時間があるときは約束してなくても、いきなり会うことにしてます。」
智世「この前なんか、お弁当忘れたからって、いきなり家に電話してきて、『白いご飯持ってきて』と言われて、持って行きました。」
谷田部「ふーん。どうやらここは、大木が主導権握っているみたいね。なるほど。」
大木「そんなことないっすよ。結構、このデカイ尻に敷かれてたりして・・・。」 言いつつ、智世のお尻に手を伸ばす。が、その手を叩き落しながら、
智世「何考えてんのよ!!この大バカ!!」
龍之介「なにをいまさら〜。俺とお前の仲じゃな〜い。」 懐かしいセリフに思わず笑顔になる智世。
谷田部「はいはい。ごちそう様でした!相変わらず幸せそうで何よりです!じゃあ、次!」
ボウズ「そうだなぁ〜。ここは聞いておかないとな!」
龍之介「間違いなく、この2人が1番幸せなんだろうから・・・。」 ボウズも龍之介もニヤついている。
朔「・・・別に帰ってきてから、これと言って何も・・・。俺も忙しいから、どこかに連れて行ってやることもできてないし・・・。」
智世「じゃあ、東京での生活を話せば?」
亜紀「そうだね。そうしようか!ね。朔ちゃん?」
朔「ちょ・・・。」 止めようと思ったがもう遅い。すでに亜紀が話し始めた。
亜紀「もうとにかく幸せの一言に尽きます。1日中何をするにも一緒。食事に、掃除に、洗濯。何をしても楽しくて仕方なかったです。」
朔「1回、デートに行きました。本屋に行って、外でご飯食べて、遊園地行ったり・・・。まあ、普通のデートなんだけど・・・。」 アルコールのせいか、はたまた恥ずかしいからか、顔が少し赤い2人である。
智世「それだけじゃないでしょ?亜紀?」
亜紀「え?大体このくらいだよ?」
智世「本人の口から言わないんじゃ仕方ない。私が言っちゃおう!」 そういうと。智世は、ミニ卒業式に連れて行く間に亜紀が話したことを話し始めた・・・。もちろん、夜、一緒に寝ていたことだ・・・。 それを聞いた皆は、
谷田部「いいねぇ・・・廣瀬、愛されて・・・。」
ボウズ「ドラマばりじゃねぇか!何やってんだよ。この!この!」
龍之介「なかなかやるなぁ。おまいさん。そういうことをするようになったか!いやぁ、今度俺もやってみよ。」 この後も宴は続いた。と言っても朔と亜紀への質問攻めがほとんどなのだが。 朔が帰郷し、みんなとこうして笑いあえる日々を取り戻し始めたことを、誰よりも亜紀が実感していた。
続く
|
...2005/03/18(Fri) 13:41 ID:PLl.Z5WQ
Re: アナザーストーリー 2 Name:グーテンベルク
| | たー坊様へ。 こんばんは、グーテンベルクです。2話分一気に読ませていただきました。みんなのとても幸せそうな様子が読者にも伝わってきますよ。龍之介と智世も幸せなようでホッとしました。ちなみに心温まるこの物語をいつも読める私も本当に幸せ者です。これからもお互いに頑張っていきましょう。
|
...2005/03/18(Fri) 20:49 ID:HDDFbrfE
Re: アナザーストーリー 2 Name:まこと
| | せかちゅう大好き人間で楽しく読ませていただいてます。ただ・・医学部は卒業して研修が始まるまで最低6年かかるのでは?
|
...2005/03/19(Sat) 11:47 ID:SQSL.5.w
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | グーテンベルク様 お疲れ様です。毎回お読み頂きましてありがとうございます。 今回も、今までにみんなと過ごせたはずであろう時間を取り戻すための一環として、イベントを用意してみました。 また、お読み頂ければ幸いです。
まこと様 お読み頂きましてありがとうございます。 さて、ご指摘の件ですがおっしゃるとおりです。 そして、私が書かせていただいているこのストーリーでは、朔は現在5年生で卒業もしておりません。あくまで研修は、朔の通う大学の特別な授業の一環としてのことです。病院での実習と考えていただければよろしいかと思います。
あくまで、作家でもない一個人が、このような、すばらしいドラマに感動し、「こんな物語があればいいなぁ。」と思い、こういった場所をお借りして、妄想にも近い個人の希望を形にさせて頂いているので、現実とはあまりにかけ離れ、おかしいと思われることもあるかと思います。また、時には不快に感じられることもあるかとは思いますが、できることならご理解を頂けたらと思っております。
お見苦しい点は多いかと思いますが、また、お読み頂ければ幸いです。
|
...2005/03/19(Sat) 17:16 ID:zyFguHo.
Re: アナザーストーリー 2 Name:ゴン41
| | たー坊さまへ。 ご無沙汰してすみません。出張に出ておりました。”特別ミニ卒業式”&”松本写真館”涙が浮かんでしまいましたよ。まさか、二人で卒業式に出席出来るなんて、亜紀は思ってもみなかったでしょう。感動しました。
|
...2005/03/21(Mon) 02:53 ID:RfD1gqvM
楽しみ Name:。。。
...2005/03/21(Mon) 22:11 ID:A.rAx8yo
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | ゴン41様 出張お疲れ様でした。お疲れのところお読み頂きましてありがとうございました。 また、お読み頂ければ幸いです。
。。。様 いつもお読み頂きましてありがとうございます。 これからも楽しみにしていただければ幸いです。
|
...2005/03/22(Tue) 11:58 ID:xuAa..iA
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 4月下旬。
真の帰宅を待って全員揃っての夕食を済ませた後、一家団欒の時を過ごす廣瀬家の面々。 リビングで父娘が会話している。入院前には、ほとんどなかった事である。
真「大学はどうなんだ?」
亜紀「いろんな人がいて面白いよ。授業も教養科目に今までにない面白さあって、集中して講義を聞けてるのよ。」
真「それは何よりだな。物事に面白味を感じることができる方が、何を学ぶにしても覚えやすいものだからな。・・・ところで、やはりサークルには入らないのか?」
亜紀「・・・うん。やっぱり、サークルに入っちゃうとね・・・。悪いような気がして。」
真「・・・・・・朔に遠慮してるのだったらそれは違うと思うぞ。あいつは・・・。」 言いかけた時に、亜紀が遮った。
亜紀「分かってるよ。それに私は、サークルとかに入るより、そっちの方がいいの。」
真「・・・・・・ならいいんだ。お前の好きにしなさい。」 まるで、顔を隠すかのように新聞を広げた。 新聞の向こうの真の顔は、亜紀を愛する親心と、今では息子のように思い、信頼している朔との間で、自分をどうしようか分からずに悩んでいるようだった・・・。 そんな父娘を、台所からこれまた少し複雑な微笑で見つめる綾子・・・。
と、その時・・・。 「トゥルルルル!」と電話が鳴った。 その音に、少し「ドキッ!」としたように反応し、受話器を取るためにソファを立った亜紀を「いいわ。私が出るから。」と綾子が制した。
綾子「はい。廣瀬です。・・・あ、お母さん。どうしたの?」 電話の相手は綾子の母、亜紀の祖母である。祖父とともに亜紀を可愛がり、いつでも味方になってくれる。亜紀が大好きなおばあちゃんだ。
綾子「・・・はい、はい。分かりました。じゃあ待ってるわね。はい。気をつけてね。」 受話器を置いた。
亜紀「おばあちゃん?」
綾子「そうよ。」
亜紀「何だって?」
綾子「ゴールデンウィークに家に来るって。」
亜紀「やった!」
真「お養父さんもか?」
綾子「ええ。それがなにか?」
真「いや、聞いてみただけだよ・・・。」 言いながらまた新聞に目を通す。そんな父の様子を不思議そうに見る亜紀と、「仕方ないわね・・・。」といった表情で見る綾子・・・。
綾子「ねえ、亜紀ちゃん。2人が着いたら、都合のいいときでいいから朔君を呼んできてくれない?」
亜紀「えっ?・・・いいけど、どうして?」 怪訝そうな顔の亜紀。
綾子「お母さんね、1度会ってみせたいのよ。朔君がどんな反応するか見てみたいわ。」 何やら悪戯を企んでいる様子の母に娘は、
亜紀「いいよ・・・。でも、言っておきますけど、朔ちゃんは私の彼氏なの。お母さんの好き勝手にはさせないから。お母さんにはお父さんがいるでしょ?・・・でも面白そうね。私も参加しようっと。日曜日に教えておくね(笑)」 新聞の向こう側では、そんな娘と妻の計画を聞いた真が「血は争えないようだな。朔、頑張れ・・・。」と声に出さずに呟くのだった。
そして日曜日の朝・・・。 松本家。
亜紀「おはよう。」
芙美子「あ、お姉ちゃん。おはよう。」 玄関先で芙美子が出迎えてくれた。
亜紀「朔ちゃんは?」
芙美子「ガム太郎は、まだ部屋で夢の中!」 と言ってからかう妹のおでこを姉が指でつつく。
芙美子「ヘヘヘ(微笑)勝手に入っていいよ。」
亜紀「おじゃまします(笑)」
朔の部屋・・・。
ベッドの中では寝息をたてている朔。亜紀が部屋にいることなど気付いていない・・・。
朔「スー・・・スー・・・スー・・・。」
亜紀「しょうがないなぁ・・・。」 早速、つんつんと顔を人差し指でつついた。が、「うぅ〜ん」と言うだけで起きてくれない。
亜紀「じゃ、これは?」 と、朔の鼻をつまんでみる。しかし、朔は手で払うだけで目覚めもしない。 「・・・バカ!」と膨れ顔で言ってみるが、朔はまだ夢の中・・・。
亜紀「どうするのよ・・・どうやって毎朝起きてるのか不思議よね・・・。」 やや途方にくれかけているが、最後の手段を使うことにした。 掛け布団をあげ、朔の足の方から布団の中へと、もぞもぞと進入・・・。仰向けに寝ているの朔の体の上に、自分をうつぶせにして重ねて布団を被せた。 すると・・・。
朔「う・・・。うう・・・。」 うめき声を出しはじめる。朔は夢を見ていた・・・。
(夢の中) 場所は東京。夢の中ではあるが、朔は亜紀に、医学の壁にぶつかり挫折しかけていたことを、隠し事にしていた。
すると、なぜか朔の部屋に、立っているのもやっとの様子の亜紀が目の前に・・・。
朔『亜紀?どうして・・・?』
亜紀『私が宮浦で朔を信じて待っていたのに・・・。』
朔『いや、その・・・。』
亜紀『私は、あなたが私のことを信じるって言うから、もう一回病気と戦うことにしたのよ。だから、東京に行くって言う朔ちゃんを信じてたの・・・。』
朔『亜紀・・・。』
亜紀『朔ちゃんが側にいてくれなくて、すごく寂しいし悲しい。でも、いつか帰ってきてくれて、私を治してくれると信じたのに・・・。』
朔『違うんだ・・・。』
亜紀『朔ちゃんに裏切られた私は、もう、この世にいる意味はない・・・。さようなら・・・。』 夢の中の亜紀はそう言うと、足元から消えていく。急いで朔が駆け寄り、亜紀を抱きしめるが時すでに遅し・・・。
朔『亜紀!!亜紀ーーっ!!』 膝から落ち、絶叫する朔・・・。 ここで悪夢は終了・・・。
(現実)
朔の部屋・・・。 夢の中で絶叫し、ようやく目を覚ました。 自分の目にはいつもの部屋の光景。
朔「夢か・・・。久しぶりに悪夢を見た・・・。あれ・・・?」 朔は、自分の体がやけに重いことに気付いた。もちろん、亜紀が体を張ったいたずらで、布団の中に隠れて朔の体に乗っかっていたからなのだが・・・。
朔「??・・・なんだ?」 夢の中で亜紀を抱きしめたハズの朔は、同時に、現実でも亜紀を抱きしめていた。そのことに朔は自分でも気付いていなかった。 すると・・・。
亜紀「おはよう!朔ちゃん(笑)」 布団からヒョコッと朔の目の前に顔を出す。もちろん、愛情たっぷりの笑顔で。
朔「・・・何してるの?」 ボー然としながらそう答えるのがやっとの朔。
亜紀「つついても、鼻をつまんでも起きないんだもん。呼んでも起きなさそうだったから、こういうことをやってみたの!」
朔「あ、そう・・・・・・。」
亜紀「早く起きて着替えて。お話があります。」
朔「うん。」 せかされて着替え終わった朔をベッドに座らせて、亜紀も隣に座った。
亜紀「ゴールデンウィークに、おじいちゃんとおばあちゃんが来るの。」
朔「そうなんだ。」
亜紀「それで、会って欲しいの。」
朔「うん・・・・・・・・・へっ!?」
亜紀「だから、おじいちゃんとおばあちゃんに会ってくれない?私も、一回会わせたいって思ってたの。」
朔「・・・・・・・・・・。」 突然のことに声が出ない。「えーと、亜紀のおじいちゃんとおばあちゃんだから・・・おじさんかおばさんの、両親・・・!!」 考えれば考えるほどに、緊張と混乱の度合いが増す。 「もしおじさんのご両親だったらどうしよう!?」 昔に比べれば、だいぶ打ち解けたとはいえ、真と会うときには未だに少し緊張してしまう朔にとって、無理もないことだった。
亜紀「都合のいい時でいいの。会ってくれるよね?」
朔「・・・・・・ああ。」 2つ返事しか返す事ができなかった・・・。
亜紀「何か必要以上に考え込んでるみたいだけど、大丈夫よ。2人とも、特におばあちゃんは、いつも私の味方だから。気に入られるといいなぁ。」
朔「う・・・うん。」
亜紀「いつも通りの朔ちゃんで十分。」
朔「うん。」 亜紀から笑顔で言われてもうわの空。 この日から朔の悩む日々が始まったのだった。
続く
|
...2005/03/22(Tue) 19:18 ID:xuAa..iA
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 松本写真館・・・ 朔が、奥の部屋にボウズと龍之介を呼んでいた。もちろん、亜紀の祖父と祖母に会う時にどういう振る舞いをすれば良いか相談するためである。 しかし・・・。
朔「・・・どうしよう。」
ボウズ「お前なぁ、んなこと自分で考えろよ。」
龍之介「それに、考えすぎなんだよ。」 持参したたこ焼きを堪能して、なかば呆れながら朔の話を聞いている。
朔「ボウズは、それでも一応僧侶の端くれだろ?スケちゃんだって人生経験豊富じゃないか!」
ボウズ「うるせぇよ!!『一応』は余計だ。」
龍之介「お前ほど経験豊富じゃねぇよ。」 2人はうんざりといった表情を浮かべる。
朔「2人とも頼むよ!!」 すがるような表情で、なんとかアドバイスをもらおうとするが・・・、
龍之介「そうだな・・・・・・。夢島から港に戻ってきたときに亜紀の親父さんに殴られたろ?もし、祖父さん祖母さんの気を損ねたりしたら、あん時みたいに殴られるのは覚悟しといたら?」 と、なんとも投げやりの答え。
朔「ちゃんと考えてくれよ!!!」
ボウズ「お前が考えろよ。」 3人のコントのようなやりとりが続く・・・・・・。
ボウズ「亜紀はなんて言ってんだよ?」
朔「いつも通りでいいって・・・。」 小さな声でブツブツ言う。
ボウズ「じゃあ、普段通りにしてればいいじゃねぇか。何も迷うようなことねぇだろ。」
龍之介「亜紀の祖父さん祖母さんも、普段のお前を見たいと思うぞ。変に考えすぎた行動で失敗するよりマシだと思うけど?」
朔「そんなものかな・・・。」
龍之介「それとも何か?大失態を犯して亜紀に嫌われたい?」
朔「そんなこと言うなよ・・・。」
ボウズ「でも、そうなったら俺にも再びチャンスがめぐって来るわけだ。・・・・・・悪くないな。」 いつになく悪そうな顔をするボウズ。
朔「なんだよ・・・まだ亜紀が好きなのかよ?まだ亜紀のこと狙ってんのかよ?言っておくけどな・・・。」 今にも声を荒げんばかりな朔にボウズが言った。
ボウズ「んな訳ねぇだろ!!お前バカか!!」 言いながら「パシ!」と頭を叩いた。
朔「痛っ!!何すんだよ!」
ボウズ「バカを叩いたんだよ!」
龍之介「・・・なぁ朔、亜紀は何も特別なことをしてくれと言ってるわけじゃないんだろ?いつも通りで良いって。緊張するのも分かるけどよ、もっと自身持てよ。亜紀も自信を持って紹介できるから、会ってくれって言って来たんだよ。亜紀にとってお前は自慢の彼氏なんだよ・・・。俺らにとっても自慢のダチなんだよ。」 なかなか深みのある言い方に、朔も幾分平静を取り戻したようだ。
ボウズ「小さいことでグダグダ言ってんじゃねぇよ!亜紀を堂々と持って行ったんだからよ。」 ボウズなりの励ましだった。
朔「2人ともありがとう。」
龍之介「頑張れよ!おまいさん。」
ボウズ「それにしても、朔はどんどん廣瀬家の一員になってくよな。」
龍之介「まったくだ。たぶん一番早く結婚するんだろうよ。」 ニヤケつく2人に朔は、「まだ早い」とだけ言った。落ち着きを取り戻した朔の目には、いつもの自身に満ちた輝きを取り戻していた。
朔「・・・ところでボウズ。」
ボウズ「何だよ?」
朔「お前、彼女は?」 思わぬ朔の発言に、「ブッ!!」と、口に運んでいたコーラを吹き出しそうになった。
ボウズ「何だよ!?急に?」
朔「いや、お前にも春が来てもいいと思うんだけど・・・。」
ボウズ「ほっとけ!!」
すると、龍之介がニンマリしながら口を開いた。
龍之介「いらない心配をするな、おまいさん・・・。ボウズ。いつだったかお前、病院で可愛い女の子と話していたんだって?」
朔「えっ!?」 相当に驚きながらボウズの顔を見る。
ボウズ「バカ言え!どっからそんな根も葉もないこと・・・。」
否定しようとするボウズの顔の前で、「チッチッチッ!」と人差し指を左右に振りながら言う。
龍之介「智世が言ってたぞ。2月にそういうことがあったって。」 あたふたするボウズを追求し続ける朔と龍之介。
龍之介「ほうほう。この慌てぶりはただ事じゃねぇなぁ。お前、もしや・・・。」 朔も身を乗り出し、興味津々である。 次第に口数も少なくなるボウズ。いつしか主役は朔からボウズへ。取調室と化した部屋で朔と龍之介の厳しい追及は、この後2時間以上続くのだった。
続く
|
...2005/03/23(Wed) 18:43 ID:Rvawvvww
Re: アナザーストーリー 2 Name:北のおじさん
| | たー坊様。
綾子と亜紀二人の手のひらの上でオロオロしている朔の姿が目に浮かびます。 ボウズの恋も二人にバレてしまいましたね。 これからの展開が楽しみです。
|
...2005/03/23(Wed) 20:47 ID:6bPgYd46
Re: アナザーストーリー 2 Name:朔五郎
| | たー坊さま いよいよ、ボウズの春が本格化するのでしょうか。 とても楽しみです。
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...2005/03/24(Thu) 01:28 ID:VyCvc/.E
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 北のおじさん様 朔にいたずらを仕掛けるのは、亜紀だけではなくなりました。長い時間を経て、朔を息子のように感じるようになった綾子もいたずらに参加することによって、より母娘タッグが強くなるのではないかと思います。 また、お読み頂ければ幸いです。
朔五郎様 いよいよ春本番!・・・と簡単にはいきません。桜前線を北上させていくのはボウズ自身なので、どうなるか分かりませんが、花粉に負けずに頑張ってもらいたいです。 これからもお読み頂ければ幸いです。
|
...2005/03/24(Thu) 20:11 ID:mGWALmIA
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 龍之介「ほれ。そろそろ吐いたらどうなんだ?」
朔「白状したほうが身のためだと思うぞ?」
ボウズ「お前らなぁ・・・・・・いい加減にしろよ!」
写真館の部屋で、龍之介と朔がボウズに対する取調べを続けている。ボウズはあまりのしつこさに、少しグロッキーになりつつあった。
朔「で?好きなのか?その女の子。」
ボウズ「だから、そんなんじゃねぇって。たまたま寺に墓参りに来たその子の親父さんの様子に俺が気付いて、相談に乗った後、頼まれて病室に行って、病室でお説教しただけ。」
龍之介「そこで、うまいこと説得することができて、その子に好かれて病院に通うようになるうちに、お前も好きになったというわけね。」
ボウズ「だから違うっての!」
朔「本当は内緒にしておくつもりが、最初に行った時に、不幸にも亜紀と智世に目撃されてしまったわけだ。」
ボウズ「朔・・・・・・お前はそんなやつだったのか・・・?」 疲れきった表情を見せる。「もう勘弁してくれ。」といわんばかりに、すがるような目をして朔を見ている。 そのときだった。
???「こんにちは。」
潤一郎「おお、いらっしゃい。」
???「お願いしてもいいですか?」
潤一郎「まかせなさい。」 店の方で潤一郎が笑顔で応対している。お客さんのようだ。 すると、「朔太郎!」と呼ぶ声がした。ボウズが逃走しないよう龍之介に頼んで店に行くと・・・。
???「あ、ここにいたんだ。家に寄ったんだけどいなかったから。」
朔「どうしたの?」 声を掛けたお客さん、その正体は亜紀だった。
亜紀「『どうしたの?』って・・・・・・。ここに来るときは、写真に関係あることをお願いするときしかないでしょ?」
朔「まあ、そうだけど・・・・・・。あっ!」 亜紀がこの場所にいることが、チャンスであることに気付く。
亜紀「どうしたの?大きな声を出して。」
朔「ちょっと来て。」 言うなり亜紀の細い腕を優しく掴んで、取調室と化した奥の部屋へと引っ張って行く。
朔「ボウズ!目撃者を連れてきたぞ。」 ドアを開けるなり言った。手を引かれて入ってきた亜紀は「なになに?目撃者ってなに?」と言うが、目撃者の姿を見たボウズは、ガックリと肩を落とすのであった。
龍之介「亜紀、これから聞くことに正〜直に答えてくれ。」
亜紀「うん。」 龍之介が説明を始めた。 どうして3人がここに集まっているのか、なんでボウズが色々聞かれているのか。 そして亜紀への質問、その様子を見た時の感想・・・。
朔「他に何か言いたいことある?」
亜紀「これは私の意見だけど・・・ボウズが恋愛しているかどうか別にして、あの子にとって、ボウズの存在はとても大きくて頼もしいモノだったと思うの・・・。」
龍之介「何でそう言えるんだよ?」
亜紀「実は、あの時私と智世は、2人が話している途中からいたの。」
ボウズ「あ?」
亜紀「どういう内容かはわからないけど、ボウズの話が進むにつれて、その・・・なんていうか、その子の顔が明るくなったって言うか、穏やかになって行くように見えた気がしたの・・・。」
朔「うん。」
亜紀「結局、説得は成功してるよね?人の考えを変えさせることって、すごく大変で難しいことでしょ。人間って変わることを恐れるものだから。それを変えた、前向きにさせたってことは、その子にとってボウズの印象って、すごく好感を持てるものだったと思うよ?」
龍之介「その子にとってボウズって、亜紀にとっての朔みたいな感じがしたりするもんかな?」
亜紀「・・・・・・もしかしたら、そうなってるかもよ。」
朔「さらに、もしかしたら・・・って可能性もあるよな。」
亜紀「うん。好きになる理由は人それぞれだから。十分にあり得ると思うな・・・。」
龍之介「・・・どうなんだよ。お前は?」 核心を問う質問。さっきまでの雰囲気とは180度違っていた。すると、
???「自分に正直になった方が幸せになれると思う!」 と声がして智世が入ってきた。
ボウズ「うわ・・・絶叫マシーン・・・。」
智世「うるさい!・・・・・・どうなのよ?」 朔、亜紀、龍之介、智世。4人が4人ともボウズの幸せを願っていた。
続く
|
...2005/03/25(Fri) 16:38 ID:95NsiZws
Re: アナザーストーリー 2 Name:ゴン41
| | たー坊様。 とてもいいストーリーだと思います。仲間の友情、幼馴染みを思いやる気持ち。せちがらい世の中のさなか、気持ちがいやされます。 そして、話は変わりますが、原作者”たー坊様”に質問!! <朔と亜紀はいつ?結ばれるのでしょうか?>
|
...2005/03/26(Sat) 00:59 ID:xVRSTBDM
Re: アナザーストーリー 2 Name:サイトのファン
| | たー坊さんへ 執筆、お疲れ様です!! まとめて拝読させて頂きました。 サクも亜紀も、龍之介と智世、ボウズも皆、幸せで 読んでいてホノボノしてきます。 ボウズにも春が来たようだし?? 亜紀の祖父と祖母の登場で、亜紀パパの真の 今まで見られなかった一面も見られそうで 本当に楽しみです。 たー坊さんへ、お願いです。 是非、谷田部先生にも春が来ればいいと 思うのですが・・・・ 続編、楽しみにお待ちしています!!
|
...2005/03/27(Sun) 02:06 ID:5G.px4Qg
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | ゴン41様 今回もお読み頂きましてありがとうございました。 朔&亜紀、スケ&智世がカップルとして順調に愛を育んでいるがゆえに、独り身のボウズが掴みかけているかもしれない幸せを確実につかませてあげたいがゆえに、お節介を焼いてもらおうと思っています。
また、ご質問ですが、明確にはお答えできません。ですが、ストーリー上にいくつかヒントに近いセリフも出ていますので、そこから予想して頂ければと思います。 次回もお読みいただけたら幸いです。
サイトのファン様 ゴールデンウィーク突入後は、新たな真の一面を見てもらえるかと思います。家族を思う気持ちを表現できたらと思います。 谷田部先生については、リクエストとと受け取ってよろしいのでしょうか?できることならご要望にこたえたいと思いますが、できないことも多々ございます。ご理解いただければと思います。 次回も楽しみにしていただければ幸いです。
|
...2005/03/29(Tue) 13:51 ID:1PwraVd.
Re: アナザーストーリー 2 Name:グーテンベルク
| | たー坊様、こんばんは。グーテンベルクです。久しぶり書き込みいたします。3話分一気に読ませていただきました。どの話も幸せに満ちていて読んでいる私も嬉しくなりました。これからもこんな風に心温まる作品を読むことができたら幸せです。これからもマイペースで頑張ってください。
|
...2005/03/29(Tue) 21:49 ID:np/rWV/Q
Re: アナザーストーリー 2 Name:けんけん
| | たー坊様 お久し振りです。けんです。突然ですが、このサイトに同じハンドルネームが出ていたので、けんけんとネームを変えましたので、よろしくお願いします。5話分一気に読ませていただきました。朔と亜紀のミニ卒業式ドラマのキャストとダブらせながら、読ませていただきとても感動いたしました。最高ですね!このような物語を作れるのもたー坊様はさすがだなー感心致しました。あと花見のシーンも良かったし、ボウズの恋の物語もうまくいってほしいと思います。では、次回も楽しみにしていますので、執筆活動頑張って下さい。
|
...2005/03/30(Wed) 00:26 ID:UeY2I84.
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | グーテンベルク様 お疲れ様です。元の平凡な日常を取り戻した皆にとっても、幸せは続いて欲しいと思うでしょう。 グーテンベルク様の作品も期待しております。 またお読み頂ければ幸いです。
けん改め、けんけん様 ご多忙にもかかわらず、毎回お読み頂きましてありがとうございます。 当分は、廣瀬家とボウズの2人がストーリーの中心になっていくと思います。 これからもお読み頂ければ幸いです。
|
...2005/03/31(Thu) 01:16 ID:J2vxPGX.
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 亜紀の祖父母が宮浦に来る前日。 松本家。
富子「練習したねぇ。」
亜紀「そうですか?少しはうまくなってるのかな。時間があるときはやるようにしてるんですけど。」
富子「どうりで・・・。もう何年前になるかねぇ、外泊許可が出て家に遊びに来たときに一緒にごはん作ったろう?あの時に比べたら、もう雲泥の差だよ。」
亜紀「おばさんが言うなら間違いないですね。良かった。」 台所に立って夕飯の用意をする2人。亜紀は、以前朔に頼まれた「家で夕飯を作って欲しい。一緒に食べよう。」という約束を果たすために富子に頼み込んでいた。富子も亜紀のことを気に入っているので大歓迎だった。
富子「それにしても・・・。うちのバカにも困ったもんだね。亜紀ちゃんにご飯作ってくれなんて・・・。」
亜紀「私は全然かまわないんです。朔ちゃんには、いつも私のわがままを聞いてもらってたから、このくらいは・・・。私も嬉しかったりするんです。」
富子「そう言ってもらえると私としてもありがたいねぇ。」
富子は、息子のことをこんなにも大切に想い続けていてくれる亜紀に心の底から感謝していた。様々な困難を乗り越え、逞しく成長した息子があるのは、間違いなく亜紀の存在があるからだ。そのことを十分に理解している富子は、できることなら、これからも息子の隣にいて欲しいとさえ思うこともあるのだった。
その時「ただいま」と声がする。朔が帰宅したのだった。 「あっ、帰ってきた帰ってきた。」と亜紀が嬉しそうにエプロン姿のまま玄関へと急ぎ足で向かった。
亜紀「おかえりなさい。」
朔「あ、ただいま。」
亜紀「おじさんと芙美子ちゃんを呼んで座って待ってて。すぐにご飯できるから。」
朔「ありがとう。」
そして・・・
一同「いただきます!」 楽しい夕食が始まった。朔の隣に亜紀が座る。 今日の献立はカレーライス。実は、亜紀が富子にリクエストして夕飯のメニューになった。亜紀が松本家の味を盗んで、いつか自分の味にアレンジして、朔に食べさせたいと思ったからなのだ。
潤一郎「ところでどうだったんだ。東京での生活は?」
朔「どうって・・・。別に、デートしたり一緒に家事をしたり。」
亜紀「1日中一緒だったんです。何をするのも一緒でした。ねっ。」 朔の方を見る。
芙美子「そうなんだ。で、お兄ちゃん?」
朔「うん?」
芙美子「2人きりだからってお姉ちゃんに変なことしなかったよね?」
朔「何だよ突然。何もしてねぇよ!」 憮然とする朔。口に運ぼうとしたスプーンを持つ手が止まった。
富子「朔はこう言ってるけど、亜紀ちゃん。本当のところはどうなんだい?バカ息子が変なことをしでかしたんだったら、正直に言うんだよ。」
亜紀「大丈夫ですよ。私が嫌がるようなことは何ひとつありませんでしたから。もっと、朔ちゃんを信用してください。本当に信頼できるんですよ。」 今までで一番ぐらいに誉めてもらった朔は、照れを隠すかのようにカレーを食べ続けている。
富子「本当?それならいいんだけど・・・。」
潤一郎「こいつは、時々信じられないことをやらかすからね。猪突猛進に取り組むのはいいんだが、暴走もするからね・・・。紙一重なんだよ。」
亜紀「本当にそんな心配しなくても大丈夫ですよ。」
朔「そうだよ親父。誉めるか、けなすかどっちなんだよ?」
富子「違いないね。」 こうして一家団欒の時間が過ぎていくのだった。
そして夜も10時をまわった。朔の部屋。 まったりと2人の時間を満喫していた。
朔「いいの?帰らなくて。」
亜紀「あれ〜?私がいない方がいいの?」 わざと意地悪なことを言ってみる。
朔「そんなこと言ってないよ。」 その時。
芙美子「お姉ちゃん。お風呂どうぞ。」 部屋をノックしながら芙美子の声が聞こえる。
亜紀「ありがとう。あっ、タオル貸してね。」
芙美子「うん。いいよ。」
亜紀「じゃあ、朔ちゃんお先に。」 部屋を出て行く。 残された朔は、いまいち状況を飲み込めないでいた。
富子「今日、亜紀ちゃん泊まるから。」
朔「へっ?」 台所に飲み物を取りに来た朔に富子が声をかけるのだった。朔はポカンとしている。
富子「たまにはいいだろう?」
朔「いいけど何で?」
富子「明日、亜紀ちゃんのおじいさんとおばあさんに会うんだろう?亜紀ちゃん言ってたよ『朔ちゃん緊張してるみたいだから、解せたらいいなと思うんです。』ってね。」
朔「・・・余計なことを。」
富子「それは口実だと思うよ。なんだかんだ言って、お前のことが好きなんだよ。いい娘だね。本当に・・・。」 口元に笑みを浮かべながら言う富子に、「ああ。」とだけ朔は答えた。
再び朔の部屋・・・。 後ろから朔の腕が亜紀のお腹のあたりにまわされている。
亜紀「・・・どうしちゃったの?こんなこと初めてね・・・。」 珍しく朔から亜紀に甘えている。
朔「うん・・・。ちょっと充電?」
亜紀「充電?色々大変なの?」
朔「まあね。」
亜紀「・・・朔ちゃんなんか変わったね。今までは私が甘えてばっかりだったのに。甘えてくれて・・・。」 朔の部屋はとても甘い空気で満たされていた。 朔は恥ずかしい感情を覚え、亜紀は心が満たされていくのを感じていた。
亜紀「そろそろ寝よう。」 今日は早めにベッドにもぐりこんだ。
亜紀「・・・嬉しいな。やっぱりいいね。」
朔「何が?」
亜紀「久しぶりでしょ。2人そろって同じベッドの中。最高だよ。」 相変わらず大胆なことをさらりと言ってのける。
朔「じゃあ、こうするよ。」 と言って東京の時と同じように亜紀を両手で優しく包み込んだ。亜紀が本当に幸せな表情になる。
亜紀「明日、大丈夫?」
朔「いつもと同じでいいんでしょ?」
亜紀「うん。十分よ。平気?」 聞いては見るものの、朔からは不安や緊張は全く感じられない。
朔「大丈夫。俺、この6年の間に、みんなから支えてもらってたくさんの自信をもらったから。」
亜紀「そっか。よし・・・。」 朔の懐近くに顔を寄せる。「頼もしくなったなぁ。やっぱり好きだなぁ。優しいのは何年経っても変わらないなぁ・・・」と心の中で言うのだった。
朔「明日が楽しみだよ。」
亜紀「いい一日になるよ。きっと。・・・あとはボウズだね。」
朔「そうだね。でも今晩は、この時間を大切にしようよ。」
亜紀「うん・・・。」 朔は「何年後でも好きな気持ちは日に日に強くなるのだろう。」と思っていた。「亜紀が好きだ。たまらなく好きだ。」と心底感じていた。
朔「おやすみ。」
亜紀「・・・今日は、それやめない?朔ちゃんともっと話したいよ。どっちが先に寝ちゃっても恨みっこなし。」
朔「いいよ。」 ・・・・・・・この後、先に眠りについたのは亜紀だった。本当に穏やかに朔の腕の中で。母親の腕の中で寝息を立てる赤ん坊のように・・・。安心しきっているようだった。それだけ朔の温もりは、亜紀にとって特別で不思議と包まれるような感覚を覚える場所だった。
一方、とある部屋。
ボウズ「わからねぇ。・・・どうすりゃいいんだよ・・・。」 仲間の言葉が頭に引っかかり続けている。ボウズは自分の気持ちに正直になろうとすればするほど苦悩していた。
ボウズ「好きなのかなぁ。俺・・・。」 暗闇の中、ボウズは天井を見つめていた。
続く
|
...2005/03/31(Thu) 23:04 ID:J2vxPGX.
Re: アナザーストーリー 2 Name:けんけん
| | たー坊様 けんけんです。今回のお話亜紀と松本家の団欒とても良かったですよ。とても楽しい団欒が思い浮かべられるようでこっちも楽しい気分でした。次回はいよいよ朔と亜紀の祖父母との対面ですね。どうなるか楽しみです。後ボウズの恋の行方も・・・ 私は明日引っ越しするので、当分このサイトにこれないのですが、また来たときに読ませていただきますので、執筆活動頑張って下さい。
|
...2005/04/01(Fri) 05:18 ID:e3x.eytU
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | けんけん様 今回もお読み頂きましてありがとうございます。 次回からは朔と亜紀の祖父母との対面です。やっぱり、緊張するとは思います。朔の動揺っぷりを綾子と亜紀はおおいに楽しむことでしょう。 引越しが終わりましたら、ゆっくりお読み頂ければと思います。
|
...2005/04/01(Fri) 11:10 ID:GUQ5Rf72
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 翌日、昼過ぎの廣瀬家。
真、綾子、亜紀そして朔が、リビングのソファに座っている。 綾子と亜紀が、今か今かと待ちきれない様子と対照に真と朔は、やはり緊張しているのかどこか落ち着かない様子である。真は新聞を読んでいるために表情をうかがうことができない。そして朔は、明らかにガッチガチな状態。隣に座っていた亜紀がさすがに心配になって声をかけた。
亜紀「昨日は全然平気そうだったのに。本当に大丈夫?顔色まで悪くなったりしないでよ?」
朔「大丈夫・・・。」
亜紀「緊張しないで・・・。2人とも朔ちゃんが、とてもいい人だって分かってくれるから。」
朔「う、うん。」
綾子「大丈夫よ。うちの両親は結婚写真を見せたときに、『亜紀ちゃん、本当にいい人を見つけてきたね。』と言ってたんだから。」
朔「そうなんですか?嘘じゃないですよね?」
綾子「本当よ。こんなことに嘘をついても仕方ないじゃない・・・。大丈夫だから。」 幾分落ち着きを取り戻した朔。 すると、インターホンのなる音。
綾子「着いたみたいね。亜紀ちゃん、出迎えるわよ。」
亜紀「朔ちゃんとお父さんはここで待ってて。」 2人は玄関へと向かった。 リビングに残された男2人。すると、真が「フゥー」とため息をついた。
朔「・・・どうしたんですか?」
真「ん?いや、ちょっとな。」 朔は今までに見たことのない様子の真を見ていた。緊張とは少し違うような感じである。 その時・・・。
綾子「どうぞ。今お茶を淹れるから。」
亜紀「座って。」 2人の後ろから祖父母が登場。それを見て真が立ち上がる。朔もそれを見て慌てて立ち上がるのだった。
真「お久しぶりです。ようこそお越し下さいました。」
勇一郎「お邪魔するよ。それと、堅苦しいのはやめにしないか?余計な気は使わなくていいから。」
真「分かりました。お言葉に甘えさせていただきます。お養母さんも遠いところをようこそ。どうぞ、ゆっくりしていって下さいね。」
百合子「ご無沙汰してます。お世話になりますね。・・・・・ところで、こちらはもしかして・・・。」
綾子「そう。写真で見たことがあるでしょう?今日は無理言って来てもらったのよ。」
百合子「それはわざわざありがとうね。朔君・・・でいいのかしら?綾子はそう呼んでるみたいだけど。」
朔「あ、はい。あの・・・自己紹介が遅れましたが、松本朔太郎と申します。」 緊張気味に挨拶をする朔を、台所でお茶の用意をしている亜紀が、いたずらを忘れて本当に心配そうな目で見つめている。一方の綾子は、そんな朔の様子を見て楽しんでいる。
勇一郎「初めまして。君のことは時々聞いているよ。今日は会えて嬉しいよ。」
百合子「私もよ。いつも亜紀ちゃんのことをありがとう。」
朔「こちらこそ、いつもお世話になっています。」 「とても穏やかな老夫婦だな。」という感想を朔は持っていた。勇一郎には、どこか、亡き祖父謙太郎に近いような親しみを覚え、百合子には、綾子と亜紀より、さらに心地よい何かを持っているような感じを受けていた。
続く
|
...2005/04/01(Fri) 14:38 ID:GUQ5Rf72
Re: アナザーストーリー 2 Name:にわかマニア
| | 「いたずらを忘れて心配そう」にというのが,微妙な雰囲気を巧みに表わしていますね。サクもさることながら,真の表情の変化が楽しみです。
|
...2005/04/01(Fri) 17:29 ID:1FbFtQNc
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | にわかマニア様 お読み頂いてありがとうございます。 次回かその次あたりで、真たち廣瀬家の面々を描ければいいと思いますので、また、お読み頂ければ幸いです。
|
...2005/04/01(Fri) 17:54 ID:GUQ5Rf72
Re: アナザーストーリー 2 Name:SATO
| | 「挨拶しなさい」「先にすることがあるだろう」と朔をどやしつけた真が緊張するとは・・・ 綾子の両親に同じことされてたんですかね?
|
...2005/04/02(Sat) 01:05 ID:bsIewETc
Re: アナザーストーリー 2 Name:にわかマニア
| | >(真も)綾子の両親に同じことされてたんですかね?
