野島さんのインタビュー記事(共同通信)
2008.01.19 Saturday共同通信による野島さんのインタビュー記事が、
2008年1月12~15日頃の各地方紙に掲載されていた模様です。
紙面だけの掲載でネットでは配信されてないので、こちらに引用します。
まぶしい季節を取り戻す フジTV「薔薇のない花屋」の野島伸司 3年ぶりドラマ脚本執筆
2008.01.12
「101回目のプロポーズ」「高校教師」「ひとつ屋根の下」など数々のヒットドラマを生んできた脚本家野島伸司が、フジテレビ月曜午後九時の「薔薇のない花屋」で、約三年ぶりにドラマ脚本を手掛けている。創作活動と今作への思いを聞いた。
▽背負う宿命
「デビューして二十年になるので、ちょっと飽きたと言うとおかしいけど、モチベーションが下がった“季節”が続いて、やめていたんです」。休みつつ、小説の執筆に取り掛かっていたが、舞い戻った。
「連ドラは、戦場に行くような感じ。成功すれば皆喜び、失敗すれば大変なことになる。でも、一度でも戦場へ行くと、いいことかどうか分からないけど、また行きたいと思ってしまう」
テレビから離れた間、さまざまな思いが去来した。「若いころ、大家と呼ばれる人たちが書いたドラマを見て『いい話かもしれないけど、つまんねぇんだよ』と思うことがあったけど、自分もそこに行きかけてしまっていたかもしれない」
自身が表現したいことと視聴率の両立は、脚本家が背負う宿命。「若い時はわざと、きついシーンを入れて、それを受け止められる視聴者を選別しようとしてました。でも理想的な視聴者の割合は少ないし、それを追い求めたら失敗する」。一方で「口当たりのいいものより、強く自分が思うことを書いて批判され、でも無視してやっていたという、痛いほどのまぶしい季節を取り戻す」とも。
▽引きの美学
「いい話で面白ければベスト。両方意識しながらやるしかない。視聴者の誰も取りこぼさず、選別した視聴者にも新たなテーゼを見せる」
今回のドラマの主人公は、花屋を営み、男手一つで八歳の娘を育てている、控えめでお人よしの男(香取慎吾)。ある日、店先に盲目の女性(竹内結子)が雨宿りにきたことから始まる物語。心温まる内容でありつつ、サスペンス的要素も含んで、引きつける。
「他人から分かりやすく評価される仕事ではなく、市井の普通の仕事をしている人のカタルシス、生き方のプライドをどう作るかがテーマ」。自身で“引きの美学”と呼ぶ、多くを求めすぎない生き方を描いていく。
さらに、隠れたテーマが「光と闇」。「人間誰でも闇の部分はある。自分は嫌な人間だなと意識して、闇を消滅させたいと思って生きている男の話です」
▽世界一速い
脚本はどんどん書き上げ、ラストシーンのイメージも既にある。「僕の書き方は他の脚本家と全く違うと思う。普通は(物語を)大箱、中箱、小箱と構成して、そこにせりふを入れていくけど、僕は構成をしない。書きながら『今度はこういう場面を見たい』とか、生理的に進むので、書くのは世界で一番速いと思う。理想は一時間で一時間ドラマを書くことですね。不可能ですけど」
自身の闇とは。「思いっきり目立ちたい人たちとは違う種類の、『格好つけてないことの格好良さ』を意識していることが、嫌だな、消したいなと思いますね」と苦笑いした。
(共同通信)
以下は管理人の感想
既出の産経新聞のインタビュー記事もよかったですが、こちらもまた熱い内容で、野島ファンとしては感動ものです。
話の中心は「自身が表現したいことと視聴率の両立」で、この中で野島さんが相反することを言っているのが気になります。
「強く自分が思うことを書いて批判され、でも無視してやっていたという、痛いほどのまぶしい季節を取り戻す」
「(面白い話を書いて)視聴者の誰も取りこぼさない」
当然、それを両立させることは非常に難しいことで、大衆メディアであるテレビを舞台にする以上、野島さんがずっと背負い続けている宿命なんですね。
1990年代の野島作品は、「高校教師(93)」や「人間・失格」などである種のタブーを描いて、同時に強いメッセージを放っていて・・・そういう選別をすると好き嫌いが別れるのが普通だけど、それでもなぜあんなに視聴率が高かったかといえば、私が思うのはストーリー自体が抜群に面白かったからです。
それはたまに言われる、残酷さや不幸でひきつけたのとは違うと思う。
そういう要素がない「101回目のプロポーズ」でも、あんなに面白くて多くの人を惹きつけたわけですから。
この頃の野島さんは奇跡的なストーリーテラーで、それゆえに何を描こうが上手くいったのではと。
すると野島さんは当てようという意識がなくなり、視聴者を選別してテーマを深めていって、より深化してたどり着いたのが「世紀末の詩」や「リップスティック」だったかもしれない、というのが過去のインタビュー記事などを見ると推測できます
90年代の作品があまりにも凄かったので、それに比べたら2000年代の作品は劣るというのが現実だと思うけど、私が今でも野島ドラマに惹かれ続けているのは、野島作品には野島さん固有のテーマやメッセージがあるからです。
たとえば「あいくるしい」はネット上の評判もあまりよくなく、視聴率も悪かったけれど、私は幌と祖父のやり取りだけで満足できたし、二人の台詞は今でも心の中に残っているので、それだけで価値のある作品だと思う。
しかし物語の面白さという点で、多くの視聴者をひきつけることができなかったのが、低視聴率の原因でしょうか…。
野島さんがしっかりと自分の思いや主張を描きつつ、面白いストーリーでぐいぐい引っ張っていく、というのが「薔薇のない花屋」なのではと上のインタビューを見て感じました。
1話の視聴率や評判は上々なので、それは今のところ成功しているんじゃないかと感じます。