「苦手関係」の順送りという構図は,別スレ(Apoさん版でしたか)でも採られていましたね。 となると,二十数年後にサクの娘に求婚者が現われた時,サクもまた「挨拶は!」とやるのでしょうか。何だか,「あ,あ,あの・・・,あなたが娘の・・・」といった調子で,しどろもどろになり,逆に相手から「親らしく,きちんと挨拶しなさい」とやられそうな感じもしますね。
|
...2005/04/02(Sat) 08:45 ID:vumZX4Mw
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | SATO様 お読み頂きましてありがとうございます。 綾子の両親に真が朔にしていたようなことをしていたかどうかは不明です。が、そのエピソードなんかもかければと思っています。
にわかマニア様 朔が真のようになる・・・。まったく想像がつきませんが、そうなって欲しくはないですね。 そこまでこのストーリーが続くかは分かりませんが、またお読み頂ければ幸いです。
|
...2005/04/02(Sat) 16:55 ID:VgHtxqOI
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 夜。時計は9時をまわっていた。 朔は、のんびりと自転車をこいで自宅に向かっていた。
朔「・・・・・・・・・・・・。」 顔はニヤついている。実は夕食に呼ばれて一緒にテーブルを囲んだ。そして帰り際に亜紀の祖父母から、「今日は楽しかったよ。私たちが宮浦にいる間に、もう一度遊びに来て欲しい。」と言われたからだ。朔は何故にそういうことを言ってもらえた理由を捉えあぐねていた。夕食時には質問されて、それに素直に答えた。飾らず、誇張せずに。ただそれだけだった。
朔「何がよかったんだろう?」 ニヤけながら首を傾げつつ、ペダルを漕ぐ足に自然と力が入っていくのだった。
廣瀬家・・・。 それぞれがお風呂に入ったその間、綾子が客間に寝具の用意をしている。 リビングでは真がソファに座っている。そこに勇一郎がやってきた。
真「湯加減はどうでした?」
勇一郎「なかなかよかったよ。」
真「それならよかったです。」 言うと立ち上がり台所から冷えたビールとコップ2個を持ち出して言った。
真「たまにはどうですか?」
勇一郎「ああ・・・いいな。いただくよ。」 穏やかな笑みを浮かべながら言った。 そして、勇一郎の手にあるコップに真がビールを注ぐ。 「チン!」とグラスを鳴らして口をつけた。
勇一郎「・・・こうして飲むのも久しぶりだな。」
真「何年ぶりですかね・・・。」
勇一郎「朔太郎君とは?一緒に飲んだことはあるのか?」
真「まだ・・・無いですね。」
勇一郎「だろうなぁ。今日の彼は、ずーっと緊張しっぱなしのようだった。そんな彼を亜紀は心配そうに見ていたなぁ。そんな緊張することも無いだろうに・・・。最後のほうは、だいぶ落ち着いたようだったが・・・。」
真「・・・あいつは、普段は前向きに物事を考えているみたいですが、どうもこういう事だけは・・・。」
勇一郎「最初彼は、君や私達に苦手意識でもあったんじゃないかと思ったよ。違うかい?」
真「まあ、色々ありました。出会った当時は、私自身余裕が少なかったというか。・・・亜紀が倒れたときは憎みました。もちろん、あいつのせいじゃあないとわかっていても。そうでもしないと、自分を保てないと・・・。それでも、毎日のように急な坂を自転車で登ってきてくれました。ただひたむきに。当時の私の気持ちを完璧に察することのできるほど器用なやつではなかったんです。亜紀を想っていてくれているからこそでした・・・。そして、その姿に何度救われたか分かりません。」
勇一郎「遠く離れていても支えあっていたわけか・・・。『病は気から』ではないけど、だから亜紀は助かったんだろうな。」
真「ええ。その部分はかなり大きかったんだと思います。実際に、時々彼と会話をしているのを見ると、とても嬉しそうでした。それだけ彼との時間を必要としていたのでしょう。それは今も変わってません。時間があれば会っているようです。我儘とも思えるものでさえも、彼は嫌な顔1つせずにしてくれています。本当に感謝しているんです。さらに当時、私と亜紀の仲が悪くて・・・けど、それも朔君のおかげでしょうか、次第に無くなっていきました。」
勇一郎「・・・最初見た時、いい目をした青年だと感じたよ。夕飯のときに少し話したが、初めの印象の通りだった。彼はいい所を見せようと思ってはいなかっただろうが、私は思ったよ。『亜紀はいい男を好きになったな』とね。」
真「そうですか・・・。」
勇一郎「・・・あまり口煩く言ってやるな。それとも、愛情の裏返しかな?綾子から聞いたんだが。」
真「恥ずかしながら、少し悔しい面との愛情の両方でしょうね・・・。今までは亜紀のことを一番に思っているのは自分だとばかり思っていました。今もその自負があります。ですが、亜紀が必要としていたのは朔君でした。亜紀を想う気持ちは誰にも負けない。だから、あえて交際を認めたんです。言葉で直接言ったわけではありませんが、2人とも分かっていると思います。」
勇一郎「そうか。認めているのか。・・・じゃあ、必要以上に口を出さないことだよ。私が君のことを認めたときからは、あまりうるさくなくなっただろう?」 笑いながら言った。
真「そうでしたね。慣れないうちは拍子抜けでしたよ。」 穏やかに笑う。
勇一郎「綾子が君を連れてきたときは、私も少し慌ててしまってね。おそらく、君が朔太郎君にしていたようなことを、私も君にしてしまっていたのだろう。今思えば悪いことをしたと思うが・・・。そうか。君も私と同じことを経験したか。それだけ時間が過ぎたということだね。」
真「ええ。そしてもう今は、息子のような感覚を覚えることもあります。本当に信頼できるんです。」
そんな真に勇一郎は笑みを浮かべながら言うのだった。
勇一郎「そう思ってたとしても、おそらく君のことだ。そうそう誉めたりはしないだろう?」
勇一郎の言葉を聞き苦笑いを浮かべて、「はい。お養父さんの影響です。」と真は答えた。 その言葉を聞いて、苦笑いをしながらコップを口に運んだのは勇一郎。 そして言った。
勇一郎「もし近い将来に、朔太郎君が『けじめをつけたい』と言ってきたら、今までのことを誉めてあげるといい。より良い関係を作れることだろう。おっと、君にそんなことを言う必要はもう無いな。すまない。」
真「いえ、そういったこともかなり教えていただきました。ありがとうございます。」
勇一郎「だが、もう1つだけいっておくよ。これも、君は理解しているだろうが。」
真「なんでしょうか?」
勇一郎「さっきも言ったが、堅苦しいのはやめよう。なぁ真。」
真「そう呼ばれるのは久しぶりですね。」
勇一郎「ハハハ・・・。そうだったなぁ。」 懐かしそうな表情をする。
真「それからですね。2人で釣りに行ったり、飲むようになったのは・・・。」
勇一郎「また行こうか?釣竿かついで。」
真「いいですね。お供します。」
勇一郎「・・・いつか朔太郎君と真も、そういう関係になれる時が来るだろう。そして、今日のように2人で酒でも飲むといいよ。私も君と初めて酒を飲んだときには、なんとも言えなかった・・・。」
真「・・・はい。」
勇一郎「私にも君が本当に血の繋がった息子のようだ。私も君も子供は女の子ばかりだったからな。君もいつか分かるよ。娘が連れてきた相手と良い関係を築いて、最初に酒を酌み交わす時のなんともいえない心地よい気分をね。最高だったよ・・・。」
すると、勇一郎がコップを真の前に出してきた。何も言わずに真がビールを注いだ。 真は久しぶりに心から嬉しさを感じていた。とても言葉では表すことのできないものだった。同時に感謝の気持ちも湧き上がってくるのも感じた。
勇一郎「これからもよろしく頼むよ。いつかは朔太郎君も交えて3人で飲んでみたいものだね・・・。」
真「私のほうこそよろしくお願いします。3人で飲めるのを楽しみにしてます。」 男2人、酒を交わす。普段は言葉をかわしづらい気もするが、関係は、大親友とも本当の親子以上とも思えるのである。 そんな2人の様子を百合子、綾子、亜紀が見ていた。
綾子「良かったね・・・亜紀ちゃん。」
亜紀「うん。朔ちゃんに教えたら、すごく喜んでくれると思う。」
百合子「おじいさんとお父さんが、一緒にああしているでしょう。いずれお父さんと朔君も同じようなことをするのよ・・・。」
亜紀「うん。」 ただ嬉しかった。亜紀が好きになった朔を「認めている」と言ってくれた真の言葉が。
百合子「亜紀ちゃん、いい人を見つけたね・・・。好きになってよかったね。愛して、愛されて・・・。長い時間を支えてもらったんだから、今度、朔君が大変になったときは亜紀ちゃんの番よ。」
亜紀「うん。ありがとう。それで、おばあちゃんは朔ちゃんのことをどう思ったの?」
百合子「亜紀ちゃんの彼にふさわしいと思ったわよ。・・・おじいさんが、あんなに朔君のことを気に入ってるなんて。本当に嬉しそうでしょう?最初、亜紀ちゃんにボーイフレンドができたって聞いたときは、感慨深げで、少し心配してたの。それなのに・・・初対面なのにあんなに気に入るなんて。おばあちゃんも少し驚いたわ。」 笑いながら亜紀と綾子に言う。
百合子「安心していいわよ。いつか本当の写真を撮る時が来るようだったら、おばあちゃんも入れてね。」
亜紀「ありがとう。」
綾子「さて、寝ましょうか・・・。」 廣瀬家の夜は更けていく。 亜紀は誇りに思った。理解してくれた祖父と祖母、それに父。もちろん、最初から応援してくれている母も。なにより、朔を愛していることを誇りに思ったのだった。
続く
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...2005/04/02(Sat) 19:04 ID:VgHtxqOI
Re: アナザーストーリー 2 Name:たこ焼兄さん
| | たー坊様
アナザーストーリー、本当にこのままドラマ化されれば良いのに・・・という思いでいつも拝読しています。
さて朔はついに亜紀の祖父母と対面を果たし、これで廣瀬家と綾子の実家に認められた存在になれた訳ですね。本編でウルルを目指した時は周りを全て敵に回す覚悟で、ある意味駆け落ち、というか心中してしまうのではないかと思わせる状況の中に居た訳で、その時の朔の亜紀に対する思いも変わらず強かったと思いますが、病気に打ち勝った亜紀とそれを支え続けた朔の二人の絆は、この事で家族という更に強い絆を得られたのだと思います。これからも二人がゆっくりと愛を育みながら絆を強めていく過程を楽しませて下さい。
ところで愚問で恐縮なのですが、祖父・勇一郎と祖母・百合子のイメージキャラクターはどなたでしょうか?「あいくるしい」繋がりで祖父が杉浦直樹さん、それでもし祖母が八千草薫さんだとしたら「岸辺のアルバム」繋がり・・・ってちょっと古かったですか?(笑)個人的には祖父が故いかりや長介さんというイメージで拝読してました。
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...2005/04/03(Sun) 00:36 ID:loK4yVAA
Re: アナザーストーリー 2 Name:朔五郎
| | 娘を持つ父親の心情がしみじみと語られていて感動しました。 真は、書いていても本当に魅力的なキャラクターですよね。小生の方では、気の毒なことに悲しみに満ちた人生を送ることになってしまいますが、たー坊さんの作品を読むと朔五郎自身も救われます。これからも、しあわせな真の姿を見せてください。
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...2005/04/03(Sun) 02:38 ID:E/k0Q59E
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | たこ焼き兄さん様 いつもお読みいただきましてありがとうございます。また、評価もしていただけているようで嬉しいです。これからの執筆活動の励みになります。
ご質問についてですが、私は、本編には登場しなかった役に対して、これといった特定の人物をイメージし、当てはめて書いてはおりません。今回についてはお読みくださる読者の方々、お一人、お一人のイメージにお任せしたいと思います。ですので、たこ焼き兄さん様のイメージである、故いかりや長介さんも十分当てはまると思います。
またお読み頂ければ幸いです。
朔五郎様 今回もご感想を頂きましてありがとうございました。 今回で、真自身、少しは今までの人生において楽になったのではないでしょうか。亜紀を縛り付けていたことに気が付き、見守る立場になることで、「これでいい。」という気持ちがわいてくると思います。同時に娘を想う気持ちもより大きくなることでしょう。 またお読み頂ければ幸いです。
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...2005/04/03(Sun) 17:27 ID:3RjEO3Hk
Re: アナザーストーリー 2 Name:たこ焼き兄さん
| | たー坊様
お答え頂きありがとうございます。私も一読者として自分なりの祖父、祖母像をイメージしながら読ませて頂きたいと思います。
真にとって亜紀はこれから自分の手元で育てていく存在から見守りながら愛していく存在としての娘に変わっていく訳ですね。父親としては寂しさもひとしおでしょうが、亜紀の苦しみや嫌なところ(有るのかな?)もそのまんま受け止めてくれる朔という青年に委ねられるという事は、親にとってこれ以上の幸せは無いのかも知れませんね。真と朔が酒を酌み交わす日もそう遠くないのでは・・・これからも楽しみにしています。執筆頑張って下さい。
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...2005/04/03(Sun) 23:12 ID:loK4yVAA
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | たこ焼き兄さん様 わざわざお返事頂きましてありがとうございました。 真はしばらくの間、複雑な心境で多少悩むと思いますが、それもいい方向に向かっていくものと思います。 これからもお読みいただけると幸いです。
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...2005/04/04(Mon) 12:02 ID:/rPWNPUI
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 1993年7月2日。亜紀23歳の誕生日。 この日ばかりは、真も早めに帰宅し、家族3人水いらずのささやかなパーティーをする。 今日は亜紀が退院して以来、初めて自宅で過ごす誕生日だ。
綾子「じゃあ、そろそろ始めましょうか。」 と言って料理を運んできた。 キツネ色にこんがり揚がったカニクリームコロッケから食欲をそそる香ばしい匂いが漂ってくる。
亜紀「うちのお祝いの定番だね。」
真「そうだな。お前が幼稚園の時にねだったのが、今や我が家の名物になったな。」 父娘で微笑を浮かべている。
綾子「あ・・・。さっき、おばあちゃんからケーキとワインが届いたのよ。『お誕生日おめでとう』って。」
亜紀「ワイン?」
綾子「もう大人だからってことなのよ。まだ亜紀が小さかった時はお人形さんとかくれたけど、それと同じことよ。」
真「それで亜紀、酒は飲めるのか?」
亜紀「少しだけ・・・。お花見の時にちょっと。」 亜紀は、初めて缶2本分の酒を飲んだことを両親に話した。
真「そうか。大丈夫ならあけよう。」 と言ってワインを手にしてグラスに注いだ。
綾子「後でおばあちゃんにお礼の電話しておきなさい。亜紀の声を聞いたら喜ぶわよ。」 と言って、亜紀が小さい頃に撮った家族3人の写真の隣に新しく置かれている家族5人で撮った写真に目をやる。
亜紀「ありがとう。おじいちゃん、おばあちゃん。」 笑顔を作って写真の中の2人に言うのだった。 実はこの家族写真は朔が撮ったものだった。勇一郎と百合子が帰る前日に亜紀が朔に頼んだもので、後日送った写真の出来映えには、勇一郎と百合子も満足していた。
真「ところで、その写真を撮ったカメラマンは都合が悪いのか?」
ぶっきらぼうな真の言葉は、急に亜紀を不機嫌な顔にさせた。
亜紀「まったく・・・。夕方、急に電話がかかってきてなんて言ったと思う?『どうしても明日までにレポートを出さないといけないから・・・ゴメン。今日は無理。』だって!・・・本当に何考えてるのよ!・・・。まあ、仕方ないけど・・・。」 口を尖らせてブツブツ言うのだった。朔がいかに大変なことをして、多忙な日々を過ごしているということ、こんなことを言うのは自分の我儘だということを理解しているとはいえ、誕生日を一緒に過ごせないことに対する複雑な女心を、亜紀は持て余しているようだった。 そして、そんな亜紀をなだめる。
真「あいつのことだから、今頃、どうやって埋め合わせをするかでレポートどころじゃないと思うぞ。」
綾子「そうね・・・。そういう人よね。朔君は・・・。」 綾子も真の意見に賛同した。そんな両親の言葉が、少しだけ嬉しかった亜紀がいる。
綾子「23回目のお誕生日ね。おめでとう。」
亜紀「ありがとう。」
真「じゃあ、いただこう。せっかく綾子が作った料理だ。冷めないうち食べよう。」
亜紀「うん。」 久しぶりに親子3人だけで向かえることができた自分の誕生日。決して「おめでとう」とは言わない真にクスりとする亜紀。そんな娘に真は、
真「なんだ・・・?」
亜紀「ううん。何でもないよ。」 と笑って見せるのだった。 そして、そんな2人の様子に綾子は、少しだけ顔をほころばせるのだった。 こうして亜紀の誕生日は過ぎて行った。 ・ ・ ・ ・ ・ そして夜。時計は11時をまわっていた。 リビングのソファには真と綾子が座っている。 亜紀は風呂に入っている。
綾子「どういう風のふきまわし・・・ですか?」
真「うん?」 突然の質問に少しだけ驚きながら綾子を見た。もちろん、驚いたことを表情には出していない。
綾子「さっき、亜紀が朔君が来てくれないことに不満を漏らしたでしょう。その時に、あなたは朔君を弁護するようなことを言ってあげてたじゃないですか?」
真「そんなこと・・・言ったかな?」
綾子「言ったわよ。『あいつのことだから、今頃、どうやって埋め合わせをするかでレポートどころじゃないと思うぞ。』って・・・。どうしたんですか?」
すると真は「ふぅ。」とため息をついた。
真「無意識だったんだと思う。俺も、年をとればとるほど、だんだん丸くなっていくんだろうなぁ。」 どこか遠い目をして言う。
真「・・・あるいは罪悪感かな。」 綾子が首を傾げる。
綾子「あなたと険悪だった時のことは、あの子は全然気にしていないと思いますよ。」
「いや・・・。」と真は苦笑いを浮かべて話し始めた。
真「テープのことがね・・・。今思えば、酷いことをしたかなってね。・・・朔のひたむきさに感動して、あいつの良いところを知れば知るほどそう思うんだ。当時、あのテープが亜紀のよりどころだったなと思うんだよ。・・・悪かったなぁ。いまさら言ってもしかたないんだが。」
綾子「でも、亜紀も朔君も気にしてませんよ。そしてもうひとつ朔君の良いところをあげるとすれば・・・あの子が入院している時に朔君へ渡すために私が預かったテープをとりあげたでしょう。」
真「ああ。結局は朔に渡したんだ・・・。」
綾子「朔君は、その時ことを亜紀には一言も話してないみたいですよ。」
真「今もか?」
綾子「ええ。たぶん。」 真は何も答えなかった。そして、「亜紀が来たら、2人にさせてくれ。」とだけ言った。 そして、
亜紀「はい。次どうぞ」 とドアを開けて入ってきた。
綾子「じゃあ次は、お母さんが入るわねと言いながらリビングを出て行く。
冷蔵庫を開けながら、「お父さん、何か飲む?」と亜紀が聞いた。
真「麦茶をくれ。」 2つのコップに麦茶を注ぎ真に渡す。 すると、
真「ちょっと座りなさい。」 父は娘に謝ろうと思った。
真「俺はお前に謝っておかなければならない。」
亜紀「何?」
真「お前が、入院した時に朔にテープを渡していただろう?」
亜紀「うん。でも、あの時朔ちゃんは、私が早く良くなるようにテープ断ちするって言って、テープ返してくれなかったけどね。」
真「俺がとりあげていたんだ。すまなかった。」 そういって頭を下げた。 亜紀は、少し驚きながらも笑ってみせた。
亜紀「やっぱりそうだったんだ・・・。」 顔を上げる真。亜紀が続ける。
亜紀「一回、もしかしてと思ってそれとなく聞いてみたことがあったの。朔ちゃんって分かりやすいからなんとなく分かってたよ。隠そうとしたんだろうけど隠し切れなかったみたいね。」 朔の様子を思い出してクスクス笑っている。
亜紀「もう気にしてないよ。もちろん朔ちゃんもね。」 そう言って立ち上がった亜紀を真が呼び止めて聞いた。
真「・・・亜紀は、朔が好きなんだな?」
亜紀「・・・・・・大好きよ。世界中で1番。私にとって大切な人。自信を持って言えるよ。」
真「そうか・・・。」 2、3回うなずきながら言った。 そして亜紀がリビングを出ようとしたときに言った。
亜紀「その次に好きなのはお父さんとお母さんよ。」 と・・・。 部屋に戻った亜紀はラジカセを手に取るのだった。 ・ ・ ・ 一方・・・。
綾子「本当に良かったですね・・・。」
真「・・・ああ。」 実は、綾子はこっそり父と娘の会話を聞いていたのだった。
綾子「これも、朔君のおかげなのかしら?」
真「全部が全部あいつのおかげというのも悔しい気がするな・・・。」
綾子「それもそうね。」 真にとっても綾子にとっても、1番であろうと2番であろうと関係なかった。娘に「好き」とか「大切」といわれることが、どれほど嬉しいか・・・。
微かに微笑む綾子の目に、真が少しだけぼやけて見える。そして真も綾子を見た。真の目に映る綾子の顔は、これもまた、なぜかぼやけて見えたのだった・・・・・・。 ・ ・ ・ ・ ・ そして翌日。 これから水平線に沈みゆく太陽。空と海はオレンジ色に染まっている。 誰もいない防波堤で朔が亜紀を待つ。昨日会えなかったので、今日は短い時間でも絶対に会うと決めていたのだった。 朔がぼんやりと海を眺めていると、ちょうど6年前のこの日、同じくらいの時間に聞いた懐かしいセリフが聞こえてきた。
亜紀「朔!!」 防波堤を小走りで上がり名前を呼んだ。朔が呼ばれた方を向く。
朔「亜紀・・・。」
亜紀「バカ!できれば、昨日来て欲しかった!」
朔「ゴメン・・・。」 すると、朔は自分の横に置いていた紙袋から白い小さな箱を出した。
朔「誕生日おめでとう。これ、1日遅れだけどプレゼント。」 と言って横に座った亜紀に手渡した。
亜紀「開けていい?」
朔「いいよ。」 亜紀が箱を開けた。中には、青い空の下にある赤い大地に立つ2人の可愛らしい絵が描いてあった。
亜紀「可愛いね・・・。ありがとう。」
朔「・・・実は、ペアになってるんだ。それ。」 と言って。再び袋から同じ箱を出した。中からは同じ絵柄のマグカップが・・・。
亜紀「わぁ・・・初めてだね。指輪以外でおそろいの物って。大事にするね。・・・それに、この絵ってウルルみたいだね。」 あらためて自分の分のマグカップを見る。するとカップの裏側にあるものを見つけた。亜紀が笑顔になった。すると、朔が話し出した。
朔「最初にこの絵を見たときは、俺も同じことを思ったよ。・・・・・・・・・2人でいつか一緒に行こう。ウルルへ。」
亜紀「うん。約束だよ。今度は失敗の無いようにしないとね。」 亜紀の笑顔は、少しだけいたずらっぽいものだった。 すると、亜紀がポケットからウォークマンを取り出した。
亜紀「聞いて!」 6年前と同じように大きな声で言って朔に手渡した。朔がイヤホンをつけ、再生ボタンを押す。
テープの亜紀「廣瀬亜紀です。今日は私の好きなものについて(サッ)話します。 第五位、たこ焼きパパさん・・・の前で、こそこそハガキを書いている、松本朔太郎・・・・・・。 第四位、ガムのおもちゃで騙される、人のいい、松本朔太郎。 第三位、いつもいつも鍵をな(・)くして、モゾモゾしている、松本朔太郎。 第二位、『ジュリエット辞めたら?』と言ってくれた、松本朔太郎。」 テープが劣化してしまったのであろうか。所々、音が飛んだり、かすれたり、雑音が入ってしまっている。間違いない。6年前の今日、亜紀が聞かせてくれたテープそのものだ。
イヤホンをはずした。 朔は、あの時と同く「あの・・・・・。」と言ってみた。・・・・・・朔と亜紀が始まった瞬間の記憶が、2人の脳裏に鮮明に蘇ってくる。
亜紀「第一位、あの日、傘を差しかけてくれた・・・松本朔太郎。」
亜紀「そして、私が世界で1番大切な人・・・・・・・第一位、松本朔太郎。」 そう言って、亜紀は朔の左太ももを枕代わりにして、地面に寝そべった。 心地よい海風が2人にあたる。
亜紀「昨日の夜、お父さんに聞かれて言ったの。『大好きよ。世界中で1番。私にとって大切な人。自信を持って言えるよ。』ってね。」 かなり恥ずかしそうに笑う。 そんな亜紀の長い髪を朔が撫でた。何も言わなかったが、亜紀には朔の気持ちが分かるつもりだ。朔は亜紀に精一杯の愛情を、ずっと持ち続けるとあらためて誓うのだった。 ・ ・ ・ 今にも完全に沈んでいきそうな太陽と海を、2人は穏やかな笑みを浮かべて見ていた。 すると・・・。
亜紀「あっ!」
朔「どうしたの?まさか、体の具合でも悪い?」 何かに気付いたように体を起こした。そんな亜紀を朔が気遣う。 そして、
亜紀「最悪・・・私、一回も『愛してる』って言われてない。」 お互い、そのままの表情で固まってしまう。
朔「・・・・・・・・・。」 思いっきり困った表情をする。眉間にはしわが。視線をゆっくりとはずした。 すると、
亜紀「『好き』は私が先に言ったんだから、今度は朔ちゃんが先に言う番よね?」 と言って、「好き」という言葉をせがんだ時と同じように、愛情たっぷりの笑顔とキラキラした瞳を作って朔の方に向き、4文字の愛の言葉をねだるのだが、朔は目を合わそうともせず、座ったまま亜紀との距離を取ろうとする。亜紀がその距離をつめる度に笑顔を作ると、朔は距離を作る。それを繰り返すのだった。
亜紀「追い詰めたよ。」
朔「え?」
亜紀「それ以上向こうに行ったら、びしょ濡れになって風邪ひいちゃうかも。」 朔が後ろを見ると、海があった。
亜紀「朔ちゃん、観念したら?」 それでも朔は言えなかった。両手を合わせて、「いつか絶対に言うから。勘弁して・・・。」とお願いするのだった。 そんな朔に亜紀は、
亜紀「・・・もう一緒にいて6年なのに。どうして言ってくれないの?・・・朔ちゃん、本当に私のこと好きなの?・・・・・まさか浮気?・・・もしかして他に女の子・・・。」 と、ひどく落ち込んで俯いてみせる。この様子に今までにない慌て様を見せる。そしてすぐさま言った。
朔「なっ・・・ちっ、違うよ!!そんな事してないよ!俺が好きなのは亜紀だけだよ!!ただ、そういうことが苦手なだけで・・・。知ってるだろ・・・。」 「好き」と言ってくれた。亜紀にはそれだけでも十分だった。パッと笑顔に変わる。久しぶりに朔が気持ちを伝えてくれた。たった2文字だが嬉しくて嬉しくてしょうがない。
亜紀「しょうがないなぁ・・・約束だよ。待ってるから。たとえ何年後でも・・・ね。」 と言って、結局は許してあげるのだった。
・・・次第に空が暗くなり始めた。寄り添う2人から少し離れた地面に置いてあるペアのマグカップ。亜紀のカップだけ裏側に、朔からのメッセージがあった。 一つは6年前にウォークマンを渡した時と同じく「Happy Birthday」もう一つは「I Love You」と・・・。恥ずかしくて口に出せない想いを文字で伝えていた。 こうして亜紀の23回目の誕生日は最高のものになっていくのだった。
続く
|
...2005/04/04(Mon) 19:38 ID:/rPWNPUI
Re: アナザーストーリー 2 Name:朔五郎
| | 男はホントに好きな相手には、言葉に出したり行動を起こしたりできないものですよね。 いかにも朔らしくて、思わず光景を思い浮かべてしまいました(笑)
|
...2005/04/05(Tue) 01:09 ID:7U9Po0TU
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 朔五郎様 今回もお読み頂きましてありがとうございました。 亜紀の誕生日なので、もちろん亜紀が一番幸せなのですが、朔も真も綾子も幸せを感じることができたと思います。 次回もお読み頂ければ幸いです。
|
...2005/04/05(Tue) 16:04 ID:/GGjOZTM
Re: アナザーストーリー 2 Name:Marc
| | たー坊様 今回も素敵です♪ 読ませて頂いて改めて気付いたのですが、朔も亜紀も24歳なんですね。 ドラマの17歳よりも綾瀬さんの実年齢よりも大人の亜紀、やはり生き 延びることは素晴らしいことですね。
|
...2005/04/05(Tue) 18:30 ID:3AM7xwgw
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | Marc様 お読み頂きましてありがとうございます。 これで、朔よりも誕生日が早い亜紀は、3ヶ月ちょっとの間だけ年上になりました。 あの時、死ぬことに希望を見出そうとした亜紀ですが、やはりMarc様のおっしゃるとおり、生き延びたことによって、生きている中での幸せや希望を見出していくことでしょう。 次回もお読み頂ければ幸いです。
|
...2005/04/05(Tue) 18:44 ID:/GGjOZTM
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | その夜の廣瀬家。 帰宅した真を綾子が出迎えた。
真「ただいま。」
綾子「おかえりなさい。遅かったのね。」
真「ああ。相手先から仕様変更の依頼があってね。すぐ終わると思ったんだが、思ったより時間が掛かってしまったよ。」
綾子「お疲れ様。ご飯は?」
真「ああ、食べる。亜紀は?」
綾子「部屋にいるわよ。」 と、少し心配そうな顔をする。
真「・・・どうかしたのか?」
綾子「それが、帰ってくるなりご飯も食べないで閉じこもったままなのよ。」 思わず真も眉間にしわを作り、ちょっと考えてしまう。夫婦で心配そうに2階の方を見るのだった。
一方の亜紀は・・・。
亜紀「ウフフフフフフフ・・・・・・。(笑)」 椅子に座り机の上に両腕を組んで、その上で顔を少し傾げて乗せている。 「フンフンフン♪♪♪」と思わず鼻歌も奏でてしまうほど、亜紀は幸せいっぱいの気分になっていた。 机の上に置かれた朔からプレゼントされたマグカップを見て、自然にどんどん顔が綻んでいくのが自分でも分かる。 時々、カップの取っ手を持って裏側のメッセージを何度も何度も見る。「Happy Birthday」と、何よりも嬉しい「I Love You」・・・。その文字を見るたびに白い歯も見せる亜紀だった。 そんな時、ノックの音と共にドアが開く。背後から忍び寄る影・・・。
綾子「亜紀ちゃん。ご飯よ。」 気配に気付かなかった亜紀は、飛び上がるくらい驚いた。
亜紀「お母さん!!ノックくらいしてよ。」
綾子「したわよ。」
亜紀「えっ?全然気付かなかった。」
綾子「・・・何かあったの?帰ってくるなり部屋に閉じこもっちゃって・・・朔君とケンカでもしたの?」 心配そうな様子の母に、娘は「ケンカ?あるわけないよ。」と笑顔で答えた。
綾子「ふーん・・・。ご飯よ。早く・・・あら?」 机の上にあるマグカップが目に入った。
綾子「なるほど。これに見惚れていたのね?」 と言って取ってを持った。
亜紀「あ、ちょっ・・・。」 綾子が裏側に書かれたメッセージを見つけた。そして娘を見る。赤くなって少し俯いている娘に言うのだった。
綾子「それは嬉しいわよね。部屋に閉じこもりきりになっちゃうのも分かるわ。」 亜紀は、顔を赤くしたままペロッと舌を出した。そして綾子は、悪戯っぽい顔になって
綾子「愛されていいわね・・・。」
亜紀「もう。(笑)そんなのじゃないの。」
綾子「それじゃあどうなの?愛されてる以外にないでしょう?・・・顔に出やすいところ、朔君に似てきたんじゃない?」 微笑みながら言って、綾子が部屋から出て行った。 亜紀は、今にも顔から火が出そうである。そして綾子の後を追う。部屋から出る時にカップを見て言った。
亜紀「私も愛してるよ・・・。いつか、ちゃんと聞かせてもらうね。朔ちゃんの口から聞きたいよ。わらわは、いつまでも待っておるぞよ・・・。」 部屋の電気が消えた。亜紀の心は、朔への一途な想いで満たされ続けていた。
一方・・・。 夕食を済ませたボウズが部屋にいた。 ここの所、何もするにも少し抜けてしまう。
ボウズ「ハァー・・・。」 ため息をついて布団に仰向けになった。天井の一点だけを見つめている。「自分の気持ちに正直になれ。」という智世の言葉がずーっと頭の片隅から離れない。正直になろうとすればするほど分からなくなるような微妙で複雑な心境・・・。苦悩の日々は続きそうだ。
そして翌日。 あらかじめ予定に組まれていた通りに法事を済ませて寺に戻る途中。たこ焼きパパさんに立ち寄る。
ボウズ「托鉢。」 奥にいたパパさんが気付いた。微妙な表情を見せる。
ボウズ「托鉢!」 すると後頭部を叩かれる。何事かと思い振り向くと、龍之介と智世の姿があった。
ボウズ「よっ。海の男と絶叫マシーンじゃねぇか。」
智世「誰が絶叫マシーンだって?」
龍之介「お前だってよ。」
智世「龍之介!!せめてフォローしなさいよ!」 憮然とする智世の言葉は聞かずにボウズを見据えた。
龍之介「お前、袈裟姿だからって変なマネするなっつうの!いつもサービスしてくれてるだろ。せこいことしてんじゃねえよ。」
ボウズ「そうだな・・・。パパさんゴメン。1人前。」 あっけにとられるパパさん。 龍之介も智世も拍子抜けして顔を見合わせる。
3人分のたこ焼きとコーラがテーブルの上に置かれた。ボウズはいつものような勢いのある食べ方はしていない。楊枝を口に運ぶペースもいつになく遅い。そんなボウズの様子に再び顔を見合わせる龍之介と智世。
智世「何かあったのかな・・・?」
龍之介「こんな穏やかなボウズは見たことないな・・・。不気味だ。天変地異が起きなきゃいいけど。」
智世「ホントね。海の上では気を付けなさいよ・・・。」 ヒソヒソ話をする前ではさっきからのペースでたこ焼きを食べ続ける僧侶が1人。
龍之介「・・・お前、あの娘とどうなったんだ?」
智世「あれから何も聞かないけど・・・。」 ボウズの手が止まった。2人を見る。そのまなざしは龍之介と智世を驚かすには十分であった。 すると、何も答えずに再び口にたこ焼きを運んだのだった。
ボウズと別れた後、2人は龍之介の部屋にいた。
智世「あれは重症だね・・・。私は、ちょっと悲壮感みたいなものも感じたんだけど・・・。」
龍之介「相当悩んでるよな。それだけは分かる。もう20年近い付き合いだけど、あんなボウズははじめて見たな・・・。」
智世「何とかならないかな。いい方向に進んで欲しいけど。ねぇスケ、どうしよう?」
龍之介「・・・あいつの気持ち次第だよ。俺達がいろいろ言ってやっても、最後はあいつなんだよ。お前の気持ちも分かるけどな。」
智世「そっか、そうだよね・・・。キッカケだけなんだけどなぁ〜。」
龍之介「キッカケか・・・。」 思案顔になった龍之介。それを見た智世は思っていた。「私と龍之介のキッカケはどんなだったっけ。・・・次のキッカケはいつになるのかな・・・。」 この時智世は、龍之介とのことを考えていた。
続く
|
...2005/04/05(Tue) 19:57 ID:/GGjOZTM
Re: アナザーストーリー 2 Name:グーテンベルク
| | たー坊様へ こんばんは、グーテンベルクです。朔の不器用な愛情表現・・・とても朔らしくて素晴らしいと思いました。亜紀も幸せそうでなによりです。ボウズもいろいろと悩んでいるようですね。優しい心を持っているからこそ余計に悩んでいるように思えてなりません。頑張れ!ボウズ 最近、ハイペースの執筆が続いていますが、決して無理などなさらないでくださいね。これからも応援しております。
|
...2005/04/05(Tue) 22:34 ID:bReSohi2
Re: アナザーストーリー 2 Name:北のおじさん
| | たー坊様。
ハイペースの執筆、お疲れ様です。 読んでいるこちらは、毎日が楽しみなのですが書かれている方の苦労を考えると... 無理なさらないで下さいね。
いよいよボウズの恋も本格的に進んで行くのでしょうか? 続きが楽しみです。
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...2005/04/06(Wed) 21:55 ID:peS.8N4A
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | グーテンベルク様 お疲れ様です。今回もお読み頂きましてありがとうございます。 面と向かって気持ちを伝えることがなかなかできない朔ですが、何らかの物やキッカケを掴むと、結構そういうことができたりするんですよね。「廣瀬」から「亜紀」と呼び方を変える時も、「HAPPY BIRTHDAY」とウォークマンの後ろに書いた時も、「好き」とプロポーズした時もそうです。間接的に伝えるのが得意?な朔ですから、今回はこうしてみました。 次回もお読み頂ければ幸いです。
北のおじさん様 お読み頂きましてありがとうございます。 お気遣い頂きましてありがとうございます。時間があるときにはUPするようにしています。来週からは忙しくなりますので、ペースも落ちると思いますが、マイペースで頑張ります。 次回もお読み頂ければ幸いです。
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...2005/04/07(Thu) 22:15 ID:./gFPEj6
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 智世「ねえ、亜紀はどう思う?」
亜紀「考えすぎちゃってるような気がする。もしも、本当に好きかどうか分からないにしても、そこまで悩むのは納得できないよ。」
智世「亜紀もそう思うでしょ?そうなんだよね〜。この前会った時なんて、悲壮感みたいなものすら漂っているように感じたよ。」
ある日の夕方。 智世の部屋に亜紀が遊びに来ていた。智世から「朔を大事にするのは当たり前だけど、たまには親友も大事にしないとバチ当たるよ!」と電話があったのだった。そこで、亜紀は学校帰りに智世の家に遊びに来ていたのだった。女同士でしかできない話に花が咲く。 話題は一向に進展を見せないボウズの恋の行方。智世はこの前、袈裟姿のボウズに会った時の様子を、亜紀に教えた。
智世「私も龍之介もなにか”キッカケ”があれば、どんな形であれ、ボウズにとっていい方向に進むんじゃないかって意見なの。亜紀はどう思う?」
亜紀「・・・難しいね〜。病院で見たあの子の気持ちが分かれば、これほど簡単なものはないんだけどね。ねえ智世?幼稚園の時からボウズって結構鈍感だったりするの?」
智世「鈍感だと思うよ。男3人の中で勘が冴えるのは龍之介だけ。朔とボウズのどっちが鈍感だったかな・・・?」
亜紀「ちょっと待ってよ!朔ちゃんはね・・・。」 少し声が大きくなった亜紀に智世は「あ、ゴメンゴメン。」となだめた。
智世「あんたたちには、悩みなんてなさそうだもんね。6年間も付き合ってるのに相変わらずラブラブよね。本当に羨ましいわ・・・。」 少し遠い目をする。 最近、智世は智世で悩みができ始めている。もちろん龍之介とのこと。
亜紀「スケちゃんと何かあった?ケンカとか・・・?」 心配そうに智世を見つめる。無二の親友が悩んでいる様子を見るのは久しぶりだ。 入院中は時間を見つけてはお見舞いに来てくれた。そのつど、亜紀は智世に朔についていろいろ聞いてもらったりしていた。だから、今度は自分の番だと思った。
亜紀「悩みがあるんじゃないの?私でよかったら話してみない?」
智世「うん?大丈夫よ。私が勝手に考えちゃってるだけ。ほら!今はボウズのこと!」 いつもの調子に戻った。
亜紀「わかったよ・・・。でも何かあったら相談してね。私と朔ちゃんが今も一緒にいれるのは、皆に支えてもらったからだよ。だから、今度は私達の番だよ。」
智世「泣かせること言ってくれるじゃない!さすが親友ね。でも、本当に今はボウズの方が悪循環に陥ちゃってると思うのね。今は、ボウズ優先で!」
亜紀「わかったよ智世。」 こうして女2人の作戦会議は続く。 余計なお節介だと自分たちで分かっていても、どうしてもボウズにも幸せになって欲しい。そんな強い思いがあった。
その夜。 朔の部屋。亜紀が朔の帰りを待っていた。会うのは3日ぶりだ。智世と話したことを、ぜひ朔にも知っていて欲しいと思ったのだった。 その時、ドアが開いた。 朔は疲れているのか何も言わずに入ってくる。
亜紀「なんだかなぁ・・・。」
朔「ああ。ただいま。」
亜紀「おかえり。大丈夫?」
朔「何が?」 と言って笑ってくれる。
亜紀「・・・ううん。なんでもない。」 とだけ言う。「なんだよ?」というが亜紀は笑っているだけだ。 朔は確かに疲れていたが、亜紀の笑顔を見た途端に、そんなものは吹き飛んでいってしまったのだった。 そして、「亜紀の顔を見たらそんなのはどこかにいっちゃったよ。」などとは、恥ずかしくて口が裂けても言えないのであった。
亜紀「ボウズのことなんだけど・・・。かなり悩んじゃっているみたい。」 亜紀が切り出した。 夕方、智世の部屋で話したことを報告する。それを聞いた朔は「深みにハマってるね」と感想を漏らした。
朔「でも、なんでそこまでボウズの助けになろうとするの?本人の問題なんだから、あまり口を出すのもどうかなって思うよ。」
亜紀「どうしてって・・・。やっぱり仲間だからかな。私、宮浦で朔ちゃん達に出会うまでバカ騒ぎとかしたことなかった。だから、4月の夜桜見物とかって、結構嬉しかったんだ。夢島のときはいろいろあってできなかったしね。・・・そんなことができる仲間って最高でしょ。だからその仲間を大事にしたいって言うか・・・。」
朔「そうだね。分かるよ。」
亜紀「それにボウズの場合、スケちゃんと智世以上に感謝してるしね。」
朔「どうして?」
亜紀「だって、今、私と朔ちゃんがこうしていられるのはボウズがキッカケだったでしょ?」 怪訝な表情の朔に亜紀が続ける。
亜紀「ボウズが朔ちゃんにハガキの文面を頼まなかったら、当選したウォークマンを朔ちゃんに渡してくれてなかったら・・・。私のこと、2人でとりあったんでしょ?聞いたことあるんだから。」 少し試すような感じの目線で朔を見つめる。
朔「とりあったっていうか・・・。あのハガキを書けって言ったのはボウズでさ・・・。その時かな。ラジオで流された次の日・・・なんとなくだけど、自分の本当の気持ちに気付いたのは・・・。亜紀にものすごい剣幕で怒られてさ。そこからはドタバタだったけどね。」 懐かしそうに、恥ずかしそうに振り返る。
亜紀「そうだったね。・・・ところで朔ちゃん。何か大事なことを忘れてない?」 悪戯っぽく、クスクスと笑う。
朔「・・・あっ!?何で知ってんの?これ、俺とボウズとスケちゃんしか知らないはずなのに!」
亜紀「ウフフフフッ!・・・。前に智世から教えてもらってたの!智世もスケちゃんから聞いたんだと思うよ?」
朔「ったく・・・。あいつら余計なことを・・・。せっかくの秘密を・・・。」
亜紀「あ〜。また秘密って言う。2人の間に隠し事はなしって言ったじゃない。」 膨れ顔を作って少し怒りながら言った。
朔「だって俺、このままじゃ亜紀に敵いっこないし・・・。」
亜紀「何言ってんの?・・・ほら。今はボウズの事!」
朔「亜紀が言ったんだろ。・・・よし。ここはひとつ、ボウズのために皆で何かしよう。」
亜紀「なんかワクワクするね!・・・あっ!」 突然大きな声を出す亜紀に朔も驚く。
朔「どうしたの?」
亜紀「実は、智世も少し考えちゃってるみたいなの。スケちゃんとなんかあったのかな?何か聞いてない?」
朔「いや。・・・それに、スケちゃんがそういうことを、自分から言うはずがないしね。亜紀も知ってるでしょ。」
亜紀「そうだね。何も言わずに東京の彼女のところに行っちゃうような人だもんね。」 そういうと2人で笑い合うのだった。 2人の仲間を思いやる気持ちゆえから、ある計画を立てはじめた。 しかし、翌日には大きな変化が訪れることを、誰一人として知るよしもなかった。
続く
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...2005/04/07(Thu) 23:54 ID:./gFPEj6
Re: アナザーストーリー 2 Name:サイトのファン
| | たー坊さんへ 執筆お疲れ様です!! まとめて読ませて頂きました。 何回、読ませて頂いてもスゴクいいですね! 亜紀の祖父母、特に真と勇一郎のサクに対する 会話はスゴク良かったです!! 男が男を認める、、いいですね。 亜紀の誕生日では、サクはまだ、、、愛の告白が 出来ないですね、でもサクらしくていいです。 たー坊さんの世界の中心で、愛をさけぶを 読ませて頂くと、本当に心が温まります!! 人を思いやる気持ちが大切ということを痛感させられます。 以前、書かせて頂いた谷田部先生の春はリクエストです。 てっいうか、お願いで先生にも是非ロマンスをです。 ボウズの恋がどうなるか楽しみです。 続編、楽しみにお待ちしております!!
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...2005/04/10(Sun) 02:02 ID:QroJgABo
Re: アナザーストーリー 2 Name:朔五郎
| | いよいよ、ボウズの運命に変化がおこるのでしょうか。期待しながら待っております。 朔と亜紀の宮浦での日々も期待しています。 楽しい物語をお願い致します。
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...2005/04/11(Mon) 02:18 ID:TLgiFv1g
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | サイトのファン様 お忙しい中お読み頂きましてありがとうございます。 リクエストについてはご希望に添えるかどうか分かりません。できる限り頑張りますとしか申し上げられません。 また、ボウズにも変化が訪れるかもしれません。周りの人々もそれに注目するでしょう。 次回もお読み頂ければ幸いです。
朔五郎様 今回もお読み頂きましてありがとうございます。 次回からは、ボウズが表舞台の真ん中に立つかもしれません。 朔と亜紀には、故郷の自然の下で2人の時間を取り戻すと同時に、周囲への恩返しをしていってもらおうと思っております。 次回からもお読み頂ければ幸いです。 「世界の中心で、愛をさけぶ2」の方も楽しみにしております。
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...2005/04/11(Mon) 20:54 ID:qv8/L68E
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 7月7日の夕方・・・。 ボウズの実家の寺。 もうそろそろ夕飯時である。その時、
???「ごめんください。」 との声。若い女性の声だ。「誰だ?」と思いつつ、ボウズが表へと向かう。
ボウズ「はい?」 と声の方向を見ると、そこには・・・。
ボウズ「ああ!久しぶり。」 パッと笑顔になるボウズ。視界に入ってきたのは恵美の姿だった。
恵美「お久しぶりです。ちょっとご先祖様に会いに来たから・・・。時間もらってもいい?何か、このお寺に来たら、顕良さんの面白い話を聞けるんじゃないかと思って・・・。」
ボウズ「いいぜ。何の話にしようか・・・。よし。」 と履物を履いて恵美を連れて外へ。 2人は、2月に入院中だった恵美が精神的に追い詰められて、リハビリを拒否していた時に、恵美の家族が先祖が眠る墓にお参りした時に、恵美の父がボウズに相談したことがキッカケで知り合った。最初にボウズが話をしたことで恵美は前向きになれたのだ。 それ以来、ボウズは時間を見つけては病室に出向き、いろいろな話をしてあげていたのだった。何度か話すうちに少しづつ打ち解けていった2人。最初は互いに敬語だったが、いつしか友達として接していた。少なくともボウズはそのつもりだった。しかし、恵美は違う感情を覚えていた。もちろんそのことにボウズが気付くはずがなかった・・・。
ボウズ「今日は一番最初に話した俺の親友のこと。」
恵美「ああ、サクとアキってお名前の顕良さんのお友達のことね。」
ボウズ「ああ。実は5月の連休に、アキのじいさんとばあさんが遊びに来たんだ。その時に、サクがアキに『会って欲しい』って言ったんだと。」
恵美「それはそれは・・・。サクさん?でいいのかしら?・・・とても驚いたんじゃなかったかしら?」
ボウズ「そう。言う通りだよ。俺とこれまた幼なじみのスケに泣きついて来てさ。そりゃあ見物だったぜ。俺たちに言われるまでオロオロしちゃっててよ。クックックッ・・・。今、思い出しても、あの時のサクは面白かったな。」 そういうと、その時の朔の様子をおもしろおかしく恵美に話す。そのときの表情とか仕草を真似し始める。
恵美「アハハハハ!顕良さん、その顔!面白すぎるよ・・・。あっ、笑いすぎてお腹が痛くなってきちゃった・・・。」 しかし、なおもボウズはおかしな顔をつくるのだった。少し暗くなり始めた寺の境内に恵美の明るい笑い声が響く・・・。
恵美「・・・本当にもう・・・。」 息を整えながら言う。
ボウズ「結局、サクは俺たちの助言もあって、うまいこと気に入ってもらえたらしい。」
恵美「それはよかったわ。さすが顕良さん。」
ボウズ「んなことないよ。」
恵美「そんなことないわ。私だって、入院中はふさぎこんでて、笑うこともなかったんだと思う。でも、顕良さんが来てくれるようになってからは笑うことが増えてきて・・・。本当にありがとう。」 突然の感謝の言葉に、ドギマギするボウズ。「んなことねぇよ。」と照れ隠しで言ってみるのだった。
恵美「だからかな・・・私・・・。」 真顔になりボウズの方を向く。少しだけ俯いたのだった。
その一方、
朔「ハクシュッ!」 と大きなくしゃみをする。
亜紀「どうしたの?大丈夫?」
朔「うん。だいじょう・・・ハクシュン!!」
亜紀「風邪?夏風邪ひいたりしちゃ大変だよ。」 今日は七夕である。天の川を見るために2人はあじさいの丘に来ていたのだった。
亜紀「やっぱり、帰ろうか?」 心配そうに朔の顔を覗き込む。
朔「大丈夫。年に一回なんだからさ。」 と言った途端に、亜紀が自分のおでこを朔のおでこにくっつけた。
亜紀「う〜ん。熱は無いみたいね。」
朔「・・・・・・。」 突然のことに朔は顔を真っ赤にして固まっている。心拍数は一気に上がっているのだろう。
亜紀「あっ、顔赤いよ。やっぱり風邪?」 と、無邪気に言う。朔は「いきなりそんなことするからだよ・・・。」と俯き加減に小声でつぶやくのだった。
亜紀「本当に無理しないで。私、朔ちゃんが体を壊したりしたら、本当に嫌だからね。」
朔「大丈夫。亜紀こそ無茶するなよ。また倒れられたりしたら大変なんだからさ。・・・噂でもしてるんだろ。」 亜紀を見て言った。
亜紀「噂?」
朔「スケちゃんかボウズが、俺のろくでもない噂話でもしてるんだよ。きっと・・・。」
亜紀「フフッ。そうかもね。」 と言って、微笑むのだった。 そして互いに手をつなぎながら、空が完全に暗くなるのを、星があらわれるのを待つのだった。
その頃・・・暗くなった寺の境内では、一人取り残された僧侶が呆然と立ち尽くしていた・・・。
続く
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...2005/04/11(Mon) 22:18 ID:qv8/L68E
Re: アナザーストーリー 2 Name:夕妃
| | >たー坊様
久しぶりの書き込みになりますが、毎回欠かさず読ませて頂いてます。 やっと坊主の春が来るんですね。朔と亜紀、スケと智世、ボウズと恵美。 みんな少しずつ幸せになっていきますね。
あと、ボウズの話の後・・・・やっぱり朔と亜紀はいつも一緒にいるんだなぁ、とほのぼのしてしまいました(笑
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...2005/04/12(Tue) 00:25 ID:8L23LgAc
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 夕妃様 お久しぶりです。毎回欠かさずお読み頂けているとのことで、本当にありがとうございます。
おっしゃる通り、本当に少しずつですが周囲にも幸せが訪れているのでしょう。あるいは、すでに訪れているのに気付いていないだけなのかも知れません。今回のボウズがいい例です。 これからも小さな幸せに気付いていけるようなストーリーを書ければと思います。 これからもお読み頂ければ幸いです。
|
...2005/04/13(Wed) 19:02 ID:Ai7FyV66
Re: アナザーストーリー 2 Name:グーテンベルク
| | たー坊様へ こんばんは、グーテンベルクです。ボウズにこっそりと近づく幸せ(もしかしたら気付いてないのかもしれませんが)を感じますね。ボウズがその幸せを掴んだとき、きっと朔と亜紀のように幸せになれそうに思えてなりません。心温まる作品をありがとうございます
|
...2005/04/13(Wed) 19:33 ID:KBvP.mFw
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | グーテンベルク様 今回もお読み頂きましてありがとうございます。 幸せの音がボウズに近づいていっている最中です。今のボウズなら幸せを掴んでくれると思います。 次回もお読み頂ければ幸いです。
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...2005/04/13(Wed) 22:04 ID:Ai7FyV66
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 恵美『たくさん・・・たくさん顕良さんに励ましてもらっているうちに気付いたよ。・・・・・私、顕良さんが好きだって・・・。』
夕食を済ませ、部屋に戻ったボウズ。床に寝転んで天井を見つめた。 恵美の突然の一言がボウズの頭の中を駆け巡り続けていた。
ボウズ「亜紀が言ってた通りかよ・・・。」 「聞いてねぇよ・・・。」 「うわぁ・・・・・これ、現実だよな?。」 人生で初めてされた告白。ボウズは嬉しさよりも戸惑いと、自分の今の気持ちの曖昧さを強く、強く感じていた。
恵美『・・・突然、こんなこと言ってごめんなさい。自分の気持ちをどうしても伝えたかったの・・・。返事はいつでもいいから・・・。』 そう言って恵美は、悪い返事が来ると思っているのか、少し哀しげな微笑を浮かべて去って行ったのだった。
ボウズ「あんな顔、見せんじゃねぇよ。」 ひとり呟くのだった。
夜はどんどん更けていく。 すでに夜中の2時をまわっていたが、ボウズは部屋の電気をつけたまま、部屋に戻ってきた時と同じ状態のままである。 ・ ・ ・ 一睡もできない。 沈黙の中、「カチコチカチコチ・・・・」と時計の音だけが響く・・・。 そして・・・。
ボウズ「はぁ?もう朝かよ・・・。」 窓の外に目をやると、朝日が昇り始めている。
ボウズ「・・・・・・・・・・・・。」 朝日に見惚れる。次第に心があらわれていくような感覚を覚えた。恵美と初めて会った時の事が脳裏に蘇ってくる・・・。 辛いリハビリに挫折し、ふさぎがちだった恵美。少しづつ話をしてあげるうちに元気と明るさを取り戻していった・・・。
ボウズ「俺に、自信を与えてくれたのは・・・恵美か・・・。どこか落ち着きを与えてくれたのは恵美だな。」 ボウズ自身もまた、恵美と会話をするうちに自信を持つことができてきた自分に気付いた。 そして確信した。自分のそばにいて欲しい人はすぐ近くにいたということに・・・。
3週間後・・・。 宮浦の港に朔、亜紀、龍之介、智世が集まっていた。
朔「何やってんだよ。早く連れてこいよな。」
亜紀「まあまあ。気楽に待とうよ。」 ボウズを今か今かと待つ朔を、亜紀がなだめる。 その時・・・。
ボウズ「おう!待たせて悪ぃな!」
龍之介「遅せーよ!遅刻だぞ!」 遅れてきたボウズに龍之介が笑顔でツッコミをいれる。 そして。
智世「おやおや?隣にいるその女の子はどちら様ぁ?」
ボウズ「おめぇと亜紀は知ってんだろ・・・。」 ニヤケ顔でつっこむ智世に、恥ずかしそうに下を向き毒づく。
亜紀「智世、からかわないの!・・・ボウズ、紹介して!」
ボウズ「えーと、何て言ったらいいか分からないけど・・・。」 優しく見守る4人と、少し恥ずかしそうな女性。 そして、意を決したように
ボウズ「今回、俺にも彼女ができた!紹介する。恵美だ!!」
恵美「初めまして・・・結城恵美と申します。」 少しだけ小さな声で挨拶をした後、ペコリとおじぎをした。
朔「初めまして。松本朔太郎です。サクって呼ばれてます。・・・あ、恋人の亜紀です。」
亜紀「こんにちは。廣瀬亜紀です。私はアキって呼ばれてます。」 朔に言われ、一歩前に出て軽くおじぎをする。
龍之介「俺は、大木龍之介っていいます。俺と朔とこいつは、幼なじみなんです。こいつと俺はこういう仲ですけど・・・。」 といって智世の肩を抱き寄せるが・・・。
智世「初対面でそういうことしない!」 恥ずかしさから龍之介の手を払う。
智世「すみません。上田智世です。皆はトモヨって呼んでます。あ、ちなみにこいつはスケって呼んでます。」
恵美「はじめまして。皆さん、本当に仲が良いんですね。少し緊張してたんですけど、皆さんと会ったらどっかにいっちゃいました。あ、エミって呼んでくれたら嬉しいです!」 緊張が解け笑顔になった。ボウズも一安心である。 そして・・・、
智世「恵美、ようこそ!」 亜紀と最初に出会った時のように屈託のない明るい笑顔で音頭を取ると、みんな一斉に「ようこそ!」と言うのだった。
龍之介「よし、じゃあ行きますか!オラ!さっさと荷物を船に運べ!」 とボウズの頭を叩きながら笑顔で言う。
ボウズ「って〜な!」
朔「いいから早く行くぞ。ケ・ン・リ・ョ・ウさん!」 憮然とするボウズに、龍之介の仕草、口調をマネしながら言った。「・・・・・・似てねぇよ。」とボウズがささやかにつっこむ。
亜紀「あ、朔ちゃん待って!これ!」
朔「あ、それは重いから俺がやるよ。亜紀と智世と恵美は、軽めのものを運んで!」
智世「了解!」
恵美「はい!」
そして15分後・・・。
龍之介「準備はいいか〜い!?忘れ物はないか〜い!?」 おかしな声で皆に聞く。亜紀と恵美はクスクス笑っている。そんな2人を見つめる朔とボウズ。
智世「変な声出してんじゃないわよ!あんたは安全に船を操縦することを考えなさ〜い!!」 笑いながらいつもの調子で智世が叫ぶ。
朔「大丈夫!全部あるよ!」
亜紀「頼むね。スケちゃんヨロシク!」
龍之介「まっかせなさ〜い!!そんじゃ、安全運転ならぬ、安全操縦で行きますかぁ!!」 ゆっくりと船が港を出る。
亜紀「朔ちゃん。よかったね・・・。」
朔「うん。そうだね・・・。」 隣同士に座った2人が、まだ恥ずかしいからか、ほんの少しだけ離れて座るボウズと恵美を見て微笑む。龍之介も智世も同じように笑みを浮かべている。 海原を行く船の上で、朔も亜紀も龍之介も智世も全員が、ついに幸せを掴んだボウズを心から祝福していた。
続く
|
...2005/04/13(Wed) 22:06 ID:Ai7FyV66
Re: アナザーストーリー 2 Name:clice
| | たー坊様、いつも楽しく読ませて頂いてます。 最初のころより、たー坊様の書かれるそれぞれの登場人物の台詞は、ほんとにドラマの雰囲気を良く再現していて、それぞれの顔がすぐに浮んできました。その中でもボウズの台詞が特に上手いなと思っていましたので、これから登場することが多くなりそうなのは楽しみです。 結城恵美さんのキャラクターを立てていかれることと思いますが、顔立ちや髪型や服装、性格や生い立ち、果ては何か重大な秘密が・・・とかゼロから考えるのは大変ですが楽しい作業でもあると思います。いったいどんな女性なのかそちらも楽しみです。 たー坊様やグーテンベルク様の作品を読ませて頂いてると、山田君の朔とはるかちゃんの亜紀をつい書いてみたくなる気がします。でもそれはお二人にお任せしてこちらでは緒形さんにもう少し悩んでもらおうかと思っています。 たー坊様にはそろそろ周回遅れにされそうですが、あっという間に抜いていって次の300レス目指して頑張ってください。
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...2005/04/14(Thu) 09:41 ID:WXzyo.oE
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | clice様 毎回お読みいただきましてありがとうございます。 お褒めのお言葉も頂きまして、大変励みになります。 恵美については、おっしゃる通り、これから少しづつ明らかにしていければと思います。 執筆者同士これからも頑張っていきましょう。clice様も300レスを目指して下さい。
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...2005/04/15(Fri) 20:40 ID:Ch1b.MMQ
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | とある島。 龍之介の操縦する船が桟橋に到着した。 すばやく船から下船し、手馴れた様子で手際よく、船が流されることのないようにロープで船を係留する。
龍之介「これでよし。おーい!皆降りて来いよ。」 龍之介が大声で呼ぶ。智世を先頭に5人が島に降り立った。
亜紀「う〜ん・・・。6年経っても全然変わってないなぁ。」
智世「そっかぁ。亜紀は1回来たことあったんだっけ?」
亜紀「うん。朔ちゃんとスケちゃんとでね。」
6人が訪れたのは夢島。 実は、今回のことは龍之介の提案であった。以前、「皆の都合のいい時にキャンプでも行こうか?」と言っていたのだった。
そして女3人は、廃墟と化しているホテルに向かった。智世がドアの取ってを掴んだ。「ギギィ・・・。」と、ドアがきしむ音がする。
智世「うわっ!すごいねここ・・・。」
恵美「掃除しないとダメだね。」 2人で入るなり中のひどい状態に少し嘆きの入った感想を漏らした。
一方、男3人は比較的重い荷物を運んでいた。
朔「スケちゃん。そっち持って。」
龍之介「おう!ボウズ、お前も手伝えよ。」 なんだかんだ言いながら重い荷物を運んでいく。そして、中に運び込もうとするのだが・・・。
亜紀「あっ、ちょっと待って。まだ掃除終わってないから。まずはこっち手伝って。」 と言われて、男3人も大掃除に参加するのだった。
・ ・ ・ そして1時間後・・・。 時計は11時をまわっていた。そこで6人は昼食の準備をすることに。 すると、
龍之介「12時まで時間がある。すぐそこには海もある。釣竿も人数分持ってきてあるから、チームに分かれてどこが一番釣れるか競争しないかい?」 と提案する。
恵美「面白そう。」
朔「もちろん釣った魚は、昼と夜のおかずの一部になるの?」
龍之介「当たり前だろ。」
亜紀「いいけど、競争だからって必要以上に釣るのはやめようね。当然だけど魚にも大切な命があるんだし。」 命の大切さを誰よりも分かっている亜紀だからこその意見である。これには皆も賛成した。
ボウズ「そうだな・・・。おいスケ、もし多く釣れたら、それぞれの判断で海に帰してやらないか?もちろん競争だから、他のチームに確認とって数だけ覚えてよ。」
智世「ナイスアイデア!それでいいんじゃない?」
龍之介「それでいいぜ。」
朔「よし。じゃあ、チームはどうする?」
亜紀「それは、カップルで分ければいいじゃない?」
朔「皆はそれでいい?」 5人に賛成を求める。これには誰一人として反対するものはいなかった。そして制限時間を1時間と決めて、それぞれの姿が確認できる範囲に分かれたのだった。
智世「それじゃはじめるよ〜!!準備はいい?」
一同「O〜K〜!!」
智世「よーい・・・スタート!!」 大声で智世がスタートの合図をした。3箇所から2本ずつ釣り糸がたらされた。 そして、それぞれのカップルの様子は・・・。
智世「ねえ、この場所は釣れるの?」 開始10分。未だに変化がない。しびれをきらしたかのように聞いた。
龍之介「おい、俺はこういうことにかけては専門家だぜ?それにそんな簡単には釣れねぇよ。」
智世「あ、そっか。忘れてた。」 というと、智世にしては珍しく舌を出した。
龍之介「ったく。」 とつぶやきながら、右手人差し指で智世のおでこをつつく。あまりに突然のことに智世は顔を赤くするのだった。
智世「なに?突然?あんた今までそういうことしたことなかったじゃない?」 心の中では嬉しさもあるが、必死にそれを隠している。 龍之介は朔以上に愛情表現することは滅多になく、智世は亜紀以上にそのことで悩むこともあるのだった。時には亜紀と2人で「どうしたらいいのかなぁ?」と相談しあったりすることもあるのだった。
龍之介「たまにはいいんじゃねぇの?」
智世「たまには・・・。」 それでも智世はとっても嬉しかった。「好き」すらもない。でもそれが龍之介らしいと思っているのだった。
龍之介「・・・・・・・・・・。」
智世「・・・・・・・・・・。」 2人は穏やかに微笑んで海を見つめながら竿をたらしていた。
一方。
恵美「穏やかだねぇ・・・。」
ボウズ「ああ。」 2人は青い空とそこに浮かぶいくつかの雲を、ぼんやりと眺めていた。
恵美「いいところね。こういうことをするのって本当に久しぶり・・・。」 長い髪が風に乗ってなびく。
ボウズ「普段じゃなかなかこんなことしないだろ?」
恵美「うん。こういうことって結構好きなんだけど・・・。」
その時。
ボウズ「おい、引いてるぞ!」
恵美「え?あ、本当だ!」 言われて置いたていた竿を見ると糸が激しく動いているのが分かった。
ボウズ「恵美、引け!」 言われて思いっきり力を入れて竿を引く。 海面に姿を現した魚をボウズが網ですくう。
恵美「やった!これってなんていう名前の魚?」
ボウズ「ちょっとわかんねぇな・・・。後でスケに聞いてみようぜ。」 こうして、釣り競争の第一号はボウズ・恵美チームになったのだった。
そしてもうひと組・・・。
亜紀「あ、恵美釣ったみたい。」
朔「え?早いなぁ。どのくらい時間残ってる?」
亜紀「40分。ほら、私たちも釣らないとお昼のおかずがなくなっちゃうよ。」 2組からは岩場の影に隠れるところに場所をとった朔と亜紀。
亜紀「こうして2人きりになるの久しぶりね。七夕の時に一緒に星を見てから会えなかったものね。」 最近、朔の忙しさが続いていたため、休みの日でさえ、なかなか会えないでいたのだ。
朔「これからは週に1回は会えると思う。」
亜紀「ホント!?」
朔「わからないけど・・・。」 朔の曖昧な答えに「なによそれ!」と膨れ顔を作る。
朔「でも、ここの所に比べたら、時間はできやすいから。これはホント。」
亜紀「ふ〜ん。じゃあ、時間があるときは教えてね。いつでも会いたいから。」 少し微笑みながら言う。相変わらず朔との時間を必要としていることに変わりはなかった。「昔なら絶対にこんな事を言わなかった。」と亜紀自身思っていた。「頑固で、負けず嫌いで、カッコつけで、泣き虫。」に「甘えん坊」が増えちゃったなと感じていた。それでも無理をして変えようとは思わなかった。それだけ朔との時間に幸福を感じているからだ。
すると、 朔「おっ、来た来た!」 自分の竿に当たりが来ている。慎重に竿をひっぱっていく。「朔ちゃん頑張って!!」と、すでに網を持って準備している。
朔「亜紀、網!」 朔が釣り上げたのを息の合った動きで網に入れる。そして、2人は「やったぁ!」とニッコリ笑い合うのだった。
亜紀「朔ちゃん、頑張ったから後でいいもの見せてあげる。」
朔「えっ!何?」
亜紀「フフッ。それは後でのお楽しみ・・・。」 どこか不敵な笑みの亜紀だった。 ・ ・ ・ そしてあっという間に時間は過ぎた。昼食の準備をする6人。全員に笑顔が咲いているのだった。
続く
|
...2005/04/16(Sat) 16:04 ID:x9vzcjBw
Re: アナザーストーリー 2 Name:グーテンベルク
| | たー坊様へ こんにちは、グーテンベルクです。早速読ませていただきました。ボウズと恵美。幸せそうに見えますね。空と雲を眺めている様子が目に浮かぶようです。それと、今回の龍之介のめったにみれない愛情表現もグッドですね。智世の不安もきっと晴れたのではないかと思っております。朔と亜紀も相変わらずラブラブで見ていて(読んでいて・・・かな?でも想像できているから見てるのと同じですね)心があたたまります。続きを楽しみにしています。
|
...2005/04/16(Sat) 17:29 ID:LZGRxZbw
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | グーテンベルク様 お読み頂いてありがとうございます。 朔と亜紀にとっては天国から地獄に落ちた場所である夢島ですが、今回でそれも払拭できたらと思います。 次回もお読みいただけたら幸いです。
|
...2005/04/16(Sat) 17:58 ID:x9vzcjBw
Re: アナザーストーリー 2 Name:ゴン41
| | たー坊様 ご無沙汰しております。長期出張より戻りました。朔と亜紀の愛はゆっくりと着実に深くなっていってますね。「たー坊’Sストーリー」で思うのは、亜紀の変化です。病に倒れる前に比べとても女らしくなっていってる気がします。可愛らしさは前からですが。 「夢島」に二人で再度行ければ良いなと思ってました。びっくりしました。でも今回は仲間と一緒ですね。ここが二人の結ばれる場所ならいいなと思ってます。これからも楽しみにしております。
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...2005/04/16(Sat) 18:50 ID:RENl0E2g
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | ゴン41様 ご無沙汰しております。長期出張お疲れ様でした。 おっしゃる通り、亜紀は女らしくというか、素直になっていっています。これからも亜紀にはどんどん朔に甘えていってもらいたいと思います。 次回もお読み頂ければ幸いです。
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...2005/04/16(Sat) 21:23 ID:x9vzcjBw
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 昼食の準備をする6人。男性陣が魚。女性陣が他のおかずとに別れて作業している。 ちなみに釣り競争は龍之介&智世が3匹釣り上げて優勝したのだった。朔&亜紀が2匹、ボウズ&恵美が1匹を釣り上げ、合計6匹釣れたのだった。
男性陣が黙々と作業しているのと対照的に、女性陣は話をして盛り上がっているようだ。
亜紀「恵美はボウズのどこを好きになったの?」 亜紀がさりげなく切り出した。智世も「あ、私もそれ聞きたい。」と興味津々である。 急に話を振られて多少動揺した様子の恵美だが、気を取り直し、恥ずかしさを覚えながらではあるが話し始めた。
恵美「入院中にふさぎこんでた私に話をして、前向きにさせてくれた上に、私のわがままに嫌な顔一つせずに時間を見つけては来てくれて・・・。そういう優しくしてくれて、さらに面白いところかな・・・。」
智世「なるほど・・・。ボウズも病院に通ってたんだねぇ。・・・それで?どっちから告白したのぉ?」 少し意地悪そうな笑みを見せ、笑みの顔を覗き込みなが聞いた。
恵美「・・・・・それはねぇ・・・私から。」 これには驚く亜紀と智世。恵美がボウズを好きになっている可能性はあるかもしれないとは思っていたが、2人ともてっきりボウズから恵美に気持ちを伝えるものだと思っていたからなのだ。
亜紀「告白した時はどうだった?自信はあったの?」
恵美「全然なかったよ。私はフラれると思ってたくらいで・・・。それから返事をもらうまではあまり眠れなかったよ。」 ついこの間起こったことをハッキリ思い出しながら話を続ける。 そんな様子の恵美に亜紀と智世の2人は微笑みながら言ったのだった。
亜紀「恵美。ボウズをよろしく・・・。」
智世「私からもお願い。幼なじみがようやく掴んだ幸せなの。できることなら、それがずーっと続いて欲しいと思ってるのよ・・・。」 2人のこの言葉は、恵美にボウズがいかに皆に慕われているかを分からせるには十分だった。そして、5人がいるこの環境をとても羨ましいと思った。
恵美「・・・うん。私たちのこと応援してくれる?」
智世「当たり前じゃない!」
亜紀「何かあったらいつでも相談して。そのかわり、私たちの相談にも乗ってね。」
恵美「ありがとう・・・。」 心に暖かさを感じた。こうして恵美は亜紀と智世とともにグループの一員として溶け込んでいけたのだった。 ・ ・ ・
朔「こっちは準備できたよ。」
亜紀「こっちもいいよ!」
ボウズ「よし!じゃあ食べようぜ!もう腹減ったぜ。」 こうして6人は新鮮な魚と持ち込んだ材料で女性陣が作ったおかずで賑やかな昼食を楽しむ。会話は弾み、笑いが絶えることはない。質問攻めにあった恵美とボウズの2人は、少し顔を赤くして答えていくのだった・・・。
そして、お腹がいっぱいになった6人は海で泳ぐことにした。
亜紀「じゃあ、私たち着替えてくるね。」
朔「ああ。」 そうして亜紀、智世、恵美は荷物の置いてある中に一度戻った。 残された男性陣は、一足早く着替えて浮き輪やボートを浜辺に運び準備をしている。 すると・・・。
龍之介「なあ、誰が一番水着が綺麗だと思う?」 少しニヤつきながら龍之介が2人に話を振った。
朔「うーん・・・亜紀かな。やっぱり。」
ボウズ「俺はやっぱり恵美だなぁ。スケは?」
龍之介「亜紀。」 即答だった。 この言葉に朔は「スケちゃん、亜紀に変なことしたら・・・わかってるよな?」と怖い顔をする。
龍之介「なに変なこと考えてんだよ!するかよそんな事!」 というが、ボウズも「せめて智世っていってやれよ。」と呆れながら言うのだった。
龍之介「・・・まあな。2人とも言うとおりだな。」 龍之介は普段こそ甘い言葉は言わないものの、心の中では智世を2度と悲しませないことを誓っているのだった。
龍之介「心配すんな。さっきみたいな冗談は智世の前では言わないから。」 と言うのだが、朔もボウズもどこか疑いの眼でスケをみるのだった。 そんな目で見られた龍之介、
龍之介「・・・なに疑ってんだよ?・・・じゃあ、誰が一番いいスタイルしてると思う?」 さっきよりもさらにニヤつきながら聞く・・・。
朔「それは、亜紀に決まってるじゃない・・・。」
ボウズ「いやいや、恵美もなかなか・・・。」
龍之介「いやいやいや・・・智世は智世でこれが・・・。」 3人が3人とも鼻の下を伸ばしてデレ〜っとしている。不毛なエロトークが続く3人組・・・。 その時・・・。
亜紀・智世・恵美「おまたせしました!」 最愛の恋人達が目の前に姿を現した。 しかし・・・。
龍之介「・・・何で服着てんの!?」 朔もボウズも期待したのと違う姿にボー然とした様子を見せている・・・。
智世「どうせあんたたちはロクなことを考えないでしょ!?ついでだから、私たちも色っぽく登場することにしたの!」 そういうと、智世は着ていた服をその場で脱ごうとした。思わず動揺してしまう男性陣。龍之介も少し驚いてしまう。 しかし、智世は途中で動きを止めて龍之介の前へ。
龍之介「なんだよ?」
智世「『なんだよ?』はないでしょ!私だってあんたの前でたまには女っぽいことしてあげるわよ。」 そういうと、再び白いノースリーブのシャツとデニムのスカートを脱ぐ。するとそこには・・・黄色い水着を身につけた智世の姿。
智世「何か言ってよ・・・。」
龍之介「・・・ああ。」 何とか反応する龍之介の前で、智世は顔を真っ赤にして俯いている・・・。
智世「ホントに恥ずかしい〜・・・ほら、早く行くよ!」 そういうと龍之介の手を引いて海へと走って行った。龍之介の表情はあ然と言った感じだろうか・・・。初めて見た智世の姿に戸惑いを隠せないでいた。 そんな様子を見る4人・・・。すると・・・。
恵美「顕良・・・さん。」 呼ばれてボウズが振り向く。 品の良い紺のブラウスと丈の長い白いスカート姿だった恵美は、いつのまにか水着姿に・・・。
ボウズ「・・・・・・。」 一瞬、これが夢なのではないかとさえ思えた。そんなポカンとしているボウズの右手を恵美が、恥ずかしさを隠して何も言わず掴んで海へと引いていく・・・。そんな2人をポカンと見送る朔・・・。
すると・・・。
亜紀「朔ちゃん。」 優しく名前を呼んだ。朔が振り向くと目の前には・・・。 被っていた麦わら帽子を足元に置いた。そして白いワンピースの肩の紐をほどく。 「ハラリ」とこれまた足元に白いワンピースが落ちるとそこには・・・。
亜紀「どうかな・・・?」
朔「・・・・・・・・・・。」 と持っていたビーチボールを「ポン」と落とした。朔の視界に入ってきたのは、大胆な水着姿の亜紀が・・・。
亜紀「行くよ!」 まるで6年前の再現をするかのように朔の手を引き皆のいる海へ向かうのだった・・・。
続く
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...2005/04/16(Sat) 21:27 ID:x9vzcjBw
Re: アナザーストーリー 2 Name:にわかマニア
| | ドラマ本編では直前のキャンセルが相次いだ夢島でしたが,こちらの方は,1987年よりもメンバーが増えて,大賑わいですね。確か,亜紀も「みんなで騒ぐ」ことが夢だったようなことを語っていましたね(第5話前半)。 この様子だと,この3組のカップルにとって,将来も家族ぐるみで夢島に渡るのが互いの絆を確かめ合うための年中行事になりそうですね。
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...2005/04/17(Sun) 07:27 ID:kolKlces
Re: アナザーストーリー 2 Name:SATO
| | ボウズの彼女・恵美がついにベールを脱ぎましたね。私が望んでいたスケとトモヨのアナザーが読めて満足していたところに、ボウズも・・・嬉しさで満腹状態ですよ。くれぐれも消化不良にならずにこれからも楽しませていただきます。
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...2005/04/17(Sun) 07:53 ID:wQBW7htk
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | にわかマニア様 今回もお読み頂きましてありがとうございます。 6年後はドタキャンも無く、全員集合することができました。今のところ何の問題もありません。 「将来も家族ぐるみで夢島に渡る。」との事ですが、本当にそういう未来が来てくれればいいと私もお思っております。 次回もお読み頂ければ幸いです。
SATO様 満足して頂けたみたいで何よりです。 今回は朔と亜紀だけでなく、スケと智世・ボウズと恵美も幸せが訪れています。 これからも幸せな様子を書くことができればと思います。 次回もお読み頂ければ幸いです。 「世界の中心で、愛をさけぶ2」の続編も楽しみにしております。お互い執筆者同士頑張っていきましょう。
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...2005/04/17(Sun) 17:11 ID:6jZZqJWk
Re: アナザーストーリー 2 Name:朔五郎
| | 恵美さん、これからどんな女性として描かれていくのかとても楽しみにしています。 かつての宣言どおり「亜紀よりイイ女」なのでしょうか(笑)
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...2005/04/17(Sun) 17:57 ID:0PCWIsSM
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 朔五郎様 お読み頂いてありがとうございます。 恵美が亜紀よりもいい女なのかはどうかは分かりません。しかし、ボウズが付き合うことを決意した女性ですし、やはり坊主も好きなので、少なくとも「亜紀以上である」ことは間違いなさそうです(笑) 次回もお読み頂ければ幸いです。 「世界の中心で、愛をさけぶ2」も楽しみにさせていただいてます。お互い頑張っていきましょう。
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...2005/04/17(Sun) 19:47 ID:6jZZqJWk
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 智世「ちょ・・・ちょっとぉ!りゅーのすけー!」 朔&亜紀・ボウズ&恵美から少し沖合いに出たところで智世がさけんだ。直後、何かが海に落ちる音と水しぶきが上がった。
智世「ゲホッ!!・・・いきなり何すんのよ〜!このバーカ!」
龍之介「ハッハッハ!奇襲成功だな智世!」 海面に顔を出して膨れっ面の智世の目の前で、笑いながら得意満面といった感じの笑顔を見せる。 さっき、いきなり目の前で服を脱いでみせた智世への復讐代わりに、小柄な体を抱きかかえ、ある程度深さのある場所に「じゃあな智世!」と言いながら、放り投げるようにして海に落としたのだった。
智世「ひどすぎる!」 と、憮然としている。さっき龍之介に抱きかかえられて、まるでお姫様のような気分すら感じていたのに、あんなことをされた智世は心底ガッカリした。
龍之介「しょうがねぇなぁ・・・ほれ、行くぞ!」 と智世の肩を抱く。 智世は「何よ急に?らしくないんじゃないの?」といつもの調子で言うのだが、内心は少し嬉しかったりしている。
龍之介「摑まれよ。」 と言われた智世は、いつに無く素直に、その日焼けした逞しい腕に摑まって、一緒にさらに沖の方へと向かうのだった。
そんな様子を見ていた朔・亜紀・ボウズ・恵美・・・。
恵美「いい顔してるね。とてもいい笑顔・・・。」 沖合いでは2人が水を掛け合いながらはしゃいでいる。特に智世は本当に楽しそうに笑っている。
ボウズ「なぁ、朔。あいつのあの笑顔は今までに見たことあったか?」
朔「いや・・・あるはず無いよ。」
亜紀「当たり前だよ。智世のあの笑顔は、スケちゃんの目の前でしか見せないはず。・・・本当に嬉しそう・・・。」 普段はどこかお母さん的な感覚を智世には感じることが多いのだが、こういうときはやっぱり1人の女性だと認識するのである。
恵美「顕良さん。・・・私たちも行かない?」 少しだけではあるが恥ずかしそうに誘う。ボウズも2つ返事で受け入れて、今度はボウズが恵美の手を引き沖合いへ向かった。そして、恵美の足がつかない深さになったときに、ボウズに嬉しそうに摑まって泳ぐのだった。その時には、智世がさっき見せたような笑顔を見せているのだった。
亜紀「智世も恵美もいい顔するね。特に智世のあんな顔を見たのは久しぶり・・・。」 智世とは、お互いの恋人に、いかに愛情表現をさせることができるか?ということで、相談し合っていただけに、亜紀もひと安心である。
亜紀「さて、朔ちゃん?」 今度は自分の番とばかりに隣にいるはずの朔に声を掛けたのだが・・・。
亜紀「あれ?え?」 朔の姿が見あたらない。あわてて姿を探すと、浜辺に戻り、膨らませたばかりのボートを引いて持ってくるところだった。
亜紀「もう・・・。そのまま沖合いに連れて行って欲しいのに・・・。なんのために頑張ったのか分からないじゃない。」 といいつつ自分の水着姿を見る。実は、少し大胆な亜紀の水着と智世が着てる黄色い水着は、キャンプの話が龍之介から来たときに、「大好きな人に見せたい。」という思いから、2人でわざわざ買って来たものなのだ。
朔「亜紀、行こうか?」 と声を掛ける。それも亜紀の顔は見ずに。 右手にはボートの端が握られている。 すると、亜紀はボートを見た途端にある事を思いつく。
亜紀「ねえ、乗っていい?」 朔の目を見ながら言った。もちろん朔も断る理由は無い。そしてゆっくりと沖へ。 そして・・・。
亜紀「朔ちゃん!」 いつもの聞きなれた声に振り向く。ボートの上の亜紀が何かをたくらんでいる様子の笑みを見せている。 と、次の瞬間!
亜紀「行くよ!」 と亜紀が朔に向かって言った。朔が「何が?」と言ったか言わないか・・・。
朔「うおっ!!!」 と大きな声があたりに響く。驚いて声のほうを一斉に見る龍之介・智世・ボウズ・恵美。4人の視界に入ったのは海に浮かぶボートだけであった。 そして程なくして、海面に2人が浮かんできた。2人の顔は真っ赤になっていた・・・。
・ ・ ・ それぞれ恋人同士での楽しいひとときを過ごした後、6人で集まってバカ騒ぎをしていた。 「うわ!」「キャッ!」「アッハッハッハ!」とはしゃぎながら、水を掛け合ったり、ビーチボールを使ったり、シンクロナイズドスイミングのようなことをしたり、6人で手をつないで一直線に倒れてみたり・・・。 朔も亜紀も龍之介も智世にボウズそして恵美。6人が6人とも、とてもいい顔で笑っていた。 そして、海から上がった6人は、朔特製の生姜湯で体を暖めた後、夕食の準備を始めることに。 そして、生姜湯を飲む間から、亜紀・智世・恵美はそれぞれの最愛の人の隣に寄り添うようにして、その人の顔を見つめ続けているようだった・・・。
続く
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...2005/04/17(Sun) 19:49 ID:6jZZqJWk
Re: アナザーストーリー 2 Name:グーテンベルク
| | たー坊様へ こんばんは、グーテンベルクです。ドラマでは叶わなかった亜紀の夢がここではかなえられてとても嬉しいです。龍之介の行動、とてもナイスですね。とても龍之介らしいです。朔と亜紀、龍之介と智世、ボウズと恵美、みんなとても幸せそうで見ている私まで幸せな気分になります。これからも楽しみにしております。執筆者同士お互いにがんばりましょう
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...2005/04/17(Sun) 20:39 ID:B4fEdI.Q
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | グーテンベルク様 毎回お読みいただきましてありがとうございます。 今回は書いている私自身も、とても楽しい気持ちになることができました。完全に中毒症状が出てしまいました(苦笑) 次回も夢島が舞台です。またお読み頂ければ幸いです。グーテンベルク様の次回のストーリーも楽しみにしております。
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...2005/04/18(Mon) 21:23 ID:PLl.Z5WQ
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 粉末ソースの焦げた匂いがほのかに残る鉄板を後ろに、6人は夕食を食べている。
龍之介「もーらい。」 右隣に座っている智世の紙皿から、ソーセージを奪い口に運ぶ。
智世「まったく。相変わらず子供なんだから・・・。ちゃんと言えばあげるわよ!」 と、再び自分の紙皿に箸を伸ばしてきた龍之介の右手を、”ピシャリ”と少しだけ強く叩いた。
龍之介「ってーな!このブス!」
智世「あんだって!?可愛いアンタの愛しい彼女に向かって『ブス』だと?」
龍之介「どこが、カ・ワ・イ・イんだよ?」 2人とも若干ではあるがアルコールが入っているせいだろうか、少しだけ饒舌になっている。 そんな2人のやりとりを微笑ましげに見ている、朔・亜紀・ボウズ・恵美の4人。 すると、恵美が切り出した。
恵美「朔と亜紀もそうだけど、スケちゃんと智世も本当に仲がいいよね。いつから付き合ってるの?」 思いもよらない恵美の発言に、龍之介と智世はとても驚いたのだった。
智世「え?それ言うの?」
恵美「できれば聞きたいなって。」 そう言いながらニコニコ顔を見せる。 そして、朔もボウズも「俺たちも聞きたい。」と言い、亜紀も「そういえば私も詳しいこと聞いてないよ。」と興味津々な表情で聞いてくるのだった。 4人に迫られ、観念した龍之介と智世は、ゆっくりと話し出した・・・。
智世「最初は、ずーっと私の片思いだったの。小さな頃からいつも一緒にいたけど、自分の気持ちに気付いたのは高校入学のあたりだったかな・・・。でも、いざとなったら何も言えなくてね。・・・そこからは、こいつに好きな人がいたり、亜紀が倒れたりとかで、ますます言えなくなっちゃったよ。それからだいぶ長い間は現状維持って感じ。」
龍之介「その間は本当に長かったよな。お互いの気持ちに気付いてたのに、何か、言ってしまうと不謹慎な気がしてさ。一本の電話が来るまでは何の変化もなし。」 このとき朔は、亜紀のドナーが見つかった時のことを思い出していた。 亜紀もまた、吉報が届いた時の感情がこみ上げてくるのを感じていた。
龍之介「ある日、朔ちゃんを経由して、亜紀のドナーが見つかったって連絡もらったんだ。俺も智世も。・・・・・その時は何を思ったのかよくは覚えてないんだけど、その日のうちに、港に智世を呼び出したんだよ。」
智世「その時言われたのは・・・、『亜紀の移植が無事に成功したら、俺たち付き合わないか?』って。よくよく考えたら『何で亜紀?』って思ったけど、私も亜紀には何としても助かってもらいたかったし、スケはスケで、友達想いから来た感情と言葉だったんだろうなって今は思ってるよ。」
亜紀「何か、悪い気がする・・・。」
龍之介「今さら気にすんなって。」
智世「そうそう。・・・それで、亜紀の移植は成功した。それは同時に長い間持ち続けていた私の恋が実った時でもあったの。」 龍之介も智世も懐かしそうな表情を見せている・・・。
亜紀「はじめて聞いたよ・・・。ね?朔ちゃん?」
朔「・・・うん。2人ともありがとう。」 そういった朔に、照れくさいような笑顔を浮かべる・・・。 そして、再びバカ話や他愛も無い話で、夜が更けていくのと比例して、6人の宴会は盛り上がっていったのだった。 ・ ・ ・ 午前4時過ぎ・・・。 廃墟の中で6人並んで寝ていた・・・。 その中で、トイレでもないのに急に目を覚ました人物が一人。 朔だった。
朔「・・・・・・・・。」 割れているガラスの外から、満月の月光りが差し込んでいた。 寝ぼけ眼のまま夜風に当たろうと外に行こうとする。立ち上がりふと皆の様子を見ると、龍之介は大の字になっていた。その横では智世が龍之介の方を向きながら横になっている。 ボウズと恵美は1枚のタオルケットを仲良く掛け合って寝ている。 そして亜紀は、タオルケットを掛けて寝ているものの、少し寒そうに体を縮ませている。
朔「まだ寝てなよ・・・・・・。」 優しく言いながら着ていた白いシャツを亜紀に掛けてあげて、外へ出て行くのだった・・・・。
朔「さすがにまだ暗いよな・・・。」 心地よい風が体にあたる。そしてあてもなく歩いていると・・・。
朔「ここも変わってないな・・・。」 地面が草で覆われた少し開けた場所・・・。見覚えのあるというよりも、一生忘れないであろう場所に行き着いた。 6年前のあの日、亜紀が自分には聞こえない電話の音で目覚め、寝ていた自分を起こしたあと、辿り着いた場所・・・。 そこは、ほとんど何も変化は無いように思えた。しかし、明確な変化に朔は気付いていた。6年前には数多く瞬いていた光は、その数を減らしていたのだった・・・。
朔「・・・・・・。」 なんとなく地面に腰を下ろした。そしてぼんやりと蛍の光を見ていた・・・。
一方。
亜紀「ん・・・。」 頭の上の方に置いておいた時計で時間を確認する。
亜紀「まだ5時前・・・。」 ひとりごちた時、隣に寝ているハズの朔の姿がないことに気付いた。さらに、自分の体に朔が掛けてくれてたシャツ気付いた。
亜紀「・・・朔ちゃん?」 亜紀も外に出た。心当たりを探す。
その時、朔はある不安に襲われていた。 「なんでこんなこと考えるんだよ?俺?大丈夫に決まってんだろ・・・。」と言い聞かせるが、それは次第に大きくなっていくのだった。 朔は、再び亜紀が倒れるのではないかという不安に襲われていた。「このまま朝日が昇ったら?」という思いが朔を支配する・・・。 そして「ヤバイ・・・。」と思ったときだった。
???「だーれだ?」 声と共に目の前が真っ暗になった。 いつも心穏やかになれる、可憐で優しい声。そして、顔に感じる抱きしめ慣れた温もり・・・。朔は確信した。そしてその手を握りながら言った。
朔「亜紀。」
亜紀「正解。」 と言いながら、朔の顔の近くに自分の顔を寄せる・・・。
亜紀「綺麗だね・・・。これも全然変わらないね。」 見惚れながら言った。 そんな亜紀の肩に一匹の蛍が止まったことに朔は気付いた・・・。それは朔の不安をあおるのには十分だった。「この島には6人で来ている。」その時点で、すでに違いはあるのに・・・。
亜紀「少し数は減っちゃったね・・・。」
朔「うん。」
亜紀「環境が悪化してるのかな・・・。」
朔「そうかもね・・・。」 しかし、亜紀の声を聞いた途端に、不思議と不安が和らぐのを感じた。 そして、朔は思っていることを決して口に出さなかった。 もちろん、亜紀もそんな朔の心境に気付くはずもない。そして少し無邪気に切り出すのだった。
亜紀「いいもの見れたね。」
朔「そう言えば、釣りの時に言ってた『いいものみせてあげる。』って、もしかして・・・?」
亜紀「ううん。蛍じゃないよ。もっと前に目の前で見せたじゃない?」 とルンルン顔である。 少し思案顔になる朔・・・。そして、
朔「ああ・・・。」 とだけ言った。なにやら思い当たることがあるようだ。 そんな朔に亜紀は聞いた。
亜紀「どうだったかな?似合ってた?」
朔「・・・とっても。」
亜紀「そっか。よかった。」 亜紀は昼間の海での自分の水着姿ついて聞いたのだった。朔に「似合ってる」と言われて笑顔になる。頑張った甲斐があったと嬉しさを噛み締めている。
朔「でも亜紀?どっちかって言えば、ああいう大胆なのは皆がいる前ではちょっと・・・。俺と2人きりなら、まだいいけど。」
亜紀「どうして?」
朔「何か嫌なんだよな。普段は見れない亜紀を、たとえ幼なじみにでさえも見られるのは・・・独占欲強いのかな?俺・・・。」
亜紀「ヤキモチ妬いてるんだ?」 と、からかいの笑顔に嬉しさを隠して言うのだった。 そんな亜紀に、朔は「そんなことないよ」と言いつつ、見透かされたことに少し意地になってしまうのだった。 そんな様子の朔に、亜紀は嬉しそうにして、さらに朔の頬にくっつくのだった。
朔「あとさ、今度はボートの上から抱きついてくるのはやめて。驚くからさ。」 実はさっき、ボートからダイブした亜紀は、水中で朔に抱きついて、頬にキスまでしていたのだった。 もちろん朔も悪い気はしなかったが、皆が近くにいたため、思わず顔を赤くしてしまったのである。亜紀も同じだった。 さらにその時に、朔にとっては嬉しいハプニングがあった。水着姿の亜紀の豊満な胸の谷間が、数秒間ではあるが朔の視界に入っていたのだった。そんな下心を隠すためにも、やめるように言ったのだった。
亜紀「じゃあ私、2人きりの時はもっと大胆なことするよ?」 と悪戯っぽい笑顔で言うのだった。 そんな他愛もない会話・・・。 幸福感に2人は包まれていた。そして、朔の不安もかなり薄れていった・・・。
亜紀「戻らない?」 そう言って立ち上がった。
朔「うん。」 と亜紀の肩に止まった蛍を思いだした。見るとまだ止まっている。 「動かないで。」と亜紀に言い、人差し指を蛍に近づけた。すると、ほどなくして蛍が朔の指に移ってきた。
朔「ほら。」 と亜紀に蛍を見せる。
亜紀「わぁ・・・私にとまってたの?」 朔は小さく頷いた。亜紀はそんな朔の手を優しく触るのだった。 そして・・・。
朔・亜紀「あっ・・・。」 指先から蛍は飛んでいった。仲間のところに戻るみたいだ。そして朔には、その蛍が自分にメッセージを残したように思えてならなかった。 「もう、大丈夫・・・お前の大切な人は、もう大丈夫だよ・・・。」 と。そんな風に言ってくれてる様に感じたのだった。この時、朔の不安は微塵も残ってなかった・・・。
少しだけ明るくなりはじめた空。朔は亜紀の肩を抱きながら中へと戻った。 時計は5時半を少しまわっている。
朔「もう少し寝ようよ。」
亜紀「いいよ。でもお寝坊さんになっちゃだめだよ。フフッ(笑)」
亜紀の笑顔を見ながら朔は亜紀の手を握った。亜紀も握り返してきた。そして2人は互いの笑顔に満たされながら、再び眠りについたのだった。
続く
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...2005/04/19(Tue) 22:34 ID:zyFguHo.
Re: アナザーストーリー 2 Name:グーテンベルク
| | たー坊様へ こんばんは、早速読ませていただきました。夢島で減ってしまったホタル、亜紀の肩にとまったところで読者の私もかなり不安になってしまいました。幸せな世界の崩壊、最愛の人が苦しむということ、その記憶がよみがえり朔もさぞ不安だったでしょう。でも、ホタルが朔の指に移って仲間のもとへと戻るシーンで本当にホッとしました。今回の夢島での出来事も朔と亜紀、そしてみんなの心にいい思い出として残っていくことを願っております。たー坊様のストーリー、本当に素晴らしいですよ。
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...2005/04/19(Tue) 23:00 ID:yey.tm.k
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | グーテンベルク様 毎回お読み頂いてありがとうございます。 また、お褒めの言葉も頂戴いたしました。本当に嬉しいです。励みになります。
そして、今回でスケちゃんが6年前に果たせなかった約束と、朔と亜紀のとっての病気に対するリベンジを果たすことができたのではないかと思います。
次回もお読みいただけば幸いです。
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...2005/04/20(Wed) 17:18 ID:vcrrbG7Q
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 翌朝・・・。 船に荷物を積み込む6人。 1泊2日の夢島キャンプも終わりを迎えようとしている。
朔「じゃあ、最後に1枚撮ろうか?」 首から掛けたカメラを片手で持ちながら言った。
もちろん、前日から何枚かはカメラに収めていた。男3人のバカな姿の1枚、女3人が食事中のもの、龍之介とボウズのリクエストで撮ったそれぞれの水着姿の1枚。当然これには、きわどい物も含まれているのだが・・・。そして、水着姿を含む亜紀が写っているものが何枚か・・・。 健康な男性なら当然シャッターを切るようなものが半分くらいを占めていた・・・。
龍之介「ここならいいんじゃねぇか?」
恵美「こんなとこがあったんだ・・・。」 6人がやって来たのは、海水が入っている洞窟の前。6年前にあったタイムポストは、さらに朽ちているような状態である・・・。
朔「じゃあ、並んで。」 近くの岩の一部に、比較的たいらな箇所を見つけた朔は、高さを合わせファインダーを覗き込んだ。 「みんな、笑って笑って!」と言い、タイマーをセットする。 亜紀の隣に素早く移動した瞬間、”カシャ!”と音が鳴った。
智世「じゃあ、もう一度中を確認してから帰ろう。」
ボウズ「そうだな。」 5人は戻ろうとするが・・・何故だか、亜紀は朽ちて行くであろうタイムポストを見つている。
亜紀「・・・今度来る時には、朔ちゃんに聞かせられるかなぁ・・・。その時には、朔ちゃん私に言ってくれるよね・・・?」 とポストに向かって呟いている。 そんな亜紀に気付いたのは朔だった。後ろから優しく名前を呼んだ。
朔「亜紀?・・・行くよ?」
亜紀「あ、うん!」
朔「何してたの?」
亜紀「ん?別に。懐かしいなぁって・・・。」
朔「なんかひとり言を言ってなかった?」
亜紀「え?言ってないよ?」
朔「・・・そっか。俺の勘違いか。」
亜紀「どうしたの?」 と笑顔で聞いてくる亜紀に、納得は出来なかったものの「いや、何でもない。」としか朔は言えなかった。
(桟橋にて)
龍之介「これで荷物は積み込んだな?」
ボウズ「おう。中にも忘れ物はなかったぞ。」
龍之介「よし。じゃあ4人に乗るように言ってやれ。」
ボウズ「お〜い!スケが船に乗れだってよ!」 龍之介に促され、大声で4人を呼んだ。
ボウズ「ほれ。掴まれよ。」
恵美「あ、ありがとう。」 波に揺れる船から、手を伸ばして恵美の手を掴む。こういうことに不慣れなボウズは少し恥ずかしさを覚え、恵美は笑顔でボウズのエスコートを受けるのだった。
龍之介「智世。」 ぶっきらぼうに智世に手を伸ばす。
智世「あらあら?今回はやけにサービスいいのね?」
龍之介「嫌なら2度としねぇからな。」 と手を引っ込めようとする前に、智世の手が龍之介の手を掴み、乗船したその時、船が少し大きく揺れた。思わずバランスを崩す智世を龍之介が受け止め、智世の顔は龍之介の懐にうずまる格好になったのだった。智世にとっては、嬉しくも恥ずかしいハプニングである。 思わず、すぐに体を離して顔を赤らめている智世に、朔がニヤケながら「よかったな。」と言いいつつ乗り込んできた。
智世「うるさい・・・。」 と小声で言い返すのが精一杯。顔を赤らめている。
今度は朔が手を伸ばした。 亜紀が微笑みながら手を伸ばし返す。そして、2人の手は力強く互いを掴み合った。もはや6年前の不安などない。 そして船は出港した。
・ ・ ・ 朔「じゃあ、ここで少し待ってて。」 松本写真館の奥の部屋に皆を通した朔は、写真を現像するために暗室へ向かった。
恵美「朔って実家が写真屋さんなんだ。」
亜紀「そう。私も時々お世話になってるんだよ。」 笑顔で話す2人。 その時、龍之介が部屋を出て行った。入れ違いに潤一郎が入ってくる。
潤一郎「みんな、いらっしゃい。」
智世「お邪魔してます。」
潤一郎「亜紀ちゃん、悪いんだけど少し留守番してもらってもいいかな?10分で戻ってくるからさ。」
亜紀「いいですよ。気をつけていってらっしゃい。」 笑顔で答えて見送った。
恵美「亜紀すごいね。本当に信頼されてるんだね。」
智世「亜紀だけじゃなくて、ここにいる私とスケとボウズは、小さい頃からここに出入りしているから、おじさんからは信頼されてるのよ。」
亜紀「今に恵美もすぐに馴染むと思うよ。」
女性陣を中心に話が弾む。 一方の暗室。
朔「なんだよスケちゃん?どうしたんだよ?」
龍之介「いや〜、ついでにこれも頼むよおまいさん。」 そういって持っていたカメラからフィルムを取り出した。
朔「何?もしかしてエロ写真?」 以前に同じものを頼まれて現像をした経験のある朔は、うんざりとした様子で答えた。
龍之介「・・・そうかもしれない。でも健全な物でもあると思うぜ?」
朔「そんな物に健全も何もあったもんじゃないだろ・・・。まあいいや。貸して。」 ちょうど2日分の現像を終えたので、ついでとばかりに現像を始めた。 しばらくして浮かびあがって来たのは・・・。
朔「スケちゃん・・・これ・・・。」 出来上がった写真を見て言う。 2日間に、いつの間に撮り貯めていたのか、現像する写真すべてに智世が写っている・・・。
龍之介「な?健全だって言ったろ?」 と言いつつ、少し照れている。
朔「なんだかんだ言って、智世のことやっぱり好きなんだね・・・。」
龍之介「まあな・・・。・・・って、おいおい。何を言わすんだおまいさん。」 普段はうるさい2人。ケンカも多いが、やはり強い 絆で結ばれているようだ。
朔「でも、水着が多いね。」
龍之介「そこは当然だろ。」 そう言われた朔は苦笑いを浮かべたのだった。
朔「なぁスケちゃん。たまには智世に思いっきり愛情表現してあげたら?亜紀から聞いたんだけど、智世、時々不安になることがあるんみたいなんだってさ。」
龍之介「そういうお前はどうなのよ?」 少しだけ口を尖らせて言う。
朔「俺は、言う時は言ってるよ。」 と言うものの、数える程度しかないのも事実である。しかし、龍之介は「へぇ〜。」とどこか感心した様子で頷くのだった。 そして全ての写真を現像し終わると、
龍之介「ほら、これ。」 と言いながら、一枚の写真を朔に手渡した。 それを見た朔は、興奮気味に、
朔「スケちゃん!これは・・・!」 朔の手の中には、亜紀と一緒に浜辺で眠っている写真・・・。6年前、亜紀が倒れる前日の夢島で撮ったもの・・・。
龍之介「いつまでも俺が持ってるわけにもいかねぇだろ。そいつは、そろそろおまいさんが持つべきだと思ったんだよ。」
朔「いつの間に撮ってたんだよ?」
龍之介「俺がお前達を2人きりにするために帰ったろ?置手紙を残す時に撮ったんだよ。現像代金の代わりだよ。釣りはいらねぇぜ・・・。」
朔「スケちゃん、ありがとう。」
龍之介「その写真の亜紀は本当に幸せそうだよな・・・。俺も智世を、今以上に幸せにしないといけない。・・・お互い頑張ろうぜ・・・おまいさん。」
朔「ああ・・・。分かってる。お互いに頑張ろう。」 そう言うと暗室を出て、みんなの待つ部屋へ。
智世「おそーい!早く見せて!」 待ちきれないと言った様子で写真をせがむ。 朔は、みんなに写真を配った。そしてその写真で、さらに話が盛り上がったのは言うまでもない。
夕方、写真館の前でキャンプは終了となった。 その後、3組のカップルはそれぞれの家へと向かったのである。
続く
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...2005/04/20(Wed) 19:45 ID:vcrrbG7Q
Re: アナザーストーリー 2 Name:SATO
| | たー坊さま 夢島キャンプ編お疲れさまでした。 カップルが3組となったわけですが、坊主と恵美は初々しいですね。他の2組もこの初々しさを見て改めて幸せを感じたのではないでしょうか?
読んでいて、朔、亜紀、スケ、ボウズはドラマのまま想像できるのですが、智世はどういうわけか木戸優(朝ドラのヒロイン)に見えることがあります。智世も優もハツラツとした少女なのですが、本仮屋ユイカちゃんの演技が元気いっぱいで好感持てますね。
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...2005/04/20(Wed) 22:51 ID:fR/OAiPI
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | SATO様 お読み頂きましてありがとうございます。 おっしゃる通り、ボウズ&恵美は、若干初々しさを意識いたしました。それと同じくらい、龍之介&智世にも微妙な距離感というか、いかに普段お互いに遺児を張り合ってるかを表現してみました。
私は朝ドラを見ていないので、木戸優のキャラクターを全く知りませんので、何とも言えませんが、同じハツラツとした少女とのことなので、多少なりとも重なる部分があるのでしょう。 私のストーリーでは、現在、上田智世は23歳の女性です。少し大人になった智世達をイメージして頂けるよう頑張ります。
次回もお読み頂ければ幸いです。
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...2005/04/22(Fri) 22:01 ID:xuAa..iA
Re: アナザーストーリー 2 Name:グーテンベルク
| | たー坊様へ こんばんは、グーテンベルクです。朔と亜紀の手がつながれるシーン。ここではドラマではかなわなかった2人の願いが叶って本当によかったと思いました。ドラマではあともう少しで2人の手がつながるという時に亜紀が倒れたので凄く切なかったのですが、こちらの世界ではきっと通常エンディングのように笑顔で手をつないだのかなと想像しております。いつも素晴らしい物語を読ませていただきましてありがとうございます。
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...2005/04/22(Fri) 22:17 ID:mGjqeY1.
Re: アナザーストーリー 2 Name:サイトのファン
| | たー坊さんへ 執筆お疲れ様です!! まとめて読ませて頂きました。 最近は、大好きなたー坊さんの世界の中心で愛を、さけぶを、なかなか読む時間が取れず このサイトにお邪魔しドキドキしながら 拝読させて頂いております。 今回もGOODです。 ボウズの恋、やっと春が来て良かったです。 何よりも夢島・・・ 蛍からサクへのメッセージには感動してしまいました。 読ませて頂いていて本当に心が温まります。 先日も私の住む地方ではドラマの再放送があり DVDを購入したのにかかわらず見てしまいました。 ですが何故か、安心して見ていられました。 たー坊さんの世界の中心で愛を、さけぶがあるからだと思います。 続編、楽しみにお待ちしています!!
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...2005/04/23(Sat) 01:08 ID:sSuwiy56
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | グーテンベルク様 お疲れ様です。 今回もお読み頂きましてありがとうございます。 本編では好きな人の手を握ることが出来ずに倒れた亜紀ですが、今回は無事に手を繋ぐことができました。こらからも、ドラマではかなうことのなかったことをしていってもらうつもりです。 これからもお読み頂ければ幸いです。
サイトのファン様 お忙しいにもかかわらず、今回も読んでいただけてなによりです。ありがとうございます。 ボウズに春が来て、みんな少しずつ幸せになっていくことができると思います。これからは、少しづつ出番が増えていくと思います。 また、拙い私のストーリーを評価して頂けてること大変嬉しく思います。とても励みになります。 次回もお読み頂ければ幸いです。
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...2005/04/23(Sat) 05:22 ID:Rvawvvww
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 8月中旬。 ボウズの寺の墓地。
ある家の墓石の前で、ボウズが汗だくになりながらも黙々と掃除をしている。
ボウズ「じっちゃん。もう少しで終わるからよ。あと少しだけ我慢してくれよな。」 謙太郎の眠る松本家の墓。お盆を前に大掃除をしている。真夏の太陽の下、熱射病などに気を付けながらの作業が続く。「それにしても暑い・・・。」などと、ブツクサ文句を言いつつも手を止める気配はない。 龍之介ほどではないものの、小さい頃から智世たちとともに写真館に出入りしていたため、やはり謙太郎との思い出は多いのである。 学校のホームルームで突然の訃報を聞き、龍之介と共に骨を拾ってから6年が経過した。毎年この時期になると、自然と松本家の墓を見ることが多くなることに、ボウズ自身は気付いていないのである。
ボウズ「よーし!できたっ!・・・どうよ?綺麗になっただろ?」 汗を拭いながら謙太郎に話しかけた。 その時「ご苦労様。」と声がした。振り向くと、谷田部が線香を持って立っている。
谷田部「顕良和尚。この暑い中、ご精が出ますね。」
ボウズ「・・・。先生、からかうのはナシですよ。」 からかいの口調で言う谷田部に、さすがに苦笑いを浮かべながら言うのだった。
谷田部「ゴメンゴメン・・・。さて、じゃあ昔みたくこき使いますか・・・?」
ボウズ「・・・分かりましたよ。」 と言うやいなや、早速、かつての教え子に水を汲んで来させたりしたのだった。 線香に火をつける谷田部。謙太郎に手を合わせた。 ボウズも後ろで拝んでいる。
谷田部もまた謙太郎にゆかりのある人物の一人である。幼い日々を写真に収めてくれることが多々あったのだ。松本写真館には、今でも谷田部の白黒写真が飾られている。
ボウズ「さてと・・・。お茶でもいかがですか?」 恩師を寺の縁側へと誘った。 谷田部も教え子の誘いを喜んで受けるのだった。
縁側にて・・・。
ボウズ「でも、お盆前ですよね。忙しいんですか?」
谷田部「うん。毎年、松本さんの所にはお盆期間に来るんだけどね、今年は親戚の法事が入っちゃったのよ。だから、今年は早めにしたの。」 冷たい麦茶を2人で飲みながら世間話をする。
谷田部「皆、元気にしてる?」
ボウズ「ええ。7月末にキャンプに行って来たんですよ。」
谷田部「そっかぁ。・・・でも、あんた辛くなかった?」
ボウズ「な、何がですか?」 あまりに唐突で理解に苦しむ谷田部の質問に、思わず言葉に詰まりかけるボウズ。
谷田部「だって、松本と廣瀬と大木、それに上田と行ったんでしょう?それぞれが交際してるわけでしょ。あんただけ蚊帳の外みたいな感じにはなっちゃったりとかしたんじゃない?」 今ではボウズの隣に恵美がいることを、谷田部は全然知らされていない。 そこで、ボウズは報告することにした。
ボウズ「実は、6人で行ったんです。」
谷田部「あ、そうなんだ。・・・えぇ?もしかしてアンタ・・・。」
ボウズ「はい。おかげ様で・・・。朔たちともすぐに打ち解けることが出来たみたいです。」
谷田部「そうか〜。アンタにもついに春が来たか・・・。でも、これで独り身は私だけか・・・。」 教え子が幸せを掴んだことは、とても喜ばしいことではあるが、一方の自分は、出会いこそあるものの、なかなかゴールに辿りつけていない。喜びも少し半減してしまう・・・。 さらに、ボウズが追い討ちを掛ける一言を口にしてしまう。
ボウズ「先生、結婚は?」 と。
谷田部「中川、それは禁句だよ!」
ボウズ「す、すみません。」
谷田部「そこまで言われたらしょうがない。私は、絶対に諦めないわよ!意地でも結婚してやるんだから〜!!」 目に力が宿る。そんな谷田部らしい様子に、ボウズは心の中で笑っていた・・・。 そして、
ボウズ「先生、俺、協力しますよ。毎日ありがた〜いお経をあげておきますから・・・。あ、あと、もう一度朔の家の墓を拝んでおいたほうがいいと思いますよ。」
谷田部「そうだよねぇ。何か、お経より、おじいさんにお願いした方がご利益がありそうだねぇ。よし!」 立ち上がり、墓石の前に向かった。再び手を合わせる。「今年こそ結婚できますように・・・。」と・・・。
谷田部「じゃあ、私、帰るよ。」 かなり長い間手を合わせた後、後ろにいたボウズに言った。
ボウズ「そうですか。気を付けて。」
谷田部「ありがとう。ありがたいお経のことは任せたからね。しっかり頼みますよ〜。」
ボウズ「任せてくださいよ。」 と、どこか自信あり気に言った。 そんなボウズに谷田部は、
谷田部「たまには皆で遊びに来なさい。それと・・・中川、おめでとう。本当によかったねぇ。その子のこと、大切にしなさいよ!」 とても谷田部らしい微笑で言った。 そんな後姿をボウズは見送り続けながら思った。 「学生時代は口うるさい先生だと思ってたけど・・・今思えばありがたいことだよな・・・。」と。 そして、卒業から5年が経った今、ボウズだけでなく、朔も亜紀も龍之介も智世も、同じことを思っているのだった。
続く
|
...2005/04/23(Sat) 05:28 ID:Rvawvvww
Re: アナザーストーリー 2 Name:グーテンベルク
| | たー坊様へ おはようございます、グーテンベルクです。懸命にお墓を守るボウズ、死者を思いやるボウズの優しい心が伝わってきます。そして、恩師と呼べる谷田部先生のありがたさが分かることにみんなの成長を感じます。近頃また仕事がハードなんですが、この物語を読むと疲れが吹き飛んでしまいました。
|
...2005/04/24(Sun) 07:01 ID:5NKl2FFo
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | グーテンベルク様 お仕事が大変な中、今回もお読み頂きましてありがとうございます。 ここ最近は、全員集合させて夢島でのキャンプ、今回はボウズと谷田部のやり取りと、2つを書かせていただきました。 そんな物語を評価していただいて本当にありがとうございます。 次回もお読み頂ければ幸いです。
|
...2005/04/24(Sun) 22:58 ID:mGWALmIA
Re: アナザーストーリー 2 Name:北のおじさん
| | たー坊様。
ボウズも立派な僧侶となり、6人3組のカップルの今後が楽しみとなりました。 これからも頑張って下さい。
|
...2005/04/24(Sun) 23:55 ID:EVLdq/VU
Re: アナザーストーリー 2 Name:朔五郎
| | たー坊様
苦労した分だけボウズは大人のような気がします。 さて、ボウズは恵美をリードしていくのか、それともやはり尻に敷かれてしまうのか。今後の展開を楽しみにしております。
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...2005/04/25(Mon) 00:57 ID:PvSh0T4I
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 北のおじさん様 お久しぶりです。今回もお読み頂きましてありがとうございます。 とうとうボウズにも春がやってきました。自分の支えを得て、これからも修行に打ち込める環境が整いました。これからは、ボウズ&恵美にも、時々ではありますがスポットを当てていければと思います。 次回もお読み頂ければ幸いです。
朔五郎様 お読み頂いてありがとうございます。 少なくとも、亜紀と同じくらいのいい女?のハズですが、亜紀とは違った感じを今のところ見せています。これからは、そのあたりを書ければと思います。 次回もお読み頂ければ幸いです。
|
...2005/04/25(Mon) 19:34 ID:95NsiZws
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 10月中旬。 季節は、夏から秋へ。 木々の葉も深緑から黄色や赤に変わるこの季節、朝と夜は、だいぶ冷えるようになってきていた。 そんなある週末、秋の宮浦港・・・。
龍之介「よし、来い。」
智世「うん。」 龍之介が船に智世を招きいれた。
龍之介「今日もそこそこだぞ。」 と言って、船底の水槽の扉を開けた。そこには、何匹かの活きのいい魚たちがいた。
龍之介「好きなの持ってっていいぜ。ちょっと選んでてくれ。網を持ってくるからさ。」 と言い残し、船首の方へと向かった。
ここのところ智世は、龍之介の釣ってきた魚で余ったのがあればもらうようになっていた。表向きは、「食費の節約」と言ってあるのだが、本音は、龍之介と会う時間をちょっとでも増やしたいというのが一番なのである。
智世「ねえ?この中にいるのは、全部お刺身でも大丈夫だよね?」
龍之介「できるよ。あとは・・・そこそこでかいのは、煮つけかなんかでもいいと思うぜ。」
智世「そっかそっか。サンキュ。」 と屈託のない笑顔を見せる。
最近の智世は、時間のある時を見つけては港に通い、龍之介の乗る船で2人になることが多くなっていた。 魚の種類を教えてもらったり、漁師の料理の作り方を教わったりしている。いかにも龍之介と智世らしい、オリジナリティ溢れる時間を満喫している。 そのおかげもあってだろうか?龍之介が自分に接する態度が、最近はとても穏やかになったような感覚を智世は覚えていた。
智世「じゃあ、これとこれをもらうね。」
龍之介「あいよ。ちょっと待って。」 智世が指さした魚を、手馴れた手つきで網に入れた。
空には青空が広がっている。 2人は床に寝転んだ。 すると、智世は龍之介の上に乗っかるのだった。龍之介は驚きながらも智世の行動を受け入れたのだった。 少しだけ冷たさを感じる潮風が2人に当たる。
龍之介「少しは女らしくなったか?」
智世「前からよ。昔から私は女らしいわよ。」
龍之介「そうだっけ?俺が気付いていなかっただけか・・・。まあ悪い気はしねぇよ。」
智世「じゃあ・・・あと10分くらいこのままでいてもらいますか・・・。」
龍之介「お前とだったら1時間・・・。」 最近、しおらしくなった智世に、言葉を濁しながらも愛情を伝える。 龍之介は、恋人の今まで知らなかった部分を、出会って20年経ってから知ることになった。そして、智世に今まで以上の愛おしさを感じるようになっていた。 智世も同じような感情を覚えていた。
2人は、少し低くなった太陽の下、この瞬間も愛を育んでいた。
一方・・・。
恵美「お疲れ様。」
ボウズ「悪いな。散らかってるけど、ゆっくりしていってくれよ。」
恵美「うん。ありがとう。」
ボウズの部屋に恵美が遊びに来ていた。 2人は普段、龍之介と智世ほど会う時間が取れない でいるのだが、それでも、2日に一度の電話は欠かさずにしている。2人の間の約束事でもあるからというのもあるのである。
恵美「・・・・・・。」
ボウズ「・・・・・・。」
恵美「何か、話してよ・・・。」
2人とも、お互いの顔は見るのだが、なかなか会話が弾まない。ボウズは、普段は面白い話を出来るのだが、付き合いだしてからというもの、変に意識してしまい、いつもの調子で喋ることが出来ないでいる。一方の恵美も、恋愛経験は本当に少ないためだろうか?やはり意識してしまっている。 付き合いだしてからそろそろ3ヶ月。とても初々しい2人であった。
ボウズ「大学はどう?」
恵美「うん。この前の授業中にやったテストも良かったしね。毎日が充実してるよ。」
ボウズ「それならよかった。」
恵美「うん。」
嬉しそうな笑顔を見せる恵美に、ボウズも微笑む。 しかし、
恵美「・・・。」
ボウズ「・・・。」
やはり続かない。それでも笑顔だけは絶えない。 これからどうなるのか楽しみな2人である。
そんな幸せいっぱいな、龍之介&智世・ボウズ&恵美の2組。
その一方・・・。 とある大学の授業終了直後の教室。
亜紀「ハァ・・・。」
芙美子「お姉ちゃん。どうしたの?」
珍しくため息をつく亜紀に芙美子が心配そうに声を掛けた。 2人は学部こそ違うものの、教養科目は、いくつか同じ科目を履修しているのだった。なので、授業前に教室の入口で待ち合わせて、隣同士の席につくことがほとんどだった。 入学当初は、亜紀が芙美子の面倒を見ることが多かったのだが、ここ最近は、亜紀の元気になさに芙美子の方が心配することが多くなっていた。
芙美子「お姉ちゃん?最近元気ないよ。本当に大丈夫?」
亜紀「うん・・・。」
芙美子「役不足かもしれないけど・・・私でよかったら相談に乗るよ。」
本日最後の授業も終わり、宮浦に帰る電車まで時間を食堂で過ごすことにした2人。 芙美子は亜紀を心配しているのだった。 そんな芙美子の心遣いに、亜紀も口を開いたのだった。
亜紀「朔ちゃん・・・元気?」
芙美子「え?お兄ちゃんは毎日遅いけど、元気といえば元気だよ・・・?」
亜紀「そっか。頑張ってるんだね。」
芙美子「・・・お姉ちゃん。まさかお兄ちゃんとケンカした?」
亜紀「・・・それならまだいいよ・・・。」
ひどく落ち込んでいる様子の亜紀。 ふと、芙美子があることに気付いた。
芙美子「そういえば、お姉ちゃん達、最近会ってないんじゃない?」
亜紀「・・・うん。」
ここのところ、朔はあまりに忙しさに、自分の自分の時間すらも取れないでいた。 もちろん、亜紀と会う時間なんて確保できるはずもなかった。時々する電話が、2人を幸せにする唯一の方法となってしまっていたのだ。
夢島キャンプのあたりから、2人の時間は急に減ってしまっていた。8月中は週に1回は会うことが出来ていたものの、9月上旬からは、再び朔は多忙を極めて行ったのである。
芙美子「・・・どのくらい会ってないの?」
亜紀「1ヶ月くらい。」
芙美子は、思わず絶句してしまった。一ヶ月といえば、亜紀が夢島で倒れて朔と再会するのと同じくらいの時間である。 朔が今学んでいることと、置かれている状況を理解して辛抱してきたが、一ヶ月という空白は、さすがの亜紀の元気を奪うには十分すぎる時間であった。
松本家にて・・・。
芙美子「お姉ちゃん?一度我慢せずに言ってみたら?だって、近くに住んでるのに1ヶ月も会ってなかったら、場合によっては、今頃大ゲンカになってるよ。」
亜紀「でも、私は今まで朔ちゃんに、散々我儘を聞いてもらってたから、今言うわけにはいかないよ。」
芙美子「お姉ちゃん、元気になってからは、本気で我儘言ったことある?言っても1、2回じゃない?私も、周りの友達も、お姉ちゃんよりずっと言いたいこと言ってるよ。」
帰ってきた2人は、芙美子の部屋で相談を続けていた。 芙美子は少し興奮しながら話をしている。
亜紀「やっぱり言いづらいなぁ・・・。朔ちゃんにあまり迷惑掛けたくないのかもね・・・。」
以前、朔から「そのままでいい」と言われたものの、やはり、亜紀はどこか朔に気を遣っていたのだ。それは、気持ちとは裏腹な表現をした6年前とは異なり、朔を特別扱いしているがゆえの、亜紀の朔への想いゆえのことであった。
そんな姉の様子に妹は、「じゃあ、私に任せてみない?」と言った。
亜紀「え?でもどうするの?」
芙美子「私にいい考えがあるの。もちろん、お姉ちゃんの力も貸して欲しい。」
亜紀「いいけど・・・あまり無理しないでね。」
芙美子は、亜紀をここまで落ち込ませた兄、朔に対して、心底頭にきていた。はらわたは煮えくり返り、勝手ではあるかもしれないが、盛り上がっているのだった。 本当の妹のように接してくれている亜紀のことが、本当に大好きであるがゆえの怒りであった。
そして、自宅の部屋に戻った亜紀。 メッセージが書かれた誕生日プレゼントのマグカップ・・・。 2人の思い出がいっぱい詰まったアルバム・・・。 付き合いだしたときから、遠距離恋愛だった時の2人を支え続けた、ウォークマンと何本もたまったテープ・・・。
亜紀「会いたいよ・・・。」
久しく、朔の温もりを感じることが出来ていない。 大病を患い、死の淵から奇跡の生還を果たし、いかに当たり前でいることが幸せであるかを知った。 同時に、あたり前でいること、普通でいることが、いかに大変であるかということも知った。 今回のようなことは、男女の間に日常茶飯事に起こりうることなのだろう。 あらためて亜紀は、そのような事で悩むということが、いかに幸せであると共に、とても辛いことだということを思い知らされていた。
亜紀「・・・・・・クスン、クスン。」
今まで我慢してきた亜紀の両目から、光るものが落ちた。 アルバムにおさめられた夢島での1枚。 朔と亜紀が焼き魚を食べながら、笑顔の2ショット写真の上に、それが1つ、また1つと、ポタポタと落ちたのだった・・・。 現在は、宮浦と東京の遠距離恋愛ではない。本当に、本当に近くにいるのにもかかわらず、会うことが出来ないという、亜紀にとっての厳しい現実。 亜紀の心は、とても辛く、悲しく、寂しかった・・・。
続く
|
...2005/04/25(Mon) 22:34 ID:95NsiZws
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 亜紀が切なく涙していると同じ頃。 こちらはため息は無いものの、少し目をうつろ気味にして、自転車で帰宅する途中・・・。
朔「亜紀は今頃何しているんだろう?」 「本当に悪いことをしているよな・・・。」 「・・・本当に何をしてるんだろ?俺・・・。」
声には出さないものの、街灯の下、人の気配すらない夜道を、ゆっくりとした速さでボーっとしながらペダルを踏む・・・。 なぜか、ペダルが軽く感じた。謙太郎が亡くなった時と同じような感覚を覚える。別にチェーンを直したわけじゃないのに。
朔「・・・・・・。」
気が付くと、いつの間にか自宅の前に到着していた。自転車の前籠からカバンを取り、玄関へと向かった。 戸を開けて、「ただいま。」と言うなり、「お兄ちゃん。ちょっと。」と、少し怖い顔をした芙美子が出迎えたのだった。
芙美子「お兄ちゃん。どうして?」
朔「何がだよ?」
芙美子「お姉ちゃん!もう1ヶ月くらい会ってないんだってね。すっごく落ち込んでたよ!近くに住んでるのに、そんなに長い間に会ってないなんてあり得ないよ!」
一気に攻撃を始めた芙美子。朔は何も反論せずに集中砲火を浴びている。 それは5分くらい続いた後、一方的に、「とにかく、できるだけすぐに会ってあげなよ!」と言われたのだった。 そして、とどめとばかりに、
芙美子「今は、お兄ちゃんよりも、お姉ちゃんの方が、辛いよ!今まで放っておいたんだから、今度会う時には、思いっきり甘えさせてあげてよ!」
怒り収まらない様子で言った芙美子に、朔は何も言い返せなかった。いや、朔にも事情はある。しかし、それでも朔は言い訳をしようとはしなかったのだった。
一方の亜紀。
亜紀「おやすみ。朔ちゃん。」
少し泣いて、落ち着きを取り戻した亜紀は、明日に備えて、早めに体を休めることにしたのだった。 机の上に飾られた、朔の写真にそっと告げてベッドに入ったのだった。 以前なら考えられなかったことだが、常にパスケースに入れている、朔の写真を枕元に置いて寝ることにした。 昔なら、寂しさを感じても、決してそんな事をすることが無かった。意地を張って複雑な思いを押し殺しながら眠りについていたことだろう・・・。 亜紀は、今の自分に素直になり、さらけ出していることが、強さなのか弱さなのかは、全然分かっていなかったのだが、それを超えるほど、朔と一緒にいたいとの強い思いだけが、亜紀の心を支配していた・・・。
一方。
朔「・・・・・・。」
朔も部屋の天井の一点を見つめながら、ボーっと考え事をしていた。 芙美子に言われた数々の言葉の一言一言が突き刺さる・・・。
朔「遠距離恋愛じゃないんだよな・・・。本当に近くに住んでるんだよな・・・。亜紀、ゴメン。」
亜紀が今の自分のことを一番に理解してくれているからこそ、決して何も言わないのであるということを理解していた。亜紀への感謝の気持ちと、罪悪感が朔を支配していく・・・。
朔が悪いわけではない。芙美子に相談した亜紀が悪いわけでもあるはずも無い。 ここ5日は電話もしていなかった。 痩せこけた頬、体中にできたアザ、抗がん剤で抜け落ちた長い髪、触れることすら許されない象徴だったクリーンユニット、いつ急にいなくなるかもしれない恐怖・・・。 2人を阻んだものは今は何一つも無い。しかし現実は・・・。宮浦での幸せで甘い日々が来るものだと信じきっていた2人に、再び神様は試練を与えたのかもしれない。 それでも、日々の何事にも、幸せと感謝を忘れることは無かった。その積み重ねが、自分たちのさらなる幸せに繋がることを信じて・・・。
朔「・・・よし!芙美子。」
芙美子「何?お兄ちゃん?」
朔「明日、亜紀に伝えてくれ。23日に会おうって。少し遅くなるけど、家で待ってるように伝えて。なんなら泊まってもいいからって。週末だし、俺も日曜は休みだからさ。」
芙美子「・・・まったく、世話がやけるね。約束、破っちゃダメだよ!」
少しだけ笑みを浮かべながら、芙美子は部屋に戻った。 そして翌日。 お昼休みの学生食堂・・・。
亜紀「ありがとう。」
芙美子「いえいえ。」
亜紀「23日。朔ちゃんの誕生日・・・。」
芙美子から朔の伝言を聞いた亜紀に、いつもの笑顔が戻った。 そんな姉の様子にホッとする芙美子だった。
芙美子「じゃあ、私、授業あるから。」
亜紀「あ、うん。ありがとう。」
芙美子を見送った後、亜紀は早めに次の授業の教室に向かった。 ドアを開けるが誰もいない。 席に着いた亜紀は、パスケースの朔の写真を見て、微笑みを浮かべながら幸せをかみ締めていた。
続く
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...2005/04/27(Wed) 20:46 ID:LrX/BEYk
Re: アナザーストーリー 2 Name:グーテンベルク
| | たー坊様へ こんばんは、グーテンベルクです。会いたいのに会えない二人の切なさがよく書かれていますね。もしかしたらこの試練は幸せと不幸をプラスマイナス0にするためのものなのでしょうか?この試練を上手く切り抜けてほしいと願わずにおれません。芙美子もそんな朔と亜紀を心から応援しているのがよくわかります。いい妹ですね。次のストーリーも楽しみにしております。無理をせずに頑張ってください。
|
...2005/04/28(Thu) 18:52 ID:g5arKo5k
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | グーテンベルク様 お疲れ様です。今回もお読み頂きましてありがとうございます。 今回の話では、幸せの±0と、理想と現実のギャップの一つを描いてみようと思い、形にさせていただきました。 そして、ウルル行き失敗から6年。朔の誕生日であり、白血病との新たな戦いが始まった記念日の日に、ある心境から一瞬だけ6年前に戻るようなことを描けたらと思っております。 次回もお読みいただければ幸いです。
|
...2005/04/29(Fri) 21:21 ID:x.srlg1.
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 1993年10月23日。 朔の23回目の誕生日である。 そして、朔と亜紀がウルルに行こうとしたあの日からの6年目の記念日でもある。
時刻は夕方の6時過ぎ。 学校から帰宅した亜紀は、バックに荷物を詰めて、松本家に泊まる準備を済ませて、リビングにいる綾子に声を掛けた。
亜紀「じゃあ、お母さん、行ってきます。」
綾子「あ、はいはい。今日は、朔君のところに泊まるのね?」
亜紀「うん。なにせ朔ちゃん誕生日だもの。たまにはいいでしょう?美味しい手料理を食べさせてあげるつもり。」
綾子「ふ〜ん。自信あるの?」
亜紀「まあね。」
今から好きな人の所に行くことに胸躍らせる娘の様子に、母は微笑ましげに言葉を返してあげた。
綾子「お父さんには言ってあるの?」
亜紀「うん。この前の日曜日に言っておいたよ。」
険悪な父娘の雰囲気は、すでに過去のものとなり、当時は、とても言えなかったであろうことも、普通に言えるようになっていた。 亜紀に本日の予定を伝えられた真は、「分かった。松本さんたちには、くれぐれもよろしく伝えておくんだぞ。」と、新聞を片手に言ったのだった。
綾子「そう。お父さんの許しがあるなら大丈夫ね。気を付けていってらっしゃい。・・・そういえば、会うの久しぶりじゃないの?」
亜紀「放って置かれっぱなしだったよ。」
口調は穏やかであるが、顔はしっかり怒っている。あからさまに不機嫌なようだ。
綾子「あらあら・・・。じゃあ、今日はお尻に敷いちゃうわけね。朔君も可哀そうに・・・。」
亜紀「じゃあ、お母さんがお父さんに、同じようなことをされたらどうするの?」
綾子の意外な言葉に、憮然としながら口を尖らせたのだった。
綾子「そうね・・・。たぶん、今、亜紀ちゃんがやろうとしていることと、同じことをするんじゃないかしら?」
亜紀「何のこと?」
母に見透かされているにもかかわらず、しらばっくれる。
綾子「親子なんだから考えることは同じよ。・・・亜紀ちゃん、自分の気持ちに正直にね。甘えたくてしょうがないのに、ずーっと会えなかったからといって、朔君に意地悪や仕返しをしてはだめよ。朔君にも事情があるんだから。」
まるで、小さい時の亜紀に躾をするかのように、優しく諭すように言う綾子。 そんな綾子の言葉に、亜紀は「はーい。」と、答えた。亜紀の脳裏には、小さい頃に見てきた母親と自分が浮かんでいるようだった。
亜紀「じゃあ、明日の夕方までには帰ってくるから。お父さんにも言っておいてね。」
綾子「わかりました。予定が変わる時には電話するのよ。」
亜紀「やだ。私、もう23よ。」
綾子「親からすれば、いつまで経っても子供は子供なのよ。特に。手が掛かれば掛かったほど、その思いは強くなるものなの。」
亜紀「どうも、いろいろありがとうございました。いってきます。」
亜紀は、ぺロっと軽く舌を出して、出発した。 綾子は亜紀とのやり取りを楽しんだ後、「皆さんによろしく伝えてね。」と、亜紀の後姿に声を掛けた。 亜紀は振り向きざまに、にっこり笑顔を作って、何も言わずに返した。亜紀は途中、洋菓子店に寄り、ケーキを選んだ後、松本家に向かった。
松本家では富子が迎えてくれた。
富子「あー、亜紀ちゃんいらっしゃい。」
亜紀「こんばんは。急にお邪魔してすみません。」
富子「ううん。いいんだよ!それに、芙美子の話だと朔の方から誘ったんだってね。それなら、なーんも謝ることはないじゃないか。」
亜紀「アハハ。そうですね。」
富子「さあ、早くお上がり。大歓迎だよ!」
亜紀「お邪魔します。」
富子が笑って迎え入れてくれた。 まるで、いつも、本当の娘のようにしてくれる富子の気持ちと笑い声は、亜紀が松本家に来るたびに、居心地を良くしてくれる要素の一つである。 亜紀は、そんな松本家の雰囲気が大好きなのである。だからであろう、毎回、気兼ねすることなく、松本家の一員になれるのだ。
まもなくして、潤一郎が帰宅した。
続く
|
...2005/04/30(Sat) 22:23 ID:fAYcKwxI
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 潤一郎「ああ。亜紀ちゃん、いらっしゃい。」
亜紀「おかえりなさい。今日と明日、お世話になります。」
頭を下げた亜紀を、潤一郎は笑顔で迎えたのだった。 その後、芙美子も加わり富子とともに台所に立った。女3人、役割を分担して料理を作る。 今夜の献立は、亜紀の分担するカニームコロッケである。前回、東京で朔のために作った物は、形が崩れてしまったため、今回は失敗しないよう、細心の注意を払いつつ、富子のサポートも借り、慎重に作業を進めるのだった。
富子「よーし、できたね。それじゃあ運ぼうか。」
時刻は夜の7時半を回っている。 朔の帰りはまだであるが、一足早く、夕食の時間になったのだった。 亜紀の作ったカニクリームコロッケは、松本家にも好評であった。一同は笑顔で、箸も進む。 しかし、亜紀だけはどこか気が進まない部分があった。もちろん、松本家と一緒にこのような時間を過ごせることにも、暖かさを感じることはできるのだが、朔のいない食卓は、その暖かさを半減させてしまうようにも感じられているのも事実であった。
一同「ごちそうさまでした。」
潤一郎「いやーうまかった。亜紀ちゃん、ありがとう。それにしても、なんか箸が進んでいなかったようだけど、どうかしたのかい?」
亜紀「えっ、そんなことないですよ。何でもありません。」 潤一郎に質問に笑顔で答えた。その笑顔の下には、 朔と一緒に夕飯を食べたいという願いが叶わなかったことに対する残念さが、隠されていたのだった。 その隠された思いに気付いていたのは富子だった。
富子「あんた、なに鈍感なこと言ってんだい。」
潤一郎「鈍感?」
富子「気付いてないの?こりゃダメだね。亜紀ちゃん、片付けるの手伝って。」
言うなり、台所に連れて行くのだった。そして、亜紀に言った。
富子「ゴメンね。うちの旦那は鈍感だから・・・。それと同じぐらい朔も鈍いんだよ。本当に亜紀ちゃんに寂しい思いさせて・・・。本当にゴメンね。」
亜紀「気付いてたんですか?」
富子「4月に帰ってきた時には、週の半分くらいは会ってただろう?それが、ここ最近は会ってる様子もないみたいだったからね・・・。」
亜紀「でも、朔ちゃんは、人の命のを預かる仕事のための勉強をしているわけですから・・・仕方ないですよ。」
そういって、少しだけ無理に笑顔を作った。 しかし、富子は亜紀に続けた。
富子「・・・あの子のこと、理解してくれてるのは本当に嬉しいのよ。でも、亜紀ちゃんは、我慢しすぎてるんじゃないかい?たまには、朔に我儘言ってもいいんだよ。」
亜紀「・・・はい。」
富子「今日は朔を尻に敷きなよ!朔の分のご飯を部屋に持っていって、部屋で2人きりで過ごしなよ・・・。」
富子は亜紀に笑顔を作って見せると、皿にコロッケを盛り付けたのだった。その上からラップをかけて、亜紀に手渡したのだった。 亜紀は、富子の心遣いに感謝しつつ、朔の部屋に向かった。
その頃・・・。
朔「ありがとうございました。」
佐藤「いやいや。それにしても、レポートを、よくこれだけうまくまとめたね。当分は課題も無いんじゃないかな?」
朔「本当ですか?」
朔は普段、病院での実習。といっても直接の医療行為に携わることはできない。いわば、実際の医療の現場の雰囲気を肌で感じることを第一の目的としているのだ。雑用も多かったりする。 学生なので、定期的に課題も出されるのである。
佐藤「久保先生からは、まとめて課題を送って来られたんだけどね。もう、私の手元には無いんだよ。今のところ追加分は無いからね。当分はゆっくりできるんじゃないかい?」
朔「そうですか。」
ほっと胸を撫で下ろす。」 すると、横にいた岡野看護婦が「彼女と会える時間も増えるわよ。」と、からかいの笑顔で言うのだった。 亜紀が入院していた間、朔は時間が許す限り会いに来ていたことを、佐藤医師をはじめ、当時から稲代総合病院に勤務しているスタッフに知れわたっているのだ。亜紀はもちろん、朔も顔は知られていたので、実習が決まった時には、スタッフ皆で大歓迎してくれたのだった。
朔「ちょ・ちょっと、やめてくださいよ。」
佐藤「ははは。でも間違いでは無いだろうね。」
朔「佐藤先生まで・・・。」
すると・・・。
朔「あっ!?」
時計を見た朔が、突然大声を出した。
佐藤医師「どうしたんだい?」
朔「すみません。失礼します!」
急に慌てた様子で帰宅しようとする朔を佐藤医師が呼び止めた。
朔「今日、亜紀と約束してたんです。すみません!」
朔は一目散に病院の玄関に向かった。 そんな様子を見る、佐藤医師と岡野看護婦。
岡野「微笑ましいですね・・・。」
佐藤「普段もああいう感じでやってくれているから評判がいいんだよ。特に子供たちがなついているようだね。」
岡野「入院している子供たちには、『朔兄ちゃん』って呼ばれているんですよ。遊びたいのに遊べない子供たちには、楽しみが増えてよかったです。」
佐藤「彼は特例としてうちに来ているんだけど、国家試験を無事にパスしたら、うちの病院で働いてくれないかな・・・。」
岡野「次回の定期通院日に、廣瀬さんに頼んでみたらどうですか?」
佐藤「それはいいかもね。よし、話してみよう。」
その頃、家への夜道、全力でペダルを漕ぐ朔。
朔「ハァハァ。」
時々、腕時計に目をやる。 時刻は9時になろうとしていた。 もう、何もかも忘れて猛ダッシュで家を目指す。 そして亜紀は、そんな朔の帰りを心待ちにしながら、朔の部屋で温め直した料理を並べていた。
続く
|
...2005/05/01(Sun) 13:29 ID:GV0Hb/Qw
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 亜紀「あーあ、もう9時すぎじゃない・・・。話をする時間がなくなっちゃうよ。朔ちゃん、早く帰ってきてよ・・・。」
思わず、一人つぶやいてしまう。 テーブルの前に座布団を置き、その上に正座して、朔の帰りと、約1ヶ月ぶりの再会を待ちわびている。 時々「ひどい。」と言いながらも辛抱していたが、亜紀の悪い癖が、朔が帰ってきた時にどんな意地悪をしてあげようかということを考えさせてしまうのだった。 その時、心配した芙美子が亜紀の様子を見に来た。
芙美子「お姉ちゃん。」
亜紀「ん?何?」
芙美子「お兄ちゃんってひどいね。お姉ちゃんのことをほったらかしにするんだもん。本当に、何を考えてるんだか・・・。」
亜紀「いいの!その代わりに、たっぷりからかってあげるつもりだから。」
そういうと、ニッコリ笑って芙美子を手招きした。 そっと、小声で耳打ちした。 その内容に、芙美子は思わずふきだしてしまった。
芙美子「お姉ちゃんって、よくそういうことを考えつくよね。私も、一度だけでいいから、そういうことやってみたいな・・・。」
亜紀「じゃあ、もしそういうことになったら教えてね。私でよければいつでも相談に乗るよ。」
芙美子は安堵の表情を浮かべていた。もしかしたら、亜紀がひどく落ちこんでいるのではないかと心配して様子を見に来たからだ。 亜紀は、わざわざ朔の方から、悪戯のための大義名分をくれたことに、むしろ感謝していた。 そして、わざと落ち込むようなフリをして、滅多に聞けない朔からの愛情表現を引き出そうという考えが、亜紀の頭の中にできあがっていたのだった。
その時、「キキィ!」と自転車が急ブレーキを掛けたような音が、外から聞こえた。朔が帰宅した瞬間だった。
芙美子「帰ってきたよ。」
亜紀「そうみたいだね。じゃあ、2人きりにしてくれる?」
芙美子「お姉ちゃん。しっかりね。」
笑顔で芙美子が部屋を出て行った。 一方、
朔「亜紀!」
玄関に入るなり、名前を呼んだ。 しかし、出迎えたのは富子。
富子「まずは、ただいまだろう!・・・まったく。なんで亜紀ちゃんをほったらかしにするかね?何考えてんだろうね?この子は!」
朔「何で、お袋がそんなに怒ってんだよ!?」
富子「亜紀ちゃん、元気なかったよ。ねぇあんた?」
富子が潤一郎に話を振った。テレビを見ていた潤一郎は、「亜紀ちゃん、夕飯の時も箸が進んでなかったぞ。」とそっけなく言ったのだった。 これには、朔も少し慌て始めた。そして、部屋から出てきた芙美子も、「信じられない!」と、一言、きつく言われたのだった。
富子「早くお行き!お前の部屋にいるから!夕飯、お前の誕生日だからって、わざわざ亜紀ちゃんが作ったんだから!」
朔「わかった。」
すると、朔は一目散に自分の部屋へ。 そんな様子を見る3人・・・。
潤一郎「まったく。本当にしょうがいよなぁ・・・。」
富子「ほんとだねぇ・・・。」
芙美子は笑顔を浮かべている。それは、2人が久しぶりに会うことだけではなくて、朔が亜紀の尻に敷かれるところを想像したのかもしれない。 この時点で、松本家の面々は、全員亜紀の味方になってしまっていたのだった・・・。
朔の部屋・・・。 約一ヶ月ぶりに顔をあわせる。 しかし・・・。
朔「亜紀!ゴメン!!」
亜紀「・・・・・・・・・・・・・。」
部屋に飛び込むようにして入るなり、謝った。 亜紀は、すぐにでも甘えたい気持ちを抑えて、三角目を作って怒っているように装っている。
朔「あの・・・、ただいま。」
亜紀「・・・・・・それで?」
朔「いや・・・その・・・遅くなってごめん・・・。」
朔の目には、亜紀の表情があの時と同じように見えていた。 ボウズにハガキを書くように頼まれ、亜紀が白血病になり、面影がなくなってしまったというあのハガキ。ラジオで読まれた翌日、学校で問いただされたあの瞬間。大きな目をさらに見開いて責められたあの時と、同じような目をしている・・・。
亜紀「・・・・・・。今日も遅くまでお疲れ様。おかえりなさい・・・・・・とでも、私が言うとでも思ったの!?」
朔「その・・・あの・・・・・本当にゴメン!!」
亜紀「・・・もういい。私、シラナイ。」
今までに見せたことの無いような剣幕で怒った後、しれっと言った。そして、朔の顔から”ぷい”と顔を逸らしたのだった。 朔からは亜紀の横顔しか見えない。 慌てた朔は、再び「ゴメン!」と言うのだが、亜紀は、そっぽを向いたままである。
朔「ごめんなさい!」
今度は亜紀が向いている所に移動して頭を下げた。しかし・・・、今度もまた「フンだ。」と言い”ぷい”と、今度は朔に背まで向けたのだった。 これには朔も危機感を覚える。
朔「本当に、本当にごめんなさい!」
と、今度は細い肩をつかんだのだが・・・、
亜紀「シラナイ。」
と、右の肩に置かれた朔の手を払い、立ち上がった。そして、ベッドの中に入っていってしまう・・・。 もちろん、朔も亜紀の後を追い、近づいてひたすら謝ったのだが、亜紀は、再び朔に背を向けて窓側の方を向いてしまうのだった。
朔「亜紀。ごめんなさい。ここのところ本当に忙しかったんです。5日も電話できなくて・・・。もう2度とこんなことしません!」
と、ベッドの窓側に移動し、今度は誓うように言うのだが・・・。 まだ亜紀は怒っているように装っている。 そして、
亜紀「私が、この一ヶ月にどれだけ寂しい思いをしたか知らないでしょ・・・・・・もういいもん!朔ちゃんなんて大っ嫌い!!!」
そう言うと、亜紀は、三度”ぷい”とそっぽを向き、さらに上から布団を被ってしまった。 亜紀に初めて「大っ嫌い!!!」と言われてしまった・・・。朔は、人生で最大の衝撃を受け、打ちひしがれてしまった。「亜紀に嫌われてしまうくらいなら、いっそのことこの世から消えてしまおうか・・・。」そんなことが頭をよぎる・・・。少なくとも、この瞬間の朔の視界に入ってくるものに、色はなかった。そのくらい衝撃的だった亜紀の言葉。
一方の亜紀は、「ちょっと、やり過ぎたかな・・・。」と思いつつも、布団の下では、朔の表情を想像し、笑うのをこらえていた。 とても対照的な2人・・・。 そして、朔は決心した。
朔「・・・ここのところ、亜紀には、本当に悪いことをしたと思ってます。・・・そして、俺は、隣に亜紀がいなくなるのが、何よりも切ない・・・。亜紀がいないと生きていけないんじゃないかとも思ってます。だから、本当に本当にこれからも側にいてください。俺のこと嫌いとかって、言わないで・・・。亜紀が大好きです。たとえ嫌われても、これからもずっと・・・。」
亜紀「・・・・・・(よし。合格!)」
朔の言葉を聞いた亜紀は、朔の方を向いた。 そして・・・。
亜紀「料理、温めなおすね。」
と亜紀は盛り付けられたカニクリームコロッケを手に台所へと向かった。その表情は、実に晴れ晴れとしていた。 部屋には、ぽかんとした表情の朔が残されていた。
続く
|
...2005/05/01(Sun) 21:51 ID:GV0Hb/Qw
Re: アナザーストーリー 2 Name:SATO
| | 亜紀のために全員で朔をコラシメにかかる松本家の面々・・・本当にいい家族ですね。
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...2005/05/01(Sun) 22:55 ID:QapQBfXc
Re: アナザーストーリー 2 Name:グーテンベルク
| | たー坊様へ こんばんは、グーテンベルクです。ハイスピードでのアップお疲れ様です。やはり朔は亜紀にはかないませんね。でもこれが2人にとってベストな付き合い方なのでしょうね。読んでいて心がなごみます。
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...2005/05/01(Sun) 23:09 ID:UXzrzSb6
Re: アナザーストーリー 2 Name:朔五郎
| | たー坊様 朔はついに言わされてしまいましたね。 やはり亜紀は偉大です。
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...2005/05/01(Sun) 23:12 ID:KMshUONE
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | SATO様 亜紀は、すでに松本家の一員としての地位を確立しているように思い、今回、形にさせていただきました。これで亜紀は、松本家を味方につけたことになり、朔は、うかつに亜紀を泣かせることができなくなりました。将来の嫁姑問題など、亜紀には無縁に思えます。 次回もお読み頂ければ幸いです。
グーテンベルク様 おっしゃる通り、朔が亜紀にかなうことは、この先無いように思えます。ですが、気持ちとは裏腹な態度をとる中にも、朔へのなにかしらのご褒美?もあるので、ここまで長いと、朔も結構楽しんでいるのではないかとも思います。 次回もお読み頂ければ幸いです。
朔五郎様 もう、朔は亜紀に愛情表現をし続けるしか無くなってしまいました。 亜紀も朔を尻に敷くことを、今回で自覚したのではないでしょうか。 さて、今回の話はまだ続きます。さらに亜紀が朔を懲らしめにかかる予定です。朔には、朔らしくない行動をとってもらうつもりです。 次回もお読み頂ければ幸いです。
|
...2005/05/03(Tue) 09:41 ID:xO6hMlcU
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 亜紀「どう?おいしい?」
朔「うん。うまいよ。」
亜紀「よかった!」
朔が、自分の作った手料理を食べてくれているところを、朔の座る向かい側で、テーブルに両腕で頬杖をつきながら優しげな表情で目を細めている。 さっきまでの怒る様子はどこへいってしまったのだろうか。亜紀は、素直な気持ちで朔を見つめ続けている。
朔「・・・・・・・・・・・・。」
一方の朔は、決して亜紀と目を合わせようとはしない。食事中、ほとんどの時間は料理に集中するフリをして、目を合わせない努力をしている。時折、上目づかいで、チラチラ亜紀の様子を伺おうとしている。 もちろん、亜紀はそんな朔の様子には、当然のように気付いていた。 「やっぱり、冗談がきつ過ぎたかな・・・。ちょっと可哀想なことしちゃったかもしれないね・・・。」と、思うのであった。 でも、「そんな朔ちゃんってカワイイよ!・・・変わらないでね。」とも思っているのだった。 すると、朔がおそるおそる亜紀に聞くのだった。
朔「・・・・・・何で、そんなに嬉しそうなの?さっきは、物凄い剣幕をしてたのに。」
亜紀「だって、朔ちゃんの誕生日だよ。好きな人の誕生日を祝うことができるのは幸せなことだと思わない?私はそう思うんだけどな・・・。」
朔「それはそうだけど・・・。」
亜紀「そうだけど?」
朔「いや、俺、さっきはものすごく怒らせちゃったのに、そんなに簡単に許してくれるのも、何か変な気がして・・・。」
亜紀「フフフ・・・。」
突然に不敵な笑みを見せる亜紀に、朔は怪訝そうな顔をして、「何だよ?・・・やっぱり、まだ怒ってるんじゃない・・・?」と、少し恐怖に近い感情を覚えながら聞くのだった。 そして、その答えは、朔にとっては意外なものだった。
亜紀「あれね・・・・・ウソ!アハハハハハハ!」
突然に笑い出した亜紀。それでも、未だに全てを朔にばらした訳ではなかったのだ。やはり、一ヶ月の間に募らせた怒りと寂しさがあるのは事実だし、朔に甘えたいという気持ちもある。 もちろん、鈍感な朔は、そんな亜紀の気持ちを知る訳もなく、だた胸を撫で下ろすのだった。
朔「許してくれる?」
亜紀「仕方ないよね。朔ちゃんは頑張ってたんだから・・・でも、罰は受けてもらうからね。」
朔「・・・罰?」
亜紀「そうよ。私を悲しませた罰。」
すると、白いタートルネックのセーターを着ている亜紀は、近くに置いてあった荷物から、あらかじめ用意しておいた、1枚の紙を取り出したのだった。 その紙を、亜紀の手料理を堪能し終えた朔に見せる。
朔「誓約書?」
亜紀「そう。」
少し驚いた様子の朔。文面には以下のことが書かれていた。 1、朔ちゃんは、今後は1ヶ月間などという、長い時間、いかなる理由があろうとも、私をほったらかしにしないこと。 2、お互い、可能な限り、最低、週に一度は、10分くらいの短い時間でもいいので、会う時間を作ること。 3、お互い、どうしても、2番のことができない時は、テープあるいは、電話でお互いの声を聞かせること。 4、朔ちゃんは、どんな形でもかまわないので、自主的に私に愛情表現をすること。
これを見た朔は、亜紀がいかに自分を必要としていること。自分が必要とされる喜び、それに伴う責任を痛感していた。
朔「本当にゴメン。」
亜紀「わかってくれたならいいよ。じゃあ、ケーキ食べよう。」
亜紀は冷蔵庫に、さっき選んできたケーキを取りに行った。その時の亜紀は、少しだけ自己嫌悪になっていたのだった。「いつもはもっと素直なはずなのに・・・。」「なんで今日に限ってできないんだろう・・。」そんな気持ちが、亜紀を落ちこませるのだった。 ・ ・ ・
亜紀「23歳のお誕生日おめでとう!これからも、素敵な朔ちゃんでいてください!!」
朔「ありがとう!」
朔・亜紀「乾杯。」
2人は、亜紀の誕生日に朔がプレゼントしたペアのマグカップで乾杯した。普通はマグカップで乾杯などというのはあまり見られないのだが、2人にとっては、こういう形が何よりも嬉しかったのだった。
朔「ケーキなんて久しぶりに食べたよ。」
亜紀「そうなの?私は大学の近くのお店で、友達と時々食べるんだよ。」
朔「ちょっと羨ましいな。俺は昼食でさえ、売店のパンとか弁当で済ませてるから・・・。」
亜紀「じゃあ、朔ちゃんの時間があるときにデートしようよ。どこか2人で遊びに行きたいよ。」
朔「わかった。絶対に約束するよ。」
亜紀「うん。」
この時、亜紀の心は少しだけ楽になったのだったが、やはり、直接甘えられないことに、落ち込むのだった。 ・ ・ ・ 風呂あがり。 良い湯加減であった。 さっぱりした2人。いつものように当たり前に亜紀が待つベッドの中にもぐり込んだのだが・・・。
朔「さ、亜紀。」
と、いつものように亜紀を抱き寄せようとするのだが、亜紀はそれを拒んだのだった。 予想だにしない亜紀の行動は、朔をパニックに陥らせるのには十分であった。
朔「え?え?なんで!?」
亜紀「さっき言った罰!」
悪戯っぽく笑って見せるのだが、亜紀自身の胸中も複雑だった。「・・・罰なんて言わずに、素直に朔ちゃんに抱きしめてもらったらいいハズなのに・・・。ああ、本当にこんな自分が嫌だなぁ。」と思うのだった。
朔「そんな!」
亜紀「ダメよ。朔ちゃん。今日は我慢しなさい。おやすみ。」
自分の気持ちを偽り、朔に背中を向けてしまった。「今回だけ。」と言い聞かせ、眠ろうとした瞬間。 突然、すごい力で肩を引かれた。朔だった。
亜紀「何するの?」
朔「おかしいよ。亜紀。なんで?」
亜紀「罰よ。」
朔「嘘だよ。さっきの誓約書には、どっちかっていうと、俺の苦手なことを亜紀は望んでいるように思えたけど、今、亜紀のしていることは、俺が苦手で亜紀が望んでいることなのに、否定しているじゃないか!」
亜紀は何も言い返せないでいた。こんなに鋭い朔は初めてかもしれない。そして何も言わずに再び朔に背を向けてしまうのだった。
朔「・・・・・・・・・・。」
朔は、意を決したように行動に出た。 亜紀は、自分の足の上に急に重さを感じた。
亜紀「朔ちゃん!!何してるのよ!」
自分に乗っかっている朔が目に入った途端、言った。 朔の目は、どこか悲しげだった。
朔「・・・どうして?・・・どうしてだよ?これじゃあ、付き合いはじめたときと変わらないじゃない。」
亜紀は、ただ朔を見つめるだけだった。 朔は、今まで亜紀と生きてきたことを否定されたような気もしていた。 そして次の瞬間、朔は亜紀の体に覆いかぶさってきたのである。すかさず亜紀の唇に顔を寄せる。
亜紀「ちょ、ちょっと!朔ちゃん待ってよ!」
言うのだが朔は聞かずに、亜紀の体とベッドの間に、自分の左腕を入れて抱きしめようとする。 しかし、亜紀は抵抗する。
亜紀「ちょっと!!何してるの!?罰だって言ってるでしょ!?・・ちょ・・やっ!!・・・嫌っ!!やめて朔ちゃん!!放して!!」
襲われているわけではないのに、なぜここまで必死に拒もうとする理由は、亜紀自身の意地を張る悪い癖。もちろん、朔も「無理やり亜紀と結ばれよう。」などという、人間としてあるまじき行動をする気は毛頭なかった。 意地っ張りで格好つけ。ここ何年かは、朔には絶対に見せる必要がなかったのに・・・。 背中に感じる温もり。亜紀の肩からスッと力が抜けた。
亜紀「・・・・・・・ゴメンね。やっぱり、いつもの通りにしてもらいたいけど、いいかな?」
朔「え?ど、どうしたの急に?」
この言葉に、朔はむしろ心配になった。 拍子抜けというよりも、亜紀の態度がコロコロ変わることに、亜紀が情緒不安定なのではないかと心配してしまう。
亜紀「私、久しぶりに意地張っちゃって・・・。」
いつもの亜紀に戻った。 自分の背中にまわされた朔の優しい温もりに、亜紀は意地を張り続けることができなかった。そのまま朔は亜紀を抱きしめた。亜紀は、守られているような感じがしていた・・・。
亜紀「でも朔ちゃん。ちょっと重いよ。」
朔「あ、ゴメン!」
慌てて体を横にした。亜紀はクスクス笑っている。 そして、「驚くから、さっきのような強引なの禁止ね。」と釘を刺されたのだった。 そして、2人は写真を撮ることにした。さっき撮り忘れたのだった。 2人は、頭までスッポリ布団を被り、顔だけレンズの方を向いている。”カシャ”とシャッターを切った。ピースサインをしながら満面の笑顔をして頬寄せ合う2人、うまくカメラに収める事ができたのだろうか・・・?
朔「亜紀、もう、もう2度と俺の前で意地を張るなよ。」
亜紀「フフッ。ゴメンね。ご心配をお掛けしました。」
朔「まったく。」
2人は、互いの顔を見て笑い合った。 すると・・・、 亜紀は朔の前に自分の手を出して、「はい。」と言いつつ目を閉じた。
朔「・・・・?」
亜紀「・・・何してるの?早く。」
キョトンとしている朔に、今度は、口も朔に向けた。 ようやく意味が分かった朔は唇を近づけるのだが、 亜紀は逃げてしまう。 そして、
亜紀「手。手!」
と、自分の手で朔の手を握るようにした。 朔は、「うっさいなぁ」と言いつつも亜紀の手を力強く握り締めた。そして仲直りのキスを交わしたのだった。
亜紀「フフッ・・・。」
朔「・・・何だよ。」
亜紀「うん?幸せだなぁって。」
いつもの様子に戻った亜紀を朔はいつものように抱きしめたのだった。 こんなことは半年近くできていなかった。 亜紀は朔の温もりが自分の中に入ってくるような気すらしていた。 お互い、全てに感謝し、全てに幸せを感じているのだった。
朔は、世界で1番優しい笑顔を見た・・・。 亜紀は、世界で1番安心できる場所を感じた・・・。 互いに、世界でなくてはならないということを確信したのだった・・・。
亜紀「朔ちゃん・・・。」
朔「うん?どうかした?」
亜紀「痛いよ。強すぎ・・・。」
朔「あ!ゴメン。」
朔はあまりの愛おしさに、強く抱きしめすぎていた。慌てて力を緩めるが・・・、
亜紀「今度は弱すぎ。」
朔「え?こう?」
亜紀「もうちょっと。うん、そのくらい。」
あまりのおかしさに2人とも笑い出してしまった。
朔「何笑ってんだよ。」
亜紀「朔ちゃんこそ。」
亜紀も愛おしさを感じていた。朔の背中にめいっぱい腕をまわす。 そして、朔に再び唇を向けてねだるのだった。
亜紀「もう一回だけ。ダメかな?」
朔「え?・・・大胆だね。」
亜紀「いいから。」
朔は、1回だけのハズが、重ねては離すを何度か繰り返した。亜紀は「朔ちゃんこそ大胆じゃない!」と言った。そして、最後に唇を離した時に”チュッ”と音が鳴ってしまう。当然のように2人は顔を真っ赤にするのだった。 亜紀は常日頃から、闘病中にすることのできなかった分を取り返したいと思っていた。これで、かなり取り返すことができたようだ。 「おやすみ。」恥ずかしさを隠すように、眠りについた2人だった。
翌朝・・・。 先に目覚めたのは、いつも通り亜紀だった。 朔の寝顔を見て願った。
亜紀「・・・神様、もし存在していらっしゃるのなら、もし願いを叶えてくれるのなら・・・。私は何もいりません。たった一つを除いて・・・。朔ちゃんと・・・私が大好きな朔ちゃんと、ずっと、ずっと、一緒にいさせて下さい・・・。朔ちゃんの幸せは私の幸せです・・・。2人でいれるのなら、私は不幸になっても構わないです・・・。」
窓から差し込む朝日、願いも叶いそうな気になるには十分すぎるほど神々しく見えた。 そして、目の前で眠る朔に、気持ちを込めて小さく、頬ずりをしたのだった。
10月24日を迎えた。今日は、本来なら亜紀の命日になるかもしれなかった日である。 6年前に1度は残した遺言は、言った本人の記憶にはあるはずがなかった。 これからも2人は続いていくのだろう・・・。 そして近い未来に、朔と亜紀だけでなく、皆が驚愕する出来事が起こることを、今は誰も知る由がなかった。
続く
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...2005/05/03(Tue) 13:50 ID:xO6hMlcU
Re: アナザーストーリー 2 Name:朔五郎
| | たー坊さま おお「衝撃の新展開」ですね(笑) 楽しみにして待っております。
|
...2005/05/04(Wed) 01:23 ID:bhfrNPYY
Re: アナザーストーリー 2 Name:にわかマニア
| | たー坊さま 「自主的に愛情表現」ですか・・・(-。-)y-゜゜゜ 朔にとっては,どんなレポートや論文よりも難しい課題となりそうですね。それに,ボウズの方も,一対一になると「ご法話」とは勝手が違うようです。 もちろん,本編・アナザーものを通じて,ピュアな心と,それを表現した際の「ぎこちなさ」のギャップが,この物語の見所の一つではある訳ですが・・・ 「衝撃の新展開」の今後が楽しみです。
|
...2005/05/04(Wed) 05:38 ID:YD9aSwkE
Re: アナザーストーリー 2 Name:にわかマニア
| | 皆さん 意地を張って,心にもないことを言ったり,したりする。すると,そう言った(やった)手前,最初はすぐに許すつもりでいても,なかなか引っ込みがつかなくなる。結果として,なかなか素直になれない。 そういうことって,結構,身に覚えがありますよね(どっちの側の立場に立たされることが多いかはともかく)。
|
...2005/05/04(Wed) 05:55 ID:YD9aSwkE
Re: アナザーストーリー 2 Name:グーテンベルク
| | たー坊様へ こんばんは、グーテンベルクです。今回の亜紀の行動を読ませていただいて、これいいなぁと思いました。素直になれないのも人間らしくて本当にいいですね。ずっと朔と居たいという亜紀の想いの強さがたー坊様の文章からにじみ出ているように思えます。その願いぜひ叶ってほしいです。それと・・・皆が驚愕する出来事とは・・・気になります。今後も楽しみにしておりますので体に気を付けて頑張ってください。応援しております。
私もたー坊様を応援しておりますよ。頑張ってください。 BYアーネン
|
...2005/05/04(Wed) 22:48 ID:nQaWGiG6
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 朔五郎様 今回もお読み頂きましてありがとうございます。 「新展開」というほど大げさなものでもないのですが、朔たちにとっては、本当に驚くような内容にするつもりです。 次回もお読みいただけたら幸いです。
にわかマニア様 おっしゃる通り、朔には本当に大変な要求です。しかし、朔に気持ちを伝えてもらえることが嬉しい亜紀は、それとなくそういうムードを作ってまで、そういう風に仕向けるでしょう。
また、おっしゃる通り、朔に意地を張る亜紀は、普段、私たちがやってしまいそうなことをイメージしてみました。それは、親、兄弟、友人、恋人に関係なくです。ましてや亜紀は、意地っ張りな部分があるので、本編から6年後の世界で、たまにそんな事もあるだろうと思い、今回はこういう形にしました。 次回もお読みいただければ幸いです。
グーテンベルク様 今回は、久々に亜紀に意地を張ってもらいました。 そして、その気すら失せてしまうほどの朔の思いやり、強さを描きました。 そんな2人だからこそ、ずっと一緒にいれることでしょう。 また、驚愕の事実は次回明らかになりますので楽しみにして頂ければと思います。
アーネン様 アナザー編の主題歌を考えるをテーマにして頂きましてありがとうございました。 実はグーテンベルク様のご友人様とのこと。ひょんなことから、こんな偶然もあるのかと思いました。 グーテンベルク様や、他のストーリーを投稿なさっている方々と共に、応援していただければ嬉しいです。 次回もお読み頂ければ幸いです。
|
...2005/05/05(Thu) 10:36 ID:X8WVw3pU
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 11月上旬。 朝晩の冷え込みも日に日に厳しくなってきている。木々の落ち葉もだいぶ増えてきた最近である。
そして、墓地に落ちている落ち葉を掃いている僧侶に郵便配達員が声をかけた。
配達員「ご苦労様です。郵便です。」
ボウズ「あ、ご苦労様です。」
配達員「和尚さんこそ、ご精が出ますね。」
ボウズ「ハハ。それはお互い様でしょう。」
配達員「それもそうですね。はい。お届け物です。」
ボウズの手に、一通の招待状のようなカードが渡されたのだった。 「ご苦労様です。」とボウズは配達員を見送った。 「誰からだ?どれどれ?」と呟きつつ、その場で封を開けた。順に読んでいくボウズ。途中である2文字が目に入った。その途端、ボウズが固まった。
その頃、上田薬局にもボウズに届けられたものと同じものが届けられていた。店番していた智世は、その文面を見るなり、目をみはり、思わず「えーっ!!!!」と声をあげてしまったのだった。
智世「お父さん!」
智世父「うん?どうかしたのか?さっきは大きい声を出すし。何なんだ?」
智世「店番お願い。ちょっと龍之介の所に行って来る!」
智世父「分かった。行って来い、行って来い。・・・あ、ついでに・・・夕飯のおかずをスケからもらって・・・。」
と言ったときには、すでに智世の姿は店になかった。 さっき受け取った郵便物を手に、高校時代に陸上で培った俊足を飛ばして、今の時間は宮浦港にいるであろう龍之介の元に急いだ。
その頃龍之介は、今日の魚の水揚げを終えて船のエンジンや魚群探知機などの計器のチェックをしていた。 船首の方では、龍之介の父が網などのメンテナンスをしている。 その時、
「りゅーのすけー!!」との声がする。龍之介の父が声の方を向くと、智世が息をきらせて立っていた。
龍之介父「おう!智世ちゃん。息が上がっているな。どうした?」
智世「ハァハァ・・・おじさん、スケちゃんは?」
龍之介父「いるよ。今エンジンのチェックしてる。おい龍之介。お前さんの彼女が来てるぞ。」
呼ぶと、操縦室から龍之介が顔を出した。
龍之介「どうした?今日も魚か?」
智世「違うわよ!これ見て!」
左手に握り締めたカードを手渡す。智世に「読んで!」と言われるまま、龍之介は目を通していく。 そして、
龍之介「ハァ!!?マジかよ!!」
智世「ねっ!ねっ!すぐに知らせないといけないと思って、お父さんにお店頼んで来たんだから!・・・それにしても驚いたな・・・。」
呼吸を整えながら言う智世に龍之介が言った。
龍之介「これ、当日スーツだよな?」
智世「当然でしょ。」
龍之介「この際、ネクタイ買おうかな。」
智世「あれ?亜紀の卒業写真を撮った時にしてたじゃない。」
龍之介「あれは兄貴のだよ。式とか会に出ない俺が、自分のネクタイなんて持ってるわけないだろ。」
この言葉に智世は軽くため息をついた。 そんな2人の様子を見ていた龍之介の父が「おい龍之介、お前、自分の結婚式にも出ないつもりか?」とからかうように言うのだった。 今のタイミングでの父の言葉は、さすがの龍之介にも動揺を与え、智世の顔を赤くさせたのだった。 2人とも23歳である。幼なじみ、そして最近は恋人として、20年もこの町一緒に過ごしていれば、そういうことを意識しないほうが無理というものである。 智世は「おじさん、こいつはそんな事を考えているわけないよ。」と照れ隠しで言ったのだが、龍之介父は、「いやいや智世ちゃん、こいつだってそういうことを意識するさ」と言った。思わず「余計なことを言うなよ。」と龍之介。
智世「え・・・?」
龍之介「お前、なに考えてんだ?」
智世「別に。・・・そんなことあるわけないか。」
思わず期待してしまう自分がいた。 どことなく龍之介も落ちつかない。 そんな様子を見た龍之介の父は、「しかたねぇな。」と呟きつつ、再び、網のメンテナスに精をだすのだった。
そして最後にこの知らせを受けた2人。
朔「お疲れ様でした。」
岡野「あ、朔君お疲れ様。」
ナースステーションにいた岡野看護婦に挨拶をした朔は病院の玄関に向かった。今日は久しぶりに早い時間に家に帰れることになった。 自転車に乗りゆっくりとペダルを漕ぎ始めた。 太陽も沈みかけている夕暮れの中、下り坂をブレーキなしで下って行く。すると、朔に冷たい秋の風が当たる。思わず寒さを感じた朔はカバンの中から、落ち着いた色のマフラーを取り出し首に巻いた。実はこのマフラー、朔の誕生日に亜紀が朔にプレゼントしたものだった。会えない時間に亜紀が少しずつ編んでいた手編みのマフラー。 首に巻いたときに亜紀の匂いがした。心地よさと温もりを感じる。それは、朔に自然と「今日は時間があるから会おう。」という気持ちにさせるのだった。 ・ ・ ・ 途中、廣瀬家の近くのバス停の横を通り過ぎた。停留所には乗降中のバスが停車している。 通勤通学によく使われるこの路線。亜紀も駅まで使っている。 すると・・・。
亜紀「朔ちゃん?」
ブレーキを掛ける。後ろを振り返るとバスから降りてきたばかりの亜紀がいた。
朔「おかえり。今のバスだったの?」
亜紀「ただいま。うん、今のバスに乗ってたよ。あっ、それ私があげたマフラーだよね?」
朔「うん。これ温かくていいよ。ありがとう。」
朔の首に巻かれているマフラーを見て、亜紀は嬉しくなった。思わず顔がほころんでしまう。
朔「じゃあ後ろに乗って。送ってくよ。」
亜紀「あ、じゃあカバンを籠に入れさせて。」
カバンを入れた亜紀は、自転車の後ろに乗るのだった。朔が謙太郎を亡くした時に言った約束をようやく果たすことができた。 朔は本当にゆったりしたスピードでペダルを漕ぎ始めた。亜紀も朔の背中に頬を寄せる。 バス停から廣瀬家までそんなに距離はない。数分のサイクリングの時間はあっという間に過ぎていってしまった。
廣瀬家の前で亜紀が自転車から降りた。 その時にブレーキの音に気付いたのか、綾子が玄関から出てきた。
綾子「おかえり、亜紀ちゃん。あら?朔君、こんばんわ。2人一緒だったの。」
朔「こんばんわ。偶然そこで会ったんです。」
亜紀「そうなの。送ってもらっちゃった。」
綾子「疲れてるのにわざわざありがとう。あ、朔君、夕ご飯は?」
朔「まだですけど?」
綾子「うちで食べていかない?この間のお礼。」
亜紀「そうしなよ朔ちゃん。ほら上がって上がって!」
思わぬ綾子の言葉に朔も亜紀も嬉しくなる。亜紀は朔の手を引きながら、家の中へと通した。 亜紀がふと目をやるとテーブルの上に自分宛の手紙を見つける。差出人は谷田部先生だった。 早速、封を開けて中を確認する。一通り確認した後、その内容に驚いた。思わず隣にいた朔を呼ぶ。
亜紀「朔ちゃん!これ!」
朔「ど、どうしたの?そんな大声で・・・。」
亜紀「いいから。これ読んでみて!」
朔は亜紀が差し出した手紙を読み始めた。
〜谷田部の手紙〜
廣瀬、同じ町にいるのになかなか見かけることがないけど、松本と元気に日々を過ごしてると思います。 さて、突然の報告になりますが、私、谷田部敏美は結婚します。12月1日に入籍の予定です。 それに伴いまして、来月に結婚披露宴を行いますので、都合が良ければ出席して頂ければと思います。 詳しいことは同封しました招待状をお読みください。 それでは、当日に会場でお会いできればと思います。
谷田部敏美
「結婚します。」のところで思わず「えっ!!!」と言ってしまった朔。あとの文面にもとりあえず目を通した。 呆然としながらソファにもたれた。亜紀は同封されていた招待状を見る。
亜紀「・・・12月8日、会場は宮浦プリンスホテルの宴会場で、午前11時から・・・。」
亜紀は朔に招待状も手渡した。 手に取った朔は、再び体を起こして内容を確認した。
朔「・・・先生、本当に結婚するんだよね。何か、想像できないっていうか、いきなりすぎてピンと来ないというか・・・。」
亜紀「お付き合いしている人いたんだね。おめでたいじゃない。」
朔「うん。」
自分が結婚写真を撮った時に、「順番が違うのよ。アンタ。」と言われた時を思い出す亜紀。 そして亜紀は、視線を朔に向けた。「先生いいなぁ。私もいずれはこうなりたいよ。・・・ねぇ、朔ちゃん。」と言わんばかりに。視線の先にいる朔は、それが自分の右頬に突き刺さるのを感じないハズがなかった。 そして、その様子を見続けていた綾子。 「いつのことになるのかしらね。でも亜紀ちゃん、朔君にあまりプレッシャーを掛けてはダメよ。」と心の中で忠告していた。
続く
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...2005/05/05(Thu) 13:31 ID:X8WVw3pU
Re: アナザーストーリー 2 Name:にわかマニア
| | たー坊様,朔五郎様 絶叫マシンの健在ぶりも見せてくれた「衝撃の新展開」とは,これだったのですか・・・ 「悪い冗談」は朔五郎さん(伊予版)だけかと思っていたら,たー坊さんまで・・・ 「冗談」はさておき,この物語が本編から枝分かれするのは「助けてください」の直後ですから,「廣瀬。順番が違う」という例のセリフも生きていることになりますよね。先生も,亜紀に狂わされた順番を元に戻そうと必死に駆け回ったのでしょうね。ひょっとすると,プロポーズも先生の側からだったりして・・・。例えば,「ブーブー言わない! もう決めたんだから。はい,後,仲人さん,ヨロシク!」ってな調子で? じゃあ,今度は亜紀に先生が投げるブーケを受け取ってもらいますか。「も〜らいっ」って例のセリフ入りで・・・
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...2005/05/05(Thu) 14:14 ID:sd3Ez7WA
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | にわかマニア様 今回もお読み頂きましてありがとうございます。 また、プロポーズの時の考察もお見事です。 さらに、ネタの提供も頂きました。実は、私としても、「もーらいっ」は入れようと思っていたところなのです。ただ、受け取るのが亜紀とは限りませんが・・・。 次回もお読み頂ければ幸いです。
|
...2005/05/05(Thu) 17:40 ID:X8WVw3pU
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 12月1日。 手紙によれば恩師の入籍予定日であるこの日。 宮浦駅前・・・。 ボウズが一人たたずんでいる。あたりを見渡しながら人と待ち合わせである。
ボウズ「早く来い。」
と言ったか言わないかは分からないが・・・。 「よう。」と言いながら朔がやってきた。もちろん隣には亜紀がいる。しっかりと手を繋ぎながらこちらに向かって歩いてくる。
ボウズ「遅いぞ。それに、目の前で手を握るんじゃねぇよ。」
朔「何で?ボウズが独り身なら気を遣うだろうけど、今は恵美がいるだろ。」
亜紀「そうだよ。あ、それともケンカした?」
心配そうな顔をして聞く亜紀だが、ボウズはあっさりと否定した。「すぐ近くに住んでいるお前たちが羨ましい。」とだけ言った。 6人組の中で、恵美は宮浦町外に住んでいるため、そう簡単に会うことができない。
亜紀「そうね。本当ならいつでも会えるんだろうけど・・・。」
そう言って隣にいる朔をジッと見つめた。 その視線は何か言いたげである。 もちろん、朔もそれには気付いている。
ボウズ「・・・何かあったのか?」
亜紀「聞いてよ。朔ちゃんひどいんだよ。忙しいからって1ヶ月も私をほったらかしにしてたんだよ!」
朔「だから、そのことは何回も謝ったじゃない!」
珍しく根に持つ亜紀。 そんな亜紀の尻に完璧に敷かれてどうにもならない朔。 ボウズは、2人を見ながら思わず「しょうがねぇな・・・。」と呟いていた。 その時、車のクラクションが聞こえた。3人の前で停車した。運転席には智世の父がいる。後部座席から龍之介と智世が降りてきた。
智世「ゴメン。ちょっと遅くなったかな。」
亜紀「ううん。私たちも今来たとこよ。」
ボウズ「揃ったな。じゃあ行こうぜ。」
ボウズを先頭に売り場で人数分の切符を購入した5人はホームへ向かった。 ほどなくしてアナウンスが流れてきた。電車のヘッドライトが光るのを見つける。ドアが開き車内に入るが、ガラガラであった。 座席についた5人は一斉に話しはじめた。 もちろん話題は谷田部の突然の結婚についてである。
龍之介「それにしても驚いたなぁ。こういうことってあるんだな。」
ボウズ「本当だよな。最初に手紙を見た時には、思わず固まったよ。俺。」
朔「分かる。俺もまさかと思ってさ。」
亜紀「でも、今まで先生が結婚できなかったのが不思議ね。あんなに良い先生なのに。生徒のために熱心になり過ぎて、婚期を逃し続けてきたのかな・・・。」
朔・龍之介・ボウズ「えっ!?どこが??」
亜紀の発言に驚く男3人。 もちろん「今まで先生が結婚できなかったのが不思議ね。」についてである。 思わぬ反応に亜紀も「え?」と聞き返す。 智世が「亜紀、この男達は亜紀みたく優等生じゃないの。いつも『中川!松本!大木!』って指されて、時々宿題・反省プリントを散々書かせられてたんだから!1年生の時からね・・・。」と説明してあげた。
朔「まさに鬼だったよ。」
ボウズ「阿修羅でも良いと思うけどな。」
龍之介「う〜ん・・・閻魔大王がぴったりだな。」
来週には挙式する恩師に対するこの言い方。 散々な言われようとは、まさにこのことであろう。 教師として素晴らしいことは理解できるが、そのくらいひどい目にあったために、トラウマに近いものさえあるのだった。
亜紀「ひどい・・・。」
智世「ここまで言われるとちょっとね・・・。」
亜紀「朔ちゃん、私と一緒に散々支えてもらったじゃない。」
朔「うん。だから人格者なのは分かるんだ。」
ボウズ「・・・けど、それを覆すぐらいのことを俺たちは印象付けられたわけよ。」
智世「そういうこと・・・。」
電車の一部の座席で若い声が溢れていた。 窓の外に広がる海を背に、電車は目的地に到着した。改札を出るとそこにいたのはなんと恵美。
亜紀「え?」
恵美「みんないらっしゃい。」
実は、今日はみんなで披露宴のための服や小物を見に着ていたのだった。発端は龍之介の「この際ネクタイ買おうかな。」という発言。 どうせなら、そういう物を調達しながら、たまには皆でどこかに出かけようということになったのだった。 ボウズが今回の谷田部結婚について恵美に電話で話して、当日の服装についても相談していた。すると、「じゃあ、みんなで私の住む町に来たら?そういうお店も何件か知ってるよ。」となったのだった。 事情を説明され納得した5人。 夢島のお礼とばかりに恵美は張り切っている。 恵美の案内で、早速、シャツやネクタイを見に大型衣料品店へと入った。
亜紀「朔ちゃん早く。」
智世「龍之介も。アンタが言い出したんだから。」
早速ネクタイが置いてあるところに向かった。 恵美とボウズも後を追う。
朔「亜紀。俺、全然持ってない訳じゃないよ。」
亜紀「でも何枚もあるわけじゃないでしょ。この際だから、シャツと一緒にもう一組買っておいてもいいと思うけど?」
朔は今日買う気などなかったのだった。 龍之介のとばっちりを受けた形になったと思っていたのだが、亜紀に言われて「それもいいかな。」と思った。 亜紀も朔の服を選ぶという、突然に舞い降りた千載一遇のチャンスを逃したくはなかった。現実的な言葉でそれを隠している。面と向かって言える機会もなく、照れ隠しから少しだけ意地を張るのだった。
隣では、智世と恵美がそれぞれに合わせて選んでいる。ボウズは鼻の下を伸ばし、龍之介もまんざらではないようである。そんな様子に気付かずに一生懸命に選ぶ智世と恵美。「あーでもない、こーでもない。」とシャツとネクタイをあてがっては外すを繰り返した。その度になんともいえない表情をする坊主と龍之介だった。 すると、
亜紀「朔ちゃん。」
亜紀が何枚かの違うタイプ、色柄のワイシャツを持って朔の前に立った。「どれがいいかな・・・。」と言いながら朔に合わせる。
亜紀「朔ちゃんは、白いやつしか持ってなかったよね?違うのもあるといいと思うけど・・・。」
亜紀も智世や恵美に負けずに一生懸命に選んでくれている。朔は、妙な緊張に直立不動の状態になっていた。「亜紀が選んでくれたのだったら、どこに着ていっても大丈夫だよ。だから任せるよ。」と、ニヤケながら言うのだった。 将来、自分が勤め出したら時にこんなことをもう一度経験できたらと思わずにいられなかった。
亜紀「次はネクタイね。」
その時、ボウズと恵美は選び終わっていた。 亜紀が「早いね。」と言うと、
恵美「こういうのって好きなの。」
と言った。 ボウズに合わせて選んだシャツとネクタイは、センス溢れるものだった。
亜紀「さすが。」
恵美「いえいえ。それほどでも。」
笑顔で返す恵美。亜紀も負けじとネクタイ選びに掛かった。朔はボウズに「よかったな。」と一言言ったのだった。 その時。
智世「恵美、ちょっとアドバイス頂戴。」
恵美「え?」
智世「この人のそういう姿なんてほとんど見てないから、なかなかイメージできないの!終わってるんだったら助けて!」
恵美「いいよ!」
苦戦している智世が恵美に助けを求めた。恵美は嫌な顔一つせずに快諾して智世について行った。ボウズも「どれどれ?」と様子を見に行った。
ボウズ「しかし、本当にお前はそういうカッコが似合わねぇな。」
龍之介「うるせぇよ。」
智世「ほら!動かないの。」
式や会に出席しない主義の龍之介。その主義は意外なところに弊害をもたらしてしまっているようだ。 一方。
亜紀「う〜ん・・・。」
さっき選んだシャツを朔に持ってもらいながら、亜紀は懸命にネクタイ選びを続けていた。シャツの上から何本かあててはいるのだがどうもピンと来ない。
朔「・・・亜紀。そんなに一生懸命にならなくてもいいって。」
亜紀「嫌!大丈夫よ。いいの選びたいから。」
亜紀の負けず嫌いはこんなところにも顔を出しているのだった。やがて1本のネクタイを見つけて朔に合わせる。「これ!」と言った。選び終わった亜紀は満足そうに笑った。「大好きな人のために一生懸命になれることって本当に素晴らしいこと・・・。」あらためて実感した。朔は亜紀の気持ちの感謝していた。 ・ ・ ・ その後、3組は近くのファーストフード店へ。
朔「何がいい?」
亜紀「朔ちゃんに任せるよ。」
残りの2組も同様に彼氏の方にメニュー選びを任せたのだった。 席を取って待つ女性陣。
智世「いやいや、本当にお待たせしました。」
亜紀「仕方ないよ。確かにスケちゃんのそういう格好はイメージできないもん。」
恵美「でも、智世は頑張ったね。自分のセンスに自信持っていいよ。」
智世「恵美の助けがあったからよ。ありがとうね。」
こうして無事に披露宴に向けての準備を済ませた3組。好きな人のために頑張れる嬉しさを実感でき、本当にいい時間になったのだった。 この後、6人はハンバーガーをほうばりながら、やはり、谷田部結婚を話題に盛り上がった。 谷田部を知らない恵美にとっても、龍之介を中心に面白おかしく聞かせてくれたので、とても楽しい時間となった。もちろん、亜紀の朔へのグチも良き話の種になったのは言うまでもない。 そして、残り時間は恵美が町の色々な所を楽しい時間はあっという間に過ぎ、夕方になっていた。
智世「本当にありがとう。助かったわ。」
恵美「よかったらまた来てね。」
亜紀「恵美もいつでも宮浦に遊びに来てね。」
恵美「うん。また行くよ。」
ボウズ「帰ったら電話する。」
恵美「分かった。待ってるから。」
その時ホームに電車が入ってきた。 乗り込む5人・・・。
龍之介「じゃあ、またな。」
朔「また来るから。」
ボウズ「またな。」
恵美「うん。じゃあね。」
どこか名残惜しそうな2人。 扉がゆっくりと閉まった。 電車がホームを離れ始めた。小さくなっていく電車を恵美は見えなくなるまで見送っていた。
続く
|
...2005/05/05(Thu) 20:16 ID:X8WVw3pU
Re: アナザーストーリー 2 Name:SATO
| | 恵美は宮浦に住んでいなかったのですね。 ボウズは他二組に比べて「遠恋」になるんですね。
恵美の住む町について、わたしは勝手に「ヒ○ノ」を想像してます。あそこも海が近くてローカル線の駅がありますから。
|
...2005/05/05(Thu) 23:18 ID:9mdvcq0M
Re: アナザーストーリー 2 Name:朔五郎
| | たー坊様 もし差し支えなければ、恵美さんのプロフィールなど、公開していただけませんでしょうか(笑)
|
...2005/05/05(Thu) 23:26 ID:i75Gqpho
Re: アナザーストーリー 2 Name:サイトのファン
| | たー坊さんへ 執筆、お疲れ様です!! まとめて、拝読させて頂きました。 3組のカップルの微笑ましい情景や サクと亜紀を見守る二人の両親や妹の優しい気持ちが、よく描かれているので、読み終えると 心が温まります!! 今回は何と・・・、谷田部先生の結婚!! 以前、谷田部先生にも春が来るように たー坊さんにお願いした私にとっては 最高の展開です!! 谷田部先生の相手を勝手に推理して ニヤついています。 おそらく、アノ人ではと密かに願ってもいます。 今後の展開が超楽しみです!! 続編、お待ちしております!!
|
...2005/05/05(Thu) 23:40 ID:ISh.pKxM
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | SATO様 今回もお読み頂きましてありがとうございます。 さて私は「遠恋」という言葉が当てはまるほど2人の間に地理的な距離はないと思っています。 宮浦から電車で30分くらいをイメージしております。 ただ、2人とも社会人ということもありまして、なかなか会う時間を確保できないといった状況であるといった設定でございます。 なお、私自身も、恵美のキャラクターを完全には決めておれませんので、この設定は都合により変更するかもしれません。あらかじめご了承下さい。
あと、こちらからの質問なのですが、SATO様のイメージされている「ヒ○ノ」とはどのようなところなのでしょうか?よろしければ教えていただきたいと思います。 これに懲りずに、また、ご感想を頂ければと思います。これからもよろしくお願いします。
朔五郎様 現段階での私の設定で話せる範囲でお答えします。
結城恵美・・・・・ 物語上、現在25歳。 今住んでいる町に誕生し、幼稚園から高校までを故郷で過ごす。高校卒業後、一時、親許を離れ首都圏の大学に進学。4年間をそこで過ごし、卒業後に故郷に戻り就職。現在、町の観光案内の仕事をしながら、実家で家族と共に暮らす。1年前に宮浦町内で交通事故に遭いう。足に重傷を負い、稲代総合病院に入院。そこで、恋人であるボウズに出会い、現在に至る・・・。
上記なような感じです。 なにぶん、恵美を設定しきれていないもので、この設定はどんどん変更する恐れがあります(汗)ご了承下さい。 これに懲りずにまたお読み頂ければ嬉しいです。
サイトのファン様 お忙しい中お読み頂きましてありがとうございます。 谷田部先生の場合、実は交際している人がいて、そのことは朔たちにも秘密にしていたということにして、今回の電撃結婚という形にしてみました。 ところで、サイトのファン様のおっしゃる”アノ人”とはどなたなのでしょうか?私には全然見当がつかないので、よろしければ教えていただきたいと思います。 できれば、お返事を頂きたいと思います。よろしくお願いします。
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...2005/05/06(Fri) 22:24 ID:8C9k/joM
Re: アナザーストーリー 2 Name:SATO
...2005/05/07(Sat) 00:28 ID:ePxLfhQI
Re: アナザーストーリー 2 Name:サイトのファン
| | たー坊さんへ いつも執筆&書込への返事、有り難うございます! 以前も書かせて頂きましたが、DVDを見て 切なく悲しくなっても、たー坊さんの 世界の中心で、愛をさけぶを読ませて頂くと 心が救われます。 是非、続編を出来る限り私達ファンにお届け下さい 谷田部先生の結婚相手ですが、候補が二人おりまして一人目が、たこ焼きパパさん???? あとは、亜紀の主治医の佐藤先生???? ではと思っていたのです。 でも、はずれてしまったみたいです。 楽しみに谷田部先生の相手の登場を お待ちしております!!
|
...2005/05/07(Sat) 03:42 ID:ZD2cWDtU
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | SATO様 ご教示頂きましてありがとうございました。 わざわざリンクまで貼って頂きまして、お礼申し上げます。 これからの情景のイメージには大変役立ちそうです。参考にさせて頂きます。 次回もお読みいただけたら幸いです。
サイトのファン様 結婚相手にパパさんか佐藤先生をイメージなさっていたとのことですが、完全にハズレてしまっているわけではないですよ。実を言うと、私もその方向で考えてましたから。でも、それだと少し違うと考えましたので、別の形にする予定です。 次回もお読みいただけたら幸いです。
|
...2005/05/07(Sat) 09:51 ID:./gFPEj6
Re: アナザーストーリー 2 Name:SATO
| | たー坊さま ご参考にお使いいただければ幸いです。 「ヒ○ノ」が舞台となるドラマも「セカチュー」と同時期に放送されていたのですが(放送当時は観たり観なかったりでしたが、DVD買いました!)、どちらも田舎の高校生の素朴さ・純粋さが良かったです。あと、映画の「スウィングガールズ」もそうでした(^^)
※「H2」「あいくるしい」では「ヒ○ノ」と「宮浦」の高校生が相手役を交換して共演してますね。
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...2005/05/07(Sat) 10:54 ID:Vh9lixB.
Re: アナザーストーリー 2 Name:朔五郎
| | たー坊様 恵美のプロフィールありがとうございました。ちょっと年上で、優しく、よく気が付く女性。ボウズにピッタリですね。
ところで、ヒ○ノは静岡県磐田市の「近く」なのですね(笑) 磐田市といえば、数多くのヒロインの「出身地」でもありますね。
広瀬亜紀(映画版セカチュー・廣瀬ではない)、皆川梓(優しい時間)、浅倉南(タッチ)・・・
あれ、この3人は同一人物でしたっけ(^^)
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...2005/05/07(Sat) 11:15 ID:n9ysW4KA
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | SATO様 わざわざレスを頂き、ありがとうございます。 ぜひ参考にさせて頂きます。
宮浦とヒ○ノを交換・・・「WB」から「映画版・ドラマ版セカチュー」「WB2」「H2」「あいくるしい」・・・ここ2年半くらいでしょうか?本当に色々なところでつながりがありますね。
朔五郎様 恵美は、亜紀より相当大人びているかもしれません。今みたく亜紀が朔に甘えることも恵美は簡単にはしないと思います。そして、尻に敷くよりも、裏でコントロールするような関係になっていくのかなと思っております。 次回もお読み頂ければ幸いです。
今や若手のトップ女優ではないでしょうか?本当に最近の活躍ぶりはすごいと思います。
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...2005/05/07(Sat) 11:37 ID:./gFPEj6
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 12月8日。
この日もいつものように時折”パチパチ”と音をたて、いい匂いを辺りに漂わせながら素早い手つきでひっくり返しながらたこ焼きを焼いているパパさん・・・。 そんな匂いにつられた訳ではないのだが、20年前から同じように集まってくる5人。 そのうちの1組のカップルが、集合場所に一番乗りをしたのだった。 「たこ焼き2人前!」と大声で注文したのは龍之介。パパさんは「あいよ!」と笑顔で言った。 そこに口を出したのは絶叫マシーン・・・。
智世「龍之介!これから披露宴に出るのよ。歯に青のりが付いたら格好悪いってば。」 龍之介「心配いらねぇって!コーラで流すから。」
パパさんは相変わらずの2人のやり取りに「ハハハ・・・いよいよだねぇ。」と、笑いながら微笑むのだった。
智世「・・・パパさんは?」 パパさん「二次会をやるらしいんだが、その時のつまみにたこ焼きを大量に頼まれちまって披露宴には出席できないんだ。二次会には行かせてもらうつもりだよ。」 智世「そうなんだ。でも、パパさんも先生のこと昔から知ってる一人だもんね。」 パパさん「ああ。今じゃ立派な先生だけど、中学生の頃から知ってるよ・・・。」
そう答えたパパさんは、どこか感慨深げな様子で昔の光景を思い浮かべたのだった。 その時、その時の谷田部の様子が次々と脳裏に蘇って来る・・・。
パパさん「ほい龍之介、2人前。」 龍之介「コーラもらうよ。」 パパさん「あいよ。」
龍之介は、まるで我が家のように奥からコーラを持って来たのが、その時たこ焼きの異変に気が付いた。
龍之介「ちょっとパパさん!」 パパさん「うん?」 龍之介「青のり忘れてるよ。ほら!」
龍之介が持っているたこ焼きには青のりが全然掛かっていなかったのだ。
パパさん「これから披露宴に出るのに、歯に青のりが付いてたらカッコ悪いんじゃないか?」 智世「パパさん、ナイス!!」
パパさんのファインプレーに、智世は笑顔で親指を立てた。パパさんも”ニッ”と笑う。パーティードレスに身を包んだ智世と、たこ焼き屋の店主の異様な2ショットは、不満げな表情だった龍之介をおかしくさせるのには十分すぎるものだった。
龍之介「しっかし、本当にお前はそういうカッコが似合わねぇよな。」 智世「うるさい。それはアンタだって同じよ。」 龍之介「いやいや、お前のほうが全然似会ってねぇよ。」 智世「ナニィ!?」
などとやり取りをしている間に、こちらは仲睦まじく腕を組んでやってきた。 スーツに亜紀が選んだシャツとネクタイが、非常によくまとまった印象を与える姿の朔と、上着の下にはワンピースのようなシルエット、ピンクと薄い紫色の中間のような色使いのドレスをまとい、薄っすらとナチュラルメイクをした亜紀がやってきた。 その姿を見たパパさんが、思わず「ほぉ・・・。」とつぶやく。 どこかの式場のパンフレットの表紙を飾りそうなほどお似合いの2人。もしかしたら、今日の主役はこの2人ではないかと思うほどの完成度である。
亜紀「ゴメンね。待った?」 龍之介「いや。ボウズもまだ来てねぇし。」 智世「・・・亜紀。」 亜紀「何?」 智世「気合入りすぎ。今日は先生の披露宴で、あんたたちが主役じゃないの分かってる?」 亜紀「やだ。なに言ってるの?」 龍之介「そんぐらい綺麗だってことだろ。智世はこんなだから嫉妬してんだよ。いや〜、月とスッポンとはまさにこのことだな。」 智世「りゅうのすけぇぇ・・・・・・・。」
とりあえずからかってみた龍之介。智世も本心から言われたことじゃないと理解しているので、とりあえず言葉を返しただけであった。 そんな中一言も発しない朔。 朔は亜紀のあまりの美しさにすっかり心を奪われてしまっていたのだ。 もちろん亜紀はそんな朔の様子には気づいていた。計算したわけではないのだが、やはり、朔にそのように思われることは、亜紀にとっては最高に嬉しいことのひとつである。頑張った甲斐があったというものだ。 女性は恋愛をすると美しくなると言うが本当である。朔は亜紀が日に日に輝きを増していくのを感じていた。それは時折、自信を失いそうになるほどであった。
龍之介「おい、朔ちゃん。何でボーっとしてんだよ?」 朔「え?・・・ああ。」 智世「龍之介・・・わからないの?」 龍之介「何がだよ?」 智世「朔はね、亜紀があまりに綺麗だから見惚れちゃってるのよ。・・・こんなに綺麗な彼女がいたら、世の中の男性はさぞ羨むでしょうね。」 亜紀「朔ちゃん、そう思ってくれてるんだ?」
少しからかいを込めて言う智世に、亜紀が続く。朔の気持ちなどとっくに見透かしているのに、わざとそういう風に言ってみる。 以前書かせた誓約書には「自主的に愛情表現をすること。」とあった。やはり、なかなか言葉にはできないもののそう感じている朔は、まわりのおかげもあってか「そう思うよ。」と小声でつぶやくように言うのだった。
智世「はい!よくできました。」
再度からかう智世。 その隣では龍之介がニヤついている。 そして、亜紀はニコニコしている。 居心地が悪い朔は、道路のほうを見ながら「ボウズ、早く来い。」とつぶやくように言うのだった。
恩師の結婚式だからというわけではないが、亜紀は「プロポーズしてくれたら、今すぐ結婚してあげる!」などど思っている。「早く『結婚しよう』って言って!朔ちゃん。」などと気持ちが高ぶってしまうのだった。 もちろん希望である。自立などしてない今、そんなことは言えはしないのだった。「でも、いつか・・・。」そんな気持ちは、谷田部からの招待状を受け取った時から、ずっと持ち続けているのである。そして、一人道路のほうを見続けている朔の後姿に、やわらかな視線を送ったのだった。
テーブルに着いた4人は、今日だけの限定「青のり抜きたこ焼き」を口に運びながら、ボウズの到着を待つ。 ボウズが来たのはそれから10分後であった。
ボウズ「悪い!」 智世「遅い!」 ボウズ「腹減った。パパさん、1人前。」 龍之介「バカ!そんな時間ねぇよ!」 朔「遅れる、急ごう!」 亜紀「じゃあ、パパさん後で!」
しぶしぶ、たこ焼きを諦めたボウズを引っぱって、5人は宮浦プリンスホテルへと向かうのだった。
続く
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...2005/05/07(Sat) 13:53 ID:./gFPEj6
Re: アナザーストーリー 2 Name:にわかマニア
| | ついに「その日」が来てしまったのですね。 いや,訂正します。いよいよ待ちに待った「その日」が来たのですね。 盛装した亜紀を前に,眼のやり場に困っているサクの姿が眼に浮かびます。それにしても,照れ屋さんにとって「自主的に愛情表現すること」とは,何とも酷い課題ですね。さぞかし,ボウズの到着が「救世主の来臨」に見えたことでしょう。あっ,ご宗旨が違いましたね(^^ゞ。
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...2005/05/07(Sat) 18:43 ID:wrtuYlYc
Re: アナザーストーリー 2 Name:ゴン41
| | たー坊様 ご無沙汰してすみません。亜紀のゲストブライダルスタイル、朔でなくてもボーっとしてしまうでしょう。殆ど皆。本編の結婚写真撮影もそうでしたが。亜紀が結婚したがっているのが、今迄の”たー坊’Sストーリー”の経緯ですから納得です。今は亜紀の愛の方が深いのかな〜。 ストーリー&ワールドに嵌り先週、松崎にいってしまいました。人も少なく良かったですよ。スレ違いですみません。続編楽しみにしております。
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...2005/05/08(Sun) 02:41 ID:JqkOu5wM
Re: アナザーストーリー 2 Name:グーテンベルク
| | たー坊様へ こんばんは、グーテンベルクです。ついに谷田部先生も結婚ですね、それにみんなのやり取りもとてもよかったです。登場人物の性格をよく理解されているなあと思いたしました。本当にお上手です。亜紀の新たな夢が叶う日もいつかはやってくるのだろうとは思いますが、待ち遠しくて仕方がない様子も想像できます。これからの朔の愛情表現の仕方も本当に楽しみです。これからもよろしくお願いします。
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...2005/05/08(Sun) 20:52 ID:/napU.n6
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | にわかマニア様 とうとうこの日が来てしまいました。 亜紀と谷田部の順番が元通りになる日です。 さらに、朔が亜紀に1日中釘付けになる日でもあります。当然、愛情表現、また精神的にかなり、しんどい1日を過ごしてもらおうと思ってます。 次回もお読み頂ければ幸いです。
ゴン41様 お久しぶりです。 おっしゃる通り、会場に招待されている独身男性の視線は、亜紀に集中するでしょう。しかし、亜紀はそんなことはお構いなしです。谷田部先生の美しくなった姿を見て、将来の自分を想像し、朔にテレパシーを送り続けるからです。そういった意味では、朔にとって一番辛い日になるかもしれませんね。 次回もお読み頂ければ幸いです。
グーテンベルク様 今回もお読み頂きましてありがとうございます。 また、お褒めの言葉も多数頂きました。重ねてお礼を申し上げます。とても嬉しく思います。 亜紀の新たな夢が実現する時、傍らに寄り添うのは朔です。現時点では・・・・・・。 全ては、朔の愛情がいかに亜紀に伝わるかが鍵です。 次回もお読み頂ければ幸いです。
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...2005/05/09(Mon) 20:49 ID:qKP7fb2M
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 宮浦プリンスホテル。 急ぎ足でロビーに入り、案内板で披露宴会場のフロアを確認した後、エレベーターに乗り込んだ。
龍之介「間に合ったな。受付時間内だ。」 智世「今、10時45分・・・。まったく。アンタのおかげで、控え室にいる先生に挨拶できないじゃないのよ!」
腕時計で時間を確認した後、恩師の人生の門出であるおめでたい日に、大遅刻をやらかしたボウズに噛み付いた。
ボウズ「さっきから謝ってるじゃねぇかよ・・・。」 朔「智世、やってしまったことは仕方ないから。」 智世「私は、先生の晴れ姿を誰よりも早く見るつもりだったのよ。」 亜紀「まあまあ。それは後でのお楽しみということにしようよ。ねぇ?智世。」 智世「朔も亜紀も甘いね・・・・・・。」
本当に残念そうに言う智世をなんとかなだめる2人。こういう時にも息はピッタリなのであった。 会場入り口には、”小野寺家・谷田部家結婚披露宴会場”とあった。 エレベーターを降りた5人は、披露宴会場入口前に設置された場所で受付を済ませて中に入った。 自分たちの席を探す。
朔「あ、あった。」 亜紀「本当だ。智世、スケちゃん、ボウズ。」
亜紀に呼ばれた3人は、テーブルに集まってきた。
龍之介「ここかぁ。」 智世「先生、らしくないんじゃない?私達に気を使って、結構いい場所に席決めしてくれて。」 亜紀「そうだね。私達、高校の時は、窓側と廊下側の後ろの方だったのにね。」
亜紀と智世は、笑い合って恩師の気遣いに感謝した。 会場の席はほぼ埋まり、あらためて谷田部が生徒に慕われていたことと、相手の男性の人柄の良さがなんとなくではあるが、感じ取ることができた。
朔「亜紀。どうぞ。」 亜紀「ありがとう。わらわは嬉しいぞよ。」 朔「そなたに喜んでもらえるなら、このくらいは当たり前じゃ。」
すでに恩師の幸せは教え子にも伝染したのであろうか。朔が亜紀の椅子を後ろに引いて座らせた。2人はおかしくなって笑う。2人を見ていたボウズは、「この色ボケども・・・。」と呟いたのだった。 そして、いったん会場を出て行く。
朔「どこ行くんだよ?」 ボウズ「トイレだよ。」 智世「あと少しで時間なんだから早く戻ってきなよ。」
そして、智世の言うとおりすぐにボウズが戻ってきた。 その時・・・。
司会「皆様、長らくお待たせいたしました。時間が参りましたので、小野寺公一さん、谷田部敏美さん、お2人の結婚披露宴の方を始めさせて頂きたいと思います。申し遅れました、私、本日のご案内を務めます安浦と申します。」
どこかで聞いたような声と「安浦」と名乗る司会者。5人が司会者を見る。
朔「・・・何で?」 亜紀「私に言わないでよ・・・。」 龍之介「あの安浦?」 智世「ウソ?」 ボウズ「マジかよ・・・。」
面影は十分に残っている。間違いなく、図書室において朔の目の前で亜紀の唇を奪った、かつての学級委員の安浦である。
安浦「私、新婦とは高校時代の恩師と教え子の関係でございました。恩師の晴れの門出にあたり、精いっぱい司会を努めさせていただく所存でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。・・・・・・さあ、本日の主役であります新郎新婦が入場致します。皆様、盛大な拍手をもってお迎え下さい。」
司会・安浦という事態に驚く5人。 そして照明が落とされ、結婚式の定番のあのBGMが会場に響き渡ったその時、係の従業員が扉を開けた。 会場に盛大な拍手の嵐が巻き起こる。
智世「うわぁ・・・・・・。」 亜紀「先生・・・綺麗・・・・・・。」 朔「・・・変わるものだね・・・・・・・。」 ボウズ・龍之介「・・・・・・。」
亜紀と智世の言葉が全てを表していた。また、ボウズと龍之介が絶句する理由も朔が代弁していた。 新郎が新婦を連れて高砂の席についた。
安浦「えー・・・お2人は12月1日に入籍いたしました。」
再び拍手が巻き起こる。 しばし見惚れていた5人も、笑顔で拍手をしたのだった。
安浦「それでは、吉例にならいまして、このたび、ご媒酌の労をおとりくださいました新郎の上司にあたられます、教育委員会・・・・・・・・・。」
このあと、紹介されマイクを手に取った媒酌人は、長々と形式ばった挨拶を続けるのだった。比較的、こういうことに大丈夫な、亜紀と智世は話を聞いていた。朔も話を聞くフリをしているが、ボウズと龍之介は、しまいにはあくびをする始末・・・。当然、龍之介は智世に怒られるのだった・・・。
安浦「・・・・・・・続きまして・・・新しいスタートをされる、お2人の前途を祝って、ただいまから、一同で乾杯したいと思います。・・・・・・乾杯の音頭をとっていただきますのは、中川顕良様。」
ボウズ「ハァ!??」
驚くのは無理もなかった。ボウズはあらかじめ、そのような話は全く聞いていなかったからである。 もちろん、同じテーブルに座っている4人も驚きを隠せずに心配顔でボウズを見るのだった。 安浦が「どうぞ。こちらに。」と言うが、人前で話すことに慣れているハズのさすがのボウズでも、「ちょっと待ってくれよ!」という思いは隠せなかった。 すると、谷田部が安浦を高砂に呼び、マイクを持ってこさせた。
谷田部「皆様、本日はご多用の中、私達の披露宴にお越し頂きまして、誠にありがとうございます。・・・さて、本日は少し趣向を変えております。」
すると、再び安浦がマイクを手に話しはじめた。
安浦「本日の披露宴は、ご媒酌人の挨拶ならびに、主賓挨拶を除きまして、新郎新婦の意向により、その他の祝辞は全て、教え子の皆様にご挨拶を頂戴したいと思います。本日出席頂きました教え子様から、こちらで無作為に選ばせて頂きます。簡単で結構ですので新郎新婦に祝辞をお願いいたします。また、余興についても同じでございます・・・・・・。実を申しますと、私もそのうちの一人でございまして、昨日に新婦から、「明日、司会をよろしく。」と指名を受けまして、この場に立っているというわけでございます。何卒、よろしくお願いいたします。」
朔「・・・・・・・・・・。」 亜紀「・・・・・・・朔ちゃん。」 朔「・・・何?」 亜紀「・・・・・・どうしよう?」 朔「どうしようか・・・。」
安浦「えー、中川顕良様。乾杯の音頭をお願いいたします。」
さすがの亜紀も朔に弱音を吐く。 安浦の再度の指名に、ボウズは腹をくくった様子で前へ向かうのだった。
智世「龍之介〜・・・。」 龍之介「何てことしてくれてんだよ・・・。」
さすがにこの2人も戸惑いを隠せない。 他のテーブルに座る新郎新婦の他の教え子の様子も、朔たちとそう大きな差はなかった。
ボウズ「・・・え〜・・・。」
突然の指名に「いつもしていることだろ!」と自分に言い聞かせ、グラスを持ちマイクの前に立った。
亜紀「もし、余興で歌えなんて言われても、私、歌えないよ・・・。」 朔「俺だってそうだよ。そうそう挨拶なんて簡単には・・・。」 亜紀「朔ちゃん助けてよ・・・。お葬式の時みたいに。」 朔「こうなったら・・・。」
ボウズと同じように朔も腹をくくった。そんな朔の様子に気付いたのか亜紀も落ち着きを取り戻そうとしている。 龍之介も智世も動揺しながらも何とか落ち着こうとしている。 教え子達は今にも悲鳴があがりそうな雰囲気であるる。恩師の門出を祝うめでたい日が一変、神経をすり減らす結婚披露宴・・・。 しかも、披露宴はまだ始まったばかりであった。
続く
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...2005/05/09(Mon) 22:37 ID:qKP7fb2M
Re: アナザーストーリー 2 Name:サイトのファン
| | たー坊さんへ 執筆、お疲れ様です!! 今回のストーリー・・・楽しいですね!! 安浦君の登場にも驚きましたが 教え子に祝辞をもらう新婦の谷田部先生は らしいといえば、そうですが心配をかけてばかりの かっての教え子に結婚の門出で挨拶をさせるとは 最高です。 式の進行が楽しみです!! 続編、お待ちしております。
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...2005/05/10(Tue) 00:09 ID:QroJgABo
Re: アナザーストーリー 2 Name:朔五郎
| | たー坊さま ううむ、ロシアンルーレットですか(笑) これは楽しみになってきました。
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...2005/05/10(Tue) 05:58 ID:4iybE5qQ
Re: アナザーストーリー 2 Name:にわかマニア
| | どこのスレでも,「皿の割れる喫茶店」のドラマ(出入りの業者役)でも,すっかり忘れ去られていた感のある安浦君の大抜擢,ありがとうございます。
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...2005/05/10(Tue) 08:36 ID:NdDXXRGU
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | サイトのファン様 今回もお読みいただきましてありがとうございます。 谷田部先生の企みは、私自身も書いていて谷田部先生の悪戯っぽい笑顔がイメージすることができたので、今回の形にしました。亜紀の悪戯好きが伝染したのかもしれません。 次回もお読み頂ければ幸いです。
朔五郎様 今回もお読みいただきましてありがとうございます。 「ロシアンルーレット」とは・・・うまいこと表現していただきました。次回は、誰が「ロシアンルーレットスピーチ」の餌食になるのでしょう・・・。 次回もお読み頂ければ幸いです。
にわかマニア様 朔にとっては、かつて、自分より先に亜紀とキスした憎き恋敵ですが、今となっては、その分以上に唇を重ね、何度も何度も抱きしめたので、安浦に敵意はないと思われます。多分、亜紀も・・・。 おっしゃられるように、最近、見かけない安浦でしたが、私は前々から一度は登場させたいと思っておりまして、今回抜擢いたしました。 まだ安浦の司会はある予定です。 次回もお読み頂ければ幸いです。
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...2005/05/11(Wed) 20:15 ID:qv8/L68E
Re: アナザーストーリー 2 Name:SATO
| | さすが、元クラス委員の安浦君。何だかんだいいながら、一応司会のカッコはついてますよ。 ところで、あの意地悪二人組の千尋と久美も出席してるんでしょうか?
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...2005/05/11(Wed) 21:11 ID:NXw.s.9M
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | SATO様 今回もお読み頂きましてありがとうございます。 私自身、披露宴などの出席経験が全くないもので、安浦の司会における台詞には、相当悩みましたが、SATO様に「一応司会のカッコはついてますよ。」おっしゃって頂き、ホッとしております。 池田久美、黒澤千尋に関しては原稿にはありません。考えてもおりませんでした。次回UPまでに修正し、登場させることができそうでしたら、ほんの少しでも台詞を言ってもらおうかと思います。 次回もお読み頂ければ幸いです。
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...2005/05/11(Wed) 21:56 ID:qv8/L68E
Re: アナザーストーリー 2 Name:グーテンベルク
| | たー坊様へ こんばんは、グーテンベルクです。今回の物語もそれぞれの登場人物の性格がよく書けていると思います。形式ばった挨拶であくびをする龍之介とボウズ、それを怒る面倒見のいい智世。「ロシアンスピーチルーレット」で戸惑う朔と亜紀の会話など、読んでいて本当に楽しくなってきます。読者の皆様も私も目が離せない展開ですね(笑) 続きを楽しみにしております。無理をせずに頑張ってください
|
...2005/05/11(Wed) 22:06 ID:ahB./f5Q
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | グーテンベルク様 今回もお読み頂きましてありがとうございます。 楽しんで頂けたのことで、書かせていただいている私としてもとても嬉しいです。 次回のロシアンスピーチルーレットの餌食になるのは・・・・・。 次回もお読み頂ければ幸いです。
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...2005/05/12(Thu) 19:02 ID:aMsyYUfk
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | ボウズ「ただ今、ご紹介に預かりました中川顕良でございます。僭越ながら、乾杯の音頭をとらせていただきますが・・・・・・、え〜・・・あまりに突然の指名に、自分でも何を話すか全く考え付いてないのです・・・。」
新郎新婦の企みにより、大部分の祝辞を無作為に選ばれた教え子が述べなければいけないという非常事態。そんな中、2人の前途を祝っての乾杯の音頭とる。言わば、切り込み隊長に指名されたのはボウズだった。
亜紀「(頑張って・・・!)」 智世「(うまくやりなさいよ・・・)」
片手にグラスを持ち、固唾をのんでボウズの挨拶を見守る亜紀と智世。珍しく朔と龍之介も、ボウズの挨拶に真剣な耳を傾けている。 そして、朔が高砂の様子を伺うと、谷田部が口元に悪戯っぽい笑みを浮かべているのが分かった。
朔「本当に鬼だ・・・・・・・・・・。」 谷田部にはもちろん、同じテーブルの亜紀、智世、龍之介にも気付かれないような小さな声と口の動きで呟やくのだった・・・。
ボウズ「・・・お2人とも、ご結婚おめでとうございます。今回のこういった形に私はもちろん、この場にいらっしゃる方もとても驚いていることでしょう・・・。私など何を話していいのか、今でも全く思いついておりません。・・・・・・ですが、人生とはそのようなものなのでしょうね。日々平凡な日常を送っていたとしても、今日の私のように突然の思いもよらない事にぶつかってしまうのでしょう。しかし、そういった困難もお2人なら、きっと乗り越えて行けるでしょう。お互いに笑顔で時には涙し、手を取り合いながら暖かい家庭を築いていって頂きたいと思います。 それでは、お2人が末永く健康でお幸せでありますように、心からお祈りして・・・乾〜杯!」
会場全体がボウズの音頭にあわせて、グラスを上にあげた。安浦も「乾杯。」と後押しをし、会場中が拍手に包まれた。
安浦「おめでとうございます。」
「フゥ〜・・・・・・・・。」と、ボウズがとっても長いため息をつきながらテーブルに戻ってきた。そんなボウズを智世がねぎらうように、音を立てずに拍手で迎えた。
朔「お疲れさん。さすがに普段、人に説教しているだけのことはあったな。」 ボウズ「いや〜、そうは言っても、準備していないとさすがに緊張するぜ。一回、頭が真っ白になったからな。」 亜紀「ナイススピーチだったよ。」 ボウズ「サンキュー。」 龍之介「でもよ、何となくうまくごまかされた感じはあったけどな・・・。」 智世「そういえばそうね・・・。」 朔「まあ・・・いいじゃない。うまくいったんだからさ。」
無事に乾杯の音頭の大役を果たしたボウズ。仲間たちはいつもの調子で、まだ軽く興奮しているボウズを落ち着かせようとしていた。 そして、いつのまにか式は主賓挨拶に移っていた。新郎新婦の勤め先である教育委員会と宮浦高校の教師たち、それぞれの学生時代の恩師などが次々とマイクの前に立っては、短かくも深みのある言葉を新郎新婦に贈ったのだった。 そのたびに会場には拍手が巻き起こるが・・・・・・・。
智世「ちょっと、龍之介!!」 龍之介「・・・・・・・・・・・・・・・。」 ボウズ「こりゃ起きねぇぞ。」
あくびならまだしも、今度は完璧に寝てしまっている。
朔「ふあぁ・・・・・・・・。」 亜紀「朔ちゃん!」 朔「スケちゃんも気持ち分かる。俺も眠い・・・。」 亜紀「・・・寝たりしたら承知しないからね。」
普段、寝不足気味の朔もあくびをしてしまう。 亜紀は少し睨むような目つきで朔を見る。
朔「・・・・・寝るなんてできないよね。」 亜紀「当たり前でしょ。」
こういった場所でもしっかり者の亜紀に、無言のプレッシャーを掛けられ、眠気も飛び背筋もピシッとする朔。 それとは対照的な龍之介。「ちょっとぉ!」と隣の席の智世が、なかなかシャッキリしない龍之介の体を揺する。反対側ではボウズも体を揺すって何とかしようとしている。 その時、
安浦「えー・・・このあたりで一旦、余興の時間にまいろうかと思います。これから名前を呼ばれた教え子の皆様は、前の方にお願いいたします。・・・・・・池田久美様、黒澤千尋様・・・・」
朔「ん・・・・?」 亜紀「もしかして・・・やっぱりそうだ。」 智世「あの2人も出席してたんだね。」
少し離れたテーブルに座っていた2人が戸惑いながら前に向かったのを朔たちは見つけた。 かつて、亜紀に意地悪をした2人・・・。
亜紀「さて、どうなるのかな〜・・・。」 朔「・・・・・・何?」 亜紀「覚えてる?ロミオとジュリエット。」 朔「もちろん。」 亜紀「ロミオ役に朔ちゃんとボウズが立候補してくれたでしょ。その時に黒澤さんだったと思うんだけど、『ジュリエットが選べば?』って言って・・・、朔ちゃんと私のことを噂にして教室に屈折した笑いを起こさせたのよ。」 朔「ああ・・・覚えてる。」 亜紀「さて・・・人前に立って何をしてくれるのかな・・・。」
ズバズバ物を言う。でも朔には、亜紀の表情から今言ったことが本心ではないことを見抜いていた。根に持つような性格ではないことは、ずーっと隣にいた朔がよーく分かっている。
司会の安浦が男女4人ずつの名前を呼んだ。そのたびに本人達は、ため息をついたり、「えー?何をするの?」と口にしたり、腹をくくったような表情を見せたりなど、様々な様子で前に向かう。 すると・・・。
安浦「・・・・・・それから、上田智世様。最後に・・・大木龍之介様。どうぞ前へ。」
龍之介「・・・・・・何!?」 智世「やっと起きたか。」 龍之介「俺?呼ばれたよな?」 智世「はい、行くよ。」 龍之介「何するんだよ?」 亜紀「余興だって。・・・私じゃなくて良かった。」 朔「ほら、スケちゃん早く。」 ボウズ「とっとと行け!ほら!」
思わぬところで名前を呼ばれた龍之介は、一発で目を覚ました。心の整理がつかないまま智世に手を引っ張られながら前へ向かった。
朔「さてさて・・・スケちゃんお手並み拝見ですな・・・。」 亜紀「フフッ!朔ちゃん何それ!」 ボウズ「お前ら余裕だなぁ〜・・・。」 朔「何だよ?」 ボウズ「いいのか〜?先生のことだから、無作為とか言いながら絶対にお前達2人に祝辞を言わせるぞ・・・。」 亜紀「まさか・・・ね?朔・・・。」 朔「・・・心の準備はしておこう。」 亜紀「やっぱり・・・・・ま、いいか・・・。」 ボウズ「ま、俺はもう関係ないけどな。」
緊張から解き放たれたボウズはリラックスしながら目の前の料理に舌鼓をうちはじめた。そんなボウズを羨ましく、憎さすら込めて見る朔と亜紀。 そして、前に出た智世と龍之介もそんなボウズに鋭い視線を向けるのだった。
続く
|
...2005/05/12(Thu) 21:31 ID:aMsyYUfk
Re: アナザーストーリー 2 Name:SATO
| | 私のワガママリクエストにお応えいただき、ありがとうございます。 どんな余興が飛び出すか楽しみです。 プレッシャーから解放されたボウズは余裕シャクシャクで高見の見物を決め込んだようですね(^^)
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...2005/05/12(Thu) 21:40 ID:0mW303GM
Re: アナザーストーリー 2 Name:にわかマニア
| | 予定外のぶっつけ本番・ノー原稿の「顕良上人」の「ご法話」お見事でした。
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...2005/05/13(Fri) 12:27 ID:2xcyyKsc
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | SATO様 今回もお読みいただきましてありがとうございます. SATO様におっしゃって頂き、池田久美と黒澤千尋を安浦と共に登場させることができました。 亜紀にとってのかつての天敵?は、朔のかつての天敵安浦と同じようにうまいこと会場を盛り上げることができるかどうか・・・。 次回もお読みいただければ幸いです。
にわかマニア様 お読み頂きましてありがとうございます。 「顕良上人」とは・・・私の中では「ナマグサ」なんですけどね・・・。なにせ、たこパパで「托鉢」と言ってタダで食べようとするくらいですし・・・。 次回もお読み頂ければ幸いです。
|
...2005/05/13(Fri) 19:25 ID:Ai7FyV66
Re: アナザーストーリー 2 Name:グーテンベルク
| | たー坊様へ こんばんは、グーテンベルクです。早速読ませていただきました。スケちゃんナイスですね!!もちろんそのネタを思いついたたー坊様もです!!読んでいてとても楽しくなりました。ありがとうございます。ここしばらく、ハイペースでの執筆が続いておりますが、無理をしない程度に頑張ってください。これからも応援しております。
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...2005/05/13(Fri) 22:11 ID:h13/ABaA
Re: アナザーストーリー 2 Name:ぽっと
| | これは、『めちゃいけ』での有野結婚式での一幕からですね。
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...2005/05/14(Sat) 02:11 ID:G088L/FQ
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 読者の皆様こんにちは。 このストーリーを執筆させて頂いてますたー坊です。 いつもお読みいただいている皆様、本当にありがとうございます。
さて、今回はお詫びをしなければならなくなってしまいました。 昨日、結婚式の話の一部をUPさせて頂いたのですが、私の手違いで別の原稿をUPしてしまいました。 これは、ぽっと様のご指摘を頂きまして、先ほど私自身も気付いたものです。 間違ってUPしたものは、先ほど削除致しました。
今回の話は2つの原稿がありました。 1つは、ぽっと様のご指摘の通り、先日放送されたバラエティ番組の要素を取り入れたものです。 もうひとつは、完全に私自身が考えたものです。 私自身が考えた原稿をUPさせて頂くつもりが、間違って前者の原稿をUPしてしまいました。
今回、私の不注意で、読者の皆様には、本当にご迷惑をお掛けしてしまいました。心よりお詫び申し上げます。本当に申し訳ありませんでした。
つきましては、本来UPさせて頂く予定だった物語を近日中にUPさせて頂きたいと考えております。 今回のようなことは2度としないようにし、執筆させて頂きたいと思っております。 またお読み頂ければと思います。
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...2005/05/14(Sat) 14:15 ID:i1ynh/gY
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | グーテンベルク様 今回もお読み頂きましてありがとうございます。 ですが、私の不注意により、間違った原稿をUPしてしまいました。 どういったいきさつがあったかは、先ほどお詫びとしてお知らせさせていただきました。 せっかくご感想を頂きましたのに、本当に申し訳ありません。 これに懲りずに次回もお読みいただければ幸いです。
ぽっと様 今回のご指摘、本当にありがとうございました。 ご指摘をいただけなければ、私自身、気付かないままになっていたかもしれません。 本当に感謝しております。ありがとうございました。
|
...2005/05/14(Sat) 14:24 ID:i1ynh/gY
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 安浦「はいどうぞ。」 久美「何これ?」 千尋「何をするのよ?」
余興強制参加者が安浦の前に集まってきた。誰もがため息混じりの中、安浦が参加者にカードを渡す。 智世がそれを開き、中を確認して安浦に尋ねた。
智世「歌詞カード?」 安浦「そう。」 久美「歌うの?」 龍之介「あたりまえだろ。」
龍之介につっこまれて少し不機嫌になる久美をよそに、安浦がマイクを握った。
安浦「えー、今回、参加者の皆様にやって頂く余興はお歌でございます。」
安浦が告げると会場からは拍手が。 もちろんこのテーブルも興味津々である。
朔「はは。どうなるかな。」 ボウズ「あいつら大丈夫かぁ?龍之介なんて最近の曲とかだったら、知らねぇんじゃないか?」 亜紀「ふぅ。本当に私じゃなくて良かった。」 朔「あれ?亜紀って歌とか苦手だったっけ?」 亜紀「あんまり得意じゃないよ。高校の時、陸上のスタート練習を手伝ってくれたことがあったじゃない。」 朔「うん。」 亜紀「その時に、リズム感が悪いって言ったでしょ?未だにリズム感が悪くて私・・・。ラジオで早いテンポの曲とか流れると、口ずさんでも少しズレちゃったりするの。」 朔「そうなんだ。」 ボウズ「・・・何か意外だよなぁ。亜紀は何でもこなせるってイメージがあるからよ。」 亜紀「そんなことないよ。・・・さて、スケちゃんと智世がどう乗り切るか見物ね・・・。」
一方、そんな亜紀の様子に智世が気付いた。
智世「何よぉ・・・親友のピンチにその顔は・・・。」 龍之介「何か、余裕の表情って感じだな。・・・だんだん腹立ってきた。」 そんな2人は朔たちを憎しみに近いくらいの感情を込めた目で見た。 ふと、龍之介が高砂に目を向けると、新婦が悪戯っぽく笑って自分達を見ていることに気付く。
龍之介「後で、覚えてろよ・・・・・・。」 智世「おめでたいのに、なんかね・・・・・・。」
毒づく2人。でもどこか憎めずに笑みを浮かべている。 すると、さっきまで「どうしようか・・・・・・?」と困惑の表情を浮かべていた久美たち、他の参加者たちも谷田部の表情に気付いた。
久美「腹立つわね。」 千尋「何か、懲らしめたくなるわね。」
でも、やはり憎めない。 しかし、シャクに触るのも事実である。
安浦「準備はいい?」 久美「私と千尋は大丈夫だけど、全員この曲は知ってるの?」 安浦「皆さん、大丈夫ですか?」
久美に言われて安浦が確認する。10人中分からないのは8人。その中には龍之介が含まれていた。
千尋「大木君?」 智世「何で知らないのよ?」 龍之介「最近歌番組とか見ねぇし、俺。それに最近は、ブルーハーツくらいしか聞いてないな。」 安浦「・・・でも、8人が分かってれば全然問題ないよ。分からない人は口パクでもいいから。じゃあ、準備をお願いします。」
再びマイクを握った安浦。準備が完了すると告げると同時にBGMのイントロが流れてきた。朔たちも耳を傾ける。 智世、久美、千尋を中心に歌い始める。バラード調のメロディと素敵な歌詞に、会場は穏やかさの中、誰もが新郎新婦の2人を心の中で祝福していた。 しかし、趣向の違う披露宴とはいえ、いきなり前に出されて歌わされている本人たちには、とてもじゃないがたまったものではなかった。全員が全員、「何か仕返しはできないものか?」と考えているのだった。
全て歌い終わり、余興強制参加者による即席合唱団が譜株価と頭を下げた。 安浦がマイクを手に「皆様、ありがとうござい・・・・・・。」と言いかけた時、「先生!キスしてみて!」と、いかにも酔っ払いが言うような、からかいのセリフが飛んだ。会場が、一瞬不快感に包まれてしまう。 しかし、龍之介だけはその一言がチャンスであることに気付く。久美と千尋もそう感じ取るのに、そんなに時間はかからなかった。
久美「そうですよね。私達に予定外のことをさせたんだから、それぐらいは当たり前ですよね〜?」 千尋「先生!私達にも、その幸福感を分けて下さいよ〜!」
とってもワザとらしかったが、2人が言った。「次は自分が名前を呼ばれるのではないか?」という緊張感に包まれていた教え子たちも、悪乗りして後に続く。
龍之介「先生、腹くくりましょうよ。」
突然にマイクを通した龍之介の声。谷田部は大いに驚き、隠しきれていない。
龍之介「キ〜ス!キ〜ス!キ〜ス!」
などと、会場の音頭をとるように連呼した。 会場の不快感は一気に吹き飛び、盛り上がりを見せ始めた。
谷田部「ちょっと!司会者!」
と言うが・・・、マイクを龍之介から手渡された安浦も「先生、皆様リクエストされてますよ。」と言うのだった。 そんなかつての学級委員の言葉に思わずニンマリするのは龍之介。 困惑顔の新郎が自分の上司達の方を見るが、そこでも拍手をしているのが見えた。 実に話が分かる大人たちである。
谷田部「ブーブー言わない!ほら安浦、進めて!」
とマイクを使いながら言うのだが、学校で通用した決まり文句も言うタイミングが遅すぎた。この会場でのその言葉は、もはや通用しなくなってしまっている。
谷田部「(大木、池田、黒澤〜・・・。本当に余計なことを!)」
などと思いながら、前で「してやったり!」の表情をしている3人と、裏切った安浦をジッと見るのである。となりでは智世も笑っている。 そして、もちろんこのテーブルの3人も例外ではない。
ボウズ「先生〜!!もう逃げられませんぜ!!」 朔「先生!早くしないと暴動が起きますよ!!」 亜紀「やだ!2人とも何言ってるの!?(笑)」
雰囲気にのまれた2人も後に続いた。 おもしろおかしく言う2人の表情に亜紀もふきだしてしまった。 その亜紀の様子に、
谷田部「(あ〜〜〜!!頼みの廣瀬まで!・・・すっかり松本の色に染まって・・・。どうするのよ〜。)」
と、再び心の中で叫ぶのだった。 もはや、谷田部の心の叫びを教え子達に届ける術はなくなっていた。高砂席に集中する期待の視線。もう、逃げられる状況ではなくなっていた。まさに教え子から恩師への下克上・・・。
龍之介「先生早く!」 智世「先生、まさか逃げられると思ってないよね〜?みんな待ってるよ!」 久美・千尋「人生の晴れ舞台ですから〜!」
なかなか煮え切らない新郎新婦に再びこの4人がけしかける。もちろん、安浦は何も言わずに笑顔を作っている。 そして、このテーブルも・・・。
ボウズ「谷田部!・谷田部!・谷田部!」
すると、ボウズに朔と亜紀も続く。
朔・亜紀・ボウズ「谷田部!・谷田部!・谷田部!・谷田部!・谷田部!」 亜紀「先生〜!私も見たい!!」 朔「早く!皆、待ってますよ!」 ボウズ「早くしちゃえ〜!!!」
比較的、高砂に近いテーブルなので、谷田部にもその声は届いていた。 そして、新郎が覚悟を決めた様子を見て新婦も腹をくくった。 2人は椅子から立ち上がり向き合う。会場中が固唾を呑んで見守る中、永遠の愛を誓い合う口付けを交わした。 会場中はハチの巣をつついたような大騒ぎ。祝福とからかいの言葉が交互に飛び交う中、谷田部がマイクを取って言った。
谷田部「これでいいのか、あんたたち〜!」 教え子一同「いいで〜す!!!」 谷田部「まったくもう!本当にまさかだよ〜。あんた達には本当に驚かせられたわ!!・・・特に・・・、大木!!池田!!黒澤〜!!!それに安浦〜!!」
マイクを通しての懐かしい調子の声に、思わず直立不動になる4人。
谷田部「あんた達!後で覚えておきなさ〜い!!」 龍之介「おーこわ!」 久美「先生、あんまり怖いところ見せないほうがいいんじゃないですか〜!」 千尋「旦那様をお尻に敷いちゃ可哀想ですよ!」 谷田部「つべこべ言わない!それに、彼はこの私の怖さは知ってるわよ!」 安浦「え?」 谷田部「彼がどういう人かは後で言うつもりでしたけど、ついでなので言います。彼は・・・・・・私の最初の教え子の1人なのよ!!」
思わぬ恩師のカミングアウトに会場中は大騒ぎ。 新郎は、「相変わらずだなぁ・・・。」と言った表情をしている。
亜紀・朔「えーっ!!」 ボウズ「・・・・・・・・。」 朔「嘘だ!!」 亜紀「信じられない!」 朔「嘘はダメですよ!」 亜紀「そうそう!」
当然、新郎の事を知らない教え子は、驚き、口をあんぐりさせている。おそらく、人生で一番驚いた瞬間であったのだろう。
谷田部「そして、松本!廣瀬!上田!中川〜〜!!!・・・さっきから聞いてれば、よくも色々言ってくれたね!?・・・廣瀬、『信じられない』って!?松本、『嘘だ』とはどういう意味!?」
名前を呼ばれた8人は直立不動であったが、その様子を察してか、一通り言った後、谷田部は満面の笑みを見せて言った。
谷田部「まあいいわ・・・。少し驚かそうと思ったら、私達の方がいっぱいくわされたわね!・・・でも、普段通りの調子に戻って、やりやすくなりました。ありがとう!」
少しぽかんとした様子の教え子一同。 谷田部が席についた後、再び安浦が司会を務め、平静さが戻った披露宴は無事に進行して行くのだった。
続く
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...2005/05/14(Sat) 21:21 ID:i1ynh/gY
Re: アナザーストーリー 2 Name:child93
| | はじめまして。 「アナザーストリー2」大変興味深く拝見させていただいてます。 最近になってこのHPを知り、たー坊さんの作品も知りました。 「あぁ、朔と亜紀にはこんな未来もあったのかもなぁ…」って わたしにとっては、ドラマの延長のような感じです。 一つ、お尋ねしたいのですが、 どうしても“2”ではなく「アナザーストリー」 がみつかりません。 どうしたら拝見できるでしょうか? 教えてください!
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...2005/05/15(Sun) 18:10 ID:irPJ8dCw
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | child93様 初めまして。このストーリーを書かせて頂いておりますたー坊と申します。 ”2”は、お読みいただいた様でありがとうございます。 さて、「アナザーストーリー」は「アナザーストーリー2」のレス14に、管理人様がリンクを貼って下さいました。ここから「アナザーストーリー」をお読み頂けると思います。
あらかじめ申して上げておきますが、この「アナザーストーリー」は見ていただければお分かりになるとおり、私以外にも多くの執筆者の方が作品を投稿なされた場所に、身の程知らずな素人が投稿したのがキッカケです。ですので、他の方々の作品の下の方にあると思います。その方々の作品もお楽しみいただくといいかと思います。 また、「アナザーワールド2」「世界の中心で、愛をさけぶ2」「もう一つの結末(再会編)」「続・サイド・・・」で各ストーリーをお書きになられている皆様の作品も素晴らしいものがあると思います。ぜひ、そちらもお読みになられてはと思います。
私のストーリーは、いち素人がドラマを見て、他の方々のオリジナルストーリーに触発されて書き始めたものですので、お見苦しい部分が多々ございます。それでもよろしければ、お読みになって下さい。 次回もお読み頂ければ幸いです。
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...2005/05/15(Sun) 18:33 ID:Ch1b.MMQ
Re: アナザーストーリー 2 Name:朔五郎
| | たー坊さま この作品が「他の方々の作品の下の方にある」など、とんでもないことです。 皆の心の中に生き続ける廣瀬亜紀、それを文章という形に現してくれているのですから、読者は皆、感謝していると思いますよ。 これからも、素晴らしいお話を、私たちに見せてください。
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...2005/05/15(Sun) 20:48 ID:rPTfSoLo
Re: アナザーストーリー 2 Name:グーテンベルク
| | たー坊様へ こんばんは、グーテンベルクです。朔五郎様のおっしゃるとおりですよ(^^) たー坊様の書いておりますアナザーストーリー、本当に素晴らしい物語です。読者の皆様に温かいものを残すことのできる文章の選び方など本当に最高ですよ。ちなみに・・・私はいつも通勤時に列車を利用するのですが、よくアナザーストーリーについて話している高校生がいるくらいです。これからも素晴らしい物語を見せていただけましたら嬉しいです(^^)。お互いにがんばりましょう。
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...2005/05/16(Mon) 21:01 ID:wzXzsl4s
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 朔五郎様、グーテンベルク様 毎回お読みいただきましてありがとうございます。 正直申し上げて、少し迷いが生じている部分がありましたので、少し悩んでおりました。 励ましのお言葉を頂戴しまして本当に嬉しい限りです。 執筆者同士これからもよろしくお願いいたします。
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...2005/05/16(Mon) 21:11 ID:x9vzcjBw
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 結婚披露宴というより、もはやただの宴会になりかけるものの、安浦の気転をきかせた名司会っぷりで、アクシデントもなく、式は順調に進んでいくのだった。 “ケーキ入刀”も無事に終え新郎新婦は、一度席を立ち、お色直しへ。その間は歓談の時間となった。
智世「ねえねえ、亜紀。さっきは真っ白なドレスだったけど、今度はどんなドレスだと思う?」 亜紀「先生でしょ・・・意表をついて真っ赤なドレスとか!」 智世「それもあった!・・・ねえ、着物ってことはないかな?」 亜紀「え〜?十二単みたいなの?」 智世「そうそう!」
お色直し後の衣装を話題にあれこれ想像しながら盛り上がる亜紀と智世。将来、自分達にも訪れるであろうその瞬間をイメージしているのかもしれない。 そんな自分の恋人の気持ちを感じ取ったのか分からないが、なるべくなら会話に参加したくはないと思う朔と龍之介。
ボウズ「・・・おい、お前ら何で無口なんだよ?」
朔と龍之介の席の間に、グラスを片手にやってきた。 ボウズなりに空気を感じ取ったのかもしれない。
朔「・・・亜紀の性格はお前も知ってるだろ?」 ボウズ「あ?」 龍之介「智世も似たような部分あるからそこから考えてみろよ。」 ボウズ「は?」 朔「下手に会話に入ってみろよ、亜紀のことだから、また俺に色々言わせようとするの目に見えてるよ。」 龍之介「そういうこと。智世も同じ。あの2人、時々会ってんだよ。」 ボウズ「それがどうかしたのかよ?」 龍之介「普段、なんていうか・・・あまりに愛情表現しない俺達から、いかに、その言葉を引き出そうかって、会うたびに作戦会議をしているみたいなんだよ。」 朔「俺なんて誓約書を書かせられた。『どんな形でもいいから愛情表現すること』って。」 龍之介「でも、それは朔ちゃんの自業自得だろう?」 ボウズ「1ヶ月もほったらかしにしたら、そう言われんのは当たり前だっての。」 朔「それを言うなよ。」 ボウズ「一言二言くらい言ってやれよ。」 朔「本当に苦手なんだって。・・・そういうボウズはどうなんだよ?」 ボウズ「俺はそりゃお前・・・・・・。」 朔「スケちゃんは?」
「人の話聞けよ。お前・・・。」とボウズが呟く・・・。 龍之介が朔と話し始めた。 そんな様子を伺うのは亜紀と智世である。
智世「完全に主導権を握っているみたいだね。亜紀?」 亜紀「他のことは朔ちゃんに主導権を握ってもらってもいいんだけど、それだけは絶対に譲れないの。」 智世「・・・。」 亜紀「「そのくらいしないとダメでしょ。ただでさえそういうこと言ってくれないんだから。朔は。・・・智世は?スケちゃんって言う時は言ってくれてるんじゃない?」 智世「・・・まあ少しは。でもね・・・。」 亜紀「あ・・・何?何て言ってもらったの?」 智世「内緒。」 亜紀「何よそれ。ずるい。」
などと言っている間に新郎新婦がお色直しを終えて戻ってきた。 ふたたび高砂席に戻ってきた時、会場からは拍手が起こるのだった。 そして、披露宴はキャンドルサービスへ・・・。新郎新婦が朔たちの座るテーブルへやって来た。
智世「おめでとうございます。」 亜紀「お綺麗ですよ。」 谷田部「廣瀬、上田、ありがとう。・・・それにしても、覚えておきなさいよ。大木。」 龍之介「・・・先生、キャンドルサービスの時に脅すのは無しですよ・・・。」 谷田部「つべこべ言わない。」 龍之介「・・・・・・・・・。」
龍之介に恨みに近い感情を込めて鋭い視線を向ける・・・。 聞き取りづらいくらいの小声で会話で交わした後、新郎新婦は次のテーブルへと向かう・・・。
亜紀「スケちゃんと何を話してたの?」 朔「別に、これといってたいした話はしてないよ。」
というものの、実に分かりやすい反応を見せる。そんな朔の表情とさっきの3人の様子に亜紀は“ピン”ときたのであった。しかし、「おいしいところは後でのお楽しみ。」と思ったのかは分からないのだが、ここでは亜紀は朔に何も言わなかったのである。
宴はなおも続いた。 新郎の友人たちによる2つ目の余興。学生時代のバンド活動経験者が中心となり、自分達で作ったオリジナルソングの演奏。 また、新郎新婦の友人による祝辞など。おもしろいエピソードと温かい言葉の中にある叱咤激励。残念ながら、今日この場にいることのできない人たちからの電報・・・。いかに2人が人望を集めているのかがよく分かるものである。 穏やかな雰囲気の中、披露宴は終盤へ・・・。
安浦「・・・ありがとうございました。本当に楽しく、また、感動できる時間でございました。・・・・・・そして本日、結婚式を挙げられ、新たなスタートをする新郎新婦の姿に、ご両親の感慨はとても大きなものと存じます。」
安浦の言葉とともに、新婦に新郎が寄り添いながら両家の両親の前に立った。 「お父さん、お母さん・・・・・・・・。」と、ゆっくり手紙を読み始めた。新婦の両親は、すでに目に涙をためている・・・・・・。 母の顔を直視できない。「見たら自分も泣いてしまう。」そう思った。しかし・・・、最後の最後で母の顔が目に入った。手紙の上にポタポタとこらえていたものが落ちてしまう・・・。 そんな谷田部の様子に、亜紀と智世は感動してもらい泣き寸前。マイクを通して聞こえる谷田部の声が涙声に変わる頃には、目のすぐ下をハンカチで押さえながら聞くという状態になってしまうのだった・・・・・・。 今まで見たことのない谷田部の姿に、朔も龍之介もボウズも神妙な面持ちで聞いている・・・。 手紙を読み終え両親に頭を下げた瞬間、会場は感動の拍手に包まれた。鳴り止まない拍手の中、亜紀は朔の手を、智世は龍之介の手を、それぞれ握り締めたのである。朔と龍之介は何も言わずに、その温もりを感じるままに握り返した・・・・・・。
安浦「大変素晴らしいお手紙をありがとうございました・・・。」
この後、新郎の挨拶と父親による謝辞が述べられた。 特に新郎の挨拶には、新婦を守りゆく決意が述べられたので、会場は再び感動に包まれた。 そして、
安浦「小野寺公一さん、敏美さん、お2人を囲んでの楽しい披露宴ですが、座がなごんで参りましたところで、お開きの時間を迎えたようでございます。皆様の心温まるお言葉や余興、教え子の皆様によります突然の祝福に、どこか緊張気味に見えましたご両人も、すっかりくつろいだ様子を見せております。ただ今の時間、夕暮れから闇に包まれようとしております。どうぞ皆様、お足元にはお気をつけられて、家路におつきいただきたく存じます。また、この後、ホテル内の別会場を用意いたしておりますが、そこで二次会を行いたいと思います。お時間に余裕のあるお方はご参加をお願い致します。本日は長い間お付き合い下さいまして、誠にありがとうございました。それでは、これをもちましてお開きとさせていただきます。」
無事に披露宴は終わりを迎えた。出口には新郎新婦と親族の人たちが、出席者一人一人と挨拶を交わしていた。 最後に会場を出た、朔、亜紀、龍之介、智世、ボウズ。
朔「本日は本当におめでとうございました。」 公一「わざわざありがとうございました。」 谷田部「なーに松本?珍しく殊勝な発言じゃない?」 亜紀「先生・・・。」 谷田部「あら、将来の奥様にお叱りを受けてしまったわ。」
さっきの仕返しとばかりに、早速2人をからかう谷田部・・・。 突然の谷田部の一言に、亜紀は照れ臭さを覚えながらもそれを隠して、ここぞとばかりに朔に向けて視線と一緒に無言のメッセージを送る。 そんなやりとりを見ていたのは龍之介。なんとなく「自分に話が来るのではないか?」という身の危険を感じたのか、そーっと後ろから逃げようとするが・・・、
谷田部「大木!!!ちょっと待ちなさ〜い!」
思わず直立不動になる龍之介。谷田部がドレス姿のまま詰め寄る。
谷田部「あんた2次会来るよね?」 大木「は、はい。」 谷田部「上田には悪いけどあんた司会ね!さっき、いろいろやってくれた罰!上田、いいよね?」 智世「いいですよ。」 龍之介「智世〜!そりゃねぇよ!」 ボウズ「お前、覚悟決めとけ。な?」 智世「あ、でも先生、こいつが司会だとまた先生が、からかわれるんじゃないですか?」 谷田部「大木、もし、さっきと同じようなことをしたら・・・分かってるね!?」 龍之介「・・・・・・はい。」
ボウズに肩を“ポン”と叩かれ、智世には亜紀のように庇ってもらえずじまい。なかば脅されたような龍之介の様子に、一同は笑い合った。 ふと、亜紀が「何か忘れてるような・・・。」と思い、やがて、あることに気付いた。
亜紀「そういえば先生、ブーケトスは?」 智世「あっ、そうだ!私、楽しみにしてたんです!」 谷田部「ゴメン!もうやっちゃった!」 亜紀・智世「え〜〜っ!?」 谷田部「披露宴の前に結婚式場でやっちゃたんだけど、私の後輩がとっちゃったのよ。」 亜紀「そんな・・・私の結婚はどうなるんですか?」 智世「私も・・・それが今日の一番の目的だったのに〜。」 谷田部「上田、それが本音?」 智世「あ、いえ・・・その・・・。」 谷田部「まあいいわ。・・・・・・あのねぇ、あんたたちなら別にブーケなくても大丈夫でしょ!松本と大木がいるんだから。」
呆れながら言う谷田部の言葉に、思わず“ドキッ”とする朔と龍之介の2人、そして後ろからニヤケながらそんな様子を見るボウズ・・・・・。
亜紀「だって・・・ねぇ?智世。」 智世「そうそう。」 谷田部「・・・・・・どうかしたの?」 智世「スケは、私のことが好きなのか分からないんです・・・・・。」 亜紀「朔も、普段は素直になってくれないんです・・・・・・。」 谷田部「ふーん・・・それは大問題だねぇ・・・。」
そーっと逃げようとする2人をボウズが横目で見ている。もちろんニヤケ顔で。 その憎たらしい顔に「この・・・・・・。」と言いたげな表情で目を向ける。 そして、谷田部が「そこの2人、逃げるんじゃない。」と、一言。 ため息混じりにその場に残る朔と龍之介・・・。 そして、谷田部が続ける。
谷田部「あんたたち、クールでシャイを気どるのもいいけど、あまり度が過ぎると愛想を尽かされるよ!ねえ?」
亜紀と智世に話を振る。同時に、その言葉は自分の夫にも向けられているようでもあった。その証拠に、公一もどこか居心地が悪そうである。すでに、新婦は新郎を尻に敷いているのであった・・・・・。 さらに、朔と龍之介に追い討ちをかける言葉が・・・。
亜紀「朔には、私への愛が足りないんです・・・。先生、どうすれば、もっと愛してもらえるんですか?」 智世「私にも教えてください!」 朔「亜紀!余計なことを言わなくていいって!」 龍之介「お前もだよ!何言ってんだよ!」 亜紀「何よ!私、ほとんど愛情表現してもらってないよ!手を繋ぐ回数も数えるほどじゃない!言いたいことはまだあるよ。」 智世「あんたもよ!今まで私に『愛してる』なんて言ったことあった!?」 朔・龍之介「う・・・それは・・・・・・。」
そんな様子を見ていたボウズのニヤケている表情に谷田部が気付いた。
谷田部「中川、あんたもそうなんじゃないの?」 ボウズ「へ?違いますよ。俺はちゃんとそういうことは言ってますよ。」 谷田部「よし!それならいいわ。じゃあ2次会は、あんた達に愛情表現の仕方を教えてあげる場にして、実際に廣瀬と上田を前に実践してもらおうか!」 朔「そ、そんなっ!!無茶苦茶な!」 龍之介「きったね〜な!おいボウズ!断れよ!」 ボウズ「面白そうだな!亜紀、智世。こいつらが逃げないように見張るのは任しとけ!」 亜紀・智世「よろしくねボウズ!先生もなんとか言ってくださいね。」 谷田部「任せておきなさい。じゃあ、少し待ってて。着替えてくるから。」
そう言うと、新郎新婦は控え室へと戻った。 その場に取り残された5人。ボウズの目に映るのは、恩師の幸せを目にして幸せな気分のはずが落ち込み気味の朔と龍之介。そんな2人の肩を“ポンポン”と叩く公一。そして、”してやったり”と、悪戯っぽい笑顔の中にも、どこか真剣な様子で2人に視線を送り続ける亜紀と智世の姿であった。
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...2005/05/16(Mon) 21:36 ID:x9vzcjBw
Re: アナザーストーリー 2 Name:にわかマニア
| | たー坊様 グーテンベルク様 朔五郎様 「別伝」・「続編」執筆者の皆様
映画の封切りから1年が過ぎました。連ドラの放映開始から間もなく1年です。「流行り・廃り」の激しい世の中にあって,今なお,「多くの執筆者の方が作品を投稿」という状態が続いています。 何故でしょうか。 原作品(小説のみならず,映画や連ドラも含めて)が大きな感動を巻き起こしたことも,もちろん大きいでしょう。そうでなければ,とっくに記憶の彼方に過ぎ去ってしまっていたでしょう。でも,これだけ競って書き継がれているということは,「感動の余韻」というだけでは説明がつきません。 私は(おそらく多くの皆さんもそうでしょうが),読者や観衆・視聴者の中に,原作品のストーリーを受け容れ,それに感動しつつも,どこかに「救い」を求める気持ちが根強くあるためだと考えています。どこかで原作と枝分かれして結末を変えたいと願う人,原作の結末はそれとして前提としつつも,「第二世代」に夢を託したいという人,そうした人たちの熱い思いが別伝や続編へとつながっていったのだと思います。 それに応えてくださっていらっしゃるのが執筆者の皆さんなのです。そして,同時並行的に複数の物語を楽しみ,なおかつ,感想を交わし合うことができるのが「BBS」のよさなのではないでしょうか。 文才のない私など,時折のコメントめいた感想と謎解きに精出すしかありませんが,皆さんの心温まる物語をいつも楽しみにしています。これからも宜しくお願いいたします。
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...2005/05/17(Tue) 00:23 ID:kolKlces
Re: アナザーストーリー 2 Name:グーテンベルク
| | にわかマニア様へ こんばんは、グーテンベルクです。もう、1年がたつのですね。本当に早いものです。にわかマニア様のおっしゃる通り、確かに私はそういった思いで現在も執筆を続けております。そして読者の皆様の励みになるメッセージにいつも感謝する日々を送っております。そういった意味でもドラマに出会ったこと、そしてこのサイトに出会ったこと、このBBSで皆様と出会ったことが本当に嬉しいです。本当に素晴らしいサイト、そして皆様に出会えたと思っております。これからもよろしくお願いします。
たー坊様へ こんばんは、グーテンベルクです。とても素晴らしい結婚式でしたね、そしてこれからくる朔と龍之介にとっては嵐のような時間、朔と龍之介は上手く愛情表現ができるのでしょうか?今後が楽しみです。
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...2005/05/17(Tue) 21:30 ID:5ed0WseI
Re: アナザーストーリー 2 Name:child93
| | たー坊様 こんばんは、先日は素早いレス、ありがとうございました。「アナザーストリー」もっとしっかりと探さなくてはいけませんでしたね、レスを拝見して、すぐにみつけることができました。まったくお恥ずかしいです。早速一気に読ませていただきました。 たー坊さんはご謙遜されているようですが、私はたー坊さんの作品、とても好きです。ボキャブラリーが無さ過ぎる私には、この書き込みさえ恥ずかしいのですが…。もちろん、他の方々の作品も、是非読ませていただきます! これからも皆さんの作品、楽しみにしております。
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...2005/05/18(Wed) 00:13 ID:gNFBcLuw
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | にわかマニア様 おっしゃるように、早いものでもう1年が経つのですね。私もグーテンベルク様と全く同じ思いで執筆作業をつづけております。 また、皆様からの数多くの励ましの言葉にはいつも勇気付けられます。 これからも、できる限り続けていきたいと思っておりますので、ストーリーの終わる時までよろしくお願いします。
グーテンベルク様 今回もお読みいただきましてありがとうございます。 おかげさまで、朔たちはハプニングに襲われながらも無事に恩師を祝福することができました。 次回は二次回でのひとコマの予定です。 それも楽しみにしていただけたら幸いです。
child93様 わざわざお返事を頂きましてありがとうございました。また、励ましのお言葉も頂戴しまして、とても嬉しく思います。 拙い物語ですが、これからもお読み頂ければありがたいです。 次回も楽しみにして頂けたら幸いです。
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...2005/05/19(Thu) 19:29 ID:zyFguHo.
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 谷田部「はい!松本、大木、よくできましたぁ〜!」 朔「・・・・・・・・・・。」 龍之介「ハァ・・・・・・・・・・。」 智世「やればできるじゃない。」 亜紀「朔ちゃんも。これからはもう少し素直になろう。ね?」
二次会会場のバーにて・・・。 赤面する朔と、照れ隠しなのであろうか、ため息をつく龍之介。 朔は亜紀に本当に小さな声で「す・・・好き。」と一言。龍之介は「ずっと一緒にいような!」と男らしく宣言するように言った。 その場には、たこ焼きパパさんの主人が、大量のたこ焼きを焼き上げて二次会場にやってきていた。もちろんパパさんも拍手を贈るのであった。 本来なら、二次会場でも谷田部が主役なのだが、朔と龍之介が主役になってしまっていた。 さっきの谷田部の宣言と亜紀と智世の策略通りに、二次会は、普段は不器用すぎる男2人への“恋愛講座”みたいなことになってしまっている。たった今、2人の愛情表現の実践がようやく終わったところであった。 恥ずかしながらも亜紀は、久しぶりに聞いた朔の言葉を本当に嬉しく感じ、智世は、今まで聞いたことのない真っ直ぐな龍之介の言葉を噛み締めていた。
安浦「2人とも、もう少し大事にしてあげたらどう?」 久美「安浦君の言うとおり。あなたたち、もう少し何とかならないの?」 千尋「松本君も大木君も、たまに少しだけカッコ付けてみたら?」
突然の“課外授業”に、驚きを隠せなかった2次会参加者達。 安浦、久美、千尋の他にも、朔たちの同級生や先輩、後輩が参加している。 披露宴の勢いと2次会会場である貸切ったバーに用意されたアルコールの力も借りて、朔の亜紀へ、龍之介の智世への愛の言葉に、大いに盛り上がっている。 あらためて乾杯する者、“イッキ”をする者と、様子はそれぞれに思い思いの時を過ごす。
亜紀「お疲れ様。」 朔「お疲れ様じゃないよ。うまいこと先生を味方につけてさ。」 亜紀「あれ?バレちゃった?」 朔「バレバレだよ。いくら鈍感な俺でも、あれくらいは簡単に気付くよ。」 亜紀「そうだね。朔ちゃんはもうちょっと鋭ければいいのにね。・・・あ、でも、鋭くなっちゃたら朔ちゃんらしくなくなっちゃうから、少し鈍い方がいいかもしれない。」 朔「・・・・・・バカにしてるだろ。」 亜紀「そんなことないよ。」 朔「じゃあ、誉めてくれてるの?」 亜紀「う〜ん・・・それも違うかな?」 朔「なんだよ、それ・・・・・・。」 亜紀「結局は今のままでいいの。でも、もう少し・・・ね?」 朔「フゥ〜・・・・・・。」
朔は亜紀のその先の言葉を聞かなくても理解することができた。亜紀もそんな朔の心境は分かりきっていたので、朔がため息をついたのを聞いた後でクスクスと笑った。そんな亜紀の笑顔が嬉しくも複雑な朔であった。 一方・・・。
智世「これからも今日のような感じで頼むわよ。」 龍之介「あれは先生の顔を立てる為だっての。いっつもいっつも言うことはねぇよ。」 智世「龍之介はいつもどころか、たまにだって言わないでしょ〜・・・。」 龍之介「そうだっけ〜?」 智世「今日初めてでしょ。私に面と向かって『好き』みたいな感じでちゃんと言ってくれたのは。」 龍之介「冗談じゃねぇよ。本当にあんなことやるとは思ってなかったからよ。口から心臓が飛び出すんじゃねぇかと思ったよ。」 智世「大げさだねぇ〜。」 龍之介「大げさじゃねぇよ。」 智世「ま、いいわ。今日は勘弁してあげるとするか。」 龍之介「俺はいつから勘弁してもらう立場になったんだよ?」 智世「高2。あの時のこと忘れたわけじゃないでしょ?」 龍之介「そのことなら散々謝ったじゃねぇか!お前に付き合ってくれって言ったときにも言っただろ。」 智世「あれ〜?そうだっけ?」 龍之介「・・・このブス。」 智世「ん?誰がブス?なんならもう一回先生に頼んでもいいよ。せんせ・・・・・。」 龍之介「待てよ。・・・美人でかわいい智世・・・。」 智世「はい。よくできました!」 龍之介「・・・・・・(後で覚えてろよ・・・。)」
今日は智世が初めて龍之介に勝っている。さすがの龍之介も谷田部を味方につけた今日の智世に勝てる訳もなく、ただ、黙ってグラスを口に運び続けたのである。 そして、二次会も終盤に差し掛かった。 司会をやらされた龍之介が場を仕切ろうとしている。
龍之介「えーと、そろそろお時間になります・・・。」 ボウズ「もうそんな時間か?」 安浦「ああ、本当だ。」
ボウズと安浦が時計で時間を確認しているその時、「ちょっと待って!」と声がした。黒澤千尋だった。
千尋「先生!」 谷田部「ん?何?」 千尋「旦那様は最初の教え子ですよね?最後に馴れ初め話を聞きたいんですけど!」 亜紀「賛成!私も聞きたいです!皆さんはいかがですか?」
亜紀の問いかけに、全員が全員「聞きたい!」と言い、“谷田部コール”が起こる。 酒が入り顔が若干赤くなっている谷田部は、多くの教え子達に祝福されて上機嫌なこともあってか、「よしよし。あんた達がそこまで言うのなら教えてあげるとしますか!」と言うのであった。新郎は苦笑いを浮かべつつ観念したようである。 谷田部は思い出しながらゆっくりと話し始めた。
谷田部「私が大学を卒業して、教師として初めて受け持ったクラスに彼がいたの。・・・当時の私は肩に力が入ってたんだと思う。クラスをまとめようと必死だった。そして、いつしか生徒を尊重せずに、自分のやりやすいように私のやり方を押し付けかけていた時があったの・・・。」 龍之介「さすがの先生にもそんな時があったか・・・。」 智世「うるさい。黙って聞いてなさい。」 龍之介「わかったよ・・・。」 谷田部「・・・その時のクラスの学級委員が彼だったわけよ。」 ボウズ「そうなんですか?」
ボウズが後ろで懐かしそうな表情で聞いている公一に尋ねた。 つられて、朔と亜紀も公一の方を向いた。
公一「そうだよ。・・・言ってもいい?」 谷田部「この子達に隠してもしつこく聞いてくるから、言っちゃっていいわよ。」 公一「本当の所を言うと、一番初めの彼女は教師としては生徒からは好かれなかったと思うよ。事実、僕もあんまりいい印象は無かったな。」 龍之介「なんか意外ですね。俺達の印象は、厳しいところもあるけど、親身になってくれるいい先生って感じだから・・・。なあ?朔ちゃん。」 朔「うん。新任とはいえ嫌われるほどだったって言うのは想像つかないな・・・。」 亜紀「本当にね。」 谷田部「それからしばらくしてかな・・・。彼ともう一人の女の子の学級委員と話したのは。」 安浦「何を言ったんですか?」 千尋「まさか、真っ向からぶつかっていたりして。」 公一「当たってるよ。そのとおり。」 久美「本当に?」
その会場にいた全員が驚きを隠せない様子で谷田部に聞くのだった。
谷田部「本当よ。大声でケンカしたなんてことはないけどね。もちろん。」 朔「あ、なんだ・・・。」 公一「もしかしてそういうことを想像してたのかい?」 龍之介「いくらなんでもそりゃねぇだろ。おまいさん。」
とぼけた様子で面白おかしく言う龍之介に会場は笑いに包まれた。 少し、恥ずかしそうに笑う朔を優しげに見つめる亜紀。
谷田部「・・・・・・まぁ、そこまではいかなかったけれど、話し合ったのね。彼は、クラス全員の気持ちを代弁してくれた。とりあえず、お互いに言いたいことを言い合ったわけ。それからかな、段々打ち解けてきたのは。そして、次の年からは最初の年の教訓を生かしてうまくまとめることができた。・・・・・・最初の出会いはそんな感じかな。」 ボウズ「いい話ですね。まるでテレビドラマみたいだな・・・。」 久美「・・・ん?先生、それが初めての出会いですよね?」 谷田部「そうだけど?」 久美「じゃあ・・・先生と生徒の仲じゃなくなっていったてことじゃ・・・・・・。」
思わぬ久美の発言に、場は静まり返ってしまった。 「まさか!?」という表情で2人を見る教え子達に、すぐさま笑いながら公一が否定した。
公一「ハハハ。そんなことはあるはず無いよ!当時から彼女は、たぶん君達が知っている通りの人物だったからね。」 谷田部「悪かったね!そんな事があるはず無くて!」 公一「あ、それはその・・・。」 ボウズ「ハハハ!早速尻に敷かれてますね!」 谷田部「中川!余計なことを言わない!」 「すみません!」と直立不動になるボウズに一同は大笑い。 思わず懐かしさを覚えるのは公一・・・。
公一「当時からこんな感じ。」 安浦「そうなんですか!」 谷田部「そうみたいね・・・。」 公一「何かあると、すぐにプリントを追加してくれてたからね。本当に散々な思いをしたものだよ。」 龍之介「やっぱり。」 智世「そのときから、今の先生だったんですね・・・。」 千尋「あれ?それで、いつからお2人はお付き合いを?」 谷田部「本題に入りましょうか!・・・彼は大学を卒業して教育委員会に勤務し始めたの。私も教育現場の意見とか、情報交換のために、定期的に彼の仕事場に出入りするようになってね。・・・最初は相変わらす教師と生徒だったけど、そのうちに自然とかな・・・・・・。」 亜紀「素敵ですね・・・。」 谷田部・公一「ありがとう。」 朔「それがお2人の馴れ初めですか・・・。」 谷田部「そう。」
新婚ホヤホヤの2人の馴れ初めを聞けた教え子達は大いに沸きあがった。 全員が祝福の空気に満ちていた。
亜紀「それで、デートとかはどこに行ってたんですか?」 谷田部「あんたたちにバレるとあっという間に噂が広がるからね。なるべく人目のつきにくい所でデートしてたわよ!」
少し顔を赤くしながら答えた谷田部には、からかいの言葉が飛ぶ。 「あんたたちこれでいい!?」と照れ隠しをしながら答えるのであった。 そして、本当にこれで二次会もお開きという時に谷田部がある物を持ってこさせた。 その手に渡されたのはブーケ・・・。
亜紀「先生!ブーケトスは、もうやってしまったんじゃなかったんですか!?」 智世「そうですよ!」 谷田部「さっき、あんたたちに言われたから無理言って急いで用意させてたのよ!・・・これで、もう一回ブーケトスができる。せっかく二次会にも参加してくれたんだから、このくらいはサービスしないとね!」 亜紀・智世「ありがとうございます!」
パパさん顔負けの谷田部のサービスで、急遽、今日二回目のブーケトスをやることになった。亜紀、智世はもちろん、久美と千尋、二次会に参加した女性陣は大いに喜び、虎視眈々と谷田部の投げるブーケを狙っているのである。 そんな中、亜紀と智世を見守るような朔と龍之介。「取って欲しいような、欲しくないような・・・・・・。」という、なんとも複雑な胸中である。 そして、ついに、後ろ向きの谷田部の手からブーケが放たれたのであった。
続く
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...2005/05/19(Thu) 20:08 ID:zyFguHo.
Re: アナザーストーリー 2 Name:グーテンベルク
| | たー坊様へ こんばんは、グーテンベルクです。早速読ませていただきました。普段心に秘めた愛情を言葉にしない朔と龍之介。この2人に言葉で愛情表現をされた亜紀と智世はきっととても嬉しかったことでしょう。かつてのクラスメートも本当にいい味出してます。そして、谷田部先生の出会いのお話もとてもいいですね。これをドラマでやってほしい!そういう気持ちです。さて、ブーケをキャッチできるのは誰なのか?続きを楽しみにしております。頑張ってください。
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...2005/05/19(Thu) 20:46 ID:lJA3xqDA
Re: アナザーストーリー 2 Name:SATO
| | 同窓会みたいな雰囲気でとてもいいですね。 窮地に立たされた朔と介の肩とポンとたたいた新郎の公一もやさしい先輩という感じでホノボノとしていました。
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...2005/05/19(Thu) 22:52 ID:buyXZqZ2
Re: アナザーストーリー 2 Name:アーネン
| | 今回も最高です。これからも頑張ってください。応援しております。
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...2005/05/20(Fri) 21:51 ID:0oIx5gj2
Re: アナザーストーリー 2 Name:朔五郎
| | たー坊さま なるほど、いかにも谷田部先生らしいですね(笑) それにしても・・・「高校教師」の「逆バージョン」かと一瞬思いましたが(笑)
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...2005/05/21(Sat) 23:21 ID:dGWVb7nI
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | グーテンベルク様 今回もお読み頂きましてありがとうございます。 また、とても評価して頂きましたことも、とても嬉しく思います。 さて、朔と龍之介も不器用コンビは、これからは切り替えて、気持ちを伝える回数が増えるのかどうか。そこを楽しみにして頂ければと思います。 また、ブーケの行方も気になることと思います。 次回も楽しみにしていただけましたら幸いです。 「アナザーワールド2」の続きも楽しみにしております。お互いに頑張っていきましょう。
SATO様 おっしゃるとおり、二次会は完全な同窓会状態です。今回は、卒業した世代が違うにもかかわらず、谷田部の教え子は気が合うといったシーンをイメージして、形にいたしました。自分でも気に入っているシーンのひとつです。 先輩の思いやりも描けたのではないかと思っております。 次回もお読み頂ければ幸いです。 「世界の中心で、愛をさけぶ2」も楽しみにしております。お互いに頑張っていきましょう。
アーネン様 ご感想を頂きましてありがとうございます。 ”最高”とおっしゃって頂き恐縮しております。 これからも、ほのぼのとした雰囲気を意識しつつ、形にすることができたらと思っております。 物語は当分書き続けたいと思います。途中、中断することもあるかもしれませんが、最後までお読み頂き、時々、ご感想を頂ければ励みになります。 次回もお読み頂ければ幸いです。
朔五郎様 「高校教師」の「逆バージョン」とは、上手に表現して頂きました(笑) この部分は、私が中学時代の担任の先生のかつての教え子が、教育実習に来たことがあったのですが、そこからヒントを得まして、書きました。おっしゃるとおり、谷田部先生らしいと思います。 次回もお読み頂ければ幸いです。 「世界の中心で、愛をさけぶ2」も楽しみにしております。お互いに頑張っていきましょう。
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...2005/05/22(Sun) 18:27 ID:xuAa..iA
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 「せ〜のっ!!」 と、ボウズと龍之介が合図をする。 後ろ向きの谷田部が、天井にブーケがぶつかることの無いように力加減をしつつ、亜紀たち女性陣が、今か今かと待ち構える方にブーケを放った。 ゆっくりと、野球のホームランの打球のようにきれいな放物線を描くブーケ・・・。
亜紀「(私の所に来て!)」 智世「(今回は私が取るのよ!)」 千尋「(皆のように、私だって恋愛するんだから!)」 久美「(絶対に私に幸運が来るのよ!)」
空中に浮かぶブーケを見ながら、目を見開きつつそんなことを思っているのである。もちろん、この4人以外も考えていることはあまり変わらない。 やがて、ブーケが落下してきた。落下点にいるのは・・・・・・亜紀だ。 そして、手を広げてブーケを待つ・・・・・・。
亜紀「(もーらいっ!)」
と、心の中で言ったのかは分からない。 誰もが、ブーケの行き先は亜紀だと確信したその時・・・。
亜紀「・・・あれ?」 智世「フッフッフッ・・・。ブーケ獲ったぞ〜!!!」 亜紀「・・・・・・。」
ブーケが、亜紀の手元に届くまであと少しだっただろうか・・・。亜紀がブーケを掴む寸前に、横にいた智世が横取りしてしまったのだった。本人にしてみれば、まさに自画自賛のナイスキャッチだったのであろうことは、その表情から容易に想像がつく。智世は、とても嬉しそうに笑っているのである。
谷田部「おめでとう!上田、いつのことになるか分からないけど、大木とお幸せに!」 智世「はい!先生、ありがとうございます。龍之介、よろしく!」 龍之介「・・・・・・獲りやがった。」
アルコールの力は偉大である。 素面の智世なら、まずそんなことを言わないのであるが、本日最後のメインイベントに盛り上がる場の雰囲気の後押しを受けたのか、普段は見られない智世がいる。
亜紀「するいよ〜。智世〜。」 智世「これが私に向かって飛んで来たのよ。」 ボウズ「何か、どこかで聞いたセリフだな。」 朔「ハハ。あの時と一緒だ。」
朔と亜紀の結婚写真を撮った時のブーケトスと同じ。 谷田部は、亜紀に先を越されたのを追いつき追い越し、智世は横取りされたブーケを獲った。そして、亜紀は膨れていた・・・・・・。
久美「廣瀬はいいじゃない。ブーケ取れなくても。」 亜紀「どうして?」 千尋「松本君がいるじゃない。」 亜紀「そうだけど・・・。」 千尋「贅沢言わないでよ。私なんか彼氏もいないんだから・・・。」 久美「私もよ。」 千尋「廣瀬は、羨ましがられているのよ。私達からね。」 亜紀「何で?」 久美「だって、あんなに想われてるじゃない。顔もかっこいいし、おまけに医者のタマゴじゃない。本当に羨ましいな・・・。」 亜紀「顔とか医者のタマゴとかっていうのは別に・・・・・・。」 千尋「ふ〜ん・・・。ま、なかなか秘めた想いを口にしないのはね・・・。度が過ぎると困りものだけどね。」
高校時代に、毎日のように稲代総合病院に通っていたことは、当時の学年中に知れ渡っていたのは言うまでもない。久美と千尋は、そんなに想われている亜紀のことが羨ましかった。 かつて、軽く意地悪された2人と、ハッキリと言葉は交わさないものの、いつのまにやら和解をしたような感じである。
千尋・久美「あの時はゴメン。」 亜紀「いいよ。気にしてないよ。」
そんなやりとりがされたような感じであった・・・。
そして、ブーケトスも終わり、今日の披露宴と二次会はおひらきとなった。 ホテルのロビー前、谷田部が公一に手を取られながら、車の助手席に乗り込んだ。公一が運転席に座ると同時に窓を開ける。 そして、皆の万歳三唱。 これが今日最後の盛り上がりだった。 谷田部がうれしそうに窓から顔を出しながら、「ありがとう!」と言った。同時に公一がアクセルを踏み込み、車はゆっくりと走り始めた・・・。
龍之介「2人は愛の巣に向かいましたとさ。」 智世「なにそれ?」 ボウズ「2人にとっての初夜だからな・・・。」 朔「・・・何考えてんだよ?ボウズ。」 ボウズ「別に、何も考えてねぇよ。」 亜紀「ふーん・・・。」
教え子たちは、新郎新婦の乗る車をそれぞれの思いで見送るのであった。角を曲がり、完全に車が見えなくなるまで、誰一人として目を離そうとはしなかったのである。 そして、ホテルの玄関で解散となった。
亜紀「行っちゃたね。」 朔「うん。」 安浦「驚いたけど、いい結婚式だったと思うよ。」 千尋「それは言えるね。」 龍之介「それじゃ、皆さん帰りますか?」 智世「よし、帰ろう。」 久美「そうしますか。」 ボウズ「いい気分で帰って寝ますか!」
こうして、それぞれは帰宅の途についたのである。 そんな帰宅途中の夜道。
亜紀「あ〜あ・・・。」 朔「何?落ち込んでるの?」 亜紀「そうじゃないけど・・・。」 朔「・・・・・・。あ、ブーケ?」 亜紀「そう!あれ、智世が横取りしたよね?朔ちゃん!」 朔「何もそこまで興奮しなくてもいいじゃない。」
落ち込んでいると思いきや、今度は怒っているのかと思うくらいに興奮する亜紀の様子に、朔が戸惑うのも無理は無かった。 朔「確かに、智世が奪い取ったようにも見えたけど・・・仕方ないじゃない。」 亜紀「それはそうなんだけどな〜・・・。」 朔「そんなにブーケが欲しかったの?」 亜紀「もちろん。花嫁のブーケをもらえたら次に結婚できるって言うじゃない?やっぱり、そういうものは欲しいよ。」
この言葉に朔は少しおかしくなって笑った。 少し怪訝そうになるのは亜紀。そして、少し口を尖らせながら切り出した。
亜紀「何?」 朔「うん?前は神頼みとかしなさそうだったのに変わったなと思ってさ。」 亜紀「私?」 朔「うん。」 亜紀「神頼みをしないわけじゃないんだけどね・・・。」 朔「あ、神様はいてくれないと困るって言ってたね。夢島では。」 亜紀「うん。神様にラッキーとアンラッキーをコントロールしてもらうのよ。・・・今回、ブーケが欲しかったのは、自分からラッキーになろうかなって思って。」 朔「・・・・・何でそう思ったの?」 亜紀「退院してから、私はラッキーばっかり続いていたと思うの。もし、今日まで何もアンラッキーが何も無かったら、ブーケを取るのはやめようかなと思っていたんだけどね。・・・1ヶ月も朔にほったらかしにされて、少しだけど辛い思いをしたから、自分から幸せを掴もうと思ったの。」 朔「・・・やっぱり怒ってるね・・・・・・・・・。」 亜紀「当たり前でしょ!なんなら、一生恨んでもいいよ。」 朔「・・・・・・どうしたら許してくれるの?」 亜紀「そうね・・・。じゃあ、プロポーズして!」 朔「・・・・・いつか・・・する。それに、今、また亜紀にラッキーな事があったら、また、不幸になっちゃうんじゃないの?」 亜紀「・・・それもそうだね。」
水田にはさまれた道を廣瀬家に向けて歩く途中で、2人の微笑み合う様子を見るのは誰もいなかった。でも、朔と亜紀にとっては幸せな時間であることに違いない。 うまくはぐらかした朔。亜紀はそれに気付かないフリをしていた。「まあ、いいか。ゆっくり、のんびり行こう。ねぇ?朔ちゃん。」と笑顔を見せながら朔に声にせずに伝えた。
一方、少し酔っているのはこの二人。半分、千鳥足で帰る途中である。 智世「さてと・・・。」 龍之介「なんだよ・・・・?」 智世「これこれ。」
そういうと、さっき獲ったブーケを見せびらかす・・・。
智世「で?いつ言ってくれるのかしら?」 龍之介「何を言うんだよ?」 智世「またまた。とぼけちゃって!あんたは、朔とは違ってそういうことには鋭いくせに。」 龍之介「何のことだか・・・。」 智世「ほ〜。そういうことを言うか。」
と、言うなり龍之介の後頭部を“パシッ”とひっぱたいた。 しかし、いつもは「なにすんだよ。このブス!」などとやりかえす龍之介がそこにはいなかった。この様子に少なからず驚いたのは智世。
智世「・・・何よ、いつもと違うんじゃない?」 龍之介「うるせえよ。・・・・・・でもよ、現実問題、そういうことになったら問題は山積みなんじゃないか?」
今まで見たことのないような様子の龍之介の真剣な表情。 智世は驚きと嬉しさと不安に心を支配される・・・・・・。
智世「・・・何が問題なの?」 龍之介「それぞれの家のことだよ。もし、どっちかが会社員とかだったら問題は無かったと思うんだ。・・・でも、俺は漁師。お前は実家の薬局を継がないといけねぇだろ?」 智世「それはまぁ・・・。ちょっと待ってよ!まさか、それが理由じゃないでしょうね?」 龍之介「違げぇよ。そんなに焦ることもねぇんじゃないかってこと。まだ、付き合い始めて2年ちょっとだろ。俺らまだ23だぜ?もっとのんびり行こうぜ?」 智世「そんなに焦ってるつもりもないんだけどね。・・・まあ、いいわ。そういうところはウチのお父さんも認めてるみたいだし。そのかわり・・・もう少し私を安心させなさいよね。」 龍之介「なんだよ?いつ俺がお前に心配かけたんだよ?」 智世「いつだったかスケのお母さんに聞いたことがあるの。漁協の飲み会で、居酒屋のお姉ちゃんにちょっかい出してたって話。」
“キッ”と睨むような視線を送る。 龍之介は、酔っ払っていたせいかその時のことは覚えていなかったのだ。慌てて弁解をする龍之介。今日に限っては、この二人は朔と亜紀のような関係である。
智世「じゃあ、浮気じゃないのか・・・。」 龍之介「違うっての。」 智世「今度飲むときは、程々にするか私を同席すること。」 龍之介「・・・・・・・・・・・・。」
龍之介は固く誓うのであった。智世といる時には、一滴たりとも酒は飲ますまいと。 今日だけは尻に敷かれる龍之介。もしかしたらアルコールが入ったときの智世は、谷田部や亜紀よりも強いかも知れない・・・。
智世「この話はもういいよ。寒いから早く帰ろう。」 龍之介「ああ。」
自然と2人の手が繋がる。最近でこそ、こういうことをする回数は増えたものの、普段はなかなかこういうことができない。だからこそ、智世に笑顔が咲いているのであった。 今日は強がらない智世であった・・・・・・。
続く
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...2005/05/22(Sun) 19:03 ID:xuAa..iA
Re: アナザーストーリー 2 Name:child93
| | いつもいつもお疲れ様です。 今回もいいお話でした。
亜紀「(もーらいっ!)」
すぐわかりましたよ「ポ○リス○ット」ですよね! そんな遊び心の効いたアナザーストーリーが大好きです^^
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...2005/05/22(Sun) 21:38 ID:YT2DIKJY
Re: アナザーストーリー 2 Name:サイトのファン
| | たー坊さんへ!! 執筆、お疲れ様です!! まとめて、拝読させて頂きました。 谷田部先生の結婚式に二次会・・ 懐かしい顔ぶれも参加しスゴク楽しく 感じました。 サクと亜紀、龍之介と智世とボウズと恵美 谷田部先生と公一と皆、幸せで心が和みます。 残るは、たこ焼きパパさんですね。 三組の中で、どの組が一番早くゴールインするかも 楽しみですし、たー坊さんの世界の中心で愛を、さけぶからは目を離せないですね!! 続編、お待ちしております!!
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...2005/05/22(Sun) 22:52 ID:mkOAegdQ
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | child93様 child93様こそお疲れ様です。そして、今回もお読み頂きましてありがとうございます。 おっしゃるとおり、「(もーらいっ!)」はポカリスエットから頂きました。 基本的に、私は遊び心を入れたりするのは、苦手なのですが、今回はチャレンジしてみました。ベタな使い方かもしれませんが、心の中で言う分には良いかなと思っております。 いつも、励ましの言葉を掛けて下さることにも感謝しております。 これからもよろしくお願いします。
サイトのファン様 お疲れ様です。 お忙しい中、今回もご感想を頂きましてありがとうございます。 今回の、谷田部先生電撃結婚&披露宴は、前々から同窓会の雰囲気を取り入れたく思い、今回、形にしてみました。 おっしゃる通り、3組の中で、どこが最初にゴールインするかは、私としてもこれからの構想の楽しみな部分の一つです。 それらを形にすることができればと思います。 これからもよろしくお願いします。
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...2005/05/25(Wed) 22:16 ID:95NsiZws
Re: アナザーストーリー 2 Name:グーテンベルク
| | たー坊様へ こんばんは、グーテンベルクです。今回の物語もとてもよかったです。亜紀が黒沢千尋、池田久美といった以前のクラスメート達に羨ましがられるのも無理ないですね(^^)それとブーケを智世にとられて膨れ顔の亜紀、ぜひ実写版で見てみたい気がします!いつも心温まる作品をありがとうございます。続編を楽しみにしております。
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...2005/05/25(Wed) 22:22 ID:P6VJBDqA
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | グーテンベルク様 お疲れ様です。 今回もお読み頂きましてありがとうございます。 かつてのクラスメートの何気ない言葉に、言葉にも表情にも表さない亜紀ですが、心の中では嬉しかったことでしょう。 これからもお互いに頑張っていきましょう。「アナザーワールド2」も楽しみにしております。
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...2005/05/25(Wed) 23:54 ID:95NsiZws
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 谷田部の結婚式から2週間後。 1993年12月24日。クリスマス・イヴ。 稲代総合病院・・・。
岡野「お疲れ様。本当に・・・・・・。」
少し笑いながら言うのである。 ナースステーションに入ってきたのは、真っ赤なサンタの衣装に身を包んだ朔・・・。 今日はイヴということもあって、普段はなかなか楽しみが少ない入院生活を送っている子供達のためにと、小児科のスタッフが中心となっていろいろな企画を考えたのだった。そして、今日一日は食事に子供達が好きなメニューを追加してあげたり、子供達の親に協力を要請して、ささやかなレクリエーションをしたりしていたのだった。そして、朔が最後の仕上げに消灯時間後の病室にサンタの格好で、プレゼントをひとつずつ置いてきたのだった。
朔「岡野さん、笑わないで下さいよ。・・・消灯時間後なんだからこんな格好する必要はないんですから・・・。」
そう言うと自分で着ているサンタの格好を見る。 すると、「まあ、年に1度だがら。」と言いながら佐藤医師が出てきた。
佐藤「その格好、結構似合ってるよ。」 岡野「そうですよね。」 朔「佐藤先生も岡野さんも、もうやめて下さいよ・・・・・・。」 佐藤「いやいや。他の先生方も似合ってるって言ってたよ。」 朔「はあ。」 岡野「それに、朔君は子供達に懐かれているからね。今回の役はピッタリだったのよ。」
静寂が支配する病院のナースステーションでは3人の談笑が続く。 気が付けば、時計は9時近くになっている。
佐藤「ところで、朔君、いいのかい?」 朔「何がですか?」 佐藤「私なんか、家族から『クリスマス・イヴくらい家族と一緒に過ごせないの?』って言われてしまったよ。」 朔「・・・ああ、亜紀のことですか?」 岡野「そうよ。ほら、当時から、ほとんどのスタッフは君達2人のことは知っている訳じゃない。やっぱり、気になるっていうのかしらね。」 朔「気にかけてもらえるのはありがたいです。今日のことは大丈夫です。あらかじめ言っておきましたから。それに、仲間も一緒に明日会う予定ですから。」 岡野「でも、怒られたんじゃない?」 朔「いえ。そんな事は無いです。」 佐藤「それならよかった。・・・今日はもう終わりだろう?冷えるみたいだから、雪でも降ったら大変だよ。早いうちに帰りなさい。」 岡野「佐藤先生の言うとおりよ。自転車でしょう?」 朔「あ、はい。じゃあ、お言葉に甘えて。お先に失礼します。」
そういうと朔は立ち上がり、急いで着替えた後、玄関前の自転車に飛び乗り、家路への坂道を下って行くのであった。 その首には、いつも通り、亜紀の手編みのマフラーが巻かれている。だからであろう、そんなに寒さは感じなかった。
一方、松本家では。
芙美子「お姉ちゃんって、お兄ちゃんのどこに惚れたの?」 亜紀「何?突然・・・。」 芙美子「ちょっと気になっちゃって。」 亜紀「う〜ん・・・どこかなぁ・・・。」
芙美子の部屋で話す2人。夕食後、亜紀が朔と約束もしていないのに、イヴを2人で過ごそうと思って訪ねてきたのである。もちろん、パジャマなどの寝具や着替え、洗面用具を持参している。泊まる準備は万端なのだ。 そして、朔から「夕食は病院で済ます。」と聞いていたのだが、一応、少量の食事も持参している。 亜紀と芙美子は、朔が帰宅するまで部屋で話すことにしたのである。
芙美子「なんとなく?」 亜紀「なんとなくって言うよりも・・・運命だと思う。」 芙美子「・・・お姉ちゃんものろけたりするんだね・・・。」 亜紀「私は本気だよ。もう、いつのまにか好きになって、付き合い始めて・・・。」 芙美子「お兄ちゃん、幸せ者だね。もっとお姉ちゃんに感謝しなとね(笑)」 亜紀「そうだね。もっと感謝してもらわないと(笑)」 そう亜紀が言うと、2人で笑い合うのであった。 その時だった。朔が帰宅したのは。 部屋に入るなり亜紀の姿に少なからず驚いた。
朔「亜紀?」 亜紀「おかえり。」 朔「なんで?明日は約束してるけど・・・。」 亜紀「私は時間あったから。もう学校は冬期休暇だし。」 朔「あっ、そっか・・・。」 亜紀「朔ちゃん、いつも肝心なこと忘れてるよね。」 芙美子「じゃあ、邪魔者は退散しま〜す!」
2人の幸せな時間を邪魔しないように、おどけながら部屋を出て行った。 「上着。」と亜紀が言う。朔は、何かに気付いたように「ああ。」と言いながら立ち上がる。
亜紀「貸して。」 朔「ありがとう。」 亜紀「はい、これでよし、と。」
朔が上着を脱ぐ間に、亜紀はハンガーを手にしていた。脱いだ上着を素早くハンガーに掛けてしまうのであった。 そんな亜紀の姿にまんざらでもない様子の朔。その時の亜紀は、まるで良き妻である。嬉しくないはずがない。思わず顔がほころぶのであった。 そんな朔の様子に気付いた亜紀は、「どうしたの?」と聞くのである。朔が考えていることなど容易に想像がつくのだが、そう言った。 もちろん、朔は「なんでもないよ。」と言うのである。気持ちはバレバレでも、そんな朔を可愛いとすら思える亜紀。ここにも自分が朔を好きな理由の一つがあるのである。
亜紀「ご飯は?」 朔「食べてきたよ。」 亜紀「少しだけ作って来たんだけど、お腹に余裕無いよね?」
本当のところ、朔は空腹の状態ではなかったのだが、亜紀の手作りとなれば話は別である。愛情がいっぱい詰まった手料理を断るほど、朔も鈍感ではない。それに、そうそう食べられるものではないため、朔にとっては嬉しくて仕方ないのである。 病院での昼食が、毎日亜紀の手作り弁当だったならどんなにいいことかと朔は思うのである。 しかし、現実には頼むことはできない。理由はただ一つ、亜紀に無理をさせたくはないからだ。早起きして作ってもらうのは気が引けてしまう。それに焦ることはない。いつかはそうなってくれるのであろうから。その日が来るのが楽しみにとっておきたいとも考える朔なのである。 さっそく、亜紀が弁当箱のふたを開けると、中にはサンドイッチが詰まっていた。 包丁が苦手なせいだろうか?ところどころの切り口が、少しだけ崩れている。 しかし、そんなことは気にせずに手を伸ばして口に運ぶ。誰でも簡単に作れるかもしれないメニューではあるが、本当に美味かった。豪華な食材を使ったわけでもない。しかし、亜紀の愛情が何よりも美味しい味付けなのである。
亜紀「どう?」 朔「相変わらず、美味いよ。」 亜紀「よかった・・・。」
他愛もない会話はデザート代わりになった。 去年のイヴは時間がなかった。龍之介に言われて急遽、帰省したのだが、電車の遅れもあって、長い時間を一緒に過ごせなかったからである。でも、今日は違う。
朔「今日、泊まるんだよね?」 亜紀「うん。いいよね?」 朔「もちろん。亜紀がいるのといないのじゃ大違いだよ。」 亜紀「また、いろんなお話をしようね。」 朔「そうだね。」
その時、富子が入ってきて言った。
富子「亜紀ちゃん、今日は冷えるみたいだから、朔に毛布を出してもらいなよ。それと、お風呂。湯加減いいから入っておいで。」 亜紀「わざわざすみません。ありがとうございます。」 富子「いいんだよ。あと、朔!」 朔「なんだよ?」 富子「亜紀ちゃんに変なことしたら承知しないからね!」 朔「しねぇよ!」
朔が反論した時には、富子の姿は部屋になかった。 亜紀「フフフッ。」 朔「何で信用がないんだろうなぁ。俺より亜紀の方が信用されてるよ。絶対・・・。」 亜紀「でも、朔ちゃん。」 朔「ん?」 亜紀「夢島では、私のことを抱こうとしたじゃない。」 朔「そ、それは・・・・・・。」 亜紀「フフッ!わかりやすいなぁ。やっぱり仕組んだんでしょ?あの時・・・。」
さらりと言ってのける亜紀に「今さらそのことは・・・。」朔は、そう言いたげである。唯一の救いは亜紀が怒ってはいないことであった。 朔は、観念したように「そうだよ。」と言った。
亜紀「せめて、枕の中とかに入れておけばバレなかったのにね。スケちゃんもグルでしょう?お見通しなんだからね。」 朔「・・・・・・。」 亜紀「私に隠し事をしても無駄だからね。」 朔「はい・・・・・・。」
この時、朔は必死で表情に出さないようにしているのであった。「枕の中に入れておけば・・・・・・。」亜紀がさっき言ったことにビクビクしながら会話を続ける。 実は、いざという時のために朔は、枕の中に亜紀に見つかってはいけないものを、常に忍ばせているのである。亜紀が、時々泊まりに来る時には、「あわよくば・・・。」という期待と、「その時までは見つかりませんように・・・。」という不安が頭の中によぎるのであった・・・・・・。 こればかりは、亜紀も見抜くことができていないのである。
亜紀「じゃあ、私、先にお風呂に入るね。」 朔「ん?ああ・・・・・。」 亜紀「?・・・どうしたの?」 朔「何が?」 亜紀「ま、いいか・・・。」
亜紀が風呂場に向かう。朔は亜紀に勘付かれかけたがなんとかごまかしたのである。
続く
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...2005/05/26(Thu) 20:03 ID:T.CyDIPQ
Re: アナザーストーリー 2 Name:ゴン41
| | たー坊様。 こんばんは。ご無沙汰してすみません。ゴン41です。ほのぼのとした時間が、ゆっくり流れてますね。今年のイヴは二人で長い時間を過ごせそうです。今夜は朔の部屋で朔と亜紀のどんな会話があるのでしょうか?甘々?しかし朔、自分の部屋の枕にも忍ばせてましたか。お気持ちよくわかります。 しかし母のセリフ、バレてるんじゃない?朔らしいけれど。続編楽しみにしております。
|
...2005/05/26(Thu) 22:01 ID:xVRSTBDM
Re: アナザーストーリー 2 Name:SATO
| | こんばんは。 朔と亜紀には、ゆっくりと時間が過ぎていくイブを過ごしてもらいたいですね。 朔が病院の子供たちに優しく接することができるのは亜紀の存在が大きいのでしょうね。彼のサンタ姿を想像して楽しませていただきました。
|
...2005/05/26(Thu) 23:18 ID:F62y3.uY
Re: アナザーストーリー 2 Name:グーテンベルク
| | たー坊様へ こんばんは、グーテンベルクです。いよいよクリスマスイブですね。ステキなクリスマスになってほしいと祈りたい気分です。朔の母富子の「亜紀ちゃんに変なことしたら承知しないからね」のところ・・・想像がつきます。次回も楽しみにしています。お互いにがんばりましょう
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...2005/05/28(Sat) 20:37 ID:g5arKo5k
Re: アナザーストーリー 2 Name:朔五郎
| | たー坊さま 「こういうこと」は女性にはバレバレなんですよね、案外(笑) どんなイヴになるのか、楽しみです。
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...2005/05/28(Sat) 23:09 ID:R6NrMCR.
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | ゴン41様 こちらこそお久しぶりです。 今回もお読み頂きましてありがとうございます。 さて、ほのぼのとした時がゆっくりと流れている聖夜ですが、朔の企みによって一変します。 おっしゃるとおり、富子の朔へのセリフが関係してます。次回はそこを描くつもりです。楽しみにして頂ければと思います。 これからもお読みいただければ幸いです。
SATO様 お読み頂きましてありがとうございます。 私自身、イヴの夜はゆっくりと時を刻んで、有意義な時間にしてもらおうかと思ったのですが、方向は変わってきます。次回はそこを楽しみにして頂ければと思います。 これからもお互いに頑張っていきましょう。
グーテンベルク様 毎回お読み頂きましてありがとうございます。 富子の「亜紀ちゃんに変なことしたら承知しないからね」のところは、富子が悪戯っぽく笑いながら、部屋を出て行くようなシーンをイメージしました。今回の物語では個人的に一番気に入っている部分です。 さて、その悪戯っぽい笑顔の裏には、朔の隠し事が富子にだけバレているのですが、次回は一番バレてはいけない人物にバレてしまいます。 次回はそこを楽しみにして頂ければと思います。 お互いに頑張りましょう。
朔五郎様 ご感想を頂きましてありがとうございます。 ズバリ、おっしゃるとおりだと思います。そういった点では、富子にしても芙美子にしても、松本家の女性には、すでに朔の考えなどお見通しなのかもしれません。さらに、感の鋭い亜紀なら余計に分かってしまいやすいものです。次回はそこを描きます。 楽しみにして頂ければ幸いです。お互いに頑張っていきましょう。
読者の皆様 こんばんは。いつもお読み頂きましてありがとうござます。たー坊です。 執筆を開始して、皆様からの暖かい励ましに支えられながら、だいぶ長い間書き続けてきました。 あらためてお礼を申し上げます。
さて、日常の合間を縫って執筆をさせて頂いてきましたが、最近の環境の変化に伴いまして、今まで週に3回くらいのペースでUPさせていただいておりましたが、ここ最近は週に2回を目安にさせて頂いてます。これからも今のペースを維持していきたいと考えておりますが、日に日に難しくなって来ることが予想されます。 そこで、次回からは完全不定期にさせて頂きたいと思います。今まで通り、週に2回を目標に努力しますが、時期によっては週に1回や、2週間に1回ということも考えられます。 私の勝手な都合ですが、ご理解をお願いします。
物語が終わるまで書き続けたいと考えております。 これからも、お読み頂ければ幸いです。
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...2005/05/29(Sun) 19:12 ID:x.srlg1.
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 亜紀が風呂から戻ってきた後、朔が入れ違いに風呂場へ向かった。 部屋で一人きりの亜紀は、すっかり伸びた長い髪を乾かした後、陸上をしていた時の習慣で体をほぐしたりして朔を待つ。それは、東京で一緒に暮らしている間に、いつのまにかの習慣になっていた。
ひととおりを終えてふと窓の外を見ると、空が曇っているようである。 亜紀は思い出していた。夕方の天気予報で「雪が降る可能性がある。」と言っていたことを。ブラウン管の中にいる気象予報士が言っていた言葉を頭に浮かべた。 「もしかして、朝起きたら一面の銀世界だったりして。」などと思いながら、月の見えない闇をぼんやりと見ている時、朔が戻ってきたの。 後ろからそっと近づき、声を掛けた。
朔「どうしたの?」 亜紀「空を見てたの。」 朔「・・・・・・・・夜だよ。青くないし、それに曇っているみたい。」 亜紀「だからだよ。夕方の天気予報で雪が降るかもしれないって言ってたの。」 朔「どうかなぁ。さっき帰って来る時には、そんなに寒くはなかったように思えたんだけど。」 亜紀「そっか・・・。じゃあ、雪は無理かな・・・・・・。ねぇ?もし、雪が降って積もったら雪だるま作ろうよ。」 朔「いいよ。じゃあ、てるてる坊主をつくって逆さにつるさないと。」
そういうと朔は、部屋にあったティッシュペーパーを何枚か取り出して、素早く作ってみせた。出来上がったものに亜紀がマジックで表情を付ける。
亜紀「これでいいね。」 朔「じゃあ、吊るすよ。」
朔が窓辺のカーテンレールから逆さまに吊るした。二人そろって手を合わせて拝む・・・・・・。
「じゃあ、そろそろ寝よう。」と、拝み終わった亜紀が朔に言った。 明日は、久しぶりに6人が揃ってのクリスマス・パーティーの予定である。 しかし、朔は「まだ11時半だよ。ちょっと早すぎない?」と言うのだが、早くも亜紀はベッドの中に入っているのである。
朔「・・・・・・・・・・。」 亜紀「早いなら中で話そうよ。暖かいし。私はその方が嬉しいけど・・・・・・・。」 朔「・・・・・・ま、いいや。」 亜紀「何か不満そうだね。私は一緒に寝て欲しいんだけどな。」 朔「・・・・・・いや・・・不満とかじゃないんだ。ただ・・・相変わらず大胆だなぁって思ってさ。」 亜紀「変なこと考えないでね。」 朔「考えないって。」 亜紀「・・・・・・・・私ね、好きなの。」 朔「何が?」 亜紀「朔ちゃんの腕の中にいること。」
返事に困る朔。男冥利に尽きる言葉をかけてもらって嬉しいのはもちろんではあるが、大胆でもあるので、返す言葉が見つからないのである。
朔「あ、そうだ。毛布出さないと。」
そう言うのが精一杯であった。 それだけ言うと、押入れの戸を開けて中から毛布を出してきた。 そして、そっと亜紀に掛けてあげるのであった。
亜紀「少しは暖かくなったけど、やっぱり、隣に朔ちゃんがいないとなぁ・・・・・・。」 朔「今、行くよ。」 亜紀「早くしてね。」 朔「急かすなよ・・・・・・。」
ベッドに入るのをためらうのは、やはり、亜紀の頭の下の枕の中に見つかってはいけないものを忍ばせているからである。 朔は、亜紀に悟られることのないように、平静を装いながら亜紀の隣に体を置いた。
亜紀「ねえ?」 朔「ん?」 亜紀「質問があるんだけど。」 朔「何?」 亜紀「これ。」
と、言うと、亜紀は頭の上に置いていた一枚の紙を手にとって、朔に見せた。
朔「なにこれ?大学の授業?」 亜紀「そう。質問っていうか、アドバイスが欲しいの。」
亜紀が取り出した紙には、大学での教養科目のひとつであろう科目のテストの情報がメモしてあった。 横にいる亜紀は、小論文の書き方について朔にアドバイスを求めたのである。
朔「でも、亜紀ならこういうのは問題ないんじゃない?」 亜紀「うん。普通に書くなら私だけでも何とかなると思うの。でもね・・・どうせ書くなら、より良くしようと思ったのね。それで、朔ちゃんに聞こうと思ったの。」 朔「なんで?」 亜紀「小学校の読書感想文で優秀賞を取ったことあるでしょ。そんな実績がある朔ちゃんなら、何気なく言ってくれる中にも、結構、ヒントがあったりするんじゃないかなって・・・・・。『どすこいロミオとジュリエット』も面白かったしね。それに・・・。」 朔「それに?」 亜紀「普段から、課題とかレポートを出してるでしょ。」 朔「そうだね。」 亜紀「そうでしょ?テストは年明けだから、まだ時間はあるんだけど・・・・・・。」
そう言った亜紀に、朔はどういった内容の授業なのかを尋ねた。 いろいろと亜紀が話す。その内容を聞いた上で、朔は自分ならこうするという前提で、亜紀にいくつかのアドバイスを、与えたのである。
亜紀「ありがとう。」 朔「参考になるかは分からないけどね。」 亜紀「メモしておこう。」
そう言うと、亜紀は近くにあったシャープペンを手に取り、紙の隅に素早くメモを取ったのだった。
亜紀「これでよし、と。」 朔「亜紀なりに書けば大丈夫だよ、きっと。それにしても努力するね。」 亜紀「朔ちゃん譲りだよ。」 朔「俺?」 亜紀「そうだよ。あれだけ医学書を読んでるじゃない。」 朔「俺は当たり前のことをしてるだけだよ。」 亜紀「そこが、努力している部分でしょ。」 朔「そうなのかな?」 亜紀「たぶんね(笑)」
2人で仰向けになりつつも、顔だけは互いの視線を外そうとはしない。 肩をくっつけ合い、温もりを感じあうことも忘れてはいないのである。
朔「電気消すよ。もう1時だし。」 亜紀「少ししか話していない気がするのに・・・。時間が経つのは早いね。」 朔「明日は、久しぶりに皆で集まるから早めに寝ようよ。」 亜紀「そうだね。じゃあおやすみ。・・・あ、でも、どっちかが寝るまでは話そうね。」
亜紀のお願いを快諾した朔は、「うん。」と言いながら電気の紐を引っぱった。 朔が再びベッドに戻ってくるのを待ち、一緒に体を横にしたその時だった。
亜紀「あれ?」 朔「どうしたの?」 亜紀「???・・・・・・枕の中・・・なのかな?何か・・・ものが入っている感じがするの。」 朔「え・・・・・・・・・・。」
朔の心境はまさしく“ヤバイ”そのものである。朔が唯一亜紀に隠していることの物的証拠が、奇跡的な偶然から亜紀に勘付かれかけている。亜紀にアドバイスを求められてきたことによって、自分でも忘れかけていたことであったために、平静さを装うにも一苦労だ。
朔「何?」 亜紀「何か・・・・・・・、枕には本来入っていない物が入っているような気がする。」 朔「え?・・・・・・(何で、そんなに鋭いんだよ!!)」 亜紀「・・・・・・よし!開けて見てみようっと。朔ちゃん、電気つけて。」 朔「何も、そこまで気にしなくても・・・・・・。」 亜紀「いいから。」 朔「・・・・・・・・・・(神様!頼みます!見つかりませんように・・・。)」
下手をすると亜紀に疑われてしまう恐れがあったので、言われるままに部屋の電気を点けた。 そして、何もないように装いつつ、必死に心の中で拝む・・・・・・。亜紀に見つかったら、許してもらえる保障はない。 亜紀の様子を伺う・・・・・・・・・・・。
亜紀「絶対に何かあるはず・・・・・・・・・・。」 朔「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「できれば大雑把に確認して欲しい・・・・・・。」そんな朔の願いも空しく、枕の中の詰め物を、外にこぼさないように、少しづつ、少しづつ手にとっては、何かおかしな物がないかを確認する。 そして、ほどなくして、亜紀の手の中にある物が見つかってしまう。その瞬間、亜紀の表情がこわばった。
亜紀「朔ちゃん!これはどういうことなの!?」 朔「・・・・・・・・・・・・・・。」 亜紀「黙ってちゃ分からない!」 朔「いや、その・・・・・・。」 亜紀「・・・・・・・・・・どうしてこういうことを考えるのかな?夢島で一回失敗しているのに・・・・・・・・。」 朔「・・・・・・だって俺、ずーっと我慢してるんだもん・・・・・・。」
亜紀が怒らないハズがなかった。 悲しさと怒りが交錯する表情に、朔は思わず本音が出てしまう。 申し訳なさそうに言った朔。亜紀から見るその表情からは、謝罪の気持ちと恥ずかしさが感じ取れる。 そんな朔に、亜紀は聞いた。
亜紀「朔ちゃん、もしかしてこんなこと思ってるんじゃない?」 朔「え?」 亜紀「例えば、『胸くらい触らせろ。』とか思ってるんじゃない?」
図星であった。夢島の時に水着姿を披露してくれた時に、なんとなくではあるが、そういう願望が芽生えていた。そして、今年の夏に、恵美も一緒に夢島でキャンプをした時に、朔は今度は大胆な水着姿を見た。その時から、その下心は確かなものになっていた。 「あわよくば・・・・・・。」そんな下心を、時々、亜紀が泊まりに来るたびに考えずにはいられない朔。
朔「・・・・・・・・・・。」 亜紀「やっぱり考えてる・・・・・・。」 朔「考えてねぇよ。」 亜紀「ウソ!・・・だったら、どうして枕の中に、こんな物を隠すの!?」 朔「それは・・・・・・。」 亜紀「ほら、考えてるじゃない・・・・・・・・・・。」 朔「・・・・・・・・・・・・。」 亜紀「せっかくのイヴなのに。」 朔「ごめんなさい・・・。」
バレバレなのにも関わらず、少し頑張った朔に、亜紀は内心驚いていた。 そして、朔の気持ちを確かめるように言った。
亜紀「どっちかにして。」 朔「な、何が?」 亜紀「・・・・・・私と一緒にいてくれるなら、そういうことは考えないで欲しい。・・・もし、別れる覚悟があるなら、いつでも私のことを襲いなさいよ。」 朔「・・・・・・・・・・。」
なぜ、ここまで亜紀が拒む理由は朔には分からなかった。普通の恋人同士なら、とっくにそういうことになっているのだろう。どうしても分からない朔は、思い切って聞いてみた。
朔「あのさ・・・・・・どうしてそこまで?」 亜紀「いい気はしない。当然じゃない。」 朔「普通の恋人同士なら、そういうこと考えるのは当たり前だと思うけど・・・・・・。」
今日の朔は少し違う。強気な表情で亜紀に質問を続ける。 そんな朔の様子に、亜紀も本心を話すことにした。
亜紀「前に『結婚してから』って言ったじゃない。」 朔「それはそうだけど・・・。」 亜紀「2人でちゃんと自立して、ケジメを付けてからじゃないと嫌。」 朔「それは・・・・・・・・・。」 亜紀「それに、旦那様じゃないと嫌。たとえ朔ちゃんでも、今はそういう関係になりたくないの。」 朔「・・・・・・何で?」 亜紀「私は、結婚する人が、一生で一番大切に思える人だと思うの。そう思える人とだけ。」 朔「・・・そういうこと・・・・・・。」 亜紀「ガード固くなったでしょ?」 朔「うん。高校の時とは大違いだよ。」
そう言うと、朔は亜紀の手から奪い取ってゴミ箱に捨ててみせた。どこか納得した様子で再びベッドに仰向けになる。 亜紀もまた、これ以上話すのはやめようと決め、朔の隣に横になった。 ふと、窓の外に、白いものが舞っていることに気付く。
亜紀「朔ちゃん!雪!」 朔「え?」 亜紀「早く窓の外見てよ!」 朔「おおっ!すげぇ。」
2人が窓の外を見ると、雪が舞っている。 すると、亜紀が再びてるてる坊主に手を合わせ始めた。横でも朔が、亜紀の横顔を見つめながら、心の中で手を合わせていた。
亜紀「天気予報が当たったね。明日は積もるかな?」 朔「てるてる坊主には頼んだんでしょ?『もっと降りますように』って。」 亜紀「うん。雪ダルマ作りたいからね。」
付き合いだして6年目。 婚約指輪を指にはめてから、ちょうど1年が過ぎた聖夜。さっきのぶち壊されたムードは、もはや関係なくなっていた。 「まだまだ思い出が足らなさ過ぎる。」2人の共通の思いだ。「これからもっと色んなことが起こって欲しい。2人だったら、たとえ辛いことでも乗り越えていける。」と思っている。 この後2人は眠りについた。朔の腕の中に亜紀はいない。肩をくっつけて仰向けのままだった。
翌日・・・・・・。 朔が先に起きた。 隣にいる亜紀の寝顔を見る。いつのまにか、朔の懐のあたりに顔を寄せている。 まだ夢の中にいる亜紀を起こさぬように窓の外を見た。そこには、薄っすらとだけ雪が積もっていた。
朔「・・・・・・雪だるまは無理だよ。亜紀。」 亜紀「スー、スー・・・・・・・・・・。」
まだ寝ている亜紀に囁く様に言った。 そして、その直後に亜紀が目を覚ます。
亜紀「おはよ・・・・・・。」 朔「あ、ゴメン。起こしちゃったね。」 亜紀「普通に起きたけど、何か言った?」 朔「いや。別に何も。」
朔は、亜紀が起きる直前に言ったことを隠した。 すると、亜紀が思い出したように窓の外を見る。亜紀の目にも雪だるまは作れないことは明らかだった。 「あ〜あ・・・雪だるまは無理ね・・・。」と残念そうに話し始めた亜紀を朔が優しく慰めた。
続く
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...2005/05/29(Sun) 19:35 ID:x.srlg1.
Re: アナザーストーリー 2 Name:サイトのファン
| | たー坊さんへ 執筆、お疲れ様です!! 2話続けて読ませて頂きました。 思わず、笑ってしまいました。 サクの気持ちは同性として痛いほど分かり 枕の下に隠したモノを2回連続で見つかって しまうのもサクらしくて良いですね!! サク母の富子の発言も最高です!! けど、亜紀の考え方はスゴク素敵です。 亜紀のイメージとしては是非、結ばれるのなら 結婚後が似合いますね。 心が温まる話しも素敵ですが、笑える話しも いいですね。 続編、楽しみにお待ちしております!!
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...2005/05/30(Mon) 01:14 ID:Sx8katjs
Re: アナザーストーリー 2 Name:グーテンベルク
| | こんばんは、グーテンベルクです。今回も読ませていただきました。サイトのファン様もおっしゃってましたが、亜紀の考え方、とても良いと思いますし、心でつながっているということがよく分かります。そして・・・今回は雪だるま作りは厳しいかもしれないですけど、いつか2人で作って貰いたいですね。続編、楽しみにしております。お互いに最後までがんばりましょう。
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...2005/05/30(Mon) 19:11 ID:YMzFiIgQ
Re: アナザーストーリー 2 Name:SATO
...2005/06/01(Wed) 23:56 ID:56sm.rro
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | サイトのファン様 今回もお読みいただきましてありがとうございます。 おっしゃる通り、亜紀の考え方はドラマの中でのイメージから湧いたものを、私なりに考えて、こういう形にしました。そういうことなので、朔は当分の間”お預け”を食らってしまうでしょう。 次回もお読み頂ければ幸いです。
グーテンベルク様 今回もお読みいただきましてありがとうございます。 雪だるまですが、次回に意外なことが起こります。そして、その事がさらに2人を近づけます。グーテンベルク様がおっしゃる”心でつながる”が余計に分かると思って頂けるように頑張ります。 次回もお読み頂ければ幸いです。
SATO様 ご感想をお寄せ頂きありがとうございます。 以前から何度か”松本家での亜紀”は書かせていただいておりますが、一連の松本家訪問で、亜紀は松本家の一員として認められていると、私は考えています。 おっしゃる通り、朔の悪行がバレた時には、女性陣で責めそうです。特に、朔が亜紀を泣かせるようなことがあったら、富子と芙美子は黙ってはいないでしょうね。
シンクロ・・・・・・観客席の一番後ろの方で見守っている恵美を想像してしまいました。
次回もお読み頂ければ幸いです。
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...2005/06/02(Thu) 19:48 ID:2fpaur5g
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 松本写真館の一室には久しぶりに6人が集まっていた。
恵美「準備できてるよ。」 ボウズ「よし。じゃ運ぶぜ。」
台所では、それぞれが持ち寄った食材を恵美を中心に料理し終えたところだ。 宮浦に積もったわずかな雪は、日があたる場所の雪は、ほとんど解けてしまっていた。残っている雪は、雪かきをして壁などの日陰になっているところだけに残っている・・・・・・。
亜紀・智世「お待たせ。恵美特製だよ。」 龍之介「お〜!待ちわびたよ。」
昼食時に皆は集まっていた。 夜はカップル同士で過ごせるように、全員集合するのは昼にしようと事前に決めていた。
恵美「6人分って結構大変だったけど、亜紀と智世がいてくれたから助かったわ。」 亜紀「私達は何にもしてないよ。」 智世「そうなのよ〜。ほとんど1人でやっちゃって・・・・・・私達なんて全然いいとこなし。憎たらしいったらありゃしなかったわよ!」
おどけて言う智世に恵美は笑った。最近の智世は、龍之介にどことなく似ている部分がある。 恵美はもちろん、亜紀もまたその点に気付いていた。恵美と亜紀で微笑み合う。
智世「何よ〜?2人して私の顔見るなり笑うなんて。」 恵美「ううん。」 亜紀「何でもないよ。気にしないで智世。」
そう言われたものの、どこか怪訝そうな表情の智世。隣にいる龍之介も同じである。 せっかく美味しそうな料理を前にして、“お預け”をくらっていた朔とボウズは、「まあ、いいじゃない。早く食べようよ。」と待ち遠しさを隠して言った。
亜紀「じゃあ、今年も1週間を切ったけど、年が明けても私達の仲は変わらないことを誓って、乾杯!」 一同「乾杯!!」 朔「亜紀、なんか忘年会みたくなってない?」 亜紀「そう?」 龍之介「まあ、いいじゃねぇか。おまいさん。どっちみち年末なんだから。」 ボウズ「固いこと言うんじゃねぇよ、朔。」 朔「何もそこまで言わなくてもいいじゃない・・・・・・。」
こんな状態から6人に笑いが起こることはかなり多い。 6人が集まる時は何かあればすぐに笑う。 一見、笑いすぎかと思うことも、日常の煩わしいことを吹き飛ばすには必要なこと。そして、さらに親睦を深めるのに笑顔はもってこいなのである。 当たり前だが、笑顔からは自然と会話が生まれる。 朔と亜紀、龍之介と智世、ボウズと恵美。このメンバーだからこそ、仲が良いのかもしれない・・・・・・。
龍之介「うめえっ!!」 恵美「ホント?どう?顕良さん。」 ボウズ「不味いはずがねぇだろ。最高!」 智世「ホント、おいしい〜!」 朔「よかったなボウズ。恵美が料理上手で。これでお前が浮気する心配はないな。」 ボウズ「ゴホッ!人聞きの悪いことを言うなっつーの!!」
思わずむせるボウズの様子に大笑いする5人。さらに恵美が「浮気しないでね。」と冗談混じりに言う。思わず「しねぇよ!」と少し声を大きくして言った。もちろん笑顔で。
智世「恵美、心配しなくていいわよ。こいつにそんな度胸はないんだから。」 亜紀「智世、違うでしょ。ボウズは根っからの優しい人なんだから。入院中に話し相手になってくれてたんでしょ?」 恵美「うん。だから、リハビリもやる気になったの。」
女性陣に誉められたボウズは、照れ隠しからか「そんなことねぇよ。」と言った。しかし、顔が赤くなっていることは、朔、亜紀、龍之介、智世、恵美、誰の目にも明らかだった。 少し俯き加減のボウズを、だれもが好ましい目で見ている・・・・・・。
ボウズ「・・・・・・あんまり、ジロジロ見るんじゃねぇよ・・・・・・。」 龍之介「そう照れるなよ。」 智世「あんたが照れてるの見ると鳥肌がたつのよね〜。」 ボウズ「どういう意味だ!?それ。」 恵美「智世はね、『気味が悪い』って言いたいの。」 ボウズ「おいおい!恵美がフォローしないで、誰がするんだよ!?」 龍之介「いいねぇ〜。いい感じに毒を吐いてるね。恵美。」
初めて見せた意外な一面。 6人全員揃うのは今回でまだ3回目なのだが、かなり馴染んできている。もちろん、5人の人柄がなければ難しいことだが、会う回数が増えれば増えるほど、恵美の笑顔と言葉の数が増していることに、全員が気付いていた。
亜紀「ちょっと驚いたけどね。」 智世「そうね。でも、私の気持ちを代弁してくれてありがとう。」 恵美「どういたしまして。」 朔「・・・・・・え?当たってるの?」 智世「うん。恵美が言ってくれたことは正解よ。」 ボウズ「おいっ!!正解かよ!!」
とりあえず、ツッコんでみたのはボウズ。次の瞬間、「それ、どんなツッコミなんだよ。」と苦笑いしながら、龍之介が、ボウズの後頭部を“パシッ”と叩きながらツッコんだ。 その瞬間、部屋は再び大きな笑いに包まれる。特に女性陣のウケの良さに、「これはイケる!」と思ったのか、龍之介は無理やりボウズを即席の相方にし、戸惑うボウズを無視して漫才をし始めた。特に龍之介のボケっぷりに、朔と亜紀と智世と恵美は大笑いした。 部屋は若い笑い声で満たされていた。
・ ・ ・ あっというまに楽しい時間が過ぎ去っていった。 女性陣の手料理に舌鼓を打った一同。 時間は夕方の5時半になっている。年に一度のパーティーはお開きの時間だ。 後片付けを済ませた後、写真館の前で解散となった。年始に再び集まることを約束し合って。 ボウズは恵美を宮浦駅まで送っていく。龍之介は智世の家で2人きりのクリスマスを過ごす予定らしい。仲睦まじく手を取り合って上田薬局店に向かった。 そんな2組を見送った後に取り残された朔と亜紀・・・・・・。
亜紀「家でお父さんとお母さんとクリスマスを過ごすの。よかったら、朔ちゃんもどう?」 朔「・・・・・・遠慮しておくよ。」
この朔の言葉は、亜紀が予期していないものだった。てっきり、「お邪魔します。」とでも即答してくれるものと思っていただけに、少なからず驚き、落胆する。
亜紀「どうして?」 朔「ほら、家族の団欒を邪魔しちゃ悪いでしょ。」 亜紀「そんな、気にしなくていいの。お父さんもお母さんも、朔ちゃんが一緒だと喜んでくれるんだから。朔ちゃんだってわかるでしょ?」 朔「うん。」 亜紀「だったら・・・・・・。」 朔「でも、今日はちょっと。」 亜紀「・・・・・・・・・・。」
黙り込み、あからさまに不機嫌な表情を作る。 しかし、朔はそんな亜紀の様子を恐れることなく話し始めた。
朔「・・・・・・そんな顔しない。」 亜紀「だって、そういうことを言うんだもん。」 朔「いや・・・・・・普段、俺が亜紀を独占しちゃってるから、たまには家族水入らずの時間を過ごしてもらった方が良いんじゃないかと思ったんだ。」 亜紀「独占って・・・・・・。」 朔「覚えてる?亜紀が『ウルル』に行きたいって言った時に、俺が言ったこと。」 亜紀「あ、『亜紀に会いたい人、沢山いるんじゃない?』って言葉?」 朔「うん。あの時は“死ぬ”って絶望の中にいたけど今は違う。でも人間は、いつ死んでしまうか分からないことに変わりはないでしょ?」 亜紀「うん。」 朔「今のうちに親孝行しておいたら?本来、今頃は亜紀のお父さんもお母さんも、亜紀のことを想って自分を責め続けていたかもしれないしね。・・・亜紀のお父さんとお母さんが、今すぐ死なない保障はないでしょ?」 亜紀「ちょっと朔ちゃん!いきなり縁起でもないこと言わないで!!」 朔「ゴ、ゴメン!・・・・・・でも、じいちゃんだって、思いもよらないところで死んじゃったから。サトさんの骨を盗んでさ・・・・・・。」 亜紀「うん・・・・・・。」 朔「俺達に残された時間はたくさんある。絶対に・・・・・・。でも、だからといって、その時間を2人きりのためだけに使い切るのはもったいないような気もするんだ。もちろん、単に日々をボーっと過ごすよりは、何倍も何十倍も有意義な時間だけどさ。」 亜紀「・・・・・・少しは自分達にとって最高な時間だけを過ごすんじゃなくて、その他の大事な人たちへの感謝の気持ちを忘れずにいないといけない。・・・・・・そんなところかな?」 朔「そんな感じかな・・・・・・。ゴメン。うまくまとめきれてないけど・・・・・・。」
朔の言いたいことを、なんとなくではあるが理解した。亜紀はそんな朔に優しく微笑みながら、「今日は、お父さんとお母さんと過ごすね。」と答えた。
亜紀「そのかわり、結婚した後の夫婦の時間も大切にしてよね。」 朔「早いよ。」 亜紀「(えっ!?)・・・・・・そうだね。」
釘を刺された朔の表情は亜紀を嬉しくさせた。同時に言った言葉はなによりも亜紀の心に響いた。「現実味を帯びてきたかな・・・・・・。」亜紀は心の中で、そう呟いた。
続く
|
...2005/06/02(Thu) 21:31 ID:2fpaur5g
Re: アナザーストーリー 2 Name:朔五郎
| | たー坊さま 朔は大人になりましたね。 この二人も、新しい段階に踏み出す時が、もうすぐやってきそうですね。
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...2005/06/03(Fri) 00:41 ID:jjCjSkPQ
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 朔五郎様 今回もお読みいただきましてありがとうございます。 この物語では、亜紀が奇跡の生還を果たしてから1年半が過ぎようとしています。そんな中、幸せな時を過ごす2人には、ぜひ、支えてもらった人たちに恩返しをしてもらおうと思っていました。 そこで、あらためて朔と亜紀、それぞれの身近な人たちへの感謝の気持ちを、本来、ごくごく当たり前のことをしてもらうという形で表現してみました。 次回もお読み頂ければ幸いです。
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...2005/06/04(Sat) 20:09 ID:WxB2FkQI
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 陽も落ちきった宮浦・・・・・・。 朔が亜紀を廣瀬家まで送る途中だ。 さっきの写真館前で話した真剣な会話とは180度変わって、歩きながら他愛もない会話が続いている。
朔「それで?それで?」 亜紀「その時の先生の顔は面白かったよ!今、思い出すだけでお腹が・・・・・・。」
朔は、叶わなかったことを聞いていた。 高校までは当たり前だと思っていたこと・・・同じクラスで、同じ授業を受けること・・・。 大学は離ればなれになってしまったために、一緒に通学し、同じ授業を受け、一緒に学食で昼食をとり、テストでは情報交換しながら協力し合って単位を取る・・・。今は、もう叶えることのできないこと・・・・・・。 普段はどういうキャンパスライフを送っているかは、たまに芙美子から聞いているが、亜紀から聞くのは初めてだった。 すると、突然亜紀が「朔ちゃん・・・・・・。」と右手でお腹を押さえて苦しみだした。
朔「お、おい!!亜紀!!」 亜紀「・・・・・・・・・・ウッソ!!ヘヘ・・・。」 朔「脅かすなよ〜。焦って損したよ。」 亜紀「フフッ!」
たこ焼きパパさんまで競争した時と同じように亜紀はやってみせた。 懐かしい亜紀の行動・・・。容姿は昔と変わっていない。唯一の違いは、ほんのわずかに髪が短いくらいである。闘病中にやせ細った体はもう元通りになった。痩せこけた頬に程よいふくよかさを取り戻していることが何よりの証拠だ。 哀しく透き通った笑顔は元気一杯の笑顔に戻っている。それは、退院して1年半が経とうとしている今でも変化はない・・・・・・。
朔「おっと!」
と、朔が言いつつ、握っていた亜紀の右手を自分の方へと引き寄せた。 次の瞬間、亜紀の隣を車が通過して行った。
亜紀「ありがとう。」 朔「当然のことだろ。車道側はあぶないな・・・よし、俺がそっちを歩くよ。」 亜紀「え、いいよ。そこまでしなくても。」 朔「いいからいいから。」
朔はなかば強引に亜紀と場所を入れ替えた。今まで歩いていた水田側に亜紀を歩かせ、朔は車道に近い方を歩く。
亜紀「ありがとう。」 朔「どういたしまして。」
にこやかな表情を見せた亜紀に自然と朔も笑顔を返す。すこぶる機嫌が良くなるのは亜紀。朔といると、いつでも何度でも素直になれることができる自分がいる。 再び学校での話題に花が咲く。楽しいお喋りはあっという間に時間を過去のものとするので、気が付いた時には廣瀬家の前にいた。
亜紀「じゃあね。朔ちゃん。」 朔「うん。たまには親孝行しないと。」 亜紀「わかってるよ。朔ちゃんの言うとおりにするからね。次はいつ会える?」 朔「そうだな・・・8時以降に家に来てくれればそんなに待たせることはないと思うよ。テスト勉強でもしながら待っててよ。俺の机を勝手に使っていいから。」 亜紀「じゃあ、お言葉に甘えることにするよ・・・それと・・・。」 朔「それと?」 亜紀「昨夜のことがないように、部屋を物色させてもらうことにするね。」 朔「使って良いのは机だけだからな。」
思わぬ亜紀の攻撃をうまくかわしたつもりだった朔。しかし・・・・・・。
亜紀「そう言うってことは、机とその近くには私に見られちゃ困るものはないわけね?もっと他を探そうっと。」 朔「親しき仲にも礼儀ありだろ。亜紀、変なことしたら本当に怒るからな。」 亜紀「何よ〜。二度も私を襲おうとした朔に言われたくない。」
亜紀の鋭さに“ドキッ”としながらも言い返した朔だったが、さらに上を行く亜紀に、再びやり返されてしまうのだった。
亜紀「東京で一緒に暮らした時はできなかったから、今回はしっかりやらせて頂きます。」 朔「何を?」 亜紀「とりあえず、エッチな本がないかどうかは調べさせてもらうね。年が明ける前に白状しちゃった方が良いと思うよ。何事も年内に片付けちゃうべきだって。片付かないで年が明けると良くないって言うじゃない?」 朔「なんだよ、それ・・・・・・。だいたい、そんな本が俺の部屋にあったら 亜紀を泊めたりしないよ。」 亜紀「それはどうかな〜?」 朔「・・・・・・・・・・。」 亜紀「だって、よりによって私が使う枕の中に忍ばせてたじゃない。案外、本棚の医学書に隠してたりして・・・・・・。」 朔「それはない!」
何をやっても亜紀が一枚上手だ。 亜紀の探しものが“あるない”は関係なく、目のつけどころと鋭さは相変わらずだ。もしかしたら朔は一生亜紀に敵わないのかもしれない・・・・・・。
亜紀「ま、いいか。」 朔「・・・じゃあ、またね。」
そう言うと踵を返した。 その時「朔ちゃん。」と呼ばれた。 後ろを振り向くと、亜紀が日中には日陰になるのだろう場所を指差している。指先には、わずかに残った雪があった。亜紀の目は朝方にできなかった「雪だるま作りをしない?」と、朔にお願いしているようだ・・・。 そんな亜紀の心の中を察したのか、何も言わずにその雪の前に立った。
亜紀「朔?」 朔「亜紀は頭を作って。」 亜紀「・・・うん!」
こうして2人は雪だるまを作り始めた。しかし、そんなに大量の雪が降ったわけではなかった。そして、その雪もほとんどが解けてしまっている。偶然にも廣瀬家の塀の内側に残った雪もわずかしかない・・・・・・。
亜紀「あんまり、残ってないね。」 朔「残っただけ良しとしないといけないんじゃない?。」 亜紀「そうだね。贅沢は言ってられないよね。」 普通なら、雪玉を転がしながら大きなものにしていくのだが、雪の量が雪の量だけに、手の中で作れてしまう雪玉を2つ作ることにしたのだ。
亜紀「冷たい!」 朔「小さいとはいえ侮ってたかな。手袋着けた方がよかったかも。」 亜紀「そうだね。」
それでも、一言二言を話しながら作業を進める二人。 そんな仲睦まじい様子を家の中から見守る人物・・・・・・。
真「・・・・・・・・・・。」 綾子「どうしたの?朔君にヤキモチ?」 真「バカを言うものじゃない。ちょっと昔を思い出してただけだ。」 綾子「・・・あー・・・亜紀が3歳位の時のことね?」 真「ああ。」 綾子「大雪が降った夜の次の朝に起きたら、『雪!』って言って、ろくに上着も着ずに外に飛び出して行っちゃて・・・。その後、あなたと雪合戦になっちゃて・・・・・・。」 真「俺が手を滑らせて亜紀の顔に当たったんだったな?」 綾子「そうよ。亜紀が大泣きするからどうしたのかと思って聞いたら、雪玉が当たったって言うじゃない。思わず怒ったけど・・・。」 真「そうだったな・・・。あれから20年か・・・いろんな事がありすぎて、最近、亜紀の小さい頃のことは、少しだけ思い出しづらくなってるんだよ。」 綾子「そんなものよね。白血病だって終わってしまえば、日常の生活をこうやって送れるものね・・・。いずれ、記憶の片隅に行ってしまうのよ。きっと・・・・・・。」 真「・・・・・・・・・・。」
今度は2人で朔と亜紀を見つめながら、当時の自分たちと重ね合わせている・・・・・・。 程なくして雪だるまができあがったようだ。その様子を見届けた2人はリビングへと行った・・・・・・。
朔「よーし。できた!」 亜紀「こっちもできたよ。ほら。」
そう言うと、手のひらに収まってしまう大きさの雪玉を見せる。 朔が亜紀の手から頭を渡してもらって自分で作った体の部分の上に乗っけた。 ミニ雪だるまの完成である。 朔「よーし・・・。どう?」 亜紀「可愛い〜!」 朔「どでかいやつもいいけれど、こういうのもいいかもしれないね。」 亜紀「手のひら乗っちゃうくらいで・・・ホントに可愛い。雪だるまの赤ちゃんね。」 朔「分かる。そんな感じだよね。」
ミニ雪だるまを塀の上に置いてみる。まるで、命があるもののような気がする。いや、本当に命があるのかもしれない・・・・・・。
亜紀「明日までの寿命かもしれないけど・・・。」 朔「うん・・・・・・・。」 亜紀「溶けたら、死んじゃうことになっちゃうのかな?」 朔「・・・・・・・かたちとしてのみ、そうなのかもしれない・・・。」 亜紀「え?」 朔「もし明日溶けてしまったとしても、俺たち2人で作ったことに変わりないだろ?・・・だから、俺たちがこいつのことを忘れない限り、死ぬってことにはならないんじゃないかな・・・・・・?」 亜紀「・・・そうだったら素敵だね。」
朔のどこか真剣な答えを聞き、亜紀は大きな瞳を思わず細めた。 そして聞いた。
亜紀「朔ちゃん。もしもだよ?あの時私が死んでいたら、かたちを失った私は、朔ちゃんの中でどのくらい生きていられることができたの?」 朔「あれから6年。・・・・・・少なくとも6年じゃ短すぎだよ。亜紀はもっと俺の中にいるだろうね・・・・・・。」 亜紀「もっと時間がかかるの?」 朔「もう一回、その時まで生きてきた分の時間がすぎても、忘れられるかどうか・・・・・・・。」 亜紀「17で付き合い始めたでしょ?それまで生きて来た分ってことは、朔が33歳、34歳になっても、私を忘れられないかもしれないってこと?」 朔「うん。・・・一つの例えだけど・・・。長い時間亜紀は俺の中にいるだろうね。もしかしたら、俺が死ぬまで忘れられなかったかもしれない」
朔本人は気付いてはいないだろうが、亜紀にとっては何よりの言葉だった。それだけ大切にしていてくれたことをこれまで以上に理解することができた。そして、これからもそう思ってくれるかもしれないと感じた。 亜紀は、そっと朔の手と腕を掴んだ。
亜紀「ありがとう・・・。」 朔「何が?」 亜紀「ううん。」 朔「何だよ?」
少し微笑みながら聞く朔に、亜紀も優しさに溢れた笑みを返した。そして言った。
亜紀「大晦日は空けておいてね。一緒に年越そう。」 朔「皆で?」 亜紀「年越しの瞬間は2人きりで。どこででもいいから・・・・・・。 朔「親父達はどうするの?」 亜紀「去年と同じように皆で集まると思うの。だから、その瞬間だけは、うまいこと2人で抜け出したいの。いい?」 朔「いいよ。連れ出すから。」
その言葉を聞いた亜紀は、「約束だよ。」と言い、さらに「またね。」と朔が好きな笑顔を顔いっぱいに咲かせて家の中へと入った。 残された朔は、塀の上の雪だるまを少し見つめた後、松本家へと向かった。
続く
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...2005/06/05(Sun) 00:42 ID:X8WVw3pU
Re: アナザーストーリー 2 Name:朔五郎
| | たー坊さま はかなく消えていく雪だるまと亜紀を重ね合わせた物語、感動いたしました。 この雪だるまはもしかすると、亜紀の病気や運命を背負って、身代わりになってくれるのかもしれませんね。
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...2005/06/05(Sun) 03:14 ID:i75Gqpho
Re: アナザーストーリー 2 Name:グーテンベルク
| | たー坊様へ こんばんは、グーテンベルクです。解けて消える雪だるまにドラマの亜紀が重なってしまいちょっぴり切なくも感じました。―忘れない限り死ぬことにならない−とても重みのある素晴らしい言葉だと思います。命の重みが伝わってきました。素晴らしい物語を読ませていただきまして本当にありがとうございます。続きを楽しみにしております。
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...2005/06/06(Mon) 20:01 ID:EJRznlAk
Re: アナザーストーリー 2 Name:ゴン41
| | たー坊さま。 こんにちは。いつも拝読させていただいて、ふと思うのは、田舎町での、徒歩や自転車でのデートって素敵だな。と。 ミニ雪だるま完成後の二人の会話、特に朔のセリフジーンときました。又、感動させてくださいね。 二人きりの年越しの瞬間、楽しみです。
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...2005/06/08(Wed) 12:51 ID:JqkOu5wM
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 朔五郎様 今回もお読み頂きましてありがとうございます。 おっしゃる通り、この雪ダルマが亜紀の身代わりになってくれるのかもしれません。 以前の、夢島キャンプでの蛍に続き、もうこれで亜紀は大丈夫だと、自分でも感じております。 次回もお読みいただけましたら幸いです。
グーテンベルク様 今回もお読みいただきましてありがとうございます。 朔のセリフは、ドラマでの朔と谷田部先生の会話をヒントに考えました。評価して頂いて、考えた甲斐がありました。 次回もお読み頂ければ幸いです。 お互いに頑張っていきましょう。
ゴン41様 お久しぶりです。お読み頂きましてありがとうございます。 ゴン41様が感じておられることに、私も共感しております。都会でのデートも良いかも知れませんが、やはり、のどかさの中、人ごみにも時間にも邪魔されにくいというのは大きいですね。お金も掛けず、2人きりの時間を享受できるのは何よりの幸せだと思います。 次回もお読み頂ければ幸いです。
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...2005/06/08(Wed) 22:24 ID:wG7KK96s
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 一同「5・4・3・2・1・・・・・・・・・・明けましておめでとう〜〜〜〜!!!」
1994年の年が明けた瞬間である。 松本写真館の一室に、松本家、廣瀬家を中心に全員が勢ぞろいしていた。 たった今、TVの年越し番組に合わせてカウントダウンをし終えた。ちなみに、TVは龍之介とボウズが昼間に持ち込んでいた。
智世・恵美「ハッピーニューイヤー!!!」 ボウズ「よっしゃ!そんじゃ新年早々いかせていただきま〜す!!」 龍之介「よし!いけボウズ!!」
そういうと、「ハイハイハイ!!」と囃したて始めた。ボウズは龍之介の掛け声に合わせて日本酒を“イッキ”してみせる。
恵美「ちょっと〜!駄目よ。体に悪いの分かってる?」 ボウズ「一回だけだって。」 恵美「たとえ1回きりでも駄目!急性アルコール中毒にでもなって救急車を呼ぶようなことがあったら大事でしょ!」 ボウズ「分かったよ。もうやらないから。」
恵美がボウズの体を心配して日本酒のビンを取り上げたのだが、言ってるそばから今度はコップに手を伸ばして、龍之介にビールを注がせた。
龍之介「まあ恵美、こいつは普段は酒なんて飲む機会はそんなにないんだから、今日は大目に見てやってくれ。今年は除夜の鐘をつかずに済んだんだし。」 智世「去年なんて、ボウズだけ来れなかったんだ。だから、今年だけは・・・・・・ね?」 恵美「う〜ん・・・2人に言われたら仕方ないなぁ。」 ボウズ「悪いな恵美。今回だけだから。」 恵美「本当に今回だけよ。」
などとやり取りをしている若者たちの横では、大人たちが新年の挨拶を交わしていた。
潤一郎「廣瀬さん、今年もバカ息子がご迷惑をお掛けするかもしれませんがよろしくお願いします。」 真「新年早々何をおっしゃるんですか?それはお互い様ですよ。私たちこそ、亜紀がお邪魔することが多いかと思いますが暖かく迎えてやって下さい。亜紀は、松本さんの家に泊まるのが楽しみなようなんです。」 富子「それは私だって同じなんですよ。亜紀ちゃんが来るのは大歓迎なんです。たまにと言わず、いつでも来るように言って下さいね。」 綾子「朔君にも遊びに来るように言って下さいね。」
すると、芙美子がやってきて綾子に言う。
芙美子「私も行っていいですか?もっとお姉ちゃんと話したいんですけど・・・・・・。」 富子「これ、芙美子!」 真「ははは、いいんですよ。松本さん。」 富子「でも・・・・・・。」 綾子「芙美子ちゃん。いつでもいらっしゃい。亜紀の妹みたいなんだから。」
綾子の言葉は社交辞令などではない。 亜紀は、家族に常々言っている。「芙美子ちゃんは妹よ。」と。事実、廣瀬家の面々は芙美子も朔と同様に歓迎するつもりでいるのだ。
芙美子「じゃあ、お邪魔します。お兄ちゃんも連れて。ね?お兄ちゃん?」
と言うが、気が付けば朔の姿がない。
潤一郎「あれ?・・・・・・・おい龍之介ぇ!朔太郎を見なかったか?」 龍之介「あっれぇ?さっきまでいたんスけど・・・・・・・・・・。」 恵美「どこにいったのかな・・・?」
潤一郎に言われ、龍之介たちも、ようやく朔の姿がないことに気付いた。
智世「あれ?亜紀もいないよ。」 芙美子「そういえば・・・・・・・・。」 恵美「まさか、駆け落ちとか(笑)」
恵美の言葉に思わずボウズは恵美を見る。 それに続くように龍之介や智世はもちろん松本、廣瀬夫妻も、この言葉には過剰なのでは?と思えるような反応を見せる・・・・・・・。 冗談半分に言った恵美は、皆の思わぬ反応に訳が分からず驚いている。 隣にいたボウズのセーターの腕を引っぱって呼んだ。
恵美「・・・・・・・ねえ、私・・・・・・・何か悪いこと言った?」 ボウズ「悪い・・・・・・悪いといえば悪いような・・・・悪くないような・・・・・・・・・・・。」 恵美「ハッキリしないの?」 ボウズ「まあ・・・・後で話すよ。」 恵美「・・・・・・・・・・。」
気が付けば、皆はさっきと変わらない。何もなかったように談笑している。 その時、朔と亜紀は・・・・・・・・。
朔「・・・・・・・・・・。」 亜紀「・・・・・・・寒いね。」 朔「ハァ・・・・・・・・。」 亜紀「仕方ないよ。それに約束通り年明けの瞬間は2人きりだったでしょ?」 朔「まあ、それはそうだけどさ・・・。」
外で七輪を使って貝を焼いている。 ちなみに、これも龍之介が持ち込んだものだ。当の本人は部屋の中。酔いがまわってきているので、貝のことはとっくに忘れているだろう。当然、朔に焼かせていることも・・・・・・。
朔「まあ、いいか。年越しの時に一緒にいたことの口実にもなるしね。」 亜紀「そういうこと。・・・あ、そろそろ焼けてきたんじゃない?」
亜紀が指さす先には、醤油が焦げて食欲をそそるような、いい匂いをしだした貝たちが殻を開けている。自ら食べられるのを待っているかのようだ。 亜紀が手渡した皿に朔が盛り付けた。 そして、新たなツマミが登場。大いに喜んだのは、2人に貝の調理を頼んだことをすっかり忘れていた龍之介と、日本酒の“イッキ”ですっかり出来上がっているボウズ。智世も恵美も「美味しそう・・・・・・。」と言わんばかりに、喉を唾液が落ちて行った。
潤一郎「なんだ?朔太郎、どこに行ってたんだ?」 朔「え?」 潤一郎「亜紀ちゃんも一緒か。亜紀ちゃんが風邪でもひいたらどうするんだ?」 亜紀「え?・・・もしかして、知らなかったんですか?」 龍之介「あ〜!!そうだ!俺、朔ちゃんに頼んでたんだっけ!」
案の定忘れ去られていた朔・・・・・・。
朔「なんなんだよ!人が寒い中で調理してんのに!」
思わず、文句を言う。 そんな朔に龍之介とボウズは、
龍之介「悪い!悪い!」 ボウズ「まぁ飲め!そして、今のことは忘れろ!」 朔「・・・・・・飲みすぎだろ!酒臭いって。」
朔に絡む2人からは、十分な酒の匂いが漂ってくる・・・・・・。
朔「恵美!智世!止めろよ。」 恵美「私は何度も止めてるよ。でも・・・・・・。」
恵美が隣に目をやる。智世もすでにかなりの量のアルコールを体内へと入れてしまったようだ。誰の目にも分かるほどだ。
亜紀「智世!」 智世「・・・ちょっと飲みすぎだね。」 恵美「大丈夫?」 智世「大丈夫、大丈夫。少しすれば元通りになるわよ。そこのタチの悪い酔っ払い2人に半強制的に飲まされただけだから。本当に大丈夫よ。」 恵美「本当ね?」 智世「うん。」
そういうと、さっきまで座っていた所に再び腰を下ろした。軽く、ボーっとした様子の智世に亜紀も恵美も心配は隠せなかった。それでも笑顔を見せる智世に、少しホッとする2人であった。 そして、気が付けば、朔が作ったツマミは、半分以上がそれぞれの胃の中へとおさまってしまっていた。
朔「すごいな・・・・・・。」 龍之介「うまかったぜ。さすが、謙太郎じいさんにこき使われていただけはあるな。」 潤一郎「そういえば、親父の味に似てるなぁ。」 朔「今頃気が付いたの?」 潤一郎「いや、あらためてそう思っただけだ。親父がまだ若かった時を思い出すな・・・・・・。」
どこかしんみりとした雰囲気を醸し出す父親に、息子は「正月だよ!」と言った。 その間にもツマミの売れ行きは好調で、気が付けば、亜紀も恵美も手を伸ばしている。 「皆に喜んでもらってるから、まあ、いいか。」心の中でそう呟く。 まわりには笑顔の皆がいる。「周りの大切な人達と、今年も精いっぱい生きれますように。」と願った。朔は、結婚写真を撮ったときの心境と、今の心境を重ね合わせていた。 ・ ・ ・ 翌朝。 松本写真館での忘年会と新年会はお開きとなっていた。
亜紀「おはよう。」 綾子「おはよう。朝ごはんは?」 亜紀「自分でするよ。」 綾子「そう。」 亜紀「お父さんは?」 綾子「まだ寝ているわ。珍しいでしょ?」 亜紀「そうだね。まあ、お正月だし、今日だけはだらけてもいいかな・・・・・・。」
あれから1時間後、一家で帰宅した後すぐにお風呂に入り、眠りについたのだった。 今の時間は午前8時半。亜紀にしては珍しくのんびりとした朝だ。
亜紀「午後になったら、朔ちゃんのところに行ってくるから。」 綾子「今日はやめておいたら?多分、朔君はまだ寝ているでしょう?寝ているところを無理に起こしたらダメよ。」 亜紀「だから、起こしに行くの。朔ちゃん、一度寝てしまうとなかなか起きないんだから。」 綾子「いいけど・・・・・・松本さん達に迷惑だけは掛けないようにしなさいよ。」
綾子は亜紀に釘を刺すように言った。 さっきの言葉通り、亜紀は昼食をとった後、松本家に向かった。
富子「いらっしゃい。そろそろ来る頃だと思ってたんだよ。」 亜紀「お正月早々にお邪魔します。」 富子「アッハッハ!年越しの時に一緒にいておいて、今さら何を言ってるんだい!朔は部屋にいるから上がりなよ。」 亜紀「え!?朔ちゃんはもう起きているんですか?」 富子「寝てるに決まってるだろう。」 亜紀「やっぱり・・・。起きてるわけないですよね!」
そういうと2人は笑い合った。 富子の招きで家の中にお邪魔した亜紀。そのまま朔の部屋に向かった。 そーっと、起こすことのないように部屋に入る。ベッドの中には、日々の緊張感から開放されたように無邪気な子供のような寝顔で、朔が寝息をたてていた。
亜紀「お正月だから大目には見るけど・・・・・・それにしても度が過ぎるんじゃないの?朔ちゃん。」
少しだけ嫌味に近いものを込めて言ってみた。すると、そんな気持ちが伝わったのかどうかは分からないが、朔が目を覚ました。重そうなまぶたがゆっくりと上がっていく。そして、ベッドの傍らに座って自分を見ている亜紀に気付いた。
朔「ふぁ・・・・・・おはよ・・・・・・。早いね、亜紀・・・。」 亜紀「『おはよ。』じゃないよ。もう1時近いよ。お正月だから大目には見てあげるけどね。」 朔「もうそんな時間?」
そういうと、目を擦りながらベッドから体をおこして時計を見る。「あ、本当だ・・・・・・。」と呟くように言った。
朔「じゃあ、もうすこし・・・・・・。」 亜紀「まさか、寝るとか言わないよね?」 朔「そのまさかなんだけど。」 亜紀「へ〜・・・せっかく、元旦から来ている私に向かってそういうことを言うんだ!」 朔「冗談だよ。冗談。」
新年に初めて起きた瞬間に亜紀が目の前にいるということは、最高の目覚めであることに間違いない。だからこそ、そんな冗談を言ってみた。ささやかな幸せの1ページ。
亜紀「今年もいい年になるといいね。」 朔「そうだね。俺は俺で国家試験が待ってるし。今年は去年より頑張らないと。」 亜紀「いい結果が出るように私も祈るから。」 朔「じゃ、今年1年を占ってみようか?」 亜紀「賛成。まずは、早く着替えてよ。」
そういうと、朔は急かされるように着替えた。そして、すぐさま亜紀を連れて家を出た。 冷たい空気を感じる中、互いの片方の手だけはとても暖かだった。
続く
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...2005/06/08(Wed) 23:29 ID:wG7KK96s
Re: アナザーストーリー 2 Name:にわかマニア
| | 「どこででもいいから」とは言ったものの,「年越しの瞬間は2人きりで」の場所が写真館の玄関先の七輪とは,見事に意表を衝かれました。でも,第1・2話の祖父健在のころのやりとりや,夢島の場面を思い起こしますね。 いつも,お寝坊さんを起こす役回りの亜紀ですが,そのうち富子から「はたき」をもらって,パタパタさせながら起こすようになるのでしょうか。でも,亜紀なら,その「はたき」でお寝坊さんの鼻先をくすぐりそうな気も・・・
>一同「5・4・3・2・1・・・・・明けましておめでとう〜〜〜〜!!!」 今回の物語は年越しのカウントダウンから始まりましたが,第3部突入もカウントダウンといった感じですね。1話につき数件の感想レスがついていますから,放送開始1周年までには達成できそうですね。 これからも楽しみにしています。
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...2005/06/09(Thu) 12:16 ID:bX3bTHDI
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | にわかマニア様 今回もお読み頂きましてありがとうございます。 本来なら、もっと別の場所をイメージしていたのですが、近頃、酒グセの悪いスケちゃんに無理やり頼まれて、玄関先での年越しというものが浮かびましたので、そちらをストーリーに組み込みました。 退院後、亜紀の朔への愛の方が強くなっているということ、当然のことが幸せであることの2つを考えておりますので、亜紀は朔と2人きりなら、なんでも嬉しいと思っているように表現しております。そのあたりも台詞から読取って頂けるかと思います。 ”寝坊常習者”起こすのに、未来の母から「はたき」を受け継ぐのはいいかもしれませんね。新婚時代を描くことがありましたら、是非使わせていただきたいと思います。
さて、いつの間にか”2”も終わろうとしております。おそらく、”3”に突入することになるかと思います。 これからもお読み頂き、時折感想などを頂ければ嬉しいです。これからもよろしくお願いします。
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...2005/06/12(Sun) 01:57 ID:LAlvaxyE
Re: アナザーストーリー 2 Name:グーテンベルク
| | たー坊様へ こんばんは、グーテンベルクです。今回も心温まる作品ですね。将来2人が結婚したら、亜紀が朔を、そして時には朔が亜紀をどのように起こすのか・・・ぜひ見てみたいです。さて、この作品も、もうすぐパート3突入ですね。これからも応援させていただきます。お互いに頑張りましょう。
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...2005/06/12(Sun) 20:59 ID:0RpQpRIs
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | グーテンベルク様 今回もお読み頂きましてありがとうございます。 亜紀が朔を起こすのは、もはや当然のことと思います。亜紀の目の前で2度寝しようとするほど、図々しくなった朔を起こすのは、亜紀にとっては大仕事の一つになってしまうことでしょう。 次回もお読み頂ければ幸いです。 ”3”に突入してもお読み頂ければ幸いです。
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...2005/06/12(Sun) 21:51 ID:LAlvaxyE
Re: アナザーストーリー 2 Name:たー坊
| | 1994年4月。 春先の心地よい陽気の中、亜紀と芙美子は無事に二年生に進級していた。 大学の午前中の授業が終わると同時にそれぞれの学部の校舎から学食に向かっている。途中、2人の友人が1人、また1人と合流していく。
芙美子「私の方が早いや。」
キャンパス内に3ヶ所ある学食のうちの1ヶ所に芙美子は到着している。おそらく、間もなく来るはずの亜紀たちの席を確保しながら待つことにした。 そして、やはり程なくして亜紀が友人達を連れてやってきた。
亜紀「あ、早いね。もしかして、結構待たせちゃった?」 芙美子「そんなことないよ。私も来たのは1、2分前だから。」 亜紀「そう?それならいいんだけど。」
そんな2人の会話を見ている友人達。「ホントに仲が良いのは何故だろう?」と、いつも思っている。 とりあえず席に荷物を置き、食券を求めてまだそんなに人のいない自販機の列に並んだ。
「これ一口ちょうだい。」「いいよ。」「あ〜、私のも交換して!」「分かったから!ちょっと待ってよ!」などと、学食の一角は賑やかな雰囲気に包まれる。 1番年上の亜紀は、微笑みを浮かべながら少し控えめな様子でランチを口に運んでいた。
食後・・・。 次の授業が行なわれる教室の席に着いた亜紀と芙美子。この授業は教養科目のため、学部が違う2人が一緒に履修することができている。 ちなみに2人が同じ科目を履修している授業は週に3科目ある。
芙美子「お姉ちゃん、もし私が眠ったら起こしてね。」 亜紀「そういうことは自分でしっかりするものでしょ。」 芙美子「昨夜は遅くまでレポートを作ってたの。それで眠くてしょうがないんだ・・・。」
そういうと、「ふあ〜あ・・・・・。」と大あくびをして見せた。 芙美子は亜紀に甘えるようになっていた。 面倒見のよい亜紀は、怒ったり嫌な顔はせずに優しく芙美子を諭している。
亜紀「はい、それとこれとは別。せっかく先生が教えてくれるんだよ。しっかり聞かないと失礼だよ。」 芙美子「・・・・・・・私、この科目は苦手。」 亜紀「それは私も同じ。でも、絶対に自分のためになるから寝ないで頑張ろうよ。」 芙美子「わからないことがあったら教えてくれる?」 亜紀「もちろん!」 芙美子「じゃあ、ノートも見せてくれる?」 亜紀「それはダメ。ノートは自分で取るものだよ。」 芙美子「はーい・・・・・・。」
さりげなく芙美子を支える。「やっぱり、血の繋がった兄妹ね。」と亜紀は思う。 朔は自分の病気がキッカケで、かなりしっかりしたと思う。これは周囲にいる人たちのほとんどがそう感じていることである。しかし、亜紀はそれほど変化のない部分をいくつも知っている。そして、そのいくつかは芙美子にも当てはまるのである。思わず心の中で笑わずにはいることのできない亜紀。 そんな中で授業は始まる。時折、芙美子を気遣いつつ授業をしっかり聞く・・・・・・・。 ・ ・ ・ 夕方の6時にこの日の全ての授業が終了した。 この日の帰路に芙美子は一緒ではない。芙美子と一緒に帰宅できない日は週に2日あるが、そのうちの1日だ。 肩からバッグをさげ、キャンパスから最寄駅まで歩く。 駅では多くの学生が、決して本数が多いとは言えない列車を待つ。亜紀はベンチに座り、その日の授業のノートなどを見直す。宮浦方面行きの車内でもその作業は続くのである。 しかし、日の長い時期は、海の見える場所から今にも沈み行く夕日を眺めることにしている。これは、東京に向かう時に見えた夕日が、とても綺麗に見えたからであった。 そして、さらなる楽しみが時々ある。それは車内で恵美に会うことがあること。以前に恵美は「時々仕事の関係で、この路線を使うことがあるの。」と言っていた。
そして、宮浦駅を降りて自宅に向かう。 ちなみに、1週間のうち松本家に向かうのは3日くらいで、夕飯を時々ご馳走になり、朔の部屋で勉強したり、芙美子の部屋で談笑したりして朔の帰りを待っているのだ。 朔が帰宅して、短くも有意義な時間を過ごして帰宅するというのが、亜紀の大抵の日々である。 そんな充実した日々・・・・・・。 有意義であればあるほど時間はあっという間に過ぎ去っていくもので、いつしかゴールデンウィークから梅雨に入っていた。 そして、気が付けば7月2日であった。亜紀が24回目の誕生日を迎えていた。
朔「おめでとう。」 亜紀「ありがとう。」 朔「またこれで3ヶ月ちょっとは年下かぁ・・・・・・・。」 亜紀「そうだね。フフフッ!」
7月2日の夜。 真に許可を取り付けて、今日は朔の家でささやかな時間を過ごしている。 この日ばかりは朔も早目に帰宅して先に自宅の部屋で亜紀を待っていた。 1人で自分の部屋で準備をしながら・・・・・・。
朔「じゃあ、とりあえず乾杯かな?」 亜紀「わぁ楽しみ。朔ちゃん、色々と準備をしてくれていたんだ。」 朔「そう。去年はレポートのせいで嫌な思いをさせちゃったから・・・・・・その分じゃないけどさ。」 亜紀「去年のことはもう気にしてないよ。カップの裏側のメッセージがなにより嬉しかったから。それで、私としては今年こそはその口から聞かせてもらいたいな・・・・・・。ね?」 朔「まあ、それはいつかね。」 亜紀「まだ無理なの?」 朔「う〜ん・・・・・・もうここのあたりまで出かかっているんだけど・・・。俺の悪い性格だね。」
朔は喉に手を当ててジェスチャー付きで亜紀に表した。 そんな様子を目の当たりにした亜紀は、怒ることなく軽くため息をつくように言った。
亜紀「ふ〜ん。ま、いいか。もう7年待ったんだしね。こうなったら10年でも20年でも待ってあげるよ。」 朔「さすがに、そこまでは待たせないと思うよ。もし10年後だったら、結婚しちゃってると思う。さすがに、結婚してるのにその言葉を言えないのはおかしいと思うしね。」 亜紀「じゃあ、近い未来ね?今から楽しみにしておくね。」
今年も聞けなかった。でも、亜紀はとても満足することができた。朔は間違いなく言ってくれると確信できたから。微笑みを朔に見せてあげた。
朔「じゃあ、乾杯!」 亜紀「私の誕生日だけじゃなくて、交際開始から7年目の記念日にも乾杯!」 朔「そうだね。じゃ、あらためて。」
そう言うと、朔は2回グラスを合わせた。“チン!”とグラス同士が良い音を立ててくれた。グラスの中にはワインが注がれている。1週間前に朔が龍之介に頼んで、廉価で美味な1本を探してもらっていた。
亜紀「おいしいね。」 朔「うん。俺も初めて飲んだんだけど結構美味いね。」 亜紀「でも、忙しいのによく探してくれたね。」 朔「はは。俺だけじゃないよ。スケちゃんにも協力してもらったんだ。」
その言葉を聞いた時に亜紀は微笑ましくなった。 「スケちゃんの名前を出さなくてもいいのに・・・・・。『自分で探してきた』って言ってたら、もっと株が上がったのにね。・・・・・・でも、そこが朔ちゃんらしいけどね。」 いずれにしても、朔の株は上昇していることに間違いない。
朔「さてと・・・・・・どれがいい?」 亜紀「これもスケちゃんに頼んだの?」 朔「いや、これは俺が買ってきたよ。」
朔がテーブルの上に置いたのは何種類かのケーキが入っている白い紙でできている箱。 美味しそうなケーキを覗き込むようにして亜紀が選ぶ。
亜紀「じゃあ、私はこれがいいな。」 朔「分かった。もう一つどう?」 亜紀「とりあえずこれだけでいいよ。もう一つ食べれそうだったら、遠慮なくご馳走になるよ(笑)」 朔「いいよ。」
亜紀は、イチゴのショートケーキを選んだ。それを見て朔は、チーズケーキを手に取った。 皿の上にはそれぞれのケーキが。
亜紀「いただきます。」
亜紀がケーキを口に運ぶのを朔は見つめる。「本当に幸せだ。」亜紀が美味しそうに食べていることは、朔にそう思わせた。 そして、ここから朔がプレゼントを渡すことになるのだが・・・・・・。
朔「それでさ、亜紀・・・。」 亜紀「うん?」 朔「あまりにも忙しくて、プレゼントを用意できなくてさ・・・その・・・。」 亜紀「そっか、仕方ないね。気にしなくていいよ。こうしていてくれるだけでいいから。」
“ホッ”とする朔。どこからどう見ても亜紀が何か企んでいるようには見えない。 亜紀は朔の隣に座って言った。
亜紀「今日のプレゼントのことはいいからね。その代わり絶対に国家試験に合格してね。私、応援しているから。」 朔「・・・・・・・絶対に受かってみせるよ。」 亜紀「約束・・・。」
気が付けばもう7月。朔が卒業試験と国家試験の受験のために一度帰京するまで、残りは3ヶ月となっていた。亜紀は寂しさはあるが、朔のために精いっぱい支えることを、この時決心していた。
続く
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...2005/06/12(Sun) 22:18 ID:LAlvaxyE
Re: アナザーストーリー 2 Name:アーネン
| | たー坊様の物語最高です。これからも頑張ってください。グーテンベルクさんとともにいつも応援してます
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...2005/06/15(Wed) 06:03 ID:21h1ot/Y
Re: アナザーストーリー 2 Name:Marc
| | こんにちは、たー坊さま。
2回目の完走が目前ですね、”おめでとうございます”(^^) そして、いつも楽しいひと時をありがとうございます、あと17 日経てば亜紀の誕生日&ドラマ放送開始1周年ですね。 (この物語には17の数が意味深く関わっているのでしょうか)
これからも無理をしないで、たー坊さまのペースで執筆して頂け れば最高!です。
それでは、また。
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...2005/06/15(Wed) 17:55 ID:.UTLXg4w
Re: アナザーストーリー 2 Name:ゴン41
| | <祝>完走PART2!!って、すみませんラストGETしてしまいました。これからも”アナザー”のファンです。これからもずっと楽しみにしております。無理せず頑張ってください。ゴン41でした。
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...2005/06/15(Wed) 18:23 ID:x/JM704